有価証券報告書-第56期(2022/01/01-2022/12/31)

【提出】
2023/03/29 13:00
【資料】
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【項目】
141項目

研究開発活動

当社グループにおける研究開発の基本方針は、需要業界の「技術革新」への迅速な対応と、「環境負荷の低減」及び「省資源」に貢献できる製品を開発することであります。
当社グループにおける研究開発活動は、製紙用薬品事業については千葉研究所、市原研究所、樹脂事業については明石研究所、新綜工業股份有限公司、化成品事業はKJケミカルズ株式会社八代工場において行っております。研究開発活動に従事する従業員は170名であり、連結ベースの総従業員数の23%にあたります。
当連結会計年度における一般管理費及び総製造費用に含まれる研究開発費の総額は1,723百万円でありました。なお、各セグメント別の主な研究開発成果は次の通りであります。
(1) 製紙用薬品事業
国内外のお客様において、多様化するニーズを汲み上げ、それに対応した製品の開発・改良、及び最適処方の検討を行いました。特に需要が堅調な段ボール原紙向けの乾燥紙力剤においては、お客様の抄紙条件を解析し、高い紙力増強効果による紙力剤原単位の削減のみならず、抄紙機の生産性向上、具体的には乾燥性の向上による蒸気原単位削減/抄紙スピードのアップ、系内の浄化による各所の汚れ問題を解決する改良品/処方の開発を行いました。
また、新たなマシンが増設されている衛生用紙向けの薬品においては、安定なクレーピングを可能にすることで、衛生用紙の安定生産に寄与する新たなクレープ剤を開発しました。
近年の「脱プラ紙化」のニーズへの対応として、紙に耐水性、防湿性、耐油性等を付与する新たな塗工剤を開発し、お客様へのサンプル配布を行いました。特に耐油剤においては、人体への安全性の懸念から、フッ素系の耐油剤の使用を禁止する動きが出始めており、その対応として、バイオマス由来の原料を使用した新たな非フッ素系耐油剤を開発、2022年10月に幕張メッセで開催された紙パルプ年次大会で発表し、大きな反響を頂きました。現在、多くのお客様で実用化に向けてご評価を頂いております。また、主力の乾燥紙力剤、湿潤紙力剤、サイズ剤については、食品容器用の紙に使用されることを想定して、各国のレギュレーションに則した製品の開発、及び登録作業を進めました。
その他、微生物に起因するトラブルを、従来の「殺菌」とは異なるコンセプトで解決する薬品である「バイオフィルムコントロール剤」を開発し、「水」に関連する種々の業界のお客様と共同研究を行っております。RO膜の閉塞防止、冷却塔でのバイオフィルム付着防止、抗菌塗工剤、トイレタリー関連、各種洗浄剤等々、幅広くご検討頂いており、その中で、2023年2月には、医療機器開発ベンチャー企業の株式会社ニューロシューティカルズ(NCI)様と共同開発した医療機器用のバイオフィルム除去剤「BAKU」を、NCIのジョイント・ベンチャーである株式会社SCOPION様より発売いたしました。
当事業における研究開発費の総額は717百万円であります。
(2) 樹脂事業
顧客からの環境対応製品のニーズの高まりに対応し、保有する水性インキ用樹脂の技術を日本・海外で展開を進めるための開発を行うとともに、この技術を基に脱プラスチック用機能性コート剤用樹脂や記録材料用添加剤の開発にも注力しました。
また、新たな事業領域に進出を目標とした水性塗料用樹脂や接着剤用樹脂の開発も行いました。
当事業における研究開発費の総額は446百万円であります。
(3) 化成品事業
環境、安全性に配慮した機能性モノマー並びに高機能性オリゴマーとその製法開発、並びに、低毒性な機能性溶剤とその製法の開発に取り組むと共に、これら開発品の市場開発に取り組んでおります。
2022年度は、バイオマスモノマー、高分子光開始剤の開発を行い、UV硬化樹脂分野、粘着剤分野等に向けて市場開発に取り組んでおります。
当事業における研究開発費の総額は217百万円であります。
(4) 新規開発
事業領域拡大を目指して、セルロースナノファイバー(CNF)と銀ナノワイヤの研究開発を進めました。CNFについては製造方法の抜本的な改良に取り組み、製造コストの大幅な削減への道筋をつけると共に顧客のニーズに合わせた製品開発と性能向上に取り組みました。銀ナノワイヤについては用途開拓と用途に合わせた評価技術の獲得、そして、顧客との共同開発による実用化を推進しました。
新規開発に係る研究開発費の総額は340百万円であり、報告セグメントに帰属しない全社費用であります。