有価証券報告書-第53期(2025/04/01-2026/03/31)

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2026/06/25 14:46
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【項目】
191項目
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在(2026年3月31日)において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、次の使命を掲げております。
「創薬と医療技術の向上を支援し、人類を苦痛から解放する事を絶対的な使命とします。」
当社グループは、この使命の具現化に向け、医薬品開発分野における非臨床試験および臨床試験の受託を通じて事業基盤の確立を図ってまいりました。1957年の創業以来、長年培った研究実績や豊富な経験を活かして、最新の設備と確かな技術をもって医薬品開発をサポートしております。
一方、科学技術の進展により、医薬品の開発環境は大きく変化しました。このような新しい環境にも迅速に対応し、世界に通用するビジネスモデルを構築しております。当社の理念を共有でき優れた発想や卓越した才能を持つバイオベンチャーなどと共存共栄を図っていくTR事業にも積極的に取り組んでおります。
社会貢献と企業価値の極大化を経営の基本方針として、株主、顧客、取引先、従業員等すべてのステークホルダーの期待に応えるべく努力を重ねてまいります。
(2)目標とする経営指標
当社グループは、企業価値を向上させるため、各事業の創出する利益を極大化することを重視し、営業利益、経常利益の増大および利益率の改善を経営目標にしています。また資本収益性の指標についてはROE(自己資本利益率)とROIC(投下資本利益率)を重視し、取締役会での報告事項としております。さらに、資本コストを意識した経営を実践すべく、資本コストを上回るROEとROICの維持・向上を図るとともに、財務健全性の維持と株主還元のバランスの最適化に努めています。2026年3月期の業績をもとにした資本コストは5.3%と試算しております。β値は直近5年間の週次データをもとに0.94と算出しています。2026年3月期のROE 10.9%、ROIC 8.4%は、いずれも資本コストを上回っています。
(3)中長期的な会社の経営戦略
当社は2022年10月に「統合報告書」を発行し、その中で当社の展望として「2028Vision」を掲げ、2028年度の財務KPI(目標)として「売上高500億円、経常利益200億円、売上高経常利益率40%、配当性向30~40%」としました。さらに2023年11月発行の「統合報告書2023」において、重視する資本収益性の指標としてROEとROICを加え、2028年度の財務KPIとして、「ROE10%以上」「ROIC10%以上」を設定しました。これは現在の基幹事業であるCRO事業が引き続き業績をけん引するという考えを基に作成しております。具体的には、第1の成長エンジンである実験用NHPを用いた非臨床事業、第2の成長エンジンである新日本科学PPDで実施している国際共同治験(Global Study)の受託による臨床事業の2つのエンジンが引き続き収益をけん引することを前提としていますが、中長期的には当社が独自に開発したSMARTによる経鼻医薬品が第3の成長エンジンになると思います。簡単に真似のできないビジネスモデルによる成長エンジンを拡大および増加させることで持続的成長を推進する経営戦略を進めてまいります。
(4)経営環境
医薬品業界は、国内外において研究開発のスピードアップと費用の効率化ならびに規制当局への対応簡素化を期待してCRO(Contract Research Organization:医薬品開発業務受託機関)へのアウトソーシング(外部委託)が引き続き活発化しております。加えて核酸医薬、次世代抗体医薬、ペプチド医薬、遺伝子治療、細胞治療、再生医療などの新規創薬モダリティ(治療手段)の研究開発が本格化してきています。当社は、これら新しいタイプの治療薬の開発で需要が高まっている実験用NHPについて、自社グループ内に繁殖・供給体制を構築できている強みを持ち、実験用NHPを用いた試験の豊富な実績と知見をもとに、顧客の開発パートナーとして開発戦略に最適な非臨床試験をパッケージで提案、試験受託できることがグローバルベースでの高い評価につながっています。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
こうした中で、当社グループが対処すべき課題は次のとおりです。
① CRO事業の更なる強化
医薬品業界では、国内、海外問わず、ワクチン開発や治療薬開発が急速に進んでおります。また、次世代抗体医薬、核酸医薬、ペプチド医薬、再生医療、遺伝子治療など、創薬モダリティの多様化に伴い医薬品開発難度は上昇しており、研究開発費増加とともに迅速かつ質の高いCROへのアウトソーシングのニーズが高まっております。こうした中、次のような観点からCRO事業の強化を図ってまいります。
サービス拡充の観点から当社は、ワクチン並びに感染症治療薬開発にCROとして参画するとともに、従来型の安全性試験に加え、候補化合物選定のための創薬スクリーニングから臨床試験に至るまで一貫して開発に必要な試験を受託することで、開発者側の視点に立ったより付加価値の高いサービスを提供することを目指します。上述した創薬モダリティの多様化が進む中、当社では新規安全性評価システム(New Approach Methodologies:NAMs)として期待されているMPS(MicrophysiologicalSystem:生体模倣システム)の受託専用実験室を設置し、国内CROとして初めて受託サービスを開始しております。今後も業界の動きにいち早く対応した幅広いサービスを提供してまいります。
オペレーションの観点からは、作業工程におけるロボット化や自動化等のDX推進による内部業務プロセスの見直しと改善を進めています。医薬品開発において、非臨床試験のリードタイムを短縮することは新たな時間的価値創出につながることから、試験開始に要する時間短縮に加えて、実験終了から最終報告書草案提出までの期間短縮を目指し、AIを活用した最終報告書草案の自動作成にも取り組んでまいります。また、年々需要が高まっている新規創薬モダリティ医薬品開発に不可欠な実験用NHPのサプライチェーンマネジメントについて、日本・カンボジアのグループ関連施設における検疫・繁殖・育成能力をそれぞれ増強することにより、リスク分散を図りつつ今後の事業成長に必要な品質の高い実験動物を安定的に確保できる体制を構築していきます。2024年5月に竣工した鹿児島本社の新社屋・研究棟の本格稼働に加え、欧米顧客からの要望の高いEU規格の大型飼育ケージに特化したNHP実験施設「EU実験棟」の2027年秋頃の完成を目指し準備を進めることで、非臨床試験の大型受注に対応できる体制実現に取り組んでまいります。
人財育成の観点からは、顧客に対してより効果的で効率的な試験を提示できる提案型CROを目指しており、若手研究員を中心にサイエンスレベル向上に引き続き注力してまいります。国立大学法人鹿児島大学、国立大学法人熊本大学との三者間協定契約を締結し、優秀な研究者や技術者の育成と学位取得を推進すると共に、国内外の学会において研究成果の発表及び論文発表を行ってまいります。
中東情勢の影響につきましては、現時点において事業に必要な医療等製品・物資において入手困難な状況は出ておりません。今後も情勢を注視してまいります。
② 第3の収益エンジンとしてのTR事業の推進
TR事業では、当社グループの医薬品開発における経験とネットワークに、独自の知的財産に基づく基盤技術を加えることで、創薬型の医薬品開発事業へとパラダイムシフトするという戦略に基づき、以下の複数のプロジェクトに取り組んでおります。
パーキンソン病のオフ症状治療のための点鼻レボドパ経鼻薬の開発を行っている連結子会社のSNLD社では、改良開発品であるTRN501について、2024年8月に臨床第1相試験における日本人健康成人への投薬を完了し、データ解析と総括報告書の作成を進め、今後学会にて結果発表を行う予定です。各国の薬事制度・市場調査を綿密に行い、今後の開発方針を慎重に見極めつつ、次の臨床治験計画を立案してまいります。
経鼻ワクチン開発は、非臨床POC取得を達成したとの判断に基づきAMED/SCARDAから委託研究開発費の追加も含めた研究開発支援の延長(2029年3月31日まで)が決定されており、今後、開発試験期間内での第1相臨床試験の終了を目指してまいります。
当社のSMARTのライセンス先であるSatsuma社は、2025年4月30日(米国時間)にFDAより経鼻片頭痛薬「Atzumi™」(開発コード:STS101)の販売承認を取得しており、最新の市況を踏まえて早期の市場導入に向けた取組みを進めてまいります。具体的には、Satsuma社が米国Nasdaqに上場した際の旧経営幹部が再度同社に参画し、同社内に製造・販売機能を持たせ、Atzumi™の付加価値を高めつつ、イギリス、中近東(サウジアラビア、イスラエル、UAE)、インド、シンガポール、台湾、韓国、日本などを含めたグローバル市場において、幅広いライセンス導出活動を推し進めてまいります。
一方、Gemseki事業では、創薬シーズ・技術のグローバルライセンス仲介事業に加え、投資ファンドを通じた投資事業も推進しております。当社との事業シナジー創出を図りながら、豊富な創薬経験とグローバルネットワークを活用した開発支援サービスを幅広く提供してまいります。
③ SDGs/ESGへの取組みを通した非財務価値の向上
当社は「環境、生命、人材を大切にする会社であり続ける」という企業理念のもと、企業の持続的成長にサステナビリティ推進の取組みが重要であると強く認識し、持続可能な社会の実現に貢献しています。
当社グループ全体のサステナビリティの取組みを中長期的な視野で体系的に拡充し推進させていく目的から、当社取締役会の任意の諮問機関として「SDGs委員会」を設置し、毎月開催しています。SDGs委員会は独立社外取締役を委員長として、サステナビリティに関する重要な案件について審議・策定しています。取締役会ではSDGs委員会からの報告を基に、サステナビリティに関する基本方針や重要事項を決定の上、社内で取組みに関する監督が適切に図られるよう体制を整えています。
持続的な企業価値の向上に向けて、「社会課題の解決」と「経営基盤の強化」の観点から、7つのマテリアリティ(重要課題)を特定しています。マテリアリティの特定にあたっては、当社の将来ありたい姿を踏まえて、当社へのリスク・機会を検討しております。そのうえで、マテリアリティごとに非財務KPIを設定し非財務価値向上に取り組んでいます。
マテリアリティ主な機会主なリスク
社会課題の解決創薬と医療技術向上の支援
(医薬品アクセスの向上)
・新たな創薬モダリティの開発加速による非臨床試験の需要増加
・製薬企業のCROへのアウトソーシング化の加速
・顧客ニーズへの対応力不足による信用力の低下
・次世代の非臨床試験技術への対応の遅れによる競争力の低下
健康な人生の提供
(ウェルビーイングな暮らし)
・超高齢化社会に伴う社会保障費増加による健康寿命の延伸、未病ニーズの拡大
・リアルワールドデータ(RWD)の利活用による新規市場の獲得
・ウェルネスプログラムにおける消費者ニーズとのミスマッチ
・RWDの利活用システムの開発・整備や制度変更への対応の遅れによる市場獲得の失敗
美しい地球環境の保全・カーボンニュートラル実現に寄与する地熱発電(再生可能エネルギー)の事業機会の拡大
・異常気象に適応できる事業体制の強化
・気候災害の激甚化による被害の発生
・環境規制強化による対応費用の増加
経営基盤の強化働く楽しさを実感できる
組織づくり
・優秀な人材の獲得の機会
・働きがいのある職場環境の整備を通じた社員の生産性、モチベーションの向上
・人材獲得競争激化によるコストの増加
・職場環境の整備不足による優秀な人材の流出、生産性・モチベーションの低下
DX/RPA*推進による
ビジネスの進化
・業務生産性、顧客とのコミュニケーションレベルの向上
・単純作業から解放された社員のモチベーションの向上
・DX対応失敗又は遅れによる競争力の低下
・ニッチなニーズ対応に伴う費用の増加
ステークホルダー
エンゲージメントの向上
・ステークホルダーとの関係強化による新規事業機会の獲得、信用度の向上
・持続可能な調達体制の構築による災害時等におけるレジリエンス(回復力)の向上
・事業活動、サプライチェーンの広域化による、モニタリングコストの増加
・事業環境の変化に適切に対応出来ない場合に発生する事業遅延や信用力の低下
企業理念を実現する
ガバナンスの構築
・強固なガバナンス体制を確立することによる安定的な事業基盤の構築
・ESGを中心とした社外評価の向上
・内部統制の脆弱性による事業継続リスクの発生、予期せぬ損失の発生
・コンプライアンス違反による企業信頼度低下
*Robotic Process Automationの略。ソフトウェアロボットやAIを活用し、人が行っていた定型的な業務を自動化すること

④ 優秀な人材の確保と育成
当社グループの事業継続及び拡大にあたっては、各分野における専門的な知識・技能を有する技術系研究員等の人材を多数確保する必要があります。また、クラウド化、AIなどのデジタル技術の発展やオンライン化によるビッグデータの獲得・活用など、IT技術が急速に浸透している中、変化する経営環境に適応するためのマネジメント能力を備えた人材を必要としています。当社グループの競争力を強化する上で最も強く求められるのは、顧客から高く評価される質の高いサービスの提供であり、これを実現するためには優秀な人材の確保とレベルアップが必要であります。
こうした人材の確保や教育研修のために、当社では新卒採用を強化し、社内教育機関の「SNBLアカデミー」を中心として、職種、職位に応じた研修を最重要課題として取り組んでおります。また、女性が社員の過半数を占める当社では、女性活躍に注力しており、産休・育休からの復帰も100%の状況となる中、引き続き女性の管理職登用数の増加に努めてまいります。

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