有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2026/08/24 15:30
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【項目】
137項目
当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針について
当社は、「医療をもっと、わかりやすく。」を企業理念として掲げています。医薬品や治療法の進化により、かつて解決できなかった病が治療できる時代になりました。個人に合わせた医療のカスタマイズも実現しつつあります。しかし一方で、「生きる」というより「生かされている」と感じてしまうような、人間味のない医療が広がっているとも感じています。医療を施すのも、受けるのも、選択するのも、いつでも「人」です。私達は、技術や薬の進歩だけでなく、「人」同士の意思疎通もアップデートしていくことが重要だと考えています。そのためには、生活者が自らの生と死を自分事として捉え、医療者が問題に寄り添い一緒に向き合う「生活者と医療者の共創関係」が必要です。そのためにも日本におけるかかりつけ医を推進し、かかりつけ医が本当に必要なシステムの提供を目指します。
これを実現するため、私達は医療者と生活者の接点である医療インターフェイスにおいて、より効率的で豊かなコミュニケーションが取れる世界を目指します。医療者と生活者の重なる領域で中立的な立場に立ち、常に新しい仕組みやサービスの研究と社会実装を行うことをミッションとしています。
レイヤードという社名も、医療者と生活者の「重なり」を意味する「LAYERED」から名付けております。
0202010_001.png[医療領域における事業特性比較]
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(2)経営環境について
当社が属する医療DX業界は、COVID-19以降急速に拡大している成長分野であり、日本国内のみならずグローバルにおいても注目を集めています。市場拡大の背景には、スマートフォンの普及やインターネット接続環境の向上、医療ITインフラ整備の進展といった要因に加え、日本特有の少子高齢化や慢性的な医療従事者不足の対応といった社会的課題が存在します。これらに対処するため、DXによる業務効率化と省力化が不可欠とされております。また、政府においても、厚生労働省による「医療DX令和ビジョン2030」や「医療DX推進室」の設置等を通じて、マイナンバーカードと健康保険証の一体化、全国医療情報プラットフォームの構築、電子カルテ情報の標準化、診療報酬改定DX等の施策が推進されており、当該領域の市場拡大を後押ししております。
世界市場における医療DX(ヘルステック)の規模は2024年時点で3,620億米ドル(約58兆円※1)に達しており、今後年平均成長率(CAGR)12.19%で拡大し、2033年には1.02兆米ドル(約163兆円※1)規模に達するとの予測が示されています(※2)。一方、日本国内の医療DX市場も2023年に1,954億円、2026年には2,702億円に達すると見込まれており(※3)、中期的に力強い成長が続く見通しです。さらに長期的には、2050年に日本の総人口の37.1%が高齢者となると予測されており(※4)、医療DX需要は持続的に拡大することが期待されています。
※1 米ドルは、2026年8月18日現在の為替レート(1米ドル=159.5円)により換算しています。
※2 出典元:医療・健康ビジネスの未来2025-2034 カナダ/プレシデンス・リサーチ社調査
※3 出典元:医療・健康ビジネスの未来2025-2034 野村総合研究所調べ
※4 出典元:令和7年版高齢社会白書(内閣府)第1章 図1-1-2 高齢化の推移と将来推計
また、医療業界は、我が国において多くの就業者を抱える労働集約的な産業であり、人件費が費用の大きな割合を占める構造となっております。このような特性のもと、人的リソースに依存したオペレーションが現場で広く見られております。さらに、このような構造に加え、慢性的な人手不足が課題となっており、医療従事者一人当たりの業務負荷の増大が生じております。
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上記、市場動向の背景は以下であると考えております。
a. 慢性的な人手不足による業務効率化ニーズの増加
日本を含め先進国では医師・看護師及びその他医療従事者の不足や働き方改革が課題となっており、限られた人員で効率よく医療サービスを提供する必要に迫られています。特に、日本においては診療報酬の制度上、多くの患者を効率よく診察する必要があり、そのため、問診や受付、会計といった診察以外の業務をICTで自動化・省力化し、医療者が本来の診療業務に集中できる環境を作ることが急務となっています。
b. 少子高齢化と医療費増大への対応
日本は超高齢社会を迎えており、総医療費は年々増加しています。2023年度の医療費は約46兆円に達し、医療費が財政を圧迫している状況です(※参考: 厚労省「令和5年度 国民医療費の概況」)。高齢化により慢性疾患の有病者数が増え、医療サービス需要が膨張する一方、生産年齢人口の減少で保険財政を支える側は縮小しております。根本的に解消するために、従来の入院や手術を中心とした医療から、プライマリ・ケアによる疾患予防・重症化予防・在宅医療へ医療の力点を変えていく必要があり、プライマリ・ケアの重要性が大きく上がっています。
c. COVID-19を契機とした医療DXの加速
新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、医療分野のデジタル化を一気に加速させる契機となりました。感染拡大期には対面診療の制限や医療機関の過負荷が生じたため、オンライン診療や事前トリアージなど非対面型の医療サービスが急速に普及しました。日本では2020年に特例的にオンライン診療の規制緩和が行われ、その後恒久化に向けた制度整備が進んでいます。また、当社が提供するWEB問診によって、事前トリアージが可能となり、待合室での感染症拡大リスクを低減することに貢献しました。コロナ禍を通じて、デジタルによる医療サービスの有用性が社会に認知され、患者や医療者のデジタルツール受容度が高まったことは、DX推進の強力な追い風となりました。
d. 政府の政策支援と制度変革
日本では厚生労働省が2022年に「医療DX令和ビジョン2030」を策定し、医療情報の標準化・相互連携やクラウド電子カルテ普及、AI診療支援の活用促進などを柱とする国家戦略を打ち出しました。これに沿って、大病院から診療所まで段階的に電子カルテのデータ標準仕様を導入し、地域を超えて患者情報を共有できる全国医療情報プラットフォームの構築が進められています。また、オンライン診療の恒久解禁やデジタルツール活用による診療報酬上の優遇措置、調剤や健診データの電子化推進など、関連制度も次々とアップデートされています。診療報酬改定ではマイナ保険証の利用促進や電子カルテ状況共有サービスの導入・活用が推進されており、制度面でデジタル導入インセンティブが拡大しています。今後数年間で、電子カルテ等の刷新を含む大幅なIT投資が進み、それと歩調を合わせる形で予約や問診、決済などのフロントエンドシステムの投資も拡大する見込みです。
上記の市場動向の背景はいずれも、医療機関がデジタル技術を活用して「業務効率化・省力化」と「患者診察体験の向上」を両立しようとしている流れに集約できます。当社は特にその中でも患者と医療機関をつなぐフロントエンド領域に注力しており、より重要性が増すと認識をしております。
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(3)経営戦略について
当社は主に保険診療を行う医科診療所及び病院をターゲットとした医療DXサービスをマルチプロダクトで提供しています。当社のPurpose(「医療をもっと、わかりやすく。」)を実現するために、できる限り多くの医療機関で、より広い業務領域において当社サービスを活用いただけることが、当社の売上、利益及び企業価値にもつながると考えています。
そのためには、当社サービスでカバーできる業務範囲を広げていくための継続的な新規サービスの開発と投入・マーケティング、及び現場医療機関でより深く活用いただけるための営業及びサポート体制の継続的な拡充が重要であると捉えています。
また、医療機関向けのDXシステムにおいては、電子カルテを中心とした統合型システムを導入するケースもあります。当該システムは全体最適の観点から設計されている一方で、既存システムの刷新に際しては大きな工数やコストを要する場合があり、導入や更新のタイミングが限定される傾向にあります。
さらに、各機能を一体的に構築する性質上、個別機能ごとに最適なサービスを選択することが難しく、診療科目や医療機関ごとに異なる業務フローへの対応が汎用的なものとなる場合があります。
これに対し、当社は予約、問診、患者管理等の機能を独立したプロダクトとして提供し、必要な機能から段階的に導入・拡張が可能なマルチプロダクト型のサービスを展開しております。このため、医療機関の状況や診療科目ごとの特性に応じた柔軟なシステム構築が可能であり、導入時の負担軽減及び継続的な機能最適化につながるものと考えております。
さらに、上記のマルチプロダクト戦略を継続的に推進していくためには、プロダクト開発及び営業・サポート体制を支える人材の確保・育成が重要であると認識しております。そのため、当社は持続的な成長と適切な利益率の確保の両立を重視し、新規サービスの開発及び体制の拡充については、継続的に適切な利益を確保できる範囲にて実施していく方針です。
加えて、当社のマルチプロダクト戦略の進展に伴い、医療機関におけるフロント業務のみならず、その周辺業務領域に対する支援ニーズも高まっているものと認識しております。このような状況を踏まえ、当社は既存プロダクトの提供を通じて蓄積してきた業務知見及び顧客接点を活用し、受付業務や会計業務、レセプト業務等のノンコア業務に関して、リモートで業務支援を行うサービスの提供について検討を進めております。
これらの取り組みは、従来のプロダクト提供に付随する形で、医療機関の業務効率化をより一層推進することを目的としたものであり、既存サービスの延長線上における機能拡張・提供価値の深化として位置付けております。なお、当該領域については、今後の事業環境や顧客ニーズを踏まえながら段階的に検討・展開していく方針であり、現時点において当該サービス単体での具体的な収益寄与を見込んでいるものではありません。
[マルチプロダクト戦略]
0202010_005.png[今後の機能開発予定]
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(4)経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、事業規模と収益性を測る基本指標として売上高及び経常利益を重視しております。また、当社は医療機関から継続的に月額利用料を受領するストック型収益を主軸としたサブスクリプション型ビジネスモデルを展開していることから、事業の成長性及び安定性を適切に把握するため、以下の指標を重要な経営指標(KPI)として注視しております。
①契約医療機関数及び総アカウント数
契約医療機関数は、当社サービスを契約いただく医療機関数を示す指標であり、営業活動の成果及び市場における当社サービスの競争力を測る指標として位置付けております。
また、複数プロダクトの契約の積み上がりにより、総アカウント数の増加は将来のストック収益の基盤拡大につながるものと認識しております。
②チャーンレート(解約率)
チャーンレートは、既存顧客の解約状況を示す指標であり、顧客満足度及びサービスの継続利用状況を測る重要な指標と認識しております。
当社サービスは医療機関の業務効率化及び患者体験の向上に寄与するものであることから、チャーンレートは低水準で推移しており、既存顧客からの継続的な収益確保に寄与しております。
[KPI①:契約医療機関数・総アカウント数]
0202010_008.png契約医療機関数:申込・契約が完了した医療機関数
総アカウント数:医療機関が利用する当社プロダクト数の合計
[KPI②:チャーンレート(解約率※)]
0202010_009.png※解約率:当該期間月次チャーンレートの平均(アカウント数ベース)
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
上記を踏まえ、当社は以下4項目を優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題として認識しており、これに対処してまいります。
①事業の継続的な成長
当社は、持続的な成長を続けるために、既存サービスの展開を拡大し、顧客基盤の更なる拡大を目指します。また、新規事業の開発にも取り組み、中長期的な成長を目指します。
②組織体制の強化
当社は、顧客基盤の拡大、既存サービスの拡充及び利便性の強化、新規事業開発等の様々な取り組みにより継続的な成長を図っていくことが必要と認識しております。そのため、各事業フェーズに沿った組織デザインの整備及びバックグランドを有する優秀な人材の採用・育成により、持続的成長が可能な組織体制をさらに強化していく方針であります。
③システム信頼性の継続的な維持や品質の向上、設備環境の強化
当社は、顧客に安心して当社サービスを利用していただくためには、システム稼働の安定化が重要な課題であると認識しております。セキュリティ・開発・保守管理体制の整備は不可欠であり、今後も引き続き投資を行い、システムの継続的な安定化、品質の向上に取り組む方針であります。
④コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の強化
当社は、持続的な成長により中長期的な企業価値を創出するために、生活者・医療者・従業員・地域社会等の多様なステークホルダーとの協働が不可欠であると考えており、このような多様なステークホルダーからの信頼を得ることは、何よりも重要な事項と認識しております。ステークホルダーの利益や権利を保護し、当社の企業価値を拡大するために、適切な情報開示体制の構築、社外取締役や社外取締役(監査等委員)を含むガバナンス及び内部管理体制の更なる強化に取り組んでまいります。
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