訂正有価証券届出書(新規公開時)
有報資料
当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1) 経営の基本方針
当社は、「新しい酒文化を創造する」ことをパーパスとし、「驚きと感動で世界中をワクワクさせる」ことをミッションに掲げ、「私たちの挑戦が世界の新しいスタンダードを創り出す」ことをビジョンにさだめ、カテゴリー・名称といった、お酒の概念にとらわれることなく、おいしさを求めながら楽しさも探求することにより、誰もがおいしく、楽しいと感じるお酒を生み出し、飲む人を笑顔にする、人を幸せにする酒づくりに挑戦いたします。
当社の価値観、行動指針は以下のとおりであります。
進化 :失敗を恐れず挑戦し、変わり続けることを楽しむ
団結力 :皆を思いやり、絆を深め、同じ方向を向く
誠実 :規律を守り、ホスピタリティを持ち、小さな約束も守る
情熱 :何事も自分事として能動的に捉え、高い志を持って行動する
本質思考:前例に頼らず、プロ意識を持って考え尽くす
遊び心 :完璧に捉われず、好奇心やユーモアを大切にし、梅乃宿を楽しむ
このような理念に基づき、お客様の価値軸に寄り添いながらも、常に新しい発信と価値提案を続けることにより、顧客満足度の向上を継続させ、当社の社会的価値の向上とともに企業価値の最大化を図り、持続的な発展を目指すものであります。
(2) 経営環境
当社を取り巻く環境は、以下のとおりであります。
① 国内酒類市場
全体として、国内酒類市場は縮小傾向が続いており、これは人口の減少や、少子高齢化や若年層の飲酒離れ等の要因によるものと考えております。また、消費者の嗜好の多様化により酒類もバラエティ化が進み、市場の細分化や商品の改廃を伴う回転が加速しております。
近年では、特に新型コロナウイルス感染症をきっかけとした生活様式や働き方の変化が、酒類の消費に影響を与えております。特に、小売市場においては、コロナ禍にEC市場が消費者の新たな購買チャネルとして急成長を遂げました。当該傾向は、自宅での食事や娯楽を楽しむ「イエナカ消費」のニーズとともに、新たな市場として、今後も拡大がみこまれるものと考えております。また、近年、ユニークな副原料等を用いた酒が注目されるようになり、2022年には「クラフトサケブリュワリー協会」が設立されるなど「クラフトサケ」ジャンルが認知されつつあります。こうした小ロットの商材はECを通じた販売と親和性が高いものと考えており、当社でも「クラフト感」のある新商品開発に力を入れながらBtoCの強化に取り組んでおります。
個別の市場に目を移すと、国内飲食店市場については、円安を背景にした物価上昇を受けて、価格改定による顧客単価の上昇が売上の増加要因となる一方、物価上昇に伴う消費者の節約志向等により、コロナ禍から回復してきた顧客数に頭打ちの傾向が見られる環境の中、訪日外国人客が過去最高となるなどのプラス要因により、2025年は外食産業全体で業態問わず売上高が前年を上回る状況となりました(出所:一般社団法人日本フードサービス協会「外食産業市場動向調査令和7年(2025年)年間結果報告」)。
酒類販売業者を通じた家庭向け販売市場におきましては、コロナ禍に喚起された需要が継続する傾向にあり、引き続き堅調であるものと考えております。また、国内のEC市場につきましては、酒類を含む食品、飲料市場のEC化率は5%未満と未だ低い水準にあるとされておりますが、市場規模は2024年において前年比6.36%増加しており(出所:経済産業省 令和6年度デジタル取引環境整備事業「令和6年度電子商取引に関する市場調査報告書」)、今後の市場規模拡大が期待できる状況にあります。
② 海外酒類市場
海外向けの酒類販売市場は成長を続けており、2025年年間の日本産酒類の輸出金額は1,495億円と過去最高額を更新いたしました。当社は、日本政府の日本産酒類の輸出拡大施策や、和食のユネスコ無形遺産登録等の好材料を追い風に、今後も輸出市場の拡大が期待できるものと考えております。しかしながら、ウクライナ情勢の長期化による世界経済の不安定化、中国国内の経済動向、米国の通商政策の影響などの不確定要素もあり、国際情勢によって不測の影響を受けることも考えられます。
日本産酒類の輸出先を国別にみると、中国、アメリカが最大市場であり、韓国、台湾、シンガポール、香港がそれに次ぐ構図となっております(出所:国税庁「最近の日本産酒類の輸出動向について(2026年2月作成)」)。
③ 生産面
製造面においては、原材料費・包材費・人件費等の生産コストの上昇、物流費の高騰など原価を圧迫する要因が増加の一途をたどっております。原材料においては、生産者の減少が続いており、供給減少に伴う調達量・価格面での競争が激化しております。
また、売上増加に比例した製品の増産にともない、人員の確保も必要となりますが、生産年齢人口の減少によって人員確保も容易ではない状況にあります。ついては、生産設備の更新・増強を行い、効率化を推進するとともに生産性向上に向けて、設備投資を含めた対策を続けてまいります。
(3) 中長期的な経営戦略と対処すべき課題
当社は、中期的な経営目標として、「①より多くの人に梅乃宿を」、「②ブランド戦略の明確化」、「③革新の連続」「④丁寧な酒造りの磨き込み」、「⑤組織力の底上げ」等の各種施策の遂行に取り組んでまいりました。
具体的な戦略と課題は以下のとおりであります。
① 「より多くの人に梅乃宿を」
国内BtoBにおきましては、品質管理・納期遵守の管理体制の徹底・向上の姿勢を維持し、より多くの取引先様との信頼関係を維持・強化しながら、既存顧客の取扱いアイテムの増加を図るために提案力の強化を図ります。また、新規顧客の開拓にむけた施策として、当社の得意先である酒販店の顧客である飲食店の開拓に向けた導入提案の支援等の取り組みを行います。こうした取り組みを通じて、既存顧客との関係強化と売上最大化、新規顧客の拡大を着実に進めてまいります。
また、近年進めてきた大手量販店等の大口クライアントへのアプローチを継続し、海外展開への足掛かりとしながら、定番商品の更なる国内シェア拡大を目指し、日本酒リキュールとして第一想起されるブランドとしての立ち位置を強固なものとしてまいります。
加えて、国内では飲酒量の総量に減少の傾向がみられる中、少量の質の高いお酒を楽しむ顧客ニーズへの対応も重要であると考えており、高価格帯商品による贈答ニーズなど、高付加価値な酒類の需要を取り込むべく、プレミアムラインの拡大に向けた取り組みを行っております。
海外展開に関しましては、2025年12月末時点で、24の国又は地域へ輸出を実施するに至っております。海外については、引き続き主力顧客の深掘、新規顧客の開拓に注力し、各国の輸出代理店との関係強化を通じて現地販売網の構築を進めてまいります。また、新型コロナウイルスの影響で、一次的にインバウンド需要は停滞しておりましたが、当社は国内主要国際空港の免税店向けの販売強化を実施しており、訪日観光客の取り込みから、現地での購買活動の推進につなげ、市場開拓を進めております。現在の当社主力輸出先は、中国、香港、台湾、アメリカとなっており、当該国への輸出の推進については今後も継続してまいりますが、経済情勢・国際情勢のリスクを鑑み、注力国の範囲を広げ、次世代の柱となる国との取引強化を推進してまいります。
地域別には、アジアでは中国、台湾、香港を中核市場に位置づけしながら、インド、シンガポールを含むASEAN、韓国など、成長国での取引拡大を推進します。北米では、代理店を通じたリキュール販売の強化により、量販店、専門店の両軸で取引の拡大を目指します。欧州においては、ドイツとフランスを中核に据え、高付加価値市場でのブランド浸透を推進します。そして、オセアニアでは、オーストラリアを拠点市場としながら、ニュージーランドへの販路拡張をはかり、南半球市場への展開を強化する方針です。その他の地域としましては、西アジア(中東)地域への進出に向けた開拓活動等を続けてまいります。また、コストコの海外店舗への展開を開始しており、今後は、導入国数を増加させ、販路拡大を図ってまいります。
以上のほか、海外展開に関しましては、越境ECについても可能性があるものと考えており、広告拡大による顧客獲得、EC販売の拡大を、代理店経由の輸出拡大と並行して推進してまいります。
BtoCにおきましては、当社の商品開発力を武器に引き続きユニークな商品を展開しながら、ECサイト、SNS、会員型コミュニティの好循環を軸に進めて参ります。ECサイトを通じた販売については、2022年7月の自社ECサイトリニューアルを機に、商品ラインナップと、広告戦略をより密接に連動させた販売体制を構築し、専用商品の開発と認知度向上や顧客獲得のためのSNS等を活用したマーケティング・プロモーションを実施した結果、順調に顧客基盤を拡大しつつあります。今後は、会員型コミュニティ「梅乃宿KURABU」等を活用し、飲用体験の共有などユニークな酒体験の提供を進め、お客様と繋がることで顧客ロイヤリティの醸成を行なってまいります。
また、2022年7月に新蔵内に開設した直営店は、新蔵をお客様と当社の接点として有効活用するために、現地で商品を販売するだけではない店舗運営を行っております。「魅せる」酒蔵として、観光需要の拡大をはかり、蔵開きなどのイベントの開催、蔵見学・梅酒作り体験など「体験型」酒蔵として、幅広い世代、属性の顧客獲得に向けての施策を継続的に推進してまいります。
② 「ブランド戦略の明確化」
当社は、日本酒製造から生業を開始し、現在の主力はリキュール製造となっております。近年は、国内におけるこれまでの酒販店を中心とした販売、海外における代理店を通じた輸出といったBtoBチャネルに加え、EC・直営店のBtoCチャネルの強化に取り組む中で、各チャネルに対して適切にブランド・商品を選定し販売するために、チャネルごとに価値機軸を明確にし、ブランドラインナップの整理を実施し、商品の棲み分けを行ってまいりました。
今後は、それぞれの販売チャネルに対し、それぞれの顧客に対する価値機軸に基づいた提案を実施するとともに、高付加価値化を含め適切にプロダクトラインナップの強化をはかり、当社への信頼感を高めてまいります。さらに、BtoCチャネルにおける直接的なお客様とのコミュニケーション結果をダイレクトにBtoBチャネル向けの商品・ブランドに反映させることができる点が当社の強みであり、このBtoB、BtoCチャネルのシナジー効果を売上拡大につなげてまいります。
③ 「革新の連続」
当社は、伝統的な酒文化を継承しつつ、日本酒リキュールの製造販売にいち早く取り組むなど、革新の歴史を有しております。今後も、当該革新の精神を受け継ぎ、日本酒、リキュールにおいて引き続き思い切った新商品を開発する他、日本酒、リキュール以外の商品開発や食品等の新領域への展開を進めております。
当該取り組みにおいては、当社の商品開発における独創性やスピード感、BtoCを通じて獲得した「ファン」基盤等を活用し、既存概念にとらわれない酒文化の創出に取り組んでまいりたいと考えております。
④ 「丁寧な酒造りの磨き込み」
当社は、過去20年にわたり、酒造りにおける各工程のデータを記録し、蓄積してまいりました。この資産を基に、製造工程の視える化を推進することで、日本酒製造業における伝統的な杜氏制度を廃止するに至りました。杜氏の勘と経験ではなく、過去のデータに基づいた仕込み経過の予測により、出来上がりの品質のばらつきを低減し、高品質かつ再現性のある日本酒造りが実現いたしました。さらに、2022年7月の蔵移転により、最先端の製造体制を構築することができ、温度管理や、衛生管理の精度が向上し、天候や目的外の微生物の混入などの外的要因に左右されない安定的な生産体制を構築しております。2023年6月には「大阪版食の安心安全認証」を取得し、社外の視点でも評価を得ております。
今後も、現在進行形で蓄積しているデータを活用し、高品質かつ再現性のある製造技術に磨きをかけるとともに、既存設備の自動化・高速化を含めた生産能力の拡大、生産効率の向上、品質の向上に向けた設備更新を行い、経営の効率化と職場の働きやすさ向上に取り組んでまいります。
また、生産体制の向上とともに、教育体制、組織強化をはかりお客様へより安全安心な商品を提供してまいります。
⑤ 「組織力の底上げ」
当社が掲げるミッションである「驚きと感動で世界中をワクワクさせる」の実現のためには、社員一人一人が「ワクワク」していなければ、お客様を「ワクワク」させることはできないと考えており、働き方の改革を進めてまいりました。特に、日本酒製造においては、伝統産業的である絶対的な長を中心とする「杜氏制度」に基づいた生産体制と冬季に醸造する、季節労働的勤務体制が主であったものを、生産体制、勤務体制を見直し、日本酒製造の従業員も一般社員と同様の働き方とする、働き方改革を実現しております。
さらに、単に“楽しく働く”のではなく、社員が同じベクトル、高いモチベーションで、強い組織を構築してこそ当社のミッションが実現するととらえて、組織力の底上げにつながる制度改革を推進しております。年齢給制度の廃止を伴う人事評価制度の改定を行い、組織ビジョンと社員各人の目標・目的を明確化し、結果に対する評価の一元化とともにチャレンジ風土の醸成と社員のキャリアパス、成長の支援を強化いたしました。2023年4月には機能組織の改編による、権限・責任の委譲を通じたガバナンス強化を実施いたしました。これは組織の機能の最適化と同時に組織の強化を図るものであります。働きやすさと業務の効率化を実現するためにIT化を推進し、必要最低限の人員で業務を遂行できる筋肉質な組織づくりに向けた体制整備も進めております。
具体的には、障がい者雇用、国境を越えた採用、男女の区別のない採用、人事考課による昇進、女性の産休後の復職支援、男性の育児休暇取得制度、扶養する小学生以上を対象とした就学支援手当の拡充のほか、昨今の物価上昇などの社会情勢を加味したベースアップの実施などの組織を支える人への支えを強化してまいります。
また、当社は日本酒業界以外の人材採用にも積極的に取り組んでおります。これまでに、菓子業界、厨房機器業界等、異業種からの人材を迎え入れ、新たな視点からのビジネスの磨き込みに取り組んでまいりました。
今後も、持続的成長を可能とする組織文化の醸成に向けた働き方の改革を継続しつつ、売上拡大の一翼を担う営業部門の強化、事業の拡大を支えるマーケティング部門の強化、商品開発機能の進化、社内の最適な統制の持続に向けた管理部門の強化、グローバル展開を支える人材の国際化など、一層の組織強化を推進してまいります。
(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、EBITDA(税引前利益に、特別損益、支払利息、減価償却費を加えて算出される利益)、BtoC売上、海外売上及びROE(自己資本利益率)の4つをKPIとして、設定しております。
各指標の詳細につきましては、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ④ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」をご参照ください。
(1) 経営の基本方針
当社は、「新しい酒文化を創造する」ことをパーパスとし、「驚きと感動で世界中をワクワクさせる」ことをミッションに掲げ、「私たちの挑戦が世界の新しいスタンダードを創り出す」ことをビジョンにさだめ、カテゴリー・名称といった、お酒の概念にとらわれることなく、おいしさを求めながら楽しさも探求することにより、誰もがおいしく、楽しいと感じるお酒を生み出し、飲む人を笑顔にする、人を幸せにする酒づくりに挑戦いたします。
当社の価値観、行動指針は以下のとおりであります。
進化 :失敗を恐れず挑戦し、変わり続けることを楽しむ
団結力 :皆を思いやり、絆を深め、同じ方向を向く
誠実 :規律を守り、ホスピタリティを持ち、小さな約束も守る
情熱 :何事も自分事として能動的に捉え、高い志を持って行動する
本質思考:前例に頼らず、プロ意識を持って考え尽くす
遊び心 :完璧に捉われず、好奇心やユーモアを大切にし、梅乃宿を楽しむ
このような理念に基づき、お客様の価値軸に寄り添いながらも、常に新しい発信と価値提案を続けることにより、顧客満足度の向上を継続させ、当社の社会的価値の向上とともに企業価値の最大化を図り、持続的な発展を目指すものであります。
(2) 経営環境
当社を取り巻く環境は、以下のとおりであります。
① 国内酒類市場
全体として、国内酒類市場は縮小傾向が続いており、これは人口の減少や、少子高齢化や若年層の飲酒離れ等の要因によるものと考えております。また、消費者の嗜好の多様化により酒類もバラエティ化が進み、市場の細分化や商品の改廃を伴う回転が加速しております。
近年では、特に新型コロナウイルス感染症をきっかけとした生活様式や働き方の変化が、酒類の消費に影響を与えております。特に、小売市場においては、コロナ禍にEC市場が消費者の新たな購買チャネルとして急成長を遂げました。当該傾向は、自宅での食事や娯楽を楽しむ「イエナカ消費」のニーズとともに、新たな市場として、今後も拡大がみこまれるものと考えております。また、近年、ユニークな副原料等を用いた酒が注目されるようになり、2022年には「クラフトサケブリュワリー協会」が設立されるなど「クラフトサケ」ジャンルが認知されつつあります。こうした小ロットの商材はECを通じた販売と親和性が高いものと考えており、当社でも「クラフト感」のある新商品開発に力を入れながらBtoCの強化に取り組んでおります。
個別の市場に目を移すと、国内飲食店市場については、円安を背景にした物価上昇を受けて、価格改定による顧客単価の上昇が売上の増加要因となる一方、物価上昇に伴う消費者の節約志向等により、コロナ禍から回復してきた顧客数に頭打ちの傾向が見られる環境の中、訪日外国人客が過去最高となるなどのプラス要因により、2025年は外食産業全体で業態問わず売上高が前年を上回る状況となりました(出所:一般社団法人日本フードサービス協会「外食産業市場動向調査令和7年(2025年)年間結果報告」)。
酒類販売業者を通じた家庭向け販売市場におきましては、コロナ禍に喚起された需要が継続する傾向にあり、引き続き堅調であるものと考えております。また、国内のEC市場につきましては、酒類を含む食品、飲料市場のEC化率は5%未満と未だ低い水準にあるとされておりますが、市場規模は2024年において前年比6.36%増加しており(出所:経済産業省 令和6年度デジタル取引環境整備事業「令和6年度電子商取引に関する市場調査報告書」)、今後の市場規模拡大が期待できる状況にあります。
② 海外酒類市場
海外向けの酒類販売市場は成長を続けており、2025年年間の日本産酒類の輸出金額は1,495億円と過去最高額を更新いたしました。当社は、日本政府の日本産酒類の輸出拡大施策や、和食のユネスコ無形遺産登録等の好材料を追い風に、今後も輸出市場の拡大が期待できるものと考えております。しかしながら、ウクライナ情勢の長期化による世界経済の不安定化、中国国内の経済動向、米国の通商政策の影響などの不確定要素もあり、国際情勢によって不測の影響を受けることも考えられます。
日本産酒類の輸出先を国別にみると、中国、アメリカが最大市場であり、韓国、台湾、シンガポール、香港がそれに次ぐ構図となっております(出所:国税庁「最近の日本産酒類の輸出動向について(2026年2月作成)」)。
③ 生産面
製造面においては、原材料費・包材費・人件費等の生産コストの上昇、物流費の高騰など原価を圧迫する要因が増加の一途をたどっております。原材料においては、生産者の減少が続いており、供給減少に伴う調達量・価格面での競争が激化しております。
また、売上増加に比例した製品の増産にともない、人員の確保も必要となりますが、生産年齢人口の減少によって人員確保も容易ではない状況にあります。ついては、生産設備の更新・増強を行い、効率化を推進するとともに生産性向上に向けて、設備投資を含めた対策を続けてまいります。
(3) 中長期的な経営戦略と対処すべき課題
当社は、中期的な経営目標として、「①より多くの人に梅乃宿を」、「②ブランド戦略の明確化」、「③革新の連続」「④丁寧な酒造りの磨き込み」、「⑤組織力の底上げ」等の各種施策の遂行に取り組んでまいりました。
具体的な戦略と課題は以下のとおりであります。
① 「より多くの人に梅乃宿を」
国内BtoBにおきましては、品質管理・納期遵守の管理体制の徹底・向上の姿勢を維持し、より多くの取引先様との信頼関係を維持・強化しながら、既存顧客の取扱いアイテムの増加を図るために提案力の強化を図ります。また、新規顧客の開拓にむけた施策として、当社の得意先である酒販店の顧客である飲食店の開拓に向けた導入提案の支援等の取り組みを行います。こうした取り組みを通じて、既存顧客との関係強化と売上最大化、新規顧客の拡大を着実に進めてまいります。
また、近年進めてきた大手量販店等の大口クライアントへのアプローチを継続し、海外展開への足掛かりとしながら、定番商品の更なる国内シェア拡大を目指し、日本酒リキュールとして第一想起されるブランドとしての立ち位置を強固なものとしてまいります。
加えて、国内では飲酒量の総量に減少の傾向がみられる中、少量の質の高いお酒を楽しむ顧客ニーズへの対応も重要であると考えており、高価格帯商品による贈答ニーズなど、高付加価値な酒類の需要を取り込むべく、プレミアムラインの拡大に向けた取り組みを行っております。
海外展開に関しましては、2025年12月末時点で、24の国又は地域へ輸出を実施するに至っております。海外については、引き続き主力顧客の深掘、新規顧客の開拓に注力し、各国の輸出代理店との関係強化を通じて現地販売網の構築を進めてまいります。また、新型コロナウイルスの影響で、一次的にインバウンド需要は停滞しておりましたが、当社は国内主要国際空港の免税店向けの販売強化を実施しており、訪日観光客の取り込みから、現地での購買活動の推進につなげ、市場開拓を進めております。現在の当社主力輸出先は、中国、香港、台湾、アメリカとなっており、当該国への輸出の推進については今後も継続してまいりますが、経済情勢・国際情勢のリスクを鑑み、注力国の範囲を広げ、次世代の柱となる国との取引強化を推進してまいります。
地域別には、アジアでは中国、台湾、香港を中核市場に位置づけしながら、インド、シンガポールを含むASEAN、韓国など、成長国での取引拡大を推進します。北米では、代理店を通じたリキュール販売の強化により、量販店、専門店の両軸で取引の拡大を目指します。欧州においては、ドイツとフランスを中核に据え、高付加価値市場でのブランド浸透を推進します。そして、オセアニアでは、オーストラリアを拠点市場としながら、ニュージーランドへの販路拡張をはかり、南半球市場への展開を強化する方針です。その他の地域としましては、西アジア(中東)地域への進出に向けた開拓活動等を続けてまいります。また、コストコの海外店舗への展開を開始しており、今後は、導入国数を増加させ、販路拡大を図ってまいります。
以上のほか、海外展開に関しましては、越境ECについても可能性があるものと考えており、広告拡大による顧客獲得、EC販売の拡大を、代理店経由の輸出拡大と並行して推進してまいります。
BtoCにおきましては、当社の商品開発力を武器に引き続きユニークな商品を展開しながら、ECサイト、SNS、会員型コミュニティの好循環を軸に進めて参ります。ECサイトを通じた販売については、2022年7月の自社ECサイトリニューアルを機に、商品ラインナップと、広告戦略をより密接に連動させた販売体制を構築し、専用商品の開発と認知度向上や顧客獲得のためのSNS等を活用したマーケティング・プロモーションを実施した結果、順調に顧客基盤を拡大しつつあります。今後は、会員型コミュニティ「梅乃宿KURABU」等を活用し、飲用体験の共有などユニークな酒体験の提供を進め、お客様と繋がることで顧客ロイヤリティの醸成を行なってまいります。
また、2022年7月に新蔵内に開設した直営店は、新蔵をお客様と当社の接点として有効活用するために、現地で商品を販売するだけではない店舗運営を行っております。「魅せる」酒蔵として、観光需要の拡大をはかり、蔵開きなどのイベントの開催、蔵見学・梅酒作り体験など「体験型」酒蔵として、幅広い世代、属性の顧客獲得に向けての施策を継続的に推進してまいります。
② 「ブランド戦略の明確化」
当社は、日本酒製造から生業を開始し、現在の主力はリキュール製造となっております。近年は、国内におけるこれまでの酒販店を中心とした販売、海外における代理店を通じた輸出といったBtoBチャネルに加え、EC・直営店のBtoCチャネルの強化に取り組む中で、各チャネルに対して適切にブランド・商品を選定し販売するために、チャネルごとに価値機軸を明確にし、ブランドラインナップの整理を実施し、商品の棲み分けを行ってまいりました。
今後は、それぞれの販売チャネルに対し、それぞれの顧客に対する価値機軸に基づいた提案を実施するとともに、高付加価値化を含め適切にプロダクトラインナップの強化をはかり、当社への信頼感を高めてまいります。さらに、BtoCチャネルにおける直接的なお客様とのコミュニケーション結果をダイレクトにBtoBチャネル向けの商品・ブランドに反映させることができる点が当社の強みであり、このBtoB、BtoCチャネルのシナジー効果を売上拡大につなげてまいります。
③ 「革新の連続」
当社は、伝統的な酒文化を継承しつつ、日本酒リキュールの製造販売にいち早く取り組むなど、革新の歴史を有しております。今後も、当該革新の精神を受け継ぎ、日本酒、リキュールにおいて引き続き思い切った新商品を開発する他、日本酒、リキュール以外の商品開発や食品等の新領域への展開を進めております。
当該取り組みにおいては、当社の商品開発における独創性やスピード感、BtoCを通じて獲得した「ファン」基盤等を活用し、既存概念にとらわれない酒文化の創出に取り組んでまいりたいと考えております。
④ 「丁寧な酒造りの磨き込み」
当社は、過去20年にわたり、酒造りにおける各工程のデータを記録し、蓄積してまいりました。この資産を基に、製造工程の視える化を推進することで、日本酒製造業における伝統的な杜氏制度を廃止するに至りました。杜氏の勘と経験ではなく、過去のデータに基づいた仕込み経過の予測により、出来上がりの品質のばらつきを低減し、高品質かつ再現性のある日本酒造りが実現いたしました。さらに、2022年7月の蔵移転により、最先端の製造体制を構築することができ、温度管理や、衛生管理の精度が向上し、天候や目的外の微生物の混入などの外的要因に左右されない安定的な生産体制を構築しております。2023年6月には「大阪版食の安心安全認証」を取得し、社外の視点でも評価を得ております。
今後も、現在進行形で蓄積しているデータを活用し、高品質かつ再現性のある製造技術に磨きをかけるとともに、既存設備の自動化・高速化を含めた生産能力の拡大、生産効率の向上、品質の向上に向けた設備更新を行い、経営の効率化と職場の働きやすさ向上に取り組んでまいります。
また、生産体制の向上とともに、教育体制、組織強化をはかりお客様へより安全安心な商品を提供してまいります。
⑤ 「組織力の底上げ」
当社が掲げるミッションである「驚きと感動で世界中をワクワクさせる」の実現のためには、社員一人一人が「ワクワク」していなければ、お客様を「ワクワク」させることはできないと考えており、働き方の改革を進めてまいりました。特に、日本酒製造においては、伝統産業的である絶対的な長を中心とする「杜氏制度」に基づいた生産体制と冬季に醸造する、季節労働的勤務体制が主であったものを、生産体制、勤務体制を見直し、日本酒製造の従業員も一般社員と同様の働き方とする、働き方改革を実現しております。
さらに、単に“楽しく働く”のではなく、社員が同じベクトル、高いモチベーションで、強い組織を構築してこそ当社のミッションが実現するととらえて、組織力の底上げにつながる制度改革を推進しております。年齢給制度の廃止を伴う人事評価制度の改定を行い、組織ビジョンと社員各人の目標・目的を明確化し、結果に対する評価の一元化とともにチャレンジ風土の醸成と社員のキャリアパス、成長の支援を強化いたしました。2023年4月には機能組織の改編による、権限・責任の委譲を通じたガバナンス強化を実施いたしました。これは組織の機能の最適化と同時に組織の強化を図るものであります。働きやすさと業務の効率化を実現するためにIT化を推進し、必要最低限の人員で業務を遂行できる筋肉質な組織づくりに向けた体制整備も進めております。
具体的には、障がい者雇用、国境を越えた採用、男女の区別のない採用、人事考課による昇進、女性の産休後の復職支援、男性の育児休暇取得制度、扶養する小学生以上を対象とした就学支援手当の拡充のほか、昨今の物価上昇などの社会情勢を加味したベースアップの実施などの組織を支える人への支えを強化してまいります。
また、当社は日本酒業界以外の人材採用にも積極的に取り組んでおります。これまでに、菓子業界、厨房機器業界等、異業種からの人材を迎え入れ、新たな視点からのビジネスの磨き込みに取り組んでまいりました。
今後も、持続的成長を可能とする組織文化の醸成に向けた働き方の改革を継続しつつ、売上拡大の一翼を担う営業部門の強化、事業の拡大を支えるマーケティング部門の強化、商品開発機能の進化、社内の最適な統制の持続に向けた管理部門の強化、グローバル展開を支える人材の国際化など、一層の組織強化を推進してまいります。
(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、EBITDA(税引前利益に、特別損益、支払利息、減価償却費を加えて算出される利益)、BtoC売上、海外売上及びROE(自己資本利益率)の4つをKPIとして、設定しております。
各指標の詳細につきましては、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ④ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」をご参照ください。