有価証券報告書-第20期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

【提出】
2017/06/28 14:41
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111項目

業績等の概要

(1) 業績
①業績等の概況
医療業界は世界的に治療技術の発展が目覚ましい状況が続いています。遺伝子治療は免疫不全症・血液系疾患・代謝異常症などの難治性疾患に対する革新的な治療法として注目され、再生医療分野では様々な幹細胞から、再生医療等製品が創出されることが期待されています。そのような世界的な潮流の中で、当社グループは、新しい医療技術・医薬品の開発に貢献すべく、遺伝子治療・再生医療の領域において技術開発を推進するとともに、医薬品等の臨床開発を多角的に支援しています。
創業以来の中核事業であるSMO事業におきましては、従来の生活習慣病等の領域に引き続き注力するとともに、製薬企業の医薬品の開発ニーズの高い領域として、がんやその他の希少疾患にその事業領域を拡大しています。この新たな領域に対応すべく、CRC(臨床研究コーディネーター)の質を高めるため、教育研修制度や社内認定制度等の充実を図るとともに、積極的なM&Aや業務提携により、高度専門医療機関を中心とした医療機関との提携を広げています。
メディカルサポート事業においては、クリニックモールの開設・運営を通じて患者様の利便を図り通院の負担を軽減する医療環境の提案を行っています。そのほか医院・薬局などの新規開業のための診療圏の調査や物件紹介、事業計画の策定、医療機器の選定等を行い、クリニックの開業を目指す医師を強力にサポートしています。
新規事業のCRO分野ではSMO事業で培ったノウハウを活用して国内外において独自のサービスを提供しており、国内においては、大学発の新薬開発のための医師主導治験や医療機器の臨床研究を行う大学等の研究機関に向けての包括的な開発支援に加え、製薬企業の疫学研究・臨床研究を支援しています。また海外においてもオーストラリアを核として臨床試験に関わる現地企業との提携を強化することにより、早期臨床試験の実施場所として国内製薬企業等に紹介・提案を行い、グローバル開発を支援しています。
新規事業の先端医療分野では、基盤技術として持つセンダイウイルスベクター等のベクター技術を用いて、遺伝子創薬および再生医療の領域で研究開発を進めています。また、茨城県つくば市にあるGMP(Good Manufacturing Practice:医薬品等の製造管理および品質管理に関する基準)ベクター製造施設・CPC(Cell Processing Center:細胞培養加工施設)において、自社製品および開発品の製造を行うとともに、医薬品製造受託機関として、臨床用ベクター・遺伝子治療製剤・再生医療等製品を受託製造しています。
更に、当連結会計年度において、当社グループはオーストラリアにおける臨床試験事業のパイオニアであるCMAX CLINICAL RESEARCH PTY LTD(以下「CMAX」という。)の株式を取得し、平成28年12月に子会社化しました。CMAXはグローバルな大規模臨床試験やFIH試験を含む早期臨床試験等の支援において豊富な実績を有しており、同社をグループ化することで、収益面での貢献に加えて、当社グループのSMO事業やCRO事業の品質強化と事業発展に寄与するものと考えています。また、CMAXが持つ高度専門医療機関やグローバルファーマとのネットワークを活用することにより、当社グループの先端医療事業における自社開発品の研究・開発力の向上や、GMPベクター製造施設・CPCでの製造受託案件の受注機会創出が期待できます。
当社グループは、数年に渡り積極的なM&A、海外への事業展開、設備整備ならびに人材育成等、戦略的な投資を続けてまいりました。当連結会計年度におきましては、それらの投資の成果が基盤事業であるSMO事業の収益向上に現れつつあります。また、GMPベクター製造施設・CPCの稼働やCMAXのグループ化により、今後の事業発展に向けた基盤が整ってきています。
その結果、売上高は4,890百万円(前年同期比18.9%増)、営業利益は212百万円(前年同期は営業損失480百万円)、経常利益は272百万円(前年同期は経常損失807百万円)、親会社株主に帰属する当期純利益は204百万円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純損失868百万円)となりました。
②セグメントの状況
セグメントの業績は次のとおりであります。
イ SMO事業
当セグメントにおきましては、大学病院や専門医療センター等の基幹病院との提携拡大が堅調に進んでおり、がんや難治性疾患等の領域の新規受託が好調に推移しています。臨床試験の稼働件数は堅調に推移しており、その中でも特にがん領域の割合が伸びています。従来からの基盤領域である生活習慣病等の領域における受託も順調に伸張しています。また、前期から期ずれしていた大型案件については、適正な人員配置と徹底した事前準備により、開始後速やかな組入と業務支援を実施することができ、当連結会計年度の収益向上に大きく貢献しました。当セグメントにおいては、高度専門医療への臨床試験支援拡大に向けて、体制および人材の強化を図ってきましたが、そのような戦略投資が成果として現れてきています。
その結果、売上高は3,611百万円(前年同期比21.3%増)、営業利益は865百万円(前年同期比304.3%増)となりました。
ロ メディカルサポート事業
当セグメントにおきましては、開発事業者や不動産会社などと連携して、駅からのアクセスや地域における医療機関の需要など、様々な条件を満たす主に新築の物件を厳選してクリニックモールを開設しています。クリニックモールでの開業を検討する医師に対して開業支援を手がけるとともに、開業後の医療機関に臨床試験を紹介するなどその経営を多角的に支援しており、収益は堅調に推移しています。さらにクリニックモール事業で培ったネットワークや不動産取引のノウハウを活かして不動産事業を手がけています。また、新規事業の先端医療分野におけるGMPベクター製造施設・CPCを始め、当社グループの各事業の設備等を提供・整備することで、円滑な事業推進を支えています。
その結果、売上高は540百万円(前年同期比14.4%増)、営業利益は87百万円(前年同期比21.2%増)となりました。
ハ 新規事業
当セグメントにおきましては、国内CRO分野について、製薬企業・大学等向けの臨床開発支援サービスとして計画立案・モニタリング・データマネジメント・解析・総括報告書の作成等を受託しております。
一方、海外CRO分野については、国内の創薬ベンチャー企業から受注しているオーストラリアでの早期臨床試験について、顧客のニーズに合わせたサービスの提供を継続するとともに、CMAXのグループ化により事業拡大を図っています。
先端医療分野では、GMPベクター製造施設・CPCの建設を進めてまいりましたが、当連結会計年度において試運転を含む、建設に関わる全ての工程が完了しました。また、当該施設は、平成29年3月に特定細胞加工物製造許可を厚生労働省関東信越厚生局から取得し、再生医療等製品に用いる細胞加工物の培養・加工の受託が可能となりました。遺伝子創薬領域においては、虚血肢治療製剤のオーストラリアおよび中国での企業主導治験を積極的に推進しており、オーストラリアでは患者様への投与を開始しています。
再生医療領域においては、研究用iPS細胞作製キットの販売が堅調に推移しており、これに加え臨床用のiPS細胞作製キットの販売を開始しています。また、企業や研究機関等に対して、センダイウイルスベクターを用いたiPS細胞を作製する技術のライセンス活動を積極的に行っています。
その結果、売上高は723百万円(前年同期比13.4%増)、また、海外CRO分野においてクライアントの開発計画の変更により一部案件が延期となったことから、営業損失は5百万円(前年同期は営業利益88百万円)となりました。
ニ その他
その他の事業におきましては、ITインフラを活用した事業等により、売上高は14百万円(前年同期比43.9%減)、営業損失は52百万円(前年同期は営業損失173百万円)となりました。
(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末のキャッシュ・フローについては、営業活動により826百万円減少し、投資活動により1,648百万円減少し、財務活動により2,029百万円増加した結果、現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、期首残高864百万円よりも428百万円減少し、436百万円(前年同期比49.6%減)となりました。
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金は、826百万円(前年同期は271百万円の支出)となりました。
これは、たな卸資産の増加1,054百万円が主な要因となっております。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、1,648百万円(前年同期は371百万円の支出)となりました。
これは、子会社株式の取得による支出870百万円、有形固定資産の取得による支出634百万円が主な要因となっております。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は、2,029百万円(前年同期は76百万円の支出)となりました。
これは、長期借入金の借入による収入971百万円、新株予約権の行使による株式の発行による収入690百万円が主な要因となっております。
(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移
平成27年3月期平成28年3月期平成29年3月期
自己資本比率(%)65.060.950.7
時価ベースの自己資本比率(%)272.1208.7183.45
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)---
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)---

自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
(注)1 いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
2 株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
3 キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを使用しております。
4 有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利息を支払っている全ての負債を対象としております。
5 キャッシュ・フロー対有利子負債比率、インタレスト・カバレッジ・レシオは、営業キャッシュ・フローがマイナスであるため表示しておりません。