有価証券届出書(新規公開時)
有報資料
当社グループは、「不動産業界における属人知の超克を礎として、産業社会に革命をもたらす。」というミッションのもと、不動産領域を起点に、土地・建物・事業に関する知見、判断及び業務プロセスを、データとソフトウエアを活用して再現可能な仕組みへと変えていく事業を展開しております。
当社グループは、不動産領域で培ってきた専門的な知見、判断や業務の流れを、個人に閉じた経験にとどめず、会社に残り、次の実行に活かせる仕組みとして蓄積・活用しております。また、「つくる・かえる・かわる」というパーパスのもと、不動産領域で事業をつくり、その現場で生まれる判断や知見を仕組みにかえ、日々の事業運営に活かしております。
当社は持株会社として、グループ全体の経営戦略策定、資源配分やガバナンス体制の構築を通じて、各事業子会社の成長を支援しております。具体的には、Land Creationにおいては、つくる地所が不動産開発・不動産売買等を、つくる資産が富裕層の不動産投資家向けの不動産情報の提供及び資産運用コンサルティングを展開しております。また、Agentic Platformにおいては、つくるAIがSaaSプロダクトの開発・提供、当社内のAIソリューションユニットでAIを活用したコンサルティング等を展開しております。
(1) 事業の概要
当社グループは、「不動産業界における属人知の超克を礎として、産業社会に革命をもたらす」というミッションの実現に向け、「産業変革事業」の単一セグメントのもと、不動産市場に流通していない土地の中から新たな開発用地を創出する「Land Creation」と、企業内に蓄積される会話、判断及び知見を業務の実行につなげることで効率化・収益化を図る「Agentic Platform」の2つのサービスを展開しております。現時点において、当社グループの収益の殆どはLand Creationによるものでありますが、Land Creation自体がAgentic Platformによってもたらされた事業基盤の上で成り立っているため、当社グループの事業はLand Creation単体では存在し得ず、Agentic Platformがすべての事業の根幹を成す構造となっております。
Agentic Platformは、業務を観測・構造化・自動化することにより、業務効率並びに生産性及び収益性の向上を図る仕組みです(図1)。Land Creationで展開する不動産再開発についても、2020年10月につくる地所をグループ化した後、Agentic Platformを活用して業務の標準化及び効率化を進めることで、属人的な業務への依存を低減し、再現性のある事業運営体制を構築してまいりました。当社グループは、今後もAgentic Platformを基盤として、様々な産業における業務の非効率を改善するとともに、M&Aを通じて自ら事業運営に関与することで、事業の成長及び収益性の向上を図ってまいります。

(図1)Land CreationとAgentic Platform
Land Creationは、複数の土地を取りまとめることで価値の向上が見込まれる土地を見つけ出し、地権者その他の関係者との協議及び合意形成を通じて、開発可能な用地を新たに創出するサービスです。複数の土地を一体化することにより建築可能な床面積等を拡大し、個々の土地のままでは実現し得なかった開発価値を創出することで、地権者及び不動産デベロッパー等の各関係者に新たな価値を提供しております。当社グループは、主として東京を中心とした一都三県において、複数の土地を一体化することにより開発価値の向上が見込まれる比較的小規模な土地を対象としております。住宅、ホテル、オフィス等の開発用地としての活用を想定し、地権者その他の関係者との合意形成後に土地を取得し、権利調整、既存建物の解体、建築計画の具体化等を行った上で、不動産デベロッパーに販売しております。土地の取得から販売までの保有期間は、案件ごとに異なるものの、概ね6か月程度となっております。また、東京都内を中心に事業基盤を強化するとともに、大阪及び福岡にも営業拠点を設置し、各地域における需要及び案件の収益性等を検証しながら対象地域を拡大しております。
こうしたLand Creationを効率的に行うため、独自開発の土地解析システム(グループ内専用システム)を活用し、不動産市場に流通していない土地の中から、複数の土地を一体化することで開発価値の向上が見込まれる候補地を特定しております。複数の土地を取りまとめて開発用地を創出する不動産再開発事業は従来から存在していたものの、再開発候補地の発見、建築可能規模の検証、多数の地権者との合意形成及び案件進捗の管理等が担当者個人の経験や勘に依存しやすく、継続的かつ組織的に事業規模を拡大することが難しい領域であると、当社グループは認識しております。このプロセスにおける大きな障壁の1つが、再開発候補地の発見及び建築可能規模の検証を、膨大な土地情報に対して継続的に行うことが困難な点にあります。土地に建築可能な建物の規模及び形状は、公図(注1)、地番(注2)及び筆界(注3)等により特定される土地の位置及び形状、土地の面積、道路幅員(注4)、接道条件(注5)、都市計画(注6)、用途地域(注7)、容積率(注8)、建蔽率(注9)その他の条件によって決まり、道路幅員等のわずかな差異が建築可能な延べ床面積に大きく影響する場合があります。これらの不動産・建築情報は、国、地方公共団体その他の管理主体に分散しており、紙、PDF、画像その他の異なる形式で管理されている場合があります。また、個々のデータは単体では利用可能であっても、作成基準、更新時期及び位置情報等が異なることにより、同じ地区のデータであっても住所、地番、筆界、道路及び緯度経度等が相互に一致しない場合があります。当社グループは、これらの不動産・建築情報を収集及びデジタル化し、緯度経度その他の位置情報と照合しながら補正・統合することで、土地ごとの法規制及び開発条件を一体的に解析するための独自の地図データ基盤を構築しました。その結果、不動産事業者であってもアクセスすることのできないオフマーケットに存在する潜在的な開発用地情報にアクセスすることが可能になりました。図2では、東京都における不動産市場のうち、オンマーケット(公開情報)とオフマーケット(非公開情報)の割合を示しております。東京都では、1年間で市場に出回る土地情報が約2.4万件にとどまる一方、公開情報だけでは捉えにくい膨大な土地情報が存在します。当社は、そのようなオフマーケットの土地情報を解析対象としております。

(図2)東京都の不動産規模と公開情報の割合
(注) 1.東日本不動産流通機構「不動産市場動向(統計)表6 土地(全体)の基本指標[東京都]」より、2025年の土地の新規登録件数
2.東京都「東京の土地2024(土地関係資料集)」第3章「土地所有状況」表3-1-4「民有地の所有者数及び面積」より、東京都内の民有地所有者数。時点は同資料記載年次に基づく
土地の位置、形状及び法規制に関する情報を統合した後には、当該土地に建築可能な建物の規模及び形状を算定するボリュームチェック(注10)が必要となります。建築可能規模の算定に当たっては、建築基準法(注11)をはじめ、日影規制(注12)、天空率(注13)、斜線制限(注14)、接道条件その他の複数の法令上及び幾何学上の条件を同時に考慮する必要があります。特に、天空率を考慮した建築可能規模の算定においては、あらかじめ作成された建物が規制に適合しているかを確認するだけではなく、複数の制約条件を満たす建物の規模及び形状を逆算する必要があります。そのため、法令の内容並びに地域又は審査機関ごとの実務上の運用を計算可能なルールに置き換え、複数の条件を組み合わせて処理する数理的なアルゴリズム(注15)が必要となります。これらの計算は、確率的に回答を生成する大規模言語モデル(LLM)(注16)等の汎用モデルとは性質が異なり、あらかじめ定められたルールに基づく決定論的アルゴリズム及び数理計算を中核としております。当社グループは、土地及び建物の形状並びに関連法令等を踏まえ、建築可能な建物の規模及び形状を半自動的に試算する独自のアルゴリズムを開発し、不動産・建築に関する専門人材による検証及び実際の案件で生じた個別事例を継続的に反映しております。
これらの地図データ基盤及びボリュームチェック技術を組み合わせることで、従来は建築の専門家への依頼により数週間から数か月を要していた、複数の土地を一体化した場合の建築可能規模、想定用途及び事業性の検証を、最短約1分で可能にし、再開発候補地の解析の半自動化を実現しております。
Land Creationのビジネスフローは図3のとおりです。当社グループは、再開発候補地を特定した後、地権者との継続的な対話を通じて、複数の土地を一体的に利活用することについて協議し、合意形成を進めます。並行して、建築可能規模及び事業性を検証するとともに、当社グループが有する不動産デベロッパー等の顧客基盤や過去の取引実績等をもとに、対象用地の立地、規模及び想定用途等に応じた開発投資家を選定し、開発意向及び価格水準等を確認します。こうした地権者及び開発投資家双方の意向並びに対象用地の開発可能性を踏まえ、再開発事業計画を検討し、地権者への提案条件を設定しております。対象となる複数の土地について必要な地権者との合意形成が整った後、原則として一括して土地を取得し、賃借人等を含む関係者との権利調整、既存建物の解体、建築計画及び事業計画の具体化等を行います。その後、不動産デベロッパー等の開発投資家が開発に着手できる状態まで整えた開発用地として販売しております。

(図3)Land Creationのビジネスフロー
また、当社グループは、再開発候補地の特定に加え、地権者との合意形成及び案件管理についても、Agentic Platformを含むグループ内専用システムを活用し、可視化、分析及び標準化を進めております。具体的には、主に以下の取組みを行っております。
さらに、当社グループは、営業活動から得られたデータを、営業担当者のマネジメント、研修及び人材育成並びに採用活動にも活用しております。営業活動の進め方や案件管理の方法を組織として蓄積・標準化することで、新たに採用した営業担当者についても早期に営業活動を開始し、案件創出に取り組むことができる体制を整備しております。
このように、当社グループは、再開発候補地を特定する土地解析技術と、地権者その他の関係者との合意形成を担う営業組織を組み合わせるとともに、営業活動及び案件管理をデータに基づき計測・分析・標準化しております。これにより、従来は担当者個人の経験や技能への依存度が高く、多数の案件を同時並行で進めることが難しかった不動産再開発について、再現性をもって案件を創出・推進できる体制を構築し、営業人員の拡大を稼働パイプライン及び事業規模の拡大につなげております。
I)グループ内専用システム
当社グループでは、再開発候補地の特定から、建築可能規模及び事業性の検証、地権者への営業活動、案件管理、不動産デベロッパー等への販売可能性の検証まで、Land Creationにおける一連の業務を一体的に支援するグループ内専用システムを開発・運用しております。本システムでは、国土交通省、法務局、各市区町村が提供するデータや各種法令・条例等を、当社グループ独自のアルゴリズムにより解析し、不動産市場に流通していない土地の中から、複数の土地を一体化することにより開発価値の向上が見込まれる再開発候補地を効率的に特定しております。
また、ボリュームチェック機能により、公図、地番、道路幅員、都市計画、容積率及び建蔽率等の不動産・建築データ並びに建築基準法、日影規制及び天空率等の法令・規制を解析し、対象用地における建築可能な建物の規模及び形状等をシミュレーションしております。これにより、複数の土地の組み合わせごとの開発余地及び事業性を短時間で検証し、地権者への提案条件及び再開発事業計画の検討に活用しております。
営業活動及び案件管理においては、地図上で営業対象地及び案件の進捗状況を一元的に管理するとともに、地権者への訪問実績、接触履歴、対応状況及び再訪時期等を記録し、訪問候補地及び訪問順序の最適化や継続的な営業活動に活用しております。また、複数の地権者が関係する案件について、各地権者への対応状況及び案件全体の進捗を一元的に把握することで、多数の再開発案件を同時並行で進めるための営業活動及び案件管理を支援しております。
さらに、当社グループが不動産デベロッパー等との継続的な取引及び営業活動を通じて蓄積した、用途別の需要、投資基準及び価格水準等に関する情報を集約しております。これらの情報を活用し、対象用地の立地、規模及び想定用途等に応じた開発投資家を選定するとともに、取得に先立って販売可能性及び価格水準を検証しております。
このように、本システムを通じて、土地の探索・分析、営業活動、案件管理及び販売可能性の検証を一つの基盤上で連携させることで、Land Creationにおける一連の業務の効率化、可視化及び標準化を図っております。

(図4)ボリュームチェック画面
Agentic Platformは、当社グループがLand Creationを含む自社業務の効率化及び高度化を目的として開発・運用してきた、企業の業務内容(主にPC作業内容)を可視化し、実行及び自動化につなげるための業務基盤です。当社グループは、営業活動、案件管理、会議、商談、社内コミュニケーション、タスク管理及び各種業務システムの利用を通じて発生するあらゆる情報を蓄積・整理し、各業務がどのような工程で行われ、誰が担当し、どの部署又は担当者を経由し、どの段階で誰の確認又は承認を必要とするかを可視化しております。これにより、各業務に要する時間、担当者の作業内容、業務上のボトルネック、承認手続及び次に実行すべきタスク等を把握し、業務フローの改善、業務の標準化及び従業員の人事考課フィードバックに活用しております。また、チャット及び会議の内容から実行すべき業務を抽出してタスクを生成し、必要に応じて複数の作業工程に分解したうえで、従業員が対応すべき業務、他の担当者へ依頼すべき業務及びAIエージェントによる自動化が可能な業務を判別し、それぞれの担当先へ振り分ける仕組みを構築しております。自動化が可能な業務については、エージェントが必要な情報を取得し、資料の作成、各種システムへの入力、関係者への連絡及び進捗管理等を実行する一方、判断、承認、交渉及び顧客対応等を必要とする業務については従業員が担います。このように、人による確認及び判断を介在させながら、自動化可能な業務の範囲を継続的に拡大することで、従業員がより付加価値の高い業務に注力できる環境の構築を進めております。
Agentic Platformは、特定の大規模言語モデル等に依存するものではなく、業務内容、求められる性能、情報管理上の要件及び利用コスト等に応じて、外部事業者が提供する複数の汎用モデルを選択し、又は組み合わせて利用できる構成としております。これらの汎用モデルは、Agentic Platform上でエージェントが情報処理等を行うための構成要素であり、当社グループは、その上位において、業務手順、権限、承認条件、参照情報及び各種システムとの連携等を管理する運用基盤を提供しております。
Agentic Platformは、自社業務における活用に加え、外部顧客に対してもプロダクト又はサービスとして提供しております。プロダクトとしては、主に不動産・建築業界に向けて、ボリュームチェック技術を提供する「デベNAVI」、「VCプロ」や、不動産業務の効率化を目的とした「Gate.」等を販売しており、いずれも月額課金での収益を得ております。また、自社で実現した効率化・自動化についても一部機能を外販しており、外部顧客の業務内容、既存システム及び情報管理体制等を踏まえて業務プロセスを可視化し、業務フローの再設計、各種業務の自動化及び導入後の運用定着を支援することで、顧客企業の生産性及び収益性の向上を図っております。こちらのサービスも月額課金の収益体系となっております。加えて、Agentic Platformとの親和性、顧客基盤、継続的な収益及び業務改善余地等を有する企業については、協業その他の事業上の連携に加え、M&Aを中心とした資本面での連携を含む事業機会を慎重に検討し、当社グループの顧客接点、事業領域及び収益基盤の拡大につなげていく方針です。
I)グループ内専用システム(一部社外に提供している機能も含む)
チャット、会議議事録、ノート、カレンダー及びタスク管理等の機能を統合したグループ内専用の業務基盤です。各従業員の業務上のコミュニケーション、会議、タスク及び各種業務システムの利用状況等を収集・整理することで、業務の工程、担当者、関係部署及び承認プロセスを可視化しております。また、チャットや会議の内容からタスクを生成・分解し、従業員が対応すべき業務、他の担当者へ依頼すべき業務及びシステムによる自動化が可能な業務を判別して振り分けております。自動化可能な業務はシステムが処理し、判断や承認を要する業務は従業員が担うことで、人による確認を介在させながら業務効率の向上を図っております。これらの機能及び知見は、Agentic Platformを通じて外部顧客にも提供しております。

(図5)自社開発のチャットツール。チャット内の会話から直接タスクが生成されエージェントや社員に振り分ける
ことができる(図中右が生成されたタスク)
II)外部向けに提供するプロダクト
当社グループは、Land Creationで培った不動産・建築データの解析技術及び業務効率化のノウハウを活用し、不動産開発事業者、金融機関及び不動産会社等に対して、以下のプロダクトを提供しております。
「VCプロ」は、従来、専門家が多くの時間と手間をかけて行っていた開発用地のボリュームチェックを、データとソフトウエアを活用して効率化するSaaSプロダクトです。利用者は、地図上で土地を選択することで、関連法規に基づいた建築可能ボリュームや簡易的なプランニング結果を確認することができ、用地取得に係る意思決定の迅速化と精度向上に寄与しております。
また、「デベNAVI」は、不動産開発事業者を対象とした業務支援プラットフォームです。用地情報の収集・管理から、事業収支シミュレーション、プロジェクトの進捗管理に至るまで、開発業務の主要なプロセスをデジタル上で一元的に支援し、業務全体の効率化に寄与しております。

VCプロ

デベNAVIによるボリュームチェック
不動産業務パッケージ「Gate.」は、約5億件の不動産ビッグデータと人工知能(AI)による分析機能を搭載した、不動産価値分析のためのAIクラウドサービスで、延べ10行以上の金融機関・900社以上の不動産会社でご利用実績があります。「Gate.」は、収益物件・実需物件を査定する「AI査定」、購入・売却を試算する「シミュレーション」、エリアレポート作成の「市場分析」、賃貸・販売事例の「事例検索」などから構成され、主観を排除した資料作成やサポート体制により、顧客における不動産業務の効率化及び生産性向上に貢献しております。

事業系統図
当社グループの事業系統図は以下のとおりであります。

当社グループは、不動産領域で培ってきた専門的な知見、判断や業務の流れを、個人に閉じた経験にとどめず、会社に残り、次の実行に活かせる仕組みとして蓄積・活用しております。また、「つくる・かえる・かわる」というパーパスのもと、不動産領域で事業をつくり、その現場で生まれる判断や知見を仕組みにかえ、日々の事業運営に活かしております。
当社は持株会社として、グループ全体の経営戦略策定、資源配分やガバナンス体制の構築を通じて、各事業子会社の成長を支援しております。具体的には、Land Creationにおいては、つくる地所が不動産開発・不動産売買等を、つくる資産が富裕層の不動産投資家向けの不動産情報の提供及び資産運用コンサルティングを展開しております。また、Agentic Platformにおいては、つくるAIがSaaSプロダクトの開発・提供、当社内のAIソリューションユニットでAIを活用したコンサルティング等を展開しております。
(1) 事業の概要
当社グループは、「不動産業界における属人知の超克を礎として、産業社会に革命をもたらす」というミッションの実現に向け、「産業変革事業」の単一セグメントのもと、不動産市場に流通していない土地の中から新たな開発用地を創出する「Land Creation」と、企業内に蓄積される会話、判断及び知見を業務の実行につなげることで効率化・収益化を図る「Agentic Platform」の2つのサービスを展開しております。現時点において、当社グループの収益の殆どはLand Creationによるものでありますが、Land Creation自体がAgentic Platformによってもたらされた事業基盤の上で成り立っているため、当社グループの事業はLand Creation単体では存在し得ず、Agentic Platformがすべての事業の根幹を成す構造となっております。
| 2025年9月期 売上高 | |
| Land Creation | 12,288,930千円 |
| Agentic Platform | 64,421千円 |
Agentic Platformは、業務を観測・構造化・自動化することにより、業務効率並びに生産性及び収益性の向上を図る仕組みです(図1)。Land Creationで展開する不動産再開発についても、2020年10月につくる地所をグループ化した後、Agentic Platformを活用して業務の標準化及び効率化を進めることで、属人的な業務への依存を低減し、再現性のある事業運営体制を構築してまいりました。当社グループは、今後もAgentic Platformを基盤として、様々な産業における業務の非効率を改善するとともに、M&Aを通じて自ら事業運営に関与することで、事業の成長及び収益性の向上を図ってまいります。

(図1)Land CreationとAgentic Platform
こうしたLand Creationを効率的に行うため、独自開発の土地解析システム(グループ内専用システム)を活用し、不動産市場に流通していない土地の中から、複数の土地を一体化することで開発価値の向上が見込まれる候補地を特定しております。複数の土地を取りまとめて開発用地を創出する不動産再開発事業は従来から存在していたものの、再開発候補地の発見、建築可能規模の検証、多数の地権者との合意形成及び案件進捗の管理等が担当者個人の経験や勘に依存しやすく、継続的かつ組織的に事業規模を拡大することが難しい領域であると、当社グループは認識しております。このプロセスにおける大きな障壁の1つが、再開発候補地の発見及び建築可能規模の検証を、膨大な土地情報に対して継続的に行うことが困難な点にあります。土地に建築可能な建物の規模及び形状は、公図(注1)、地番(注2)及び筆界(注3)等により特定される土地の位置及び形状、土地の面積、道路幅員(注4)、接道条件(注5)、都市計画(注6)、用途地域(注7)、容積率(注8)、建蔽率(注9)その他の条件によって決まり、道路幅員等のわずかな差異が建築可能な延べ床面積に大きく影響する場合があります。これらの不動産・建築情報は、国、地方公共団体その他の管理主体に分散しており、紙、PDF、画像その他の異なる形式で管理されている場合があります。また、個々のデータは単体では利用可能であっても、作成基準、更新時期及び位置情報等が異なることにより、同じ地区のデータであっても住所、地番、筆界、道路及び緯度経度等が相互に一致しない場合があります。当社グループは、これらの不動産・建築情報を収集及びデジタル化し、緯度経度その他の位置情報と照合しながら補正・統合することで、土地ごとの法規制及び開発条件を一体的に解析するための独自の地図データ基盤を構築しました。その結果、不動産事業者であってもアクセスすることのできないオフマーケットに存在する潜在的な開発用地情報にアクセスすることが可能になりました。図2では、東京都における不動産市場のうち、オンマーケット(公開情報)とオフマーケット(非公開情報)の割合を示しております。東京都では、1年間で市場に出回る土地情報が約2.4万件にとどまる一方、公開情報だけでは捉えにくい膨大な土地情報が存在します。当社は、そのようなオフマーケットの土地情報を解析対象としております。

(図2)東京都の不動産規模と公開情報の割合
(注) 1.東日本不動産流通機構「不動産市場動向(統計)表6 土地(全体)の基本指標[東京都]」より、2025年の土地の新規登録件数
2.東京都「東京の土地2024(土地関係資料集)」第3章「土地所有状況」表3-1-4「民有地の所有者数及び面積」より、東京都内の民有地所有者数。時点は同資料記載年次に基づく
土地の位置、形状及び法規制に関する情報を統合した後には、当該土地に建築可能な建物の規模及び形状を算定するボリュームチェック(注10)が必要となります。建築可能規模の算定に当たっては、建築基準法(注11)をはじめ、日影規制(注12)、天空率(注13)、斜線制限(注14)、接道条件その他の複数の法令上及び幾何学上の条件を同時に考慮する必要があります。特に、天空率を考慮した建築可能規模の算定においては、あらかじめ作成された建物が規制に適合しているかを確認するだけではなく、複数の制約条件を満たす建物の規模及び形状を逆算する必要があります。そのため、法令の内容並びに地域又は審査機関ごとの実務上の運用を計算可能なルールに置き換え、複数の条件を組み合わせて処理する数理的なアルゴリズム(注15)が必要となります。これらの計算は、確率的に回答を生成する大規模言語モデル(LLM)(注16)等の汎用モデルとは性質が異なり、あらかじめ定められたルールに基づく決定論的アルゴリズム及び数理計算を中核としております。当社グループは、土地及び建物の形状並びに関連法令等を踏まえ、建築可能な建物の規模及び形状を半自動的に試算する独自のアルゴリズムを開発し、不動産・建築に関する専門人材による検証及び実際の案件で生じた個別事例を継続的に反映しております。
これらの地図データ基盤及びボリュームチェック技術を組み合わせることで、従来は建築の専門家への依頼により数週間から数か月を要していた、複数の土地を一体化した場合の建築可能規模、想定用途及び事業性の検証を、最短約1分で可能にし、再開発候補地の解析の半自動化を実現しております。
Land Creationのビジネスフローは図3のとおりです。当社グループは、再開発候補地を特定した後、地権者との継続的な対話を通じて、複数の土地を一体的に利活用することについて協議し、合意形成を進めます。並行して、建築可能規模及び事業性を検証するとともに、当社グループが有する不動産デベロッパー等の顧客基盤や過去の取引実績等をもとに、対象用地の立地、規模及び想定用途等に応じた開発投資家を選定し、開発意向及び価格水準等を確認します。こうした地権者及び開発投資家双方の意向並びに対象用地の開発可能性を踏まえ、再開発事業計画を検討し、地権者への提案条件を設定しております。対象となる複数の土地について必要な地権者との合意形成が整った後、原則として一括して土地を取得し、賃借人等を含む関係者との権利調整、既存建物の解体、建築計画及び事業計画の具体化等を行います。その後、不動産デベロッパー等の開発投資家が開発に着手できる状態まで整えた開発用地として販売しております。

(図3)Land Creationのビジネスフロー
また、当社グループは、再開発候補地の特定に加え、地権者との合意形成及び案件管理についても、Agentic Platformを含むグループ内専用システムを活用し、可視化、分析及び標準化を進めております。具体的には、主に以下の取組みを行っております。
| 地権者訪問数の最適化 | 営業対象地、訪問先及び訪問順序の最適化による、営業担当者の生産性及び営業品質の向上 地権者ごとの案件ステータス等を踏まえ、訪問先及び訪問順序を数理的に最適化 |
| 地権者との交渉における属人性の排除 | 地権者との接触履歴、意向、再訪時期及び案件進捗の記録・分析、市場データ分析及び案件管理における属人性の低減 |
| 営業員の行動分析 | 営業担当者の行動及び成果並びに採用経路、研修及び定着状況等の分析結果の、採用、育成及びマネジメント方法への反映 |
| 不動産デベロッパーの需要調査 | 不動産デベロッパー及び投資家の用途別の需要、投資基準及び価格水準の蓄積並びに、取得前の販売可能性及び収益性の検証への活用 |
さらに、当社グループは、営業活動から得られたデータを、営業担当者のマネジメント、研修及び人材育成並びに採用活動にも活用しております。営業活動の進め方や案件管理の方法を組織として蓄積・標準化することで、新たに採用した営業担当者についても早期に営業活動を開始し、案件創出に取り組むことができる体制を整備しております。
このように、当社グループは、再開発候補地を特定する土地解析技術と、地権者その他の関係者との合意形成を担う営業組織を組み合わせるとともに、営業活動及び案件管理をデータに基づき計測・分析・標準化しております。これにより、従来は担当者個人の経験や技能への依存度が高く、多数の案件を同時並行で進めることが難しかった不動産再開発について、再現性をもって案件を創出・推進できる体制を構築し、営業人員の拡大を稼働パイプライン及び事業規模の拡大につなげております。
I)グループ内専用システム
当社グループでは、再開発候補地の特定から、建築可能規模及び事業性の検証、地権者への営業活動、案件管理、不動産デベロッパー等への販売可能性の検証まで、Land Creationにおける一連の業務を一体的に支援するグループ内専用システムを開発・運用しております。本システムでは、国土交通省、法務局、各市区町村が提供するデータや各種法令・条例等を、当社グループ独自のアルゴリズムにより解析し、不動産市場に流通していない土地の中から、複数の土地を一体化することにより開発価値の向上が見込まれる再開発候補地を効率的に特定しております。
また、ボリュームチェック機能により、公図、地番、道路幅員、都市計画、容積率及び建蔽率等の不動産・建築データ並びに建築基準法、日影規制及び天空率等の法令・規制を解析し、対象用地における建築可能な建物の規模及び形状等をシミュレーションしております。これにより、複数の土地の組み合わせごとの開発余地及び事業性を短時間で検証し、地権者への提案条件及び再開発事業計画の検討に活用しております。
営業活動及び案件管理においては、地図上で営業対象地及び案件の進捗状況を一元的に管理するとともに、地権者への訪問実績、接触履歴、対応状況及び再訪時期等を記録し、訪問候補地及び訪問順序の最適化や継続的な営業活動に活用しております。また、複数の地権者が関係する案件について、各地権者への対応状況及び案件全体の進捗を一元的に把握することで、多数の再開発案件を同時並行で進めるための営業活動及び案件管理を支援しております。
さらに、当社グループが不動産デベロッパー等との継続的な取引及び営業活動を通じて蓄積した、用途別の需要、投資基準及び価格水準等に関する情報を集約しております。これらの情報を活用し、対象用地の立地、規模及び想定用途等に応じた開発投資家を選定するとともに、取得に先立って販売可能性及び価格水準を検証しております。
このように、本システムを通じて、土地の探索・分析、営業活動、案件管理及び販売可能性の検証を一つの基盤上で連携させることで、Land Creationにおける一連の業務の効率化、可視化及び標準化を図っております。

(図4)ボリュームチェック画面
Agentic Platformは、特定の大規模言語モデル等に依存するものではなく、業務内容、求められる性能、情報管理上の要件及び利用コスト等に応じて、外部事業者が提供する複数の汎用モデルを選択し、又は組み合わせて利用できる構成としております。これらの汎用モデルは、Agentic Platform上でエージェントが情報処理等を行うための構成要素であり、当社グループは、その上位において、業務手順、権限、承認条件、参照情報及び各種システムとの連携等を管理する運用基盤を提供しております。
Agentic Platformは、自社業務における活用に加え、外部顧客に対してもプロダクト又はサービスとして提供しております。プロダクトとしては、主に不動産・建築業界に向けて、ボリュームチェック技術を提供する「デベNAVI」、「VCプロ」や、不動産業務の効率化を目的とした「Gate.」等を販売しており、いずれも月額課金での収益を得ております。また、自社で実現した効率化・自動化についても一部機能を外販しており、外部顧客の業務内容、既存システム及び情報管理体制等を踏まえて業務プロセスを可視化し、業務フローの再設計、各種業務の自動化及び導入後の運用定着を支援することで、顧客企業の生産性及び収益性の向上を図っております。こちらのサービスも月額課金の収益体系となっております。加えて、Agentic Platformとの親和性、顧客基盤、継続的な収益及び業務改善余地等を有する企業については、協業その他の事業上の連携に加え、M&Aを中心とした資本面での連携を含む事業機会を慎重に検討し、当社グループの顧客接点、事業領域及び収益基盤の拡大につなげていく方針です。
I)グループ内専用システム(一部社外に提供している機能も含む)
チャット、会議議事録、ノート、カレンダー及びタスク管理等の機能を統合したグループ内専用の業務基盤です。各従業員の業務上のコミュニケーション、会議、タスク及び各種業務システムの利用状況等を収集・整理することで、業務の工程、担当者、関係部署及び承認プロセスを可視化しております。また、チャットや会議の内容からタスクを生成・分解し、従業員が対応すべき業務、他の担当者へ依頼すべき業務及びシステムによる自動化が可能な業務を判別して振り分けております。自動化可能な業務はシステムが処理し、判断や承認を要する業務は従業員が担うことで、人による確認を介在させながら業務効率の向上を図っております。これらの機能及び知見は、Agentic Platformを通じて外部顧客にも提供しております。

(図5)自社開発のチャットツール。チャット内の会話から直接タスクが生成されエージェントや社員に振り分ける
ことができる(図中右が生成されたタスク)
II)外部向けに提供するプロダクト
当社グループは、Land Creationで培った不動産・建築データの解析技術及び業務効率化のノウハウを活用し、不動産開発事業者、金融機関及び不動産会社等に対して、以下のプロダクトを提供しております。
また、「デベNAVI」は、不動産開発事業者を対象とした業務支援プラットフォームです。用地情報の収集・管理から、事業収支シミュレーション、プロジェクトの進捗管理に至るまで、開発業務の主要なプロセスをデジタル上で一元的に支援し、業務全体の効率化に寄与しております。

VCプロ

デベNAVIによるボリュームチェック

事業系統図
当社グループの事業系統図は以下のとおりであります。

| (注1) | 公図 | 土地の位置、形状及び隣接する土地との関係等を表示した、法務局に備え付けられている図面をいいます。 |
| (注2) | 地番 | 土地を一筆ごとに特定するために付される番号をいいます。 |
| (注3) | 筆界 | 一筆の土地が登記された際に、その土地の範囲を区画するものとして定められた境界をいいます。 |
| (注4) | 道路幅員 | 敷地に接する道路の幅をいいます。 |
| (注5) | 接道条件 | 敷地が建築基準法上の道路に接している長さ、位置及び接し方等の条件をいいます。 |
| (注6) | 都市計画 | 都市の健全な発展等を図るため、土地利用、都市施設その他の事項について定める計画をいいます。 |
| (注7) | 用途地域 | 都市計画法に基づき、地域ごとに建築可能な建築物の用途、容積率及び建蔽率等を定める地域区分をいいます。 |
| (注8) | 容積率 | 敷地面積に対する建築物の延べ面積の割合をいいます。 |
| (注9) | 建蔽率 | 敷地面積に対する建築面積の割合をいいます。 |
| (注10) | ボリュームチェック | 敷地条件及び法令上の制限等を踏まえ、建築可能な建物の規模、形状及び用途等を検討することをいいます。 |
| (注11) | 建築基準法 | 建築物の敷地、構造、設備及び用途等に関する基準を定める法律をいいます。 |
| (注12) | 日影規制 | 中高層建築物によって周辺の敷地に生じる日影の時間及び範囲等を制限する規制をいいます。 |
| (注13) | 天空率 | 建築物周辺における天空の見え方を示す指標で、一定の条件のもと、斜線制限への適合判定に用いられるものをいいます。 |
| (注14) | 斜線制限 | 道路、隣地又は北側の採光、通風等を確保するため、建築物の高さを制限する規制をいいます。 |
| (注15) | アルゴリズム | 一定の目的を達成するために、入力された情報をあらかじめ定められた手順に従って処理し、結果を導くための計算手順をいいます。 |
| (注16) | 大規模言語モデル(LLM) | 大量の文章データを学習し、入力された文章に応じて、文章の生成、要約、分類その他の言語処理を行うAIモデルをいいます。 |