有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2025/05/19 15:30
【資料】
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【項目】
121項目

対処すべき課題

当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社が判断したものであります。
(1) 経営方針について
当社は、企業理念として次の「ミッション/使命」、「ビジョン/未来の姿」、「バリュー/心構え」を掲げております。
ミッション/使命 革命児として、圧倒的な地位を築き、社会に対して大きな価値を約束する。
ビジョン/未来の姿 タオルのグローバル・スタンダードを創出し、世界市場で存在感を示す。
バリュー/心構え 革命児の自覚を持ち最先端を突き進む。
やりとげる力でアイデアを具現化する。
真心を尽くし価値創造の関係を築く。
タオルのプロとして業界で存在感を示す。
(2) 経営戦略について
当社は、「タオルのグローバル・スタンダードを創出し、世界市場で存在感を示す。」のビジョンを実現するため、タオル業界のプラットフォーマーとして、製造業者及び小売業者と一体となり、「タオル製品等の企画、製造及び販売」を行っております。現在は「ODM生産」「キャラクターIP製品」「EC販売」の3つのチャネルで当社製品を販売しております。当社が今後更なる成長と発展を遂げ、持続的な事業展開を実現するには、これら3つのチャネルを更に成長させることが重要であると認識しております。なお、前事業年度及び当事業年度の各チャネル別の売上高は以下のとおりであります。
事業区分前事業年度
(自 2023年3月1日
至 2024年2月29日)
当事業年度
(自 2024年3月1日
至 2025年2月28日)
ODM生産(千円)5,408,3065,557,558
キャラクターIP製品(千円)2,658,5692,604,893
EC販売(千円)1,871,9411,662,908

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社の経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等として、のれん償却前当期純利益(注)を重視しており、中期的な事業拡大と収益率の向上により企業価値の向上と株主価値の向上を図ってまいります。前事業年度及び当事業年度ののれん償却前当期純利益の推移は以下のとおりであります。
前事業年度
(自 2023年3月1日
至 2024年2月29日)
当事業年度
(自 2024年3月1日
至 2025年2月28日)
のれん償却前当期純利益(千円)1,304,609780,073

(注)「のれん償却前当期純利益」とは、当期純利益にのれん償却額を加えた数値であります。
(4) タオル市場規模及び業界環境
①市場規模
国内のタオル及びタオル製品の小売市場規模は、2021年度は約1,560億円、2022年度は約1,580億円、2023年度は約1,588億円(表1)となっております。
この背景には、コロナ禍を経て家庭でのタオル共用が見直され、抗菌タイプや機能性などのタオルの付加価値が注目されたことなどが寄与したものと考えられます。また、タオル地の原料は高騰しており長引く円安により2023年以降の価格上昇が想定されますが、身近な日用品であるタオル市場の需要は堅調に推移することが考えられます。
一方で、2020年にコロナ禍によって落ち込んだ一部の需要は戻らず、特に贈答用のタオル市場が厳しい状況は現在も続いております。これまでの市場が縮小しつつある中、その合間を縫うようにしてSPA型(調達・企画・生産・物流・販売・在庫管理など、すべての過程を一貫して行う)で製品を提供する大型小売店やホームセンター、100円ショップ、量販店などによる日用品向けの低価格製品の供給が増加していることが考えられます。なお、この市場規模推計では、ホテル及び病院等向けのリネンサプライを含む、いわゆる業務用タオルを除いた推計となっております。
なお2023年度の世界のタオル市場規模に関しては、バスタオルに限っても約1兆5,725億円(Fortune Business Insights「市場研究報告2023 バスタオル市場分析」より110億3,000万米ドルを2025年4月30日TTMである1ドル=142.57円で換算)となりました。
国内タオル市場の推移(年小売金額/億円)(表1)

出典:株式会社矢野経済研究所「繊維白書2025」
②業界環境
株式会社矢野経済研究所の分析によると、リーマンショックによる景気低迷を機に、ギフトの慣例を取り止める消費者が増加しました。そして、取り止められた慣例は再び戻ることなく、ギフト市場は縮小したままです(矢野経済研究所「繊維白書2025」)。一方で、自家需要を取り込むEC市場は拡大傾向にあります(経済産業省「令和5年度電子商取引に関する市場調査」)。これらの市場動向は、当社主力製品であるタオルにも影響を与えております。
タオル小売市場においては、PB商品を供給する大型小売店が、対面販売に加え、自社プラットフォームにおけるECを強化しております。また、原材料価格の高騰や為替の変動によるコスト増加に対応するため、PB商品開発を加速させております。さらに、ホームセンターや100円ショップ等でのタオル販売も増加し、大手ドラッグストアや家電量販店もタオルを取り扱うようになり、タオル小売のマルチチャネル展開が進行しております。
昨今ではコロナ禍の影響により抗菌機能を付したタオルの需要が増加しており、また、家族間でタオルを共用せずに自分専用のタオルを使用する習慣も生じたこともあり、自家需要のタオル購入枚数は増加傾向にあります(矢野経済研究所「繊維白書2024」)。公共のトイレにあるハンドドライヤーもコロナ禍により使用が減り、男女共にタオルハンカチを持ち歩く習慣も生じております。
新たな販売チャネルとして、キャラクター関連製品にも着目しております。キャラクターIP市場は2兆6,508億円(2023年度、矢野経済研究所「2023年版キャラクタービジネス年鑑」)、アミューズメント市場での2021年度の景品類の店舗購入高は1,010億円(前年比 125.3%)(「月刊アミューズメント産業 第620号」)であり、コロナ禍からの回復は進んでいると考えております。キャラクターIP市場の成長に伴い、キャラクター付きタオル製景品の販売も増加傾向にあります。
また、ECのトレンドもタオル市場に影響を与えております。EC市場は13兆5,600億円(2023年度、日本通信販売協会)であり、当社のEC販売額も伸長しております。
(5) 当社経営環境
足元の経営環境については「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」をご参照ください。今後の見通しについては、円安やインフレの進行、ウクライナ情勢、米国新政権の政策動向等の影響を受けるものの、国内経済は中期的に回復基調が続くものと想定しております。
(6) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 円安の進行
当社は、製品の大半を国外で製造しており、今後、更なる円安の進行による製品コストの上昇により、厳しい事業環境が続くことも予想されます。そのような想定の中、為替予約取引による一定のリスクヘッジを行いながらも、業務効率の改善やスケールメリットの創出によって価格競争力を常に維持してまいります。
② 適地生産の徹底
当社は、製品製造にあたり、中国、ベトナム、インド及びその他諸外国のサプライヤーに製造を委託しております。製造委託先のある各国には、政治的・社会的な混乱、自然災害・テロ・紛争・感染症によるサプライチェーンの混乱、原材料価格の変動や賃金上昇等のリスクが存在しますが、これら有事の際の損害を最小限に抑えるべく、その国の特色や状況を把握したうえで、機動的な生産地の切り替えや複数の生産拠点の確保、物流の最適化といった対応を図ってまいります。
③ EC市場の強化
今後、国内販売においてデジタル化がより一層加速すると想定しており、またEC市場における新規参入による競争激化などが見込まれる中、EC販売におけるブランド戦略の強化、継続的な新規商材の投入などにより、ECにおける更なるブランドプレゼンスの向上と、売上の増加を図ってまいります。
④ 内部管理体制の強化による事業基盤強化
当社は、業務運営の効率化やコーポレート・ガバナンス、リスクマネジメントのための内部管理体制の更なる強化が重要な課題であると認識しております。引き続き経営の透明性を確保するために内部統制の実効性を高め、内部管理体制の強化に取組み、事業基盤を強化してまいります。
⑤ サステナビリティへの対応
当社は、持続可能な社会の実現に貢献する企業であり続けるために、企業価値の向上を維持しながら地球環境に配慮し、タオル業界におけるサステナビリティに貢献していきたいと考えております。今後は人的資本に関する取組みも含め、サステナビリティ経営の強化に努めてまいります。