有価証券届出書(新規公開時)
有報資料
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1) 経営方針
当社は、「産業の真価を、さらに拓く。」というパーパスのもと、不動産業界で横断的に活用可能なデジタルインフラの構築を通じ、顧客の意思決定と業務生産性を抜本的に高めるとともに、不動産の売買や賃貸といった各種取引がよりデータドリブン且つ滑らかに実行される世界の実現を目指しております。そのための手段として、総合デベロッパーや大手金融機関等の大企業向けのサービス開発や営業に加えて、中堅・中小企業の開拓・深耕を同時に行っております。このように大企業から中堅・中小企業までをカバーする包括的なソリューションの開発・提供や、他社とのアライアンスを通じたサービス開発、統合後のPMI・ガバナンスを前提としたM&Aなど、様々な戦略的パートナーシップを活用することで、安定的且つ効率的に売上高の積み上げを目指していく方針です。
(2) 経営環境及び経営戦略
①市場環境
我が国の不動産業は、2024年度の名目国内総生産に占める割合が13%であり、製造業に次ぐ規模の産業であります(出所:内閣府「2024年度国民経済計算」に基づき当社が算出)。そうした不動産業界において、自社利用を主たる目的とせず賃貸又は売買等による収益の獲得を主たる目的として市場で流通・運用される不動産を、商業用不動産、若しくは収益不動産といい、その資産規模は352兆円と推計されるなど、我が国の企業活動と社会インフラを支える中核的資産となっております(出所:ニッセイ基礎研究所「わが国の不動産投資市場規模(2025年)」)。
一方で、日本の不動産市場は、国際比較において透明性や基礎データの充実度、取引プロセスの標準化が十分とは言えません。また、不動産業界にはデベロッパーや投資家、管理会社や金融機関など多様かつ幅広いプレイヤー・事業者が存在していますが、統一化されない不動産情報の扱いや、企業間のアナログな情報連携が情報の分断を生み、業界横断的なデータ活用が阻害されているものと認識しております。
② 経営者が認識する事業機会
当社グループは、こうした業界特有の課題を背景に、様々な事業者が業界横断で活用できるデータ基盤という「土台」の整備に一貫して取り組んできました。空室情報、募集賃料情報、所有者情報等の不動産情報に関する、PDF化された資料や営業メモ等の非構造化データを、AIによる解析や人手による確認も含めて収集・正規化し、網羅性・鮮度・整合性の高い不動産データ基盤を整備するとともに、そうした当該データ基盤をもとに各種サービスを開発し、顧客企業に提供を行うことで、データ活用に基づくデータドリブンな不動産関連取引の意思決定の支援や、業務の効率化に貢献しております。
このように、不動産業界におけるデータの分散及び非対称性は、業界横断的なデータ基盤の構築と業務プロセスの標準化により解消し得る課題であり、当社グループの事業機会であると考えております。加えて、近年の生成AIの普及に伴い、顧客企業においては、自社が保有する情報をAIによる検索、分析及び推論に適した形式で構造化する必要性が高まっております。当社グループは創業以来、不動産データの収集及び構造化に取り組んでまいりましたことから、当該需要の高まりは当社グループの事業機会を拡大するものと判断しております。
当社グループが事業を展開する不動産テック及び商業用不動産の売買取引支援に関連する市場の規模については、次の参考値に基づき、数千億円規模であると考えております。
当社グループが提供するデータ基盤及びソフトウェアは、不動産業界において従来は個々の事業者の内部で人手により行われてきた情報の収集、整理、分析等を業界横断的に担うものであり、これに直接対応する既存の市場区分は存在しないものと認識しております。このため、上記の市場規模は、第三者の調査に基づく不動産テック市場の規模及び仲介手数料のフィープールを、当社グループが対象とする市場の規模を把握するための参考値として記載したものであります。なお当社グループの事業は、不動産仲介会社に代わって取引を仲介することを目的とするものではなく、仲介会社を含む不動産に関わる事業者の業務を効率化し高度化するものであることから、当社グループは業務の効率化及び取引の円滑化を通じた当該市場そのものの拡大に寄与することを目指しております。これらの金額は当社グループが獲得し得る売上高の規模を直接に示すものではありませんが、当社グループは、これらの参考値が示す規模の市場において、当社グループのサービスが対象とし得る事業機会が存在するものと考えております。
当社グループでは、こうした数千億円規模となり得る市場機会の獲得を念頭に、総合デベロッパーや大手金融機関等の大企業向けのプロダクト開発や営業に加えて、中堅・中小企業の開拓・深耕を同時に行っております。このように大企業から中堅・中小企業までをカバーする包括的なソリューションの開発・提供を通じて、安定的且つ効率的に売上高の積み上げを目指していく方針です。
③ 競争環境及び当社グループのポジショニング
当社グループが競合し得る事業者としては、a.既存の不動産関連情報サービス事業者、b.汎用的なAIサービスを提供する事業者、c.システムインテグレーター、及び、d.顧客企業による内製が挙げられます。当社グループは、次の3点において他の事業者との差別化が図られているものと判断しております。
1. 業界内で流通する情報を収集・構造化したデータベースを、2020年以降継続的に蓄積していること。当社グループが保有する商業用不動産データは、2026年8月末時点で、オフィスビル88,000棟、物流施設19,000棟、ホテル17,000棟及び住宅260万棟であります。
2. 不動産業界における実務経験を有する人材を多数擁し、顧客の業務プロセスに即したアプリケーション及び分析ロジックを設計できること。
3. 総合デベロッパー、資産運用会社及び金融機関等を含む顧客基盤を有し、当該顧客の業務を通じて得られる指摘を反映することでデータの精度を継続的に高める仕組みを有していること。
④経営戦略
当社グループは、上記の経営環境に関する認識に基づき、次の3点を成長戦略の柱としております。
1. 既存顧客への提供価値の拡大(顧客単価の向上)
当社グループは複数のプロダクトを提供しており、既存顧客に対する追加プロダクトの導入及び利用範囲の拡大を進めるとともに、顧客企業が保有する情報と当社グループのデータを統合したデータ基盤の構築及びシステムへの実装を支援することにより、顧客1社あたりの取引規模の拡大を図ります。
2. 顧客数の拡大
当社グループのサービスは、総合デベロッパー、資産運用会社及び金融機関等の大手事業者を中心に導入が進んでおり、今後更に市場における浸透度の向上を目指していく方針です。加えて、全国に30万以上存在すると言われる中堅・中小の不動産業者を中心に、未開拓の顧客層も多く残されているものと考えております。(出所:公益財団法人不動産流通推進センター「2025 不動産業統計集」)当社グループは、大手事業者のみならず中堅・中小の顧客層にも適したサービスの開発及び提供を通じて、顧客数の拡大を図ります。
3. 提供領域の拡張による対象市場の拡大
ソフトウェアの提供に限定することなく、データを起点としたサービスへとサービスラインアップを拡張することにより、当社グループがアクセスし得る市場の拡大を図ります。その実現にあたっては、自社単独での開発にとどまらず、他社との業務提携及び企業買収を活用する方針であります。当社グループは、M&Aを成長戦略を実現するための手段の一つと位置付けており、これまでの間に株式会社住宅新報の株式取得を含む複数件のM&Aを実施しております。また、自社単独では参入に時間を要する領域については、他社との共同出資による合弁会社の設立も活用しており、2026年6月に株式会社スマート修繕との合弁会社である株式会社estieスマートリフォームを設立しております。
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、事業規模の拡大と収益性の改善を両立させながら持続的に成長することを経営上の目標としており、その達成状況を判断するための客観的な指標として、売上高、調整後EBITDA及びRule of 40の3つを設定しております。各指標の内容及び当該指標を用いる理由は次のとおりであります。
① 売上高
当社グループは、「産業の真価を、さらに拓く。」をパーパスに掲げ、商業用不動産業界の構造的課題をデータとテクノロジーの力で解決し、不動産事業者による意思決定の高度化と不動産取引の円滑化を通じた産業全体の発展を目指して事業に取り組んでおります。当社グループのサービスは、不動産事業者及び金融機関等がデータに基づく意思決定及び業務を行うための基盤として利用されるものであり、当社グループは、不動産市場における当社グループのサービスの浸透が進むことが、そのまま業界横断的なデータ活用の広がり、すなわち不動産業界全体のDXの進展につながるものと考えております。当社グループの売上高は、顧客数と顧客単価、すなわち当社グループのサービスを利用する事業者の数と各事業者における利用の深さの積み上げによって構成されることから、不動産市場における当社グループのサービスの浸透度を示すとともに、上記パーパスの実現に向けた進捗を測るうえで最も適切な指標であると考えております。
② 調整後EBITDA
調整後EBITDAは、営業利益に減価償却費、のれん償却費及び株式報酬費用を加算して算出する、当社グループ独自の利益指標であります。当社グループは、企業買収に伴うのれんの償却及び役職員へのインセンティブとして付与する新株予約権に係る株式報酬費用が、営業利益に対して相応の影響を及ぼす費用構造にあることから、これらの非資金性費用の影響を除いた事業活動そのものの収益力を把握するため、一般的に用いられるEBITDA(営業利益+のれん償却費及び減価償却費)に株式報酬費用を加算した調整後EBITDAを用いております。当社グループは、人件費を中心とする固定費が費用の大宗を占める一方で売上高の大宗が継続的に発生する収益で構成されているため、売上高の積み上げに伴い収益性が改善する構造にあると認識しており、固定費の規律ある管理を通じて調整後EBITDAの黒字化及びその拡大を図っております。
③ Rule of 40
Rule of 40は、売上高成長率(前年同期比)と調整後EBITDAマージン(調整後EBITDA÷売上高)の合計として算出する指標であり、成長性と収益性のバランスを一つの数値で評価するものであります。一般に、ソフトウェア企業等においては、売上高成長率と利益率の合計が40%を上回る水準にあることが、成長と収益性が均衡した健全な状態の目安とされております。当社グループは、先行投資を継続する成長段階にあり、単年度の利益水準のみでは必ずしも経営の実態を適切に評価できないことから、成長のための投資と収益性の改善のバランスを規律付ける指標としてRule of 40を用いております。
当社グループの主要な経営指標の推移は次のとおりであります。
当社グループは、ARR(年間経常収益)、MRR(月間経常収益)及び解約率といった、サブスクリプション型のサービスを提供する企業において一般的に用いられる指標を、経営上の目標として設定しておりません。これは、当社グループの売上高にはソフトウェアの利用料のみならず、エンタープライズ実装における個社別の開発・実装に係る売上高や専門情報サービス等のソフトウェア以外の売上高が含まれているほか、今後も提供領域の拡張により多様な収益形態を組み合わせて成長していく方針であることから、ソフトウェアの利用契約を前提とするこれらの指標のみをもって当社グループの経営成績を評価することは必ずしも適切でないと考えていることによるものであります。なお、既存顧客の解約及び契約金額の減少等の状況については、月次で把握し取締役会に報告しておりますが、その水準は安定的に推移しております。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、大企業から中堅・中小企業までをカバーする包括的なソリューションの開発・提供のみならず、他社とのアライアンスを通じたサービス開発、統合後のPMI・ガバナンスを前提としたM&Aなどを通じて、持続的な成長と利益の拡大を目指しております。当社グループの現状については、ソフトウェア利用に係る契約若しくは継続的な保守契約に基づくリカーリング売上高が第9期中間連結会計期間の全売上高の77%を占める予見可能性の高い収益基盤と、2026年6月末時点において総合デベロッパー、資産運用会社及び金融機関等の大手事業者を含む573社のリカーリング契約顧客数による顧客基盤を構築している一方で、先行投資により営業損失が継続していること、中堅・中小の事業者層の開拓並びにソフトウェア以外の領域への拡張が途上にあること、成長を支える人材及びデータ基盤への継続的な投資が必要であることを認識しております。こうした認識のもと、成長戦略を実現するにあたり、次の事項を優先的に対処すべき課題として認識しております。
① 収益性の改善及び財務基盤の強化
当連結会計年度における営業損失は530,130千円、調整後EBITDAは△511,210千円であり、収益性の改善が財務上の最優先課題であると認識しております。当社グループの費用は、人件費を中心とする固定費的な性格を有するものが大宗を占める一方、売上高の大宗は継続的に発生する収益で構成されております。このため、売上高の積上げに伴い売上高に対する固定費の比率が低下する構造にあると認識しており、固定費の規律ある管理と、売上高の継続的な成長の両立により、営業損益及び調整後EBITDAの黒字化及びその拡大を図ってまいります。
② 提供価値の拡大及びサービスラインアップの拡充
経営戦略の根幹である提供価値の拡大と顧客数の拡大を両立させるためには、案件探索から実行、実行後の管理・モニタリングに至る一連の不動産関連取引に係る業務を、包括的に支援できるソリューション群を有することが必要であると認識しております。このため、既存サービスの機能強化及び新規サービスの開発に加え、顧客企業が保有する情報と当社グループのデータを統合したデータ基盤の構築及びシステムへの実装を支援する体制を拡充してまいります。
その実現にあたっては、自社単独での取組みにとどまらず、他社との業務提携及び企業買収を活用してまいります。当社グループは、これらの取組みを継続的に実行していくため、対象事業の評価及び提携・買収後の事業の統合及び管理の体制を整備していくことが重要であると考えております。
③ 優秀な人材の規律ある採用・育成・登用及びAIの活用を通じた生産性の向上
当社グループの成長の制約要因は優秀な人材の確保にあると認識しております。当社グループのパーパス及び事業内容に共感する優秀な人材の規律ある採用を継続するとともに、既存事業の成長及び新規事業の立上げを担う人材として育成・登用する仕組みを構築してまいります。あわせて、ソフトウェア開発における生成AIの活用等により、人員の増加を抑制しつつ生産性を高めることにも取り組んでまいります。
④ 不動産データ基盤の質的及び量的な拡大
当社グループの競争力の源泉は、業界慣行に根差して非オンライン環境で流通する情報を含めた様々な不動産情報の収集及びそれらを構造化したデータベースにあると考えており、その網羅性、鮮度及び正確性を維持・向上させることが最優先の課題であると認識しております。このため、データの収集経路の拡充、データ処理基盤への投資、及び更なるデータ精度の向上に向けた運用体制の強化に取り組んでまいります。
(1) 経営方針
当社は、「産業の真価を、さらに拓く。」というパーパスのもと、不動産業界で横断的に活用可能なデジタルインフラの構築を通じ、顧客の意思決定と業務生産性を抜本的に高めるとともに、不動産の売買や賃貸といった各種取引がよりデータドリブン且つ滑らかに実行される世界の実現を目指しております。そのための手段として、総合デベロッパーや大手金融機関等の大企業向けのサービス開発や営業に加えて、中堅・中小企業の開拓・深耕を同時に行っております。このように大企業から中堅・中小企業までをカバーする包括的なソリューションの開発・提供や、他社とのアライアンスを通じたサービス開発、統合後のPMI・ガバナンスを前提としたM&Aなど、様々な戦略的パートナーシップを活用することで、安定的且つ効率的に売上高の積み上げを目指していく方針です。
(2) 経営環境及び経営戦略
①市場環境
我が国の不動産業は、2024年度の名目国内総生産に占める割合が13%であり、製造業に次ぐ規模の産業であります(出所:内閣府「2024年度国民経済計算」に基づき当社が算出)。そうした不動産業界において、自社利用を主たる目的とせず賃貸又は売買等による収益の獲得を主たる目的として市場で流通・運用される不動産を、商業用不動産、若しくは収益不動産といい、その資産規模は352兆円と推計されるなど、我が国の企業活動と社会インフラを支える中核的資産となっております(出所:ニッセイ基礎研究所「わが国の不動産投資市場規模(2025年)」)。
一方で、日本の不動産市場は、国際比較において透明性や基礎データの充実度、取引プロセスの標準化が十分とは言えません。また、不動産業界にはデベロッパーや投資家、管理会社や金融機関など多様かつ幅広いプレイヤー・事業者が存在していますが、統一化されない不動産情報の扱いや、企業間のアナログな情報連携が情報の分断を生み、業界横断的なデータ活用が阻害されているものと認識しております。
② 経営者が認識する事業機会
当社グループは、こうした業界特有の課題を背景に、様々な事業者が業界横断で活用できるデータ基盤という「土台」の整備に一貫して取り組んできました。空室情報、募集賃料情報、所有者情報等の不動産情報に関する、PDF化された資料や営業メモ等の非構造化データを、AIによる解析や人手による確認も含めて収集・正規化し、網羅性・鮮度・整合性の高い不動産データ基盤を整備するとともに、そうした当該データ基盤をもとに各種サービスを開発し、顧客企業に提供を行うことで、データ活用に基づくデータドリブンな不動産関連取引の意思決定の支援や、業務の効率化に貢献しております。
このように、不動産業界におけるデータの分散及び非対称性は、業界横断的なデータ基盤の構築と業務プロセスの標準化により解消し得る課題であり、当社グループの事業機会であると考えております。加えて、近年の生成AIの普及に伴い、顧客企業においては、自社が保有する情報をAIによる検索、分析及び推論に適した形式で構造化する必要性が高まっております。当社グループは創業以来、不動産データの収集及び構造化に取り組んでまいりましたことから、当該需要の高まりは当社グループの事業機会を拡大するものと判断しております。
当社グループが事業を展開する不動産テック及び商業用不動産の売買取引支援に関連する市場の規模については、次の参考値に基づき、数千億円規模であると考えております。
| 領域 | 想定する市場規模 | 根拠となる考え方 |
| 事業者向け不動産 テックサービス | 約2,264億円 (2022年度) | 株式会社矢野経済研究所が推計する、不動産情報提供サービス、不動産仲介・管理業務支援/価格査定支援、VR(仮想現実)・AR(拡張現実)技術を活用した支援サービス、IoT(クラウド型監視カメラ/画像解析)を含む事業者向けサービスのB to B領域における不動産テック市場の市場規模 出所:「2024年版 不動産テック市場の実態と展望」(株式会社矢野経済研究所) |
| 商業用不動産の 売買取引支援 | 約5,100億円 (2024年度) | 取引価格15億円以上の不動産の年間売買取引総額8.5兆円(2024年度、出所:ニッセイ基礎研究所)に、宅地建物取引業法に基づく売買の媒介報酬の上限(売主及び買主の双方から受領する場合の合計、約6%)を乗じて当社が算出した仲介手数料の総額(フィープール) |
当社グループが提供するデータ基盤及びソフトウェアは、不動産業界において従来は個々の事業者の内部で人手により行われてきた情報の収集、整理、分析等を業界横断的に担うものであり、これに直接対応する既存の市場区分は存在しないものと認識しております。このため、上記の市場規模は、第三者の調査に基づく不動産テック市場の規模及び仲介手数料のフィープールを、当社グループが対象とする市場の規模を把握するための参考値として記載したものであります。なお当社グループの事業は、不動産仲介会社に代わって取引を仲介することを目的とするものではなく、仲介会社を含む不動産に関わる事業者の業務を効率化し高度化するものであることから、当社グループは業務の効率化及び取引の円滑化を通じた当該市場そのものの拡大に寄与することを目指しております。これらの金額は当社グループが獲得し得る売上高の規模を直接に示すものではありませんが、当社グループは、これらの参考値が示す規模の市場において、当社グループのサービスが対象とし得る事業機会が存在するものと考えております。
当社グループでは、こうした数千億円規模となり得る市場機会の獲得を念頭に、総合デベロッパーや大手金融機関等の大企業向けのプロダクト開発や営業に加えて、中堅・中小企業の開拓・深耕を同時に行っております。このように大企業から中堅・中小企業までをカバーする包括的なソリューションの開発・提供を通じて、安定的且つ効率的に売上高の積み上げを目指していく方針です。
③ 競争環境及び当社グループのポジショニング
当社グループが競合し得る事業者としては、a.既存の不動産関連情報サービス事業者、b.汎用的なAIサービスを提供する事業者、c.システムインテグレーター、及び、d.顧客企業による内製が挙げられます。当社グループは、次の3点において他の事業者との差別化が図られているものと判断しております。
1. 業界内で流通する情報を収集・構造化したデータベースを、2020年以降継続的に蓄積していること。当社グループが保有する商業用不動産データは、2026年8月末時点で、オフィスビル88,000棟、物流施設19,000棟、ホテル17,000棟及び住宅260万棟であります。
2. 不動産業界における実務経験を有する人材を多数擁し、顧客の業務プロセスに即したアプリケーション及び分析ロジックを設計できること。
3. 総合デベロッパー、資産運用会社及び金融機関等を含む顧客基盤を有し、当該顧客の業務を通じて得られる指摘を反映することでデータの精度を継続的に高める仕組みを有していること。
④経営戦略
当社グループは、上記の経営環境に関する認識に基づき、次の3点を成長戦略の柱としております。
1. 既存顧客への提供価値の拡大(顧客単価の向上)
当社グループは複数のプロダクトを提供しており、既存顧客に対する追加プロダクトの導入及び利用範囲の拡大を進めるとともに、顧客企業が保有する情報と当社グループのデータを統合したデータ基盤の構築及びシステムへの実装を支援することにより、顧客1社あたりの取引規模の拡大を図ります。
2. 顧客数の拡大
当社グループのサービスは、総合デベロッパー、資産運用会社及び金融機関等の大手事業者を中心に導入が進んでおり、今後更に市場における浸透度の向上を目指していく方針です。加えて、全国に30万以上存在すると言われる中堅・中小の不動産業者を中心に、未開拓の顧客層も多く残されているものと考えております。(出所:公益財団法人不動産流通推進センター「2025 不動産業統計集」)当社グループは、大手事業者のみならず中堅・中小の顧客層にも適したサービスの開発及び提供を通じて、顧客数の拡大を図ります。
3. 提供領域の拡張による対象市場の拡大
ソフトウェアの提供に限定することなく、データを起点としたサービスへとサービスラインアップを拡張することにより、当社グループがアクセスし得る市場の拡大を図ります。その実現にあたっては、自社単独での開発にとどまらず、他社との業務提携及び企業買収を活用する方針であります。当社グループは、M&Aを成長戦略を実現するための手段の一つと位置付けており、これまでの間に株式会社住宅新報の株式取得を含む複数件のM&Aを実施しております。また、自社単独では参入に時間を要する領域については、他社との共同出資による合弁会社の設立も活用しており、2026年6月に株式会社スマート修繕との合弁会社である株式会社estieスマートリフォームを設立しております。
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、事業規模の拡大と収益性の改善を両立させながら持続的に成長することを経営上の目標としており、その達成状況を判断するための客観的な指標として、売上高、調整後EBITDA及びRule of 40の3つを設定しております。各指標の内容及び当該指標を用いる理由は次のとおりであります。
① 売上高
当社グループは、「産業の真価を、さらに拓く。」をパーパスに掲げ、商業用不動産業界の構造的課題をデータとテクノロジーの力で解決し、不動産事業者による意思決定の高度化と不動産取引の円滑化を通じた産業全体の発展を目指して事業に取り組んでおります。当社グループのサービスは、不動産事業者及び金融機関等がデータに基づく意思決定及び業務を行うための基盤として利用されるものであり、当社グループは、不動産市場における当社グループのサービスの浸透が進むことが、そのまま業界横断的なデータ活用の広がり、すなわち不動産業界全体のDXの進展につながるものと考えております。当社グループの売上高は、顧客数と顧客単価、すなわち当社グループのサービスを利用する事業者の数と各事業者における利用の深さの積み上げによって構成されることから、不動産市場における当社グループのサービスの浸透度を示すとともに、上記パーパスの実現に向けた進捗を測るうえで最も適切な指標であると考えております。
② 調整後EBITDA
調整後EBITDAは、営業利益に減価償却費、のれん償却費及び株式報酬費用を加算して算出する、当社グループ独自の利益指標であります。当社グループは、企業買収に伴うのれんの償却及び役職員へのインセンティブとして付与する新株予約権に係る株式報酬費用が、営業利益に対して相応の影響を及ぼす費用構造にあることから、これらの非資金性費用の影響を除いた事業活動そのものの収益力を把握するため、一般的に用いられるEBITDA(営業利益+のれん償却費及び減価償却費)に株式報酬費用を加算した調整後EBITDAを用いております。当社グループは、人件費を中心とする固定費が費用の大宗を占める一方で売上高の大宗が継続的に発生する収益で構成されているため、売上高の積み上げに伴い収益性が改善する構造にあると認識しており、固定費の規律ある管理を通じて調整後EBITDAの黒字化及びその拡大を図っております。
③ Rule of 40
Rule of 40は、売上高成長率(前年同期比)と調整後EBITDAマージン(調整後EBITDA÷売上高)の合計として算出する指標であり、成長性と収益性のバランスを一つの数値で評価するものであります。一般に、ソフトウェア企業等においては、売上高成長率と利益率の合計が40%を上回る水準にあることが、成長と収益性が均衡した健全な状態の目安とされております。当社グループは、先行投資を継続する成長段階にあり、単年度の利益水準のみでは必ずしも経営の実態を適切に評価できないことから、成長のための投資と収益性の改善のバランスを規律付ける指標としてRule of 40を用いております。
当社グループの主要な経営指標の推移は次のとおりであります。
| 第7期 | 第8期 | 第9期中間 連結会計期間 | ||
| (2024年12月期) | (2025年12月期) | (2026年1月~6月) | ||
| 売上高 | (千円) | 1,094,036 | 2,082,341 | 1,750,503 |
| 調整後EBITDA | (千円) | △630,546 | △511,210 | 12,203 |
| Rule of 40 | (%) | 26.2 | 65.8 | 97.5 |
| (参考)Rule of 40の内訳 | ||||
| 売上高成長率 | (%) | 83.8 | 90.3 | 96.8 |
| 調整後EBITDAマージン | (%) | △57.6 | △24.5 | 0.7 |
当社グループは、ARR(年間経常収益)、MRR(月間経常収益)及び解約率といった、サブスクリプション型のサービスを提供する企業において一般的に用いられる指標を、経営上の目標として設定しておりません。これは、当社グループの売上高にはソフトウェアの利用料のみならず、エンタープライズ実装における個社別の開発・実装に係る売上高や専門情報サービス等のソフトウェア以外の売上高が含まれているほか、今後も提供領域の拡張により多様な収益形態を組み合わせて成長していく方針であることから、ソフトウェアの利用契約を前提とするこれらの指標のみをもって当社グループの経営成績を評価することは必ずしも適切でないと考えていることによるものであります。なお、既存顧客の解約及び契約金額の減少等の状況については、月次で把握し取締役会に報告しておりますが、その水準は安定的に推移しております。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、大企業から中堅・中小企業までをカバーする包括的なソリューションの開発・提供のみならず、他社とのアライアンスを通じたサービス開発、統合後のPMI・ガバナンスを前提としたM&Aなどを通じて、持続的な成長と利益の拡大を目指しております。当社グループの現状については、ソフトウェア利用に係る契約若しくは継続的な保守契約に基づくリカーリング売上高が第9期中間連結会計期間の全売上高の77%を占める予見可能性の高い収益基盤と、2026年6月末時点において総合デベロッパー、資産運用会社及び金融機関等の大手事業者を含む573社のリカーリング契約顧客数による顧客基盤を構築している一方で、先行投資により営業損失が継続していること、中堅・中小の事業者層の開拓並びにソフトウェア以外の領域への拡張が途上にあること、成長を支える人材及びデータ基盤への継続的な投資が必要であることを認識しております。こうした認識のもと、成長戦略を実現するにあたり、次の事項を優先的に対処すべき課題として認識しております。
① 収益性の改善及び財務基盤の強化
当連結会計年度における営業損失は530,130千円、調整後EBITDAは△511,210千円であり、収益性の改善が財務上の最優先課題であると認識しております。当社グループの費用は、人件費を中心とする固定費的な性格を有するものが大宗を占める一方、売上高の大宗は継続的に発生する収益で構成されております。このため、売上高の積上げに伴い売上高に対する固定費の比率が低下する構造にあると認識しており、固定費の規律ある管理と、売上高の継続的な成長の両立により、営業損益及び調整後EBITDAの黒字化及びその拡大を図ってまいります。
② 提供価値の拡大及びサービスラインアップの拡充
経営戦略の根幹である提供価値の拡大と顧客数の拡大を両立させるためには、案件探索から実行、実行後の管理・モニタリングに至る一連の不動産関連取引に係る業務を、包括的に支援できるソリューション群を有することが必要であると認識しております。このため、既存サービスの機能強化及び新規サービスの開発に加え、顧客企業が保有する情報と当社グループのデータを統合したデータ基盤の構築及びシステムへの実装を支援する体制を拡充してまいります。
その実現にあたっては、自社単独での取組みにとどまらず、他社との業務提携及び企業買収を活用してまいります。当社グループは、これらの取組みを継続的に実行していくため、対象事業の評価及び提携・買収後の事業の統合及び管理の体制を整備していくことが重要であると考えております。
③ 優秀な人材の規律ある採用・育成・登用及びAIの活用を通じた生産性の向上
当社グループの成長の制約要因は優秀な人材の確保にあると認識しております。当社グループのパーパス及び事業内容に共感する優秀な人材の規律ある採用を継続するとともに、既存事業の成長及び新規事業の立上げを担う人材として育成・登用する仕組みを構築してまいります。あわせて、ソフトウェア開発における生成AIの活用等により、人員の増加を抑制しつつ生産性を高めることにも取り組んでまいります。
④ 不動産データ基盤の質的及び量的な拡大
当社グループの競争力の源泉は、業界慣行に根差して非オンライン環境で流通する情報を含めた様々な不動産情報の収集及びそれらを構造化したデータベースにあると考えており、その網羅性、鮮度及び正確性を維持・向上させることが最優先の課題であると認識しております。このため、データの収集経路の拡充、データ処理基盤への投資、及び更なるデータ精度の向上に向けた運用体制の強化に取り組んでまいります。