有価証券報告書-第75期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
有報資料
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
企業理念、経営方針、行動指針から成り立つ企業理念体系を当社グループの全員が常に意識し、目標・価値観を共有して行動してまいります。創業から現在までに築き上げてきた良き企業文化を継承するとともに、時代や環境、価値観の変化に迅速に対応できるスピード感のある経営に努め、マテリアルを通じて価値を創造するイノベーション・カンパニーとして、社会とステークホルダーの皆様の信頼に応える企業を目指してまいります。また、当社グループでは数年前から、世の中の様々な問題や課題の中で「地球温暖化」、「人口・水・食糧問題」、「新興国の経済成長」、「デジタリゼーション」を4つのマクロトレンドと捉えて事業活動を行ってきました。これらのトレンドは、社会に影響を及ぼすだけでなく、当社のエラストマー事業・合成樹脂事業・デジタルソリューション事業・ライフサイエンス事業が、マテリアルを通じてどのように価値を創造するのかということにも影響します。当社グループは、好奇心・寛容さ・適応力に基づく文化を今後も発展させていきます。変化は避けられず、挑戦や絶え間なく進化する環境から生み出される機会を進んで受け入れていく必要があります。また、責任ある企業市民であるためには、単に経営の知見だけではなく、企業としてのありたい姿に不可欠なコアバリュー(基本的価値観)を示す必要があると考えています。
(2)中長期的な会社の経営戦略、目標とする経営指標
<中長期的な会社の経営戦略>2020年のありたい姿へのロードマップは以下の図の通りです。

<目標とする経営指標>当社グループは、売上収益、営業利益とROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)を、目標とすべき重要な経営指標と位置づけております。

<当期の進捗状況>(中期経営計画「JSR20i9」の進捗)
中期経営計画「JSR20i9」では、対象期間である2018年3月期(2017年度)から2020年3月期(2019年度)までの3カ年を、2020年のあるべき姿に向けた持続的変革を図る第三段階にあたる「未来に向けた競争力強化」の期間と位置づけ、継続的な変革を実施してまいりました。「JSR20i9」の最終年度となる当期は、売上収益は「JSR20i9」で設定した目標を昨年度に達成し、成長のけん引役としての半導体材料および第3の柱としてのライフサイエンス事業は順調に売上収益が拡大しました。しかしながら、厳しい事業環境の影響などにより、営業利益及びROEについては当初目標を下回りました。
<新中期経営計画の策定>2020年3月期(2019年度)を最終年度とした中期経営計画「JSR20i9」が終了したことに伴い、2021年3月期(2020年度)からの新中期計画を策定してまいりました。当該新中期計画は半導体材料分野とライフサイエンス領域を成長の牽引車として位置づけ、組織の持続性(サステナビリティおよびESG(環境、社会、ガバナンス))と強靭化(レジリエンス)を将来のJSRグループの成長の基盤と位置付けています。しかしながら今般の新型コロナウイルス感染の世界的な拡大により、売上収益や営業利益の目標はコロナウイルス・石油危機を乗り越えてから公表することとし、2020年度は当面の危機対応を優先させてグループ経営を行います。
(3)経営環境について
2019年度は、米国経済は好調なるものの、中国経済の不振、米中摩擦の激化や保護主義の台頭などの影響により、世界経済が低迷する兆候が見られました。そして、2020年2月後半に新型コロナウイルス感染拡大によるグローバル経済活動の停止という新たなリスクや、石油危機による石油化学製品市場の異常な低迷というリスクが加わり、先行きはかつてない程不透明な状態です。当社グループの主要な需要業界の足元の状況は次の通りですが、新型コロナウイルス感染拡大の収束状況や、石油化学市場の低迷、そして世界の中央銀行や政府の不況対策によっては、弊社の業績に更に大きな影響が及ぶリスクがあります。
世界の自動車生産台数は、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、前年を大きく下回ることが見込まれます。自動車タイヤ生産についても年明け以降の一部自動車タイヤ工場の稼働停止や世界景気の低迷により、前年を大きく下回ることが予想されます。そのような事業環境の中、経済活動の停滞と需要低迷による販売の減少リスクに備えるべく事業コスト抑制に努めます。エラストマー事業では製造原価の低減や適切な在庫管理に注力し、労働安全の維持、安定操業に努めます。ディスプレイ材料事業では顧客業界の構造変化に対応した製造・サプライチェーンの見直しを図ります。一方、持続性と強靭(レジリエント)性を重ね持った企業体とするために更なる事業構造、経営体制の強化へ向け、成長事業である半導体材料事業、ライフサイエンス事業については積極的な研究開発および事業投資を着実に実行して参ります。
(4)対処すべき課題
<エラストマー事業>需要業界である自動車・タイヤ生産は、足元では新型コロナウイルス感染拡大の影響により停滞しておりますが、課題となる収益力に関して、事業構造改革に着手してまいります。一方で、低燃費タイヤ用に需要が増加しているSSBRは、電気自動車やオールシーズンタイヤといった新しい用途向けにも需要が拡大しています。こうした需要に対応すべく、ハンガリーのJMSRは2020年度に商業生産を開始し、日本、タイ、ハンガリーの3拠点からSSBRをグローバルに供給し、販売を拡大してまいります。これに加えて、世界的に需要が伸びているリチウムイオン二次電池向けの電池用バインダーなど高付加価値製品の比率を向上させ、収益力を向上させて持続的な事業となるように構造改革を進めてまいります。
<合成樹脂事業>2018年4月に統合したテクノUMG株式会社においては、引き続き、これまで蓄積してきた両社の製造力・開発力・販売力を活かし、事業統合および製品統合によるシナジー効果を実現してまいります。今後は主に自動車市場向けに、きしみ音対策材HUSHLLOY®、めっき用材料PLATZON®といった特色のある高機能製品を特に海外市場において拡販し、なお一層の収益力の強化に努めてまいります。
<デジタルソリューション事業>半導体材料事業は、通信の高速化、データ通信・容量の増加などにより、半導体需要の増加が見込まれる中、最先端の7-10nm世代プロセスを含む先端リソグラフィ材料市場でのシェアを維持・拡大するとともに、5nm世代以降に向けたEUVリソグラフィ材料の開発・販売に注力してまいります。また、先端半導体の製造に使用される実装材料・洗浄剤・CMP材料といった周辺材料の販売拡大にも注力し、製品ポートフォリオを拡大することで市場成長を上回る事業成長を達成いたします。現在、2020年度の稼働開始を目指し、米国に最先端半導体向け機能性洗浄剤の工場を建設中です。これにより、最先端の半導体製造プロセス用の機能性洗浄剤の供給体制を確立し、更なる半導体材料の事業拡大に努めてまいります。
ディスプレイ材料事業は、引き続き液晶パネル市場の堅調な成長が見込まれる中国市場において、大型液晶パネル向けに競争力のある配向膜、絶縁膜を中心に販売の拡大を進めていくとともに顧客業界の構造変化への対応を進めてまいります。また、液晶パネル製造は200℃以上の高温プロセスを用いていますが、製造工程における環境負荷を減らすために低温工程化を可能にする配向膜および周辺材料を新規に開発し、昨年販売を開始しました。4Kや8Kなどの高精細液晶パネル製造工程に用いられる革新材料を開発、供給するとともに有機ELパネル用材料などの新製品の開発・販売を通じて事業の持続性を高めてまいります。エッジコンピューティング事業については、主にスマートフォンの小型カメラに使用されるNIR(近赤外線)カットフィルターの更なる拡販などによりデジタルソリューション事業をより幅広い事業とし、世の中のデジタル化を支援してまいります。
<ライフサイエンス事業>第3の柱として位置づけられるライフサイエンス事業は売上収益500億円規模に順調に拡大してまいりました。KBI、SelexisによるCDMO事業(バイオ医薬品の開発・製造受託事業)の新規受託拡大に加え、Crown BioのCRO事業(医薬品の開発支援事業)の複数年受託契約の増加や、診断薬材料およびバイオプロセス材料のグローバルな採用拡大、(株)医学生物学研究所における診断薬および特殊抗体開発事業の安定的な成長にバイオプロセス材料より今後も事業拡大を進めてまいります。2019年1月には米国にJSR Life Sciences, LLCを設立し、ライフサイエンス事業のグローバル統括機能を移管いたしました。医薬品研究開発の中心地である米国より、ライフサイエンスグループ企業の統括も含め、米国、欧州、アジア太平洋地域にわたる当該事業全体の戦略を主導し、意思決定の速度を上げてまいります。
<次世代研究>慶應義塾大学医学部および大学病院との共同研究施設「JSR・慶應義塾大学 医学化学イノベーションセンター」(JKiC)において、革新的な材料、製品および技術の開発に取り組んでおります。JKiCでは、医学的見地と素材開発の知見を融合させて、主に4つの領域 1)精密医療、2)幹細胞生物学と細胞医療、3)微生物叢(マイクロバイオーム)、4)先端医療機器において、実社会への実装を目指して研究・開発を進めております。慶應義塾大学が世界をリードするマイクロバイオーム分野における研究では、既に当社が研究結果の独占的実施権を取得するなど、進捗が見られます。
また、2021年の開所を目標に川崎市川崎区殿町地区にライフサイエンスを含む次世代研究を行う新研究所「JSR Bioscience and informatics R&D Center(略称:JSR BiRD)」の建設を着工いたしました。JSR BiRDではJKiCから生まれる研究成果を社会実装につなげる開発支援を行うだけではなく、先端デジタル技術を材料技術開発に広く応用するマテリアルズ・インフォマティクスを使った研究や、実験設備やオフィスを外部パートナーに広く開放してオープンイノベーションを実践することで、新規ビジネスの創出を促進・加速してまいります。
(5)その他の対処すべき課題
▶持続性(サステナビリティ)と強靭化(レジリエンス)
当社グループは、企業理念に立脚して様々なステークホルダー(利害関係者)と良好な関係を築き、信頼され、世の中に必要とされるグローバル企業となることを目指しております。企業理念を礎に中期的な成長および企業価値の向上を目指す一方、先行きが不確実で激変する経営環境の中で、組織の持続性(サステナビリティ)と強靭化(レジリエンス)をキーワードとして事業活動を推進し企業価値の向上に努めます。
<持続性(サステナビリティ)>2019年度は、現在の事業活動を通じた社会への影響を定量的に確認する「JSR サステナビリティ・チャレンジ」活動を実施し、気候変動、資源循環、デジタル変革、健康という視点から当社グループにおける事業活動を通じた具体的な社会貢献の姿を確認いたしました。2019年度のこれらの活動は現在を起点とした見通しの観点からの活動であるのに対し、2020年度は、TCFD(気候変動関連財務情報開示タスクフォース)のシナリオ分析などを通して、2050年の当社グループの在りたい姿を描き、未来を起点とした思考の観点から取るべき施策を洗い出してまいります。これらの現在を起点とした見通しと未来を起点とした思考からの活動を統合し、当社グループの長期のサステナビリティ目標である「JSR サステナビリティ・ビジョン2050」を制定していく考えです。当社はサステナビリティを「企業活動を通じて価値創造することで社会に貢献する」と定義しました。企業理念「Materials Innovation —マテリアルを通じて価値を創造し、人間社会(人・社会・環境)に貢献します。」に基づき、事業活動を通じた価値創造により、顧客・取引先、従業員、社会・環境、株主といったすべてのステークホルダーに貢献する取り組みを進めてまいります。
<強靭化(レジリエンス)>2019年度は新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、BCM(事業継続マネジメント)として、BCP(事業継続計画)会議体の設置・運営を開始し、経営トップ層を含むこの会議体において、グローバルでの地域ごとの感染状況の情報の共有、グループ社員の感染状況の有無の確認、各拠点別の稼働状況の確認と必要に応じた対応の検討、在宅勤務体制の発令、駐在員並びにその家族の安全確保施策などを決定し、世界の基幹産業を支える当社グループの製造、研究開発、物流などの事業活動への影響を最小限にするように努めました。ステークホルダーに関連する事項は当社ホームページに「COVID-19新型コロナウイルス感染症へのJSR対応」として掲載し、逐次情報公開に努めております。
また、感染症の蔓延を含め、いろいろな危機に対しても強靭な組織体を作り上げながら事業活動を推進していくために、経営機能の複層化として、米国拠点へ事業統括会社を設立しました。デジタルソリューション事業やライフサイエンス事業における研究・製造機能なども世界各拠点への複層化を推進しております。また、新型コロナウイルス感染拡大による海外生産拠点における生産に障害が生じた場合に備え、拠点間の相互生産バックアップによる供給体制を検討しました。2020年度以降、当社グループのデジタル変革の一環として業務プロセスを見直し、ERP(基幹系情報システム)を更新し、効率的かつ迅速な経営の意思決定ができる体制を整えてまいります。また、生産活動においては、老朽化が進む製造設備を更新するとともに、エンジニアリンググループ会社を吸収合併し、その機能を取り込むことにより、設備保全の効率化と健全性の強化を図り、より一層安定した製造機能の維持を図ってまいります。
▶コーポレート・ガバナンス
<取締役会の概要>当社の取締役会は代表取締役CEOを含む6名の社内取締役と、経営執行および財務活動に精通した3名の独立社外取締役から構成されており、1名の常勤監査役と財務・会計・税務および会社法を含む法務の専門家2名の独立社外監査役(うち1名は女性)が毎回出席しております。グローバル化、IT化、デジタル化等の事業環境の急速な変化に対応すべく、メンバーの過半数を独立社外取締役で構成し、独立社外取締役が委員長を務める指名諮問委員会からの答申に基づき、2019年度は、当社初の外国籍CEO(最高経営責任者)の選定と、主として米国を起点にグローバルな経営を担うCEOを日本で補佐する社長兼COO(最高執行責任者)の選定を取締役会にて承認しました。2020年6月17日に実施された定時株主総会においては、社内からの女性取締役選任議案が承認可決され、取締役会のさらなる多様化を図っています。
<当社グループの経営体制の継承と評価(指名諮問委員会の取り組み)>指名諮問委員会は2015年度に設置され、独立社外取締役を委員長とする独立社外取締役3名(委員長含む)と代表取締役CEO及び、代表取締役社長兼COOから構成され、CEOおよび社長の選解任、取締役会の構成及び選任や当社グループの経営体制、重要な経営ポストの継承計画について客観的かつ長期的に検討を行っております。
2019年度は、新しい経営体制のフォローアップや評価、取締役会の構成および選任、次世代経営候補者の育成状況や研修などの取り組みのモニタリングを行いました。また、 CEOおよび社長から同委員会に対する年間経営活動報告が行われ、経営トップの選解任を審議し取締役会に提言を行います。
<役員報酬体系の合理性と透明性の確保(報酬諮問委員会の取り組み)>当社は2014年度に独立社外取締役を委員長とし、独立社外取締役3名(委員長含む)と代表取締役CEO及び、代表取締役社長兼COOから構成される報酬諮問委員会を設置し、外部機関からデータおよび助言を受けて、毎年度の業績などを考慮しながら合理性、透明性、かつ競争力を持った報酬制度および報酬額、役員報酬の基本方針の取締役会への答申を行っております。
2019年度は、例年通り、ベンチマークデータに基づき報酬制度および報酬額、または役員報酬の基本方針の妥当性の確認を行うとともに、中期経営計画と報酬制度との連動性の確認などを行いました。
<当社取締役会の実効性評価の結果概要について>当社取締役会では、毎年、取締役会の実効性評価を実施し、実効性の向上を通じて、当社の企業価値の最大化を図っております。2019年度の実効性評価の結果、当社の取締役会は有効に機能しているとの結論を得ました。今後も実効性評価を実施してまいります。
<政策保有株式の縮減>個別の政策保有株式につき、保有目的、リスク・リターン、資本コスト等を考慮し、取締役会において政策保有株式の保有状況および保有方針を確認し、従来の方針通りに縮減を行い、最適化を進めております。
<危機管理の取り組み>新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、2020年1月下旬より社長をトップとする新型コロナウイルス対策会議を設置し、当初は中国における情報収集や現地法人の対応決定、支援活動を実施致しました。日本、そして世界中への感染拡大が明らかになり、2月中旬にBCP(事業継続計画)会議体へ移行致しました。当社グループは世界の基幹産業を支える素材産業として、日本、アジアおよび欧米の当社グループの主要製造・研究・開発拠点の稼働を維持するための行動規範の制定、保護具の供給および着用の徹底、外部訪問者の遮断、全世界の従業員との情報共有、各拠点での在宅勤務環境の整備などの施策を2月中旬に完了させました。BCP会議体の内容は、社外取締役および監査役との共有も図っております。
世界各拠点の文化の違いや独自性を尊重しつつ、BCP会議体でのスピーディな情報の一元管理を行い適切なアクションに繋げることで、危機管理および事業継続に努めています。
以上のような課題に対して確実に取り組み、CEOおよび社長のリーダーシップの下、グローバルに遅滞なく遂行してまいります。
なお、業績見通し等の将来に関する記述は、当社が現在入手している情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づいており、その達成を当社として約束する趣旨のものではありません。また、実際の業績等は様々な要因により大きく異なる可能性があります。
(1)会社の経営の基本方針
企業理念、経営方針、行動指針から成り立つ企業理念体系を当社グループの全員が常に意識し、目標・価値観を共有して行動してまいります。創業から現在までに築き上げてきた良き企業文化を継承するとともに、時代や環境、価値観の変化に迅速に対応できるスピード感のある経営に努め、マテリアルを通じて価値を創造するイノベーション・カンパニーとして、社会とステークホルダーの皆様の信頼に応える企業を目指してまいります。また、当社グループでは数年前から、世の中の様々な問題や課題の中で「地球温暖化」、「人口・水・食糧問題」、「新興国の経済成長」、「デジタリゼーション」を4つのマクロトレンドと捉えて事業活動を行ってきました。これらのトレンドは、社会に影響を及ぼすだけでなく、当社のエラストマー事業・合成樹脂事業・デジタルソリューション事業・ライフサイエンス事業が、マテリアルを通じてどのように価値を創造するのかということにも影響します。当社グループは、好奇心・寛容さ・適応力に基づく文化を今後も発展させていきます。変化は避けられず、挑戦や絶え間なく進化する環境から生み出される機会を進んで受け入れていく必要があります。また、責任ある企業市民であるためには、単に経営の知見だけではなく、企業としてのありたい姿に不可欠なコアバリュー(基本的価値観)を示す必要があると考えています。
(2)中長期的な会社の経営戦略、目標とする経営指標
<中長期的な会社の経営戦略>2020年のありたい姿へのロードマップは以下の図の通りです。

<目標とする経営指標>当社グループは、売上収益、営業利益とROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)を、目標とすべき重要な経営指標と位置づけております。

<当期の進捗状況>(中期経営計画「JSR20i9」の進捗)
中期経営計画「JSR20i9」では、対象期間である2018年3月期(2017年度)から2020年3月期(2019年度)までの3カ年を、2020年のあるべき姿に向けた持続的変革を図る第三段階にあたる「未来に向けた競争力強化」の期間と位置づけ、継続的な変革を実施してまいりました。「JSR20i9」の最終年度となる当期は、売上収益は「JSR20i9」で設定した目標を昨年度に達成し、成長のけん引役としての半導体材料および第3の柱としてのライフサイエンス事業は順調に売上収益が拡大しました。しかしながら、厳しい事業環境の影響などにより、営業利益及びROEについては当初目標を下回りました。
<新中期経営計画の策定>2020年3月期(2019年度)を最終年度とした中期経営計画「JSR20i9」が終了したことに伴い、2021年3月期(2020年度)からの新中期計画を策定してまいりました。当該新中期計画は半導体材料分野とライフサイエンス領域を成長の牽引車として位置づけ、組織の持続性(サステナビリティおよびESG(環境、社会、ガバナンス))と強靭化(レジリエンス)を将来のJSRグループの成長の基盤と位置付けています。しかしながら今般の新型コロナウイルス感染の世界的な拡大により、売上収益や営業利益の目標はコロナウイルス・石油危機を乗り越えてから公表することとし、2020年度は当面の危機対応を優先させてグループ経営を行います。
(3)経営環境について
2019年度は、米国経済は好調なるものの、中国経済の不振、米中摩擦の激化や保護主義の台頭などの影響により、世界経済が低迷する兆候が見られました。そして、2020年2月後半に新型コロナウイルス感染拡大によるグローバル経済活動の停止という新たなリスクや、石油危機による石油化学製品市場の異常な低迷というリスクが加わり、先行きはかつてない程不透明な状態です。当社グループの主要な需要業界の足元の状況は次の通りですが、新型コロナウイルス感染拡大の収束状況や、石油化学市場の低迷、そして世界の中央銀行や政府の不況対策によっては、弊社の業績に更に大きな影響が及ぶリスクがあります。
世界の自動車生産台数は、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、前年を大きく下回ることが見込まれます。自動車タイヤ生産についても年明け以降の一部自動車タイヤ工場の稼働停止や世界景気の低迷により、前年を大きく下回ることが予想されます。そのような事業環境の中、経済活動の停滞と需要低迷による販売の減少リスクに備えるべく事業コスト抑制に努めます。エラストマー事業では製造原価の低減や適切な在庫管理に注力し、労働安全の維持、安定操業に努めます。ディスプレイ材料事業では顧客業界の構造変化に対応した製造・サプライチェーンの見直しを図ります。一方、持続性と強靭(レジリエント)性を重ね持った企業体とするために更なる事業構造、経営体制の強化へ向け、成長事業である半導体材料事業、ライフサイエンス事業については積極的な研究開発および事業投資を着実に実行して参ります。
(4)対処すべき課題
<エラストマー事業>需要業界である自動車・タイヤ生産は、足元では新型コロナウイルス感染拡大の影響により停滞しておりますが、課題となる収益力に関して、事業構造改革に着手してまいります。一方で、低燃費タイヤ用に需要が増加しているSSBRは、電気自動車やオールシーズンタイヤといった新しい用途向けにも需要が拡大しています。こうした需要に対応すべく、ハンガリーのJMSRは2020年度に商業生産を開始し、日本、タイ、ハンガリーの3拠点からSSBRをグローバルに供給し、販売を拡大してまいります。これに加えて、世界的に需要が伸びているリチウムイオン二次電池向けの電池用バインダーなど高付加価値製品の比率を向上させ、収益力を向上させて持続的な事業となるように構造改革を進めてまいります。
<合成樹脂事業>2018年4月に統合したテクノUMG株式会社においては、引き続き、これまで蓄積してきた両社の製造力・開発力・販売力を活かし、事業統合および製品統合によるシナジー効果を実現してまいります。今後は主に自動車市場向けに、きしみ音対策材HUSHLLOY®、めっき用材料PLATZON®といった特色のある高機能製品を特に海外市場において拡販し、なお一層の収益力の強化に努めてまいります。
<デジタルソリューション事業>半導体材料事業は、通信の高速化、データ通信・容量の増加などにより、半導体需要の増加が見込まれる中、最先端の7-10nm世代プロセスを含む先端リソグラフィ材料市場でのシェアを維持・拡大するとともに、5nm世代以降に向けたEUVリソグラフィ材料の開発・販売に注力してまいります。また、先端半導体の製造に使用される実装材料・洗浄剤・CMP材料といった周辺材料の販売拡大にも注力し、製品ポートフォリオを拡大することで市場成長を上回る事業成長を達成いたします。現在、2020年度の稼働開始を目指し、米国に最先端半導体向け機能性洗浄剤の工場を建設中です。これにより、最先端の半導体製造プロセス用の機能性洗浄剤の供給体制を確立し、更なる半導体材料の事業拡大に努めてまいります。
ディスプレイ材料事業は、引き続き液晶パネル市場の堅調な成長が見込まれる中国市場において、大型液晶パネル向けに競争力のある配向膜、絶縁膜を中心に販売の拡大を進めていくとともに顧客業界の構造変化への対応を進めてまいります。また、液晶パネル製造は200℃以上の高温プロセスを用いていますが、製造工程における環境負荷を減らすために低温工程化を可能にする配向膜および周辺材料を新規に開発し、昨年販売を開始しました。4Kや8Kなどの高精細液晶パネル製造工程に用いられる革新材料を開発、供給するとともに有機ELパネル用材料などの新製品の開発・販売を通じて事業の持続性を高めてまいります。エッジコンピューティング事業については、主にスマートフォンの小型カメラに使用されるNIR(近赤外線)カットフィルターの更なる拡販などによりデジタルソリューション事業をより幅広い事業とし、世の中のデジタル化を支援してまいります。
<ライフサイエンス事業>第3の柱として位置づけられるライフサイエンス事業は売上収益500億円規模に順調に拡大してまいりました。KBI、SelexisによるCDMO事業(バイオ医薬品の開発・製造受託事業)の新規受託拡大に加え、Crown BioのCRO事業(医薬品の開発支援事業)の複数年受託契約の増加や、診断薬材料およびバイオプロセス材料のグローバルな採用拡大、(株)医学生物学研究所における診断薬および特殊抗体開発事業の安定的な成長にバイオプロセス材料より今後も事業拡大を進めてまいります。2019年1月には米国にJSR Life Sciences, LLCを設立し、ライフサイエンス事業のグローバル統括機能を移管いたしました。医薬品研究開発の中心地である米国より、ライフサイエンスグループ企業の統括も含め、米国、欧州、アジア太平洋地域にわたる当該事業全体の戦略を主導し、意思決定の速度を上げてまいります。
<次世代研究>慶應義塾大学医学部および大学病院との共同研究施設「JSR・慶應義塾大学 医学化学イノベーションセンター」(JKiC)において、革新的な材料、製品および技術の開発に取り組んでおります。JKiCでは、医学的見地と素材開発の知見を融合させて、主に4つの領域 1)精密医療、2)幹細胞生物学と細胞医療、3)微生物叢(マイクロバイオーム)、4)先端医療機器において、実社会への実装を目指して研究・開発を進めております。慶應義塾大学が世界をリードするマイクロバイオーム分野における研究では、既に当社が研究結果の独占的実施権を取得するなど、進捗が見られます。
また、2021年の開所を目標に川崎市川崎区殿町地区にライフサイエンスを含む次世代研究を行う新研究所「JSR Bioscience and informatics R&D Center(略称:JSR BiRD)」の建設を着工いたしました。JSR BiRDではJKiCから生まれる研究成果を社会実装につなげる開発支援を行うだけではなく、先端デジタル技術を材料技術開発に広く応用するマテリアルズ・インフォマティクスを使った研究や、実験設備やオフィスを外部パートナーに広く開放してオープンイノベーションを実践することで、新規ビジネスの創出を促進・加速してまいります。
(5)その他の対処すべき課題
▶持続性(サステナビリティ)と強靭化(レジリエンス)
当社グループは、企業理念に立脚して様々なステークホルダー(利害関係者)と良好な関係を築き、信頼され、世の中に必要とされるグローバル企業となることを目指しております。企業理念を礎に中期的な成長および企業価値の向上を目指す一方、先行きが不確実で激変する経営環境の中で、組織の持続性(サステナビリティ)と強靭化(レジリエンス)をキーワードとして事業活動を推進し企業価値の向上に努めます。
<持続性(サステナビリティ)>2019年度は、現在の事業活動を通じた社会への影響を定量的に確認する「JSR サステナビリティ・チャレンジ」活動を実施し、気候変動、資源循環、デジタル変革、健康という視点から当社グループにおける事業活動を通じた具体的な社会貢献の姿を確認いたしました。2019年度のこれらの活動は現在を起点とした見通しの観点からの活動であるのに対し、2020年度は、TCFD(気候変動関連財務情報開示タスクフォース)のシナリオ分析などを通して、2050年の当社グループの在りたい姿を描き、未来を起点とした思考の観点から取るべき施策を洗い出してまいります。これらの現在を起点とした見通しと未来を起点とした思考からの活動を統合し、当社グループの長期のサステナビリティ目標である「JSR サステナビリティ・ビジョン2050」を制定していく考えです。当社はサステナビリティを「企業活動を通じて価値創造することで社会に貢献する」と定義しました。企業理念「Materials Innovation —マテリアルを通じて価値を創造し、人間社会(人・社会・環境)に貢献します。」に基づき、事業活動を通じた価値創造により、顧客・取引先、従業員、社会・環境、株主といったすべてのステークホルダーに貢献する取り組みを進めてまいります。
<強靭化(レジリエンス)>2019年度は新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、BCM(事業継続マネジメント)として、BCP(事業継続計画)会議体の設置・運営を開始し、経営トップ層を含むこの会議体において、グローバルでの地域ごとの感染状況の情報の共有、グループ社員の感染状況の有無の確認、各拠点別の稼働状況の確認と必要に応じた対応の検討、在宅勤務体制の発令、駐在員並びにその家族の安全確保施策などを決定し、世界の基幹産業を支える当社グループの製造、研究開発、物流などの事業活動への影響を最小限にするように努めました。ステークホルダーに関連する事項は当社ホームページに「COVID-19新型コロナウイルス感染症へのJSR対応」として掲載し、逐次情報公開に努めております。
また、感染症の蔓延を含め、いろいろな危機に対しても強靭な組織体を作り上げながら事業活動を推進していくために、経営機能の複層化として、米国拠点へ事業統括会社を設立しました。デジタルソリューション事業やライフサイエンス事業における研究・製造機能なども世界各拠点への複層化を推進しております。また、新型コロナウイルス感染拡大による海外生産拠点における生産に障害が生じた場合に備え、拠点間の相互生産バックアップによる供給体制を検討しました。2020年度以降、当社グループのデジタル変革の一環として業務プロセスを見直し、ERP(基幹系情報システム)を更新し、効率的かつ迅速な経営の意思決定ができる体制を整えてまいります。また、生産活動においては、老朽化が進む製造設備を更新するとともに、エンジニアリンググループ会社を吸収合併し、その機能を取り込むことにより、設備保全の効率化と健全性の強化を図り、より一層安定した製造機能の維持を図ってまいります。
▶コーポレート・ガバナンス
<取締役会の概要>当社の取締役会は代表取締役CEOを含む6名の社内取締役と、経営執行および財務活動に精通した3名の独立社外取締役から構成されており、1名の常勤監査役と財務・会計・税務および会社法を含む法務の専門家2名の独立社外監査役(うち1名は女性)が毎回出席しております。グローバル化、IT化、デジタル化等の事業環境の急速な変化に対応すべく、メンバーの過半数を独立社外取締役で構成し、独立社外取締役が委員長を務める指名諮問委員会からの答申に基づき、2019年度は、当社初の外国籍CEO(最高経営責任者)の選定と、主として米国を起点にグローバルな経営を担うCEOを日本で補佐する社長兼COO(最高執行責任者)の選定を取締役会にて承認しました。2020年6月17日に実施された定時株主総会においては、社内からの女性取締役選任議案が承認可決され、取締役会のさらなる多様化を図っています。
<当社グループの経営体制の継承と評価(指名諮問委員会の取り組み)>指名諮問委員会は2015年度に設置され、独立社外取締役を委員長とする独立社外取締役3名(委員長含む)と代表取締役CEO及び、代表取締役社長兼COOから構成され、CEOおよび社長の選解任、取締役会の構成及び選任や当社グループの経営体制、重要な経営ポストの継承計画について客観的かつ長期的に検討を行っております。
2019年度は、新しい経営体制のフォローアップや評価、取締役会の構成および選任、次世代経営候補者の育成状況や研修などの取り組みのモニタリングを行いました。また、 CEOおよび社長から同委員会に対する年間経営活動報告が行われ、経営トップの選解任を審議し取締役会に提言を行います。
<役員報酬体系の合理性と透明性の確保(報酬諮問委員会の取り組み)>当社は2014年度に独立社外取締役を委員長とし、独立社外取締役3名(委員長含む)と代表取締役CEO及び、代表取締役社長兼COOから構成される報酬諮問委員会を設置し、外部機関からデータおよび助言を受けて、毎年度の業績などを考慮しながら合理性、透明性、かつ競争力を持った報酬制度および報酬額、役員報酬の基本方針の取締役会への答申を行っております。
2019年度は、例年通り、ベンチマークデータに基づき報酬制度および報酬額、または役員報酬の基本方針の妥当性の確認を行うとともに、中期経営計画と報酬制度との連動性の確認などを行いました。
<当社取締役会の実効性評価の結果概要について>当社取締役会では、毎年、取締役会の実効性評価を実施し、実効性の向上を通じて、当社の企業価値の最大化を図っております。2019年度の実効性評価の結果、当社の取締役会は有効に機能しているとの結論を得ました。今後も実効性評価を実施してまいります。
<政策保有株式の縮減>個別の政策保有株式につき、保有目的、リスク・リターン、資本コスト等を考慮し、取締役会において政策保有株式の保有状況および保有方針を確認し、従来の方針通りに縮減を行い、最適化を進めております。
<危機管理の取り組み>新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、2020年1月下旬より社長をトップとする新型コロナウイルス対策会議を設置し、当初は中国における情報収集や現地法人の対応決定、支援活動を実施致しました。日本、そして世界中への感染拡大が明らかになり、2月中旬にBCP(事業継続計画)会議体へ移行致しました。当社グループは世界の基幹産業を支える素材産業として、日本、アジアおよび欧米の当社グループの主要製造・研究・開発拠点の稼働を維持するための行動規範の制定、保護具の供給および着用の徹底、外部訪問者の遮断、全世界の従業員との情報共有、各拠点での在宅勤務環境の整備などの施策を2月中旬に完了させました。BCP会議体の内容は、社外取締役および監査役との共有も図っております。
世界各拠点の文化の違いや独自性を尊重しつつ、BCP会議体でのスピーディな情報の一元管理を行い適切なアクションに繋げることで、危機管理および事業継続に努めています。
以上のような課題に対して確実に取り組み、CEOおよび社長のリーダーシップの下、グローバルに遅滞なく遂行してまいります。
なお、業績見通し等の将来に関する記述は、当社が現在入手している情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づいており、その達成を当社として約束する趣旨のものではありません。また、実際の業績等は様々な要因により大きく異なる可能性があります。