有価証券報告書-第77期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
有報資料
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営の基本方針
当社グループは、創立以来、「信は萬事の基と為す」を経営の基本理念として、信頼を原点としたFace to Face(お客さまとの対面での直接対話型)のビジネスモデルと健全経営による安定的成長確保を経営の基本方針としております。この基本方針を堅持しながら、当社グループしか提供できない商品やサービスの独自性を追求いたしてまいります。これらの事業活動を通じて、お客さまを含め国民全体の資産形成に資することで社会全体に付加価値をもたらし、ひいては、国民経済全体の発展に貢献することを念頭に置きながら、持続可能な事業を展開することに努めてまいります。
当社グループは、自らが採択した「お客さま本位の業務運営に関する方針」に基づき、お客さまの立場に立って、親切・丁寧な対応を心がけるとともに、お客さまの利益を最優先に考え、それぞれのニーズにあった商品やサービスを提供してまいります。
また、株主資本の効率的な運用という観点から、当社グループを取り巻く環境の変化を的確に捉えながら、適切なリスク管理の下、新しい収益分野や投資対象への取り組みを推進し、収益力の向上と収益源の多様化を図ってまいります。
(2)中長期の基本戦略
①Face to Faceのビジネスモデルの追求
当社グループを取り巻く競争環境はさらに厳しくなるという認識の下、オンライン証券会社や他の中堅証券会社との差別化を図るため、お客さまとの直接対話を行う対面による営業スタイルを堅持いたします。更には、その営業スタイルの質的な向上を図るとともに、他社では提供できない「多様な商品によるマーケット変化を捉えた機動的な運用提案」を行うことで、お客さまからの信頼を獲得するとともに、お客さまの投資パフォーマンスの向上を目指してまいります。これによって、当社グループの提供する商品やサービスを求める新しい顧客層を開拓するとともに、全体的な預り資産の増加を図り、顧客基盤の拡大に努めてまいります。
②収益力の向上と収益源の多様化
当社グループの収益の中心は、証券市場における仲介業者として得られる手数料収入等でありますが、これらは市場環境の変化の影響を大きく受けやすいものとなっております。当社グループは、収益力の向上と収益源の多様化の観点から、これまでも株主資本の効率的かつ積極的な運用を行ってまいりました。今後も当社グループの収益及び財務の安定性を確保するために、引き続き自己資金を有効活用することで、収益源の多様化を図るとともに、安定的かつ持続的な収益の確保に努めてまいります。
③コンプライアンス及びリスク管理体制の強化
当社グループは、「お客さま本位の業務運営に関する方針」を徹底し、役職員全員がより高い倫理観に基づいて業務を遂行するとともに、コンプライアンス体制の更なる強化を図ってまいります。また、サイバー攻撃のリスクの高まりを受けて、当社グループといたしましても、システム上の必要な対策を講じるとともに、役職員に対する研修や訓練を実施することで、セキュリティ強化を図ってまいります。当社グループは、新たに認識されたリスクや予想されるリスクに対して的確に対応し、適宜適切に対応策を取りまとめるなどリスク管理の強化を図ってまいります。今後もこれらコンプライアンス及びリスク管理体制の強化に向けて不断の努力をしてまいる所存であります。
④企業の社会的責任の遂行及びガバナンス体制の充実
当社グループは、全てのステークホルダーの信頼に応え、資本市場の一層の機能強化に資するべく、与えられた役割や責務を十分に果たすとともに、他社では提供できない付加価値を生み出すことで社会全体の発展に貢献してまいります。更には、企業としての社会的責任を十分に認識し、社員が能力や個性を発揮して活躍できる環境を整備するとともに、事業以外の分野においても、社会との関りを重視し、教育活動、地域社会への貢献、環境への取り組み等に積極的に参画してまいります。また、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図るため、より充実したコーポレート・ガバナンス体制を構築してまいります。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
①顧客基盤・預り資産の拡大
当社グループは、国内外の証券市場で売買される金融商品の販売をその事業基盤としていることから、その顧客基盤や預り資産についても、市場環境によって大きく左右されると考えております。2020年3月期においては、顧客口座数及び預り資産の額は低下傾向にありました。顧客基盤や預り資産について、単にその水準をもって経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標とすることは困難でありますが、それらを当社グループの収益基盤の大きな柱として認識しつつ、加えて、お客さまの属性や投資行動等を詳細に分析する仕組みを検討し、そこから得られる様々なデータを活用した客観的な指標の構築に向け、さらに検討を続けてまいります。
②顧客満足度の向上
当社グループの持続的な成長のためには、提供する商品やサービスに対するお客さまの評価や満足度の向上が不可欠であります。お客さまの満足度を測る指標は、お客さまの投資パフォーマンスの向上、提供されるコンサルティングサービスの評価など、様々であり、一概に指標で提示するのは困難でありますが、お客さまの満足度を評価する指標として、「既存のお客さまによる新規顧客のご紹介」に関するものをこれまでも採用してまいりました。
新規に口座開設をしていただいたお客さまのうち、口座開設の契機が既存のお客さまによるご紹介の比率は高水準(およそ半数)にありますが、このトレンドを今後も維持できるように既存のお客さま評価や満足度をさらに高めるとともに、当社グループ自身の認知度を向上させ、新規のお客さまの獲得に努めてまいります。
一方で、お客さま満足度の測定には近年様々な手法が構築されていることから、当社グループにおいても基礎的な調査を実施しております。今後は、実証実験を通じてその有効性を確認し、どのような測定手法が適切かを判断してまいります。
③収益性
当社グループの収益性を評価する指標として考えられるものは、以下のとおりであります。
イ.資本コストと資本利益率
当社グループの資本コストは、株主資本コスト(約5.3%)及び加重平均資本コスト(約4.4%)であります。当社グループとして、当社の自己資本利益率(ROE)や投下資本利益率(ROIC)が資本コストを上回ることを目標といたします。2020年3月期の各指標の実績につきましては、自己資本利益率(ROE)は△1.3%、投下資本利益率(ROIC)は△1.5%となり、目標を下回りました。
ロ.各収益源の利益への貢献度合(安定性)
当社グループは、市場環境に大きく影響を受けない安定した収益構造を確保するために、収益構造の多様化を図ってまいります。その成果を判断する指標としては、手数料収入、トレーディング収益、金融収支等の安定的なキャッシュ・フローがバランスよく貢献していることを検証することとしております。なお、2020年3月期においては、受入手数料収入が株式市場の低迷による受入手数料の減少(前期比4億80百万円減少(25.5%減少))と新型コロナウイルス感染症の拡大による新興国債券市場の混乱の影響を受け、トレーディング損益が減少(前期比18億99百万円減少(70.9%減少))しております。
(4)経営環境
当社の経営者は、当社の経営の基本方針に則った中長期の経営戦略を実行するうえで、以下に掲げる環境事象が当社経営に影響を及ぼすと考えております。
2020年の国内外の経済情勢は、米中貿易摩擦の影響を受けつつも米中協議の進展から緩やかに回復すると見込まれておりました。しかし、2020年2月に入ると新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な蔓延により生産・消費が一気に冷え込み、世界経済は一転して世界恐慌以来の景気後退に直面することとなりました。そのような状況下、2020年2月下旬から、株式市場や債券市場が急落し、特に、新興国市場においては、投資資金の流出により大きく下落することとなりました。
今後の世界経済については、2020年6月に公表された世界銀行の世界経済予測によると、新型コロナウイルス感染症の世界的流行と経済活動の停止措置により、2020年の世界経済成長率は△5.2%とされ、これは第二次世界大戦以来最悪の景気後退であるとされております。ベースライン予測によると、2021年には世界経済は4.2%成長に回復するとされております。また、同予測において、日本の経済成長率は、2020年が△6.1%とされ、2021年には2.5%に回復するとされております。
国内の金融・証券市場においては、日銀による国債買い入れについて上限のめどの撤廃や、社債・CPの買い入れ枠の拡大、ETFの購入目標額の引き上げ等の施策が導入されましたが、今後の経済政策や新型コロナウイルス感染症の影響による企業業績の下振れなどの影響を受けるものと考えられ、当面はその動向を注視していく必要があり、そのため、金融商品取引業者の事業環境については引き続き厳しいものとなると考えております。
そのような中で、オンライン取引業者による手数料の無料化の動き、大手業者による預り資産の拡大戦略、顧客層の高齢化、更には新型コロナウイルス感染症の収束後の投資行動の変容の可能性など、当社の持続的発展の脅威となる要因は多数あり、当社グループを取り巻く競争環境はさらに厳しくなると考えられます。
わが国では、国民の安定的な資産形成を実現する資金の流れへの転換を図る、いわゆる「貯蓄から資産形成」の方針が打ち出されております。更には、わが国では少子高齢化の流れが急速に早まっていることを背景に、若年層の資産形成を促進するための方策として、NISA制度やつみたてNISAの導入等が実施されるとともに、資産形成の重要性や投資の意義などを理解するための金融リテラシーの向上に向けた諸施策が採用されております。一方、国民の高齢化は着実に進行しており、それに合わせて、高齢者の資産運用のためのフィナンシャル・ジェロントロジー(金融老年学)という研究も広がりを見せつつあります。すなわち、健康寿命の延びに合わせ、資産寿命の延伸を目指そうとする動きが高まりつつあります。したがって、高年齢層の金融リテラシーの向上のための施策、資産を保全するための運用に関する適切なアドバイス、これらの世代に適合した商品の提供といった新しいニーズが生まれつつあります。また、当社の顧客層を形成する富裕層の世帯数及び保有する金融資産額が継続して増加しているという調査結果もあります。
このような環境において、一定程度の資産規模を保持しているものの、人生100年時代を見据えた老後資金の確保のためにそれら資産の運用ニーズが生じている中高年齢層向けの商品やサービスを充実させることによって新たな顧客層の取り込みを行うという視点でのビジネスの拡大の可能性は一層拡大すると考えております。また、高年齢層に対しては、資産寿命を延伸させるための安定的な資産運用や資産相続アドバイスなど、総合的なコンサルティングサービスに対するニーズが高まっていると考えております。このような状況を踏まえますと、富裕層向けの金融サービスをその事業の柱としてきた当社グループとして、その独自性をさらに追求することで、その存在意義が高まり、厳しい競争環境下においても、持続可能な事業展開やビジネス拡大の可能性があると考えております。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①サービスの向上
オンライン証券における手数料の無料化の動きや、銀行系証券会社の業容拡大等の中で、当社グループが他社との差別化を図るためのビジネスモデルの根幹は、他社では提供できない商品やサービスをFace to Faceでお客さまにいかに提供できるかというところにあります。その観点から、お客さまのニーズに合った商品の品揃えが充実していることが肝要であります。そのため、営業活動を高度化させるツールの活用やお客さま満足度調査を行うことにより、お客さまのニーズを細かく把握し分析すること等が課題となります。それに加えて、相続など幅広いコンサルティングサービスの内容を充実させ、かつ、お客さまからの信頼を得る必要があります。そのためには、営業員をはじめとして、役職員全体の教育・人材育成が重要な課題であります。役職員がその業務を遂行するうえで必要とされる様々な資格の取得を支援するとともに、若年研修、リーダー研修などの研修プログラムを充実させ、お客さまの期待に応えられるような人材の育成や拡大を図ってまいります。
②顧客基盤の拡大
当社グループが今後とも安定的に成長していくためには、顧客基盤の維持拡大が不可欠であると認識しております。既存のお客さまの高齢化に伴い、一層のお客さま本位の業務運営を行うことで、お客さまのニーズをより深く把握してまいります。また、保有資産の次世代へのスムースな継承のための助言や当社グループが提供する商品やサービスを必要とする新たな顧客層の掘り起しが喫緊の課題であります。そのためには、商品やサービスの量的質的な向上を図るとともに、当社グループの独自性を評価いただける潜在的なお客さま層の開拓が必要であると考えております。このためには、新たなマーケティング手法を用い、対象となるユニバースの多様化を図ることにより、お客さま層の拡大を図ることが課題となります。
③リスク管理体制の強化
今後の金融市場の状況がさらに不透明になると予想される中で、お客さまに販売する金融商品や自己で保有する金融商品に関するリスク・リターンの管理はこれまで以上に重要となってまいります。お客さまに販売する金融商品については、内在するリスク・リターンの関係をより分かりやすく説明することで、リスク・リターンの双方を十分に理解していただくことが課題となります。また、自己資金を利用した運用については、各種の指標を使った特徴の把握、パフォーマンスの分析、多様なニュースソースからの情報収集、リスク分析などの一層の強化を行ってまいります。
④ESGという視点での企業戦略の構築
従来の財務情報だけではなく、環境・社会・ガバナンス(ESG)要素も考慮した投資であるESG投資が世界的に注目されることになり、中長期の投資手法として一定の評価がなされるようになってきております。当社の経営戦略として、ESGをどのように取り込み、事業につなげていくかを検討することは今後の重要な課題であります。中長期の観点から、お客さまのESG投資に係るニーズの把握やそれに適う金融商品の提供等の検討を行ってまいります。
また、当社グループ自身の取り組みにおいては、自ら提供する金融サービスを通して国民の資産形成や金融リテラシー向上に貢献することが重要な課題であると考えております。さらに、質の高い教育や研究を支援する目的で、学術活動及び金融・経済等に係る教育分野への寄附を行っております。これらは、SDGsの目標3(すべての人に健康と福祉を)及び目標4(質の高い教育をみんなに)に合致するものと考えております。
株主、投資家のみならず、全てのステークホルダーにとって有益となる効果をもたらし、中長期的な視点で企業価値向上につながるESG活動に今後も積極的に取り組んでまいります。
⑤働き方改革
当社グループが将来も安定的に業務を継続するためには、人的資本の確保が重要であると考えております。そのためには、当社グループで働く全ての役職員にとって働きやすい職場環境を確保する必要があると考えております。その考え方に基づき、これまでも「長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現等」を推進するとともにハラスメントの防止やメンタルヘルスも含めた役職員の健康管理の増進等に取り組んでまいりました。
今後も、これらの取り組みを継続するとともに、適材適所の人員配置や差別のない人材登用等、あらゆる面で役職員が働きやすい職場環境を整備することを課題として認識し注力してまいります。
⑥社会的な認知度の向上
より優秀な人材の確保、当社をご利用いただくお客さまの拡大、安定的な株主構造の構築及びビジネスパートナーとの良好な関係の維持などを達成するためには、より一層の当社グループの社会的な認知度の向上が必要となります。そのため、当社の事業を通した国民の資産形成に関する理念や、学術振興に係る分野での活動等など、社会貢献活動について、関係者の皆さまに広くお伝えしていく必要があります。
⑦新型コロナウイルス感染症への対応
国内における新型コロナウイルス感染症が拡大する中、証券会社には社会の安定維持のために必要とされる金融資本市場の円滑な運営を担う役割が求められております。そのため、お客さまと全役職員の健康と安全を最優先に考えつつ、必要な業務を継続することが当社グループの使命と考えており、引き続き、感染防止の体制を強化し、お客さまのお取引機会を確保することに努めます。また、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、お客さまへの情報提供手段の拡充や、お客さまのリスクに対する許容度の変化に対応した商品の提供など、現下の状況におけるお客さまのニーズをきめ細かく把握し、的確に対応する必要があります。当社グループが培ってきた、信頼を原点としたFace to Face(お客さまとの対面での直接対話型)のビジネスモデルをさらに進化させ、これらニーズに応えてまいりたいと考えております。
(1)経営の基本方針
当社グループは、創立以来、「信は萬事の基と為す」を経営の基本理念として、信頼を原点としたFace to Face(お客さまとの対面での直接対話型)のビジネスモデルと健全経営による安定的成長確保を経営の基本方針としております。この基本方針を堅持しながら、当社グループしか提供できない商品やサービスの独自性を追求いたしてまいります。これらの事業活動を通じて、お客さまを含め国民全体の資産形成に資することで社会全体に付加価値をもたらし、ひいては、国民経済全体の発展に貢献することを念頭に置きながら、持続可能な事業を展開することに努めてまいります。
当社グループは、自らが採択した「お客さま本位の業務運営に関する方針」に基づき、お客さまの立場に立って、親切・丁寧な対応を心がけるとともに、お客さまの利益を最優先に考え、それぞれのニーズにあった商品やサービスを提供してまいります。
また、株主資本の効率的な運用という観点から、当社グループを取り巻く環境の変化を的確に捉えながら、適切なリスク管理の下、新しい収益分野や投資対象への取り組みを推進し、収益力の向上と収益源の多様化を図ってまいります。
(2)中長期の基本戦略
①Face to Faceのビジネスモデルの追求
当社グループを取り巻く競争環境はさらに厳しくなるという認識の下、オンライン証券会社や他の中堅証券会社との差別化を図るため、お客さまとの直接対話を行う対面による営業スタイルを堅持いたします。更には、その営業スタイルの質的な向上を図るとともに、他社では提供できない「多様な商品によるマーケット変化を捉えた機動的な運用提案」を行うことで、お客さまからの信頼を獲得するとともに、お客さまの投資パフォーマンスの向上を目指してまいります。これによって、当社グループの提供する商品やサービスを求める新しい顧客層を開拓するとともに、全体的な預り資産の増加を図り、顧客基盤の拡大に努めてまいります。
②収益力の向上と収益源の多様化
当社グループの収益の中心は、証券市場における仲介業者として得られる手数料収入等でありますが、これらは市場環境の変化の影響を大きく受けやすいものとなっております。当社グループは、収益力の向上と収益源の多様化の観点から、これまでも株主資本の効率的かつ積極的な運用を行ってまいりました。今後も当社グループの収益及び財務の安定性を確保するために、引き続き自己資金を有効活用することで、収益源の多様化を図るとともに、安定的かつ持続的な収益の確保に努めてまいります。
③コンプライアンス及びリスク管理体制の強化
当社グループは、「お客さま本位の業務運営に関する方針」を徹底し、役職員全員がより高い倫理観に基づいて業務を遂行するとともに、コンプライアンス体制の更なる強化を図ってまいります。また、サイバー攻撃のリスクの高まりを受けて、当社グループといたしましても、システム上の必要な対策を講じるとともに、役職員に対する研修や訓練を実施することで、セキュリティ強化を図ってまいります。当社グループは、新たに認識されたリスクや予想されるリスクに対して的確に対応し、適宜適切に対応策を取りまとめるなどリスク管理の強化を図ってまいります。今後もこれらコンプライアンス及びリスク管理体制の強化に向けて不断の努力をしてまいる所存であります。
④企業の社会的責任の遂行及びガバナンス体制の充実
当社グループは、全てのステークホルダーの信頼に応え、資本市場の一層の機能強化に資するべく、与えられた役割や責務を十分に果たすとともに、他社では提供できない付加価値を生み出すことで社会全体の発展に貢献してまいります。更には、企業としての社会的責任を十分に認識し、社員が能力や個性を発揮して活躍できる環境を整備するとともに、事業以外の分野においても、社会との関りを重視し、教育活動、地域社会への貢献、環境への取り組み等に積極的に参画してまいります。また、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図るため、より充実したコーポレート・ガバナンス体制を構築してまいります。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
①顧客基盤・預り資産の拡大
当社グループは、国内外の証券市場で売買される金融商品の販売をその事業基盤としていることから、その顧客基盤や預り資産についても、市場環境によって大きく左右されると考えております。2020年3月期においては、顧客口座数及び預り資産の額は低下傾向にありました。顧客基盤や預り資産について、単にその水準をもって経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標とすることは困難でありますが、それらを当社グループの収益基盤の大きな柱として認識しつつ、加えて、お客さまの属性や投資行動等を詳細に分析する仕組みを検討し、そこから得られる様々なデータを活用した客観的な指標の構築に向け、さらに検討を続けてまいります。
②顧客満足度の向上
当社グループの持続的な成長のためには、提供する商品やサービスに対するお客さまの評価や満足度の向上が不可欠であります。お客さまの満足度を測る指標は、お客さまの投資パフォーマンスの向上、提供されるコンサルティングサービスの評価など、様々であり、一概に指標で提示するのは困難でありますが、お客さまの満足度を評価する指標として、「既存のお客さまによる新規顧客のご紹介」に関するものをこれまでも採用してまいりました。
新規に口座開設をしていただいたお客さまのうち、口座開設の契機が既存のお客さまによるご紹介の比率は高水準(およそ半数)にありますが、このトレンドを今後も維持できるように既存のお客さま評価や満足度をさらに高めるとともに、当社グループ自身の認知度を向上させ、新規のお客さまの獲得に努めてまいります。
一方で、お客さま満足度の測定には近年様々な手法が構築されていることから、当社グループにおいても基礎的な調査を実施しております。今後は、実証実験を通じてその有効性を確認し、どのような測定手法が適切かを判断してまいります。
③収益性
当社グループの収益性を評価する指標として考えられるものは、以下のとおりであります。
イ.資本コストと資本利益率
当社グループの資本コストは、株主資本コスト(約5.3%)及び加重平均資本コスト(約4.4%)であります。当社グループとして、当社の自己資本利益率(ROE)や投下資本利益率(ROIC)が資本コストを上回ることを目標といたします。2020年3月期の各指標の実績につきましては、自己資本利益率(ROE)は△1.3%、投下資本利益率(ROIC)は△1.5%となり、目標を下回りました。
ロ.各収益源の利益への貢献度合(安定性)
当社グループは、市場環境に大きく影響を受けない安定した収益構造を確保するために、収益構造の多様化を図ってまいります。その成果を判断する指標としては、手数料収入、トレーディング収益、金融収支等の安定的なキャッシュ・フローがバランスよく貢献していることを検証することとしております。なお、2020年3月期においては、受入手数料収入が株式市場の低迷による受入手数料の減少(前期比4億80百万円減少(25.5%減少))と新型コロナウイルス感染症の拡大による新興国債券市場の混乱の影響を受け、トレーディング損益が減少(前期比18億99百万円減少(70.9%減少))しております。
(4)経営環境
当社の経営者は、当社の経営の基本方針に則った中長期の経営戦略を実行するうえで、以下に掲げる環境事象が当社経営に影響を及ぼすと考えております。
2020年の国内外の経済情勢は、米中貿易摩擦の影響を受けつつも米中協議の進展から緩やかに回復すると見込まれておりました。しかし、2020年2月に入ると新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な蔓延により生産・消費が一気に冷え込み、世界経済は一転して世界恐慌以来の景気後退に直面することとなりました。そのような状況下、2020年2月下旬から、株式市場や債券市場が急落し、特に、新興国市場においては、投資資金の流出により大きく下落することとなりました。
今後の世界経済については、2020年6月に公表された世界銀行の世界経済予測によると、新型コロナウイルス感染症の世界的流行と経済活動の停止措置により、2020年の世界経済成長率は△5.2%とされ、これは第二次世界大戦以来最悪の景気後退であるとされております。ベースライン予測によると、2021年には世界経済は4.2%成長に回復するとされております。また、同予測において、日本の経済成長率は、2020年が△6.1%とされ、2021年には2.5%に回復するとされております。
国内の金融・証券市場においては、日銀による国債買い入れについて上限のめどの撤廃や、社債・CPの買い入れ枠の拡大、ETFの購入目標額の引き上げ等の施策が導入されましたが、今後の経済政策や新型コロナウイルス感染症の影響による企業業績の下振れなどの影響を受けるものと考えられ、当面はその動向を注視していく必要があり、そのため、金融商品取引業者の事業環境については引き続き厳しいものとなると考えております。
そのような中で、オンライン取引業者による手数料の無料化の動き、大手業者による預り資産の拡大戦略、顧客層の高齢化、更には新型コロナウイルス感染症の収束後の投資行動の変容の可能性など、当社の持続的発展の脅威となる要因は多数あり、当社グループを取り巻く競争環境はさらに厳しくなると考えられます。
わが国では、国民の安定的な資産形成を実現する資金の流れへの転換を図る、いわゆる「貯蓄から資産形成」の方針が打ち出されております。更には、わが国では少子高齢化の流れが急速に早まっていることを背景に、若年層の資産形成を促進するための方策として、NISA制度やつみたてNISAの導入等が実施されるとともに、資産形成の重要性や投資の意義などを理解するための金融リテラシーの向上に向けた諸施策が採用されております。一方、国民の高齢化は着実に進行しており、それに合わせて、高齢者の資産運用のためのフィナンシャル・ジェロントロジー(金融老年学)という研究も広がりを見せつつあります。すなわち、健康寿命の延びに合わせ、資産寿命の延伸を目指そうとする動きが高まりつつあります。したがって、高年齢層の金融リテラシーの向上のための施策、資産を保全するための運用に関する適切なアドバイス、これらの世代に適合した商品の提供といった新しいニーズが生まれつつあります。また、当社の顧客層を形成する富裕層の世帯数及び保有する金融資産額が継続して増加しているという調査結果もあります。
このような環境において、一定程度の資産規模を保持しているものの、人生100年時代を見据えた老後資金の確保のためにそれら資産の運用ニーズが生じている中高年齢層向けの商品やサービスを充実させることによって新たな顧客層の取り込みを行うという視点でのビジネスの拡大の可能性は一層拡大すると考えております。また、高年齢層に対しては、資産寿命を延伸させるための安定的な資産運用や資産相続アドバイスなど、総合的なコンサルティングサービスに対するニーズが高まっていると考えております。このような状況を踏まえますと、富裕層向けの金融サービスをその事業の柱としてきた当社グループとして、その独自性をさらに追求することで、その存在意義が高まり、厳しい競争環境下においても、持続可能な事業展開やビジネス拡大の可能性があると考えております。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①サービスの向上
オンライン証券における手数料の無料化の動きや、銀行系証券会社の業容拡大等の中で、当社グループが他社との差別化を図るためのビジネスモデルの根幹は、他社では提供できない商品やサービスをFace to Faceでお客さまにいかに提供できるかというところにあります。その観点から、お客さまのニーズに合った商品の品揃えが充実していることが肝要であります。そのため、営業活動を高度化させるツールの活用やお客さま満足度調査を行うことにより、お客さまのニーズを細かく把握し分析すること等が課題となります。それに加えて、相続など幅広いコンサルティングサービスの内容を充実させ、かつ、お客さまからの信頼を得る必要があります。そのためには、営業員をはじめとして、役職員全体の教育・人材育成が重要な課題であります。役職員がその業務を遂行するうえで必要とされる様々な資格の取得を支援するとともに、若年研修、リーダー研修などの研修プログラムを充実させ、お客さまの期待に応えられるような人材の育成や拡大を図ってまいります。
②顧客基盤の拡大
当社グループが今後とも安定的に成長していくためには、顧客基盤の維持拡大が不可欠であると認識しております。既存のお客さまの高齢化に伴い、一層のお客さま本位の業務運営を行うことで、お客さまのニーズをより深く把握してまいります。また、保有資産の次世代へのスムースな継承のための助言や当社グループが提供する商品やサービスを必要とする新たな顧客層の掘り起しが喫緊の課題であります。そのためには、商品やサービスの量的質的な向上を図るとともに、当社グループの独自性を評価いただける潜在的なお客さま層の開拓が必要であると考えております。このためには、新たなマーケティング手法を用い、対象となるユニバースの多様化を図ることにより、お客さま層の拡大を図ることが課題となります。
③リスク管理体制の強化
今後の金融市場の状況がさらに不透明になると予想される中で、お客さまに販売する金融商品や自己で保有する金融商品に関するリスク・リターンの管理はこれまで以上に重要となってまいります。お客さまに販売する金融商品については、内在するリスク・リターンの関係をより分かりやすく説明することで、リスク・リターンの双方を十分に理解していただくことが課題となります。また、自己資金を利用した運用については、各種の指標を使った特徴の把握、パフォーマンスの分析、多様なニュースソースからの情報収集、リスク分析などの一層の強化を行ってまいります。
④ESGという視点での企業戦略の構築
従来の財務情報だけではなく、環境・社会・ガバナンス(ESG)要素も考慮した投資であるESG投資が世界的に注目されることになり、中長期の投資手法として一定の評価がなされるようになってきております。当社の経営戦略として、ESGをどのように取り込み、事業につなげていくかを検討することは今後の重要な課題であります。中長期の観点から、お客さまのESG投資に係るニーズの把握やそれに適う金融商品の提供等の検討を行ってまいります。
また、当社グループ自身の取り組みにおいては、自ら提供する金融サービスを通して国民の資産形成や金融リテラシー向上に貢献することが重要な課題であると考えております。さらに、質の高い教育や研究を支援する目的で、学術活動及び金融・経済等に係る教育分野への寄附を行っております。これらは、SDGsの目標3(すべての人に健康と福祉を)及び目標4(質の高い教育をみんなに)に合致するものと考えております。
株主、投資家のみならず、全てのステークホルダーにとって有益となる効果をもたらし、中長期的な視点で企業価値向上につながるESG活動に今後も積極的に取り組んでまいります。
⑤働き方改革
当社グループが将来も安定的に業務を継続するためには、人的資本の確保が重要であると考えております。そのためには、当社グループで働く全ての役職員にとって働きやすい職場環境を確保する必要があると考えております。その考え方に基づき、これまでも「長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現等」を推進するとともにハラスメントの防止やメンタルヘルスも含めた役職員の健康管理の増進等に取り組んでまいりました。
今後も、これらの取り組みを継続するとともに、適材適所の人員配置や差別のない人材登用等、あらゆる面で役職員が働きやすい職場環境を整備することを課題として認識し注力してまいります。
⑥社会的な認知度の向上
より優秀な人材の確保、当社をご利用いただくお客さまの拡大、安定的な株主構造の構築及びビジネスパートナーとの良好な関係の維持などを達成するためには、より一層の当社グループの社会的な認知度の向上が必要となります。そのため、当社の事業を通した国民の資産形成に関する理念や、学術振興に係る分野での活動等など、社会貢献活動について、関係者の皆さまに広くお伝えしていく必要があります。
⑦新型コロナウイルス感染症への対応
国内における新型コロナウイルス感染症が拡大する中、証券会社には社会の安定維持のために必要とされる金融資本市場の円滑な運営を担う役割が求められております。そのため、お客さまと全役職員の健康と安全を最優先に考えつつ、必要な業務を継続することが当社グループの使命と考えており、引き続き、感染防止の体制を強化し、お客さまのお取引機会を確保することに努めます。また、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、お客さまへの情報提供手段の拡充や、お客さまのリスクに対する許容度の変化に対応した商品の提供など、現下の状況におけるお客さまのニーズをきめ細かく把握し、的確に対応する必要があります。当社グループが培ってきた、信頼を原点としたFace to Face(お客さまとの対面での直接対話型)のビジネスモデルをさらに進化させ、これらニーズに応えてまいりたいと考えております。