有価証券報告書-第21期(2023/04/01-2024/03/31)
有報資料
「当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「資本市場を通じて社会に貢献します」という経営理念のもと、変化をチャンスととらえ時代と共に成長する企業や時代の変化に左右されず本質的に成長し続ける優れた企業を発掘し、これらの企業へ「ひふみ」を通じて投資を行っています。そして、日本人の「投資=悪」というイメージを払拭するため、たくさんの方々に「ひふみ」を保有いただき、「投資は素敵な経済活動」であるということをお伝えするとともに、現在の状況や今後のライフプランによって異なる一人一人の資産形成のニーズにお応えして、お客様が夢や希望をもってあゆんでいく力になりたいと考えております。
(2)経営戦略等
当社グループは、経営理念の実現のため、ファイナンシャル・インクルージョン(※)を通じて、金融サービスの恩恵を全ての人々が享受できる世の中を目指しております。より多くの人々を「次のゆたかさの、まんなかへ」という思いを込めて、「お金を学び、ひふみでつみたて、共助で支える」取り組みを推進し、投資文化の普及に注力してまいります。
(※)あらゆる人々が金融サービスへアクセスすることができ、金融サービスの恩恵を享受できるようにすることを意味し、金融包摂と訳されます。
① お金を学ぶ
日本銀行の資金循環統計(速報)によると、2023年3月末の日本の家計金融資産残高2,043兆円のうち、投資信託の残高は90兆円(4.4%)にとどまっています。一方、現金・預金の残高は1,105兆円で、全体の54.2%を占めており、その比率は過去10年以上ほぼ変わらず推移しています。老後2,000万円問題を端緒として資産形成の重要さは認識され始めたものの、「何から始めたらよいのか分からない」というのが大多数の意見ではないかと考えております。
当社グループでは、創業以来、資産形成にアクティブなお客様にエクイティ商品を主に提供してきましたが、これだけでは日本人の大多数である、資産形成にパッシブな方々の将来不安を解消することは難しく、このままでは、資産形成に対する意識によって金融資産の構成が二極化し、金融格差が広がるのでは、と懸念しております。
これらの金融格差を是正するためにも、投資の魅力やお金についての知識を様々なメディアを通して幅広い方々にお届けするとともに、誰もが簡単に、安心して資産形成を始めることができる仕組みを開発・提供し、これまで以上に幅広い層へ資産形成を浸透~資産形成を大衆化~させ、金融・投資に関するリテラシーの向上に寄与してまいります。
② ひふみでつみたて
当社グループは、資産形成の基本・スタンダードは「つみたて投資」であると考えております。安く買って、高く売る、それを確実に続けるのは、プロであっても困難であり、時間を味方につけて、コツコツとつみたてていくことが相場の変動に左右されず、健全な資産形成につながると考えているからです。
この「つみたて投資」を、「ひふみ」ブランドを冠した当社グループの運用する投資信託で行っていただくため、「ひふみ」を長期の資産形成に資する商品となるよう日々ブラッシュアップするとともに、当社グループの目指す世界を広く発信することで、全国のお客様に金融商品のスタンダードとして「ひふみ」を捉えていただき、日本中に「ひふみ」によるつみたて投資を普及させ、日本一のつみたて口座数~日本のみんながひふみでつみたて~を目指していきたいと考えております。
③ 共助で支える
当社グループは、預貯金として金融資産を保有する方々に投資を促すだけではなく、多額の金融資産は保有していないものの、働く世代として、定期的な収入を得ている方々に、「つみたて投資」による資産形成を始める一歩を後押しして、金融サービスの恩恵を享受していただくことが大切であると考えております。しかし、諸事情で働くことができず、「つみたて投資」が実施できない方々に金融サービスの恩恵を享受いただくことも、ファイナンシャル・インクルージョンの観点から重要です。
「自助」により自立して生きていくこと、公的な支援による「公助」も大切ですが、長期の資産形成により富を築いた方々からの「共助」こそが、真の意味でのファイナンシャル・インクルージョンの達成につながると考えております。
資産形成で得た含み益の一部を寄付に回す仕組みなど、「共助」の厚みを増していくためのプラットフォーム作りについて検討を進め、「共助」の文化を浸透させてまいります。
(3)経営環境
① 投資信託委託業務
当社グループの事業領域である投資信託委託業務に関して、一般社団法人 投資信託協会が公表している統計データによると、2024年3月末時点、公募証券投信の純資産総額は227兆411億円であり、このうち、公募株式投信の純資産総額は211兆476億円となっています。公募株式投信の純資産総額の成長率は、2019年3月末から2024年3月末までの直近5年のCAGR(年平均成長率)で約15.8%となっています。
(出所:一般社団法人 投資信託協会「公募投資信託 資産増減状況」を基に当社作成 データは各四半期末時点)
但し、ETFを除く公募株式投信の純資産総額は121兆4,779億円で、成長率は2019年3月末から2024年3月末までの直近5年のCAGRで約13.6%となっており、ETFの純資産総額が2019年3月末の37兆3,693億円から2024年3月末には89兆5,696億円まで増加しております。ETFの増加は年間6兆円を目安として行われていた日本銀行のETF買い入れが主な要因となっていますが、日本銀行は、2024年3月18・19日の政策委員会・金融政策決定会合において、金融政策の枠組みの見直しを行ない、ETFの新規の買い入れを終了する旨を公表しております。
(出所:一般社団法人 投資信託協会「株式投信の商品分類別内訳」及び日本銀行「資金循環統計」を基に当社作成 データは各四半期末時点)
日本銀行のETF買い入れ等により、公募株式投信の純資産総額は増加したものの、日本の家計における投資信託の存在感は大きくありません。日本銀行が発表している資金循環統計によれば、日本の家計金融資産における投資信託の比率は、2023年3月末時点で4.4%(日本の家計金融資産残高2,043兆円のうち90兆円)にとどまり、2023年3月末における米国の11.9%、欧州の10.1%と比べて低い水準にあり、日本の家計金融資産の過半は現金・預金が占めている状況が続いています。
(出所:日本銀行「資金循環統計」を基に当社作成 データは各四半期末時点)
(出所:日本銀行「資金循環の日欧米の比較」を基に当社作成)
このような状況について、金融庁は、2021年8月に公表した「2021事務年度 金融行政方針」の中で「我が国においては、家計の金融資産の過半を現預金が占めている状況が続いており、資産の伸びも低い水準に留まっている。」と問題視しており、家計の安定的な資産形成を税制面で後押しするために、引き続きNISAの普及に取り組んでいくとしています。
2014年1月に導入されたNISA(少額投資非課税制度)とは、一定の投資枠内で投資によって得た利益が非課税になる制度で、2018年1月には、少額からの長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度としてつみたてNISAがスタートしました。なお、このつみたてNISA対象ファンドには、当社が運用する「ひふみ投信」及び「ひふみプラス」も選定されております(「つみたてNISA対象商品届出一覧」より)。そして、NISAの利用状況について金融庁が公表する「NISA・ジュニアNISA口座の利用状況調査」によれば、一般NISAとつみたてNISAをあわせた口座開設数は2023年9月末時点で約2,034万口座と堅調に推移しており、着実に普及が進んでいます。
さらに、2022年11月に、岸田政権が推し進める経済政策「新しい資本主義」において、重要な政策の一つに掲げられていた「資産所得倍増プラン」の内容が公表されました。具体的には、家計による投資額及び投資経験者の倍増を目指し、NISAの恒久化及び非課税となる投資枠の拡大という抜本的拡充が実施されることになりました。この「新NISA」制度が2024年1月に導入されたことで、日本の家計金融資産が貯蓄から投資に大きくシフトすることが期待されます。
(出所:金融庁「NISA・ジュニアNISA利用状況調査」を基に当社作成 データは各四半期末時点)
また、老後資金の確保を目的として、家計の資産形成を支援する年金制度として確定拠出年金制度があります。確定拠出年金制度は、企業や加入者が毎月一定額の掛金を拠出し、加入者自身が運用する年金制度であり、特にiDeCo(個人型確定拠出年金)については、2017年1月から加入範囲が拡大され、加入者数が増加傾向にあります。「確定拠出年金統計資料(運営管理機関連絡協議会提供)」によれば2017年3月時点のiDeCoの加入者数は45万人でしたが、2023年3月時点では290万人と増加を続け、企業型と合わせると確定拠出年金制度の加入者は1,000万人を超えています。
(出所:「確定拠出年金統計資料(運営管理機関連絡協議会提供)」を基に当社作成 データは各年度末)
② 投資顧問業務(投資一任契約に係る業務)
当社グループの事業領域である投資顧問業務に関して、一般社団法人 日本投資顧問業協会の投資運用会員の契約金額は、2024年3月末時点で、635兆7,529億円となっており、このうち、投資一任業による契約金額は、532兆631億円となっています。投資一任業による契約金額の成長率は2014年3月末から2024年3月末までの直近10年のCAGRで約12.5%となっています。
また、国内株式特化の投資一任契約の契約金額は、2024年3月末時点で119兆2,604億円となっており、2014年3月末から2024年3月末までの直近10年のCAGRで約13.1%となっております。

(出所:日本投資顧問業協会「統計資料」を基に当社作成 データは各年度末)
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 新規投資家層の拡大と運用資産残高の獲得
当社グループは、国内外投資家の資金を受託し運用する投資運用業を主たる業務としていることから、運用資産残高が当社グループの重要な収益の源泉であります。
独立系の資産運用会社(ファンドマネージャーに親会社等から派遣された役職員が存在せず、投資判断も自社独自で行う資産運用会社をいいます。以下同じ)として当社グループは、顧客本位のサービスや顧客の安定的な資産形成に資する商品の提供等、独自性と一貫性をもった営業活動を継続的に行いながら国内における顧客基盤と販売チャネルを構築してまいりましたが、その顧客基盤は必ずしも磐石とは言えず、新規顧客の獲得と既存顧客からの追加運用資産の獲得、また既存顧客からの資金流出を防ぐためのサービスの拡充が重要な課題であると認識しております。顧客との積極的なコミュニケーションを通じた金融・投資に関するリテラシーの向上に貢献しつつ、運用資産残高の安定的成長を目指していく方針です。
また、国外顧客基盤に関しても、投資家・投資家候補との更なるコミュニケーションの強化を図り、これらの課題に対処していく方針です。
② 内部管理体制の強化
現在、当社グループの内部管理体制は、小規模体制に適応したものとなっております。今後の事業拡大を見据え、業務運営の効率化、金融商品取引業者としての法令遵守、リスク管理のための内部管理体制の強化が重要な課題であると認識しております。
これらの課題に対処するために、必要に応じて人材を適時に採用し、社内教育を充実させ内部管理体制の強化に努めることにより、継続的な成長を支える効率的かつ安定的な経営を行っていく方針です。
③ 優秀な人材の確保と社内育成
当社グループが国内外の顧客に提供する投資サービスは投資に関する専門的知識はもとより、豊富かつ多様な業務経験や知識の裏付けがあって初めて提供できるものです。当社グループには、株式投資の分野で長年活躍してきた経験豊富な人材が複数所属しており、当社グループの業務において中心的な役割を担う優秀な人材の厚みは、現在の当社グループの大きな強みであると考えております。
今後においても、継続的に質の高いサービスを提供していくために、十分な経験を積んだ専門性の高い人材を確保する他、未経験であっても有望な若手を採用し、社内において教育を行うことにより、優秀な人材を継続的に育成していくことが当社グループの重要な課題であると認識しております。
④ ブランド価値の向上
当社グループが運用する投資信託のブランド価値の向上は、新たな運用資産の獲得につながり、日本の優良な成長企業に更なる投資を行うことで、結果としてお客様の資産形成に寄与することになります。また、当社グループのブランド価値の向上は、優秀な人材の確保にもつながることから、当社グループが更に成長していくうえで重要な課題であると認識しております。
⑤ 事業ポートフォリオの拡大
現在当社グループが運用する投資信託は、国内外の株式を中心に一部債券にも投資しております。当社グループの理念に合致し、投資家の方々にとって魅力的な商品は容易に開発できるものではありませんが、運用する投資信託の特性が偏ってしまうことは、事業リスクの面から見て当社グループの課題であると考えています。投資文化の浸透をより進めるにあたっても、新商品の開発の可能性を常に考えながら事業に取り組んでいきます。
また、投信投資顧問事業だけでなく、経営理念の実現のため、他の事業領域への事業ポートフォリオ拡大を進めることにも取り組んでいきます。
⑥ 新技術への対応
資産運用業界では、現在、AIの活用をはじめ、様々な技術革新が起きております。このような事業環境の下で当社グループが事業を継続的に拡大していくには、技術革新の動向を把握するとともに、新たな技術やサービスの活用のトライアルを行うなど、その活用可能性を積極的に模索していくことが必要であると認識しております。
⑦ 資金調達手段の拡充
当社は投資信託の直接販売を行っており、直販顧客管理システムの機能の追加や拡充のためのシステム更改費用や、直接販売の投資信託の申し込みの増加に対応するための顧客分別金信託の設定などに資金が必要となります。現在では、手元資金や、取引銀行からの借入にて対応しておりますが、金利上昇など不測の事態に備え、間接金融以外の柔軟な資金調達手段を確保する必要があると認識しております。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、主として、投信・投資顧問事業を行っており、営業収益は投資信託の運用から得られる委託者報酬と投資一任契約等による投資顧問報酬の2種類の収入によって構成されています。委託者報酬及び投資顧問報酬は、運用資産の残高に一定率を掛け合わせることで算定されます。投資顧問業務の一部では、運用成績に応じて発生する成功報酬がありますが、成功報酬が発生する運用資産残高は、当社グループの運用資産残高のごく一部です。
したがって、当社グループにとって最も重要な経営指標は、収益の源泉である運用資産残高となります。
(1)経営方針
当社グループは、「資本市場を通じて社会に貢献します」という経営理念のもと、変化をチャンスととらえ時代と共に成長する企業や時代の変化に左右されず本質的に成長し続ける優れた企業を発掘し、これらの企業へ「ひふみ」を通じて投資を行っています。そして、日本人の「投資=悪」というイメージを払拭するため、たくさんの方々に「ひふみ」を保有いただき、「投資は素敵な経済活動」であるということをお伝えするとともに、現在の状況や今後のライフプランによって異なる一人一人の資産形成のニーズにお応えして、お客様が夢や希望をもってあゆんでいく力になりたいと考えております。
(2)経営戦略等
当社グループは、経営理念の実現のため、ファイナンシャル・インクルージョン(※)を通じて、金融サービスの恩恵を全ての人々が享受できる世の中を目指しております。より多くの人々を「次のゆたかさの、まんなかへ」という思いを込めて、「お金を学び、ひふみでつみたて、共助で支える」取り組みを推進し、投資文化の普及に注力してまいります。
(※)あらゆる人々が金融サービスへアクセスすることができ、金融サービスの恩恵を享受できるようにすることを意味し、金融包摂と訳されます。
① お金を学ぶ
日本銀行の資金循環統計(速報)によると、2023年3月末の日本の家計金融資産残高2,043兆円のうち、投資信託の残高は90兆円(4.4%)にとどまっています。一方、現金・預金の残高は1,105兆円で、全体の54.2%を占めており、その比率は過去10年以上ほぼ変わらず推移しています。老後2,000万円問題を端緒として資産形成の重要さは認識され始めたものの、「何から始めたらよいのか分からない」というのが大多数の意見ではないかと考えております。
当社グループでは、創業以来、資産形成にアクティブなお客様にエクイティ商品を主に提供してきましたが、これだけでは日本人の大多数である、資産形成にパッシブな方々の将来不安を解消することは難しく、このままでは、資産形成に対する意識によって金融資産の構成が二極化し、金融格差が広がるのでは、と懸念しております。
これらの金融格差を是正するためにも、投資の魅力やお金についての知識を様々なメディアを通して幅広い方々にお届けするとともに、誰もが簡単に、安心して資産形成を始めることができる仕組みを開発・提供し、これまで以上に幅広い層へ資産形成を浸透~資産形成を大衆化~させ、金融・投資に関するリテラシーの向上に寄与してまいります。
② ひふみでつみたて
当社グループは、資産形成の基本・スタンダードは「つみたて投資」であると考えております。安く買って、高く売る、それを確実に続けるのは、プロであっても困難であり、時間を味方につけて、コツコツとつみたてていくことが相場の変動に左右されず、健全な資産形成につながると考えているからです。
この「つみたて投資」を、「ひふみ」ブランドを冠した当社グループの運用する投資信託で行っていただくため、「ひふみ」を長期の資産形成に資する商品となるよう日々ブラッシュアップするとともに、当社グループの目指す世界を広く発信することで、全国のお客様に金融商品のスタンダードとして「ひふみ」を捉えていただき、日本中に「ひふみ」によるつみたて投資を普及させ、日本一のつみたて口座数~日本のみんながひふみでつみたて~を目指していきたいと考えております。
③ 共助で支える
当社グループは、預貯金として金融資産を保有する方々に投資を促すだけではなく、多額の金融資産は保有していないものの、働く世代として、定期的な収入を得ている方々に、「つみたて投資」による資産形成を始める一歩を後押しして、金融サービスの恩恵を享受していただくことが大切であると考えております。しかし、諸事情で働くことができず、「つみたて投資」が実施できない方々に金融サービスの恩恵を享受いただくことも、ファイナンシャル・インクルージョンの観点から重要です。
「自助」により自立して生きていくこと、公的な支援による「公助」も大切ですが、長期の資産形成により富を築いた方々からの「共助」こそが、真の意味でのファイナンシャル・インクルージョンの達成につながると考えております。
資産形成で得た含み益の一部を寄付に回す仕組みなど、「共助」の厚みを増していくためのプラットフォーム作りについて検討を進め、「共助」の文化を浸透させてまいります。
(3)経営環境
① 投資信託委託業務
当社グループの事業領域である投資信託委託業務に関して、一般社団法人 投資信託協会が公表している統計データによると、2024年3月末時点、公募証券投信の純資産総額は227兆411億円であり、このうち、公募株式投信の純資産総額は211兆476億円となっています。公募株式投信の純資産総額の成長率は、2019年3月末から2024年3月末までの直近5年のCAGR(年平均成長率)で約15.8%となっています。
(出所:一般社団法人 投資信託協会「公募投資信託 資産増減状況」を基に当社作成 データは各四半期末時点)但し、ETFを除く公募株式投信の純資産総額は121兆4,779億円で、成長率は2019年3月末から2024年3月末までの直近5年のCAGRで約13.6%となっており、ETFの純資産総額が2019年3月末の37兆3,693億円から2024年3月末には89兆5,696億円まで増加しております。ETFの増加は年間6兆円を目安として行われていた日本銀行のETF買い入れが主な要因となっていますが、日本銀行は、2024年3月18・19日の政策委員会・金融政策決定会合において、金融政策の枠組みの見直しを行ない、ETFの新規の買い入れを終了する旨を公表しております。
(出所:一般社団法人 投資信託協会「株式投信の商品分類別内訳」及び日本銀行「資金循環統計」を基に当社作成 データは各四半期末時点)日本銀行のETF買い入れ等により、公募株式投信の純資産総額は増加したものの、日本の家計における投資信託の存在感は大きくありません。日本銀行が発表している資金循環統計によれば、日本の家計金融資産における投資信託の比率は、2023年3月末時点で4.4%(日本の家計金融資産残高2,043兆円のうち90兆円)にとどまり、2023年3月末における米国の11.9%、欧州の10.1%と比べて低い水準にあり、日本の家計金融資産の過半は現金・預金が占めている状況が続いています。
(出所:日本銀行「資金循環統計」を基に当社作成 データは各四半期末時点)
(出所:日本銀行「資金循環の日欧米の比較」を基に当社作成)このような状況について、金融庁は、2021年8月に公表した「2021事務年度 金融行政方針」の中で「我が国においては、家計の金融資産の過半を現預金が占めている状況が続いており、資産の伸びも低い水準に留まっている。」と問題視しており、家計の安定的な資産形成を税制面で後押しするために、引き続きNISAの普及に取り組んでいくとしています。
2014年1月に導入されたNISA(少額投資非課税制度)とは、一定の投資枠内で投資によって得た利益が非課税になる制度で、2018年1月には、少額からの長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度としてつみたてNISAがスタートしました。なお、このつみたてNISA対象ファンドには、当社が運用する「ひふみ投信」及び「ひふみプラス」も選定されております(「つみたてNISA対象商品届出一覧」より)。そして、NISAの利用状況について金融庁が公表する「NISA・ジュニアNISA口座の利用状況調査」によれば、一般NISAとつみたてNISAをあわせた口座開設数は2023年9月末時点で約2,034万口座と堅調に推移しており、着実に普及が進んでいます。
さらに、2022年11月に、岸田政権が推し進める経済政策「新しい資本主義」において、重要な政策の一つに掲げられていた「資産所得倍増プラン」の内容が公表されました。具体的には、家計による投資額及び投資経験者の倍増を目指し、NISAの恒久化及び非課税となる投資枠の拡大という抜本的拡充が実施されることになりました。この「新NISA」制度が2024年1月に導入されたことで、日本の家計金融資産が貯蓄から投資に大きくシフトすることが期待されます。
(出所:金融庁「NISA・ジュニアNISA利用状況調査」を基に当社作成 データは各四半期末時点)また、老後資金の確保を目的として、家計の資産形成を支援する年金制度として確定拠出年金制度があります。確定拠出年金制度は、企業や加入者が毎月一定額の掛金を拠出し、加入者自身が運用する年金制度であり、特にiDeCo(個人型確定拠出年金)については、2017年1月から加入範囲が拡大され、加入者数が増加傾向にあります。「確定拠出年金統計資料(運営管理機関連絡協議会提供)」によれば2017年3月時点のiDeCoの加入者数は45万人でしたが、2023年3月時点では290万人と増加を続け、企業型と合わせると確定拠出年金制度の加入者は1,000万人を超えています。
(出所:「確定拠出年金統計資料(運営管理機関連絡協議会提供)」を基に当社作成 データは各年度末)② 投資顧問業務(投資一任契約に係る業務)
当社グループの事業領域である投資顧問業務に関して、一般社団法人 日本投資顧問業協会の投資運用会員の契約金額は、2024年3月末時点で、635兆7,529億円となっており、このうち、投資一任業による契約金額は、532兆631億円となっています。投資一任業による契約金額の成長率は2014年3月末から2024年3月末までの直近10年のCAGRで約12.5%となっています。
また、国内株式特化の投資一任契約の契約金額は、2024年3月末時点で119兆2,604億円となっており、2014年3月末から2024年3月末までの直近10年のCAGRで約13.1%となっております。

(出所:日本投資顧問業協会「統計資料」を基に当社作成 データは各年度末)(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 新規投資家層の拡大と運用資産残高の獲得
当社グループは、国内外投資家の資金を受託し運用する投資運用業を主たる業務としていることから、運用資産残高が当社グループの重要な収益の源泉であります。
独立系の資産運用会社(ファンドマネージャーに親会社等から派遣された役職員が存在せず、投資判断も自社独自で行う資産運用会社をいいます。以下同じ)として当社グループは、顧客本位のサービスや顧客の安定的な資産形成に資する商品の提供等、独自性と一貫性をもった営業活動を継続的に行いながら国内における顧客基盤と販売チャネルを構築してまいりましたが、その顧客基盤は必ずしも磐石とは言えず、新規顧客の獲得と既存顧客からの追加運用資産の獲得、また既存顧客からの資金流出を防ぐためのサービスの拡充が重要な課題であると認識しております。顧客との積極的なコミュニケーションを通じた金融・投資に関するリテラシーの向上に貢献しつつ、運用資産残高の安定的成長を目指していく方針です。
また、国外顧客基盤に関しても、投資家・投資家候補との更なるコミュニケーションの強化を図り、これらの課題に対処していく方針です。
② 内部管理体制の強化
現在、当社グループの内部管理体制は、小規模体制に適応したものとなっております。今後の事業拡大を見据え、業務運営の効率化、金融商品取引業者としての法令遵守、リスク管理のための内部管理体制の強化が重要な課題であると認識しております。
これらの課題に対処するために、必要に応じて人材を適時に採用し、社内教育を充実させ内部管理体制の強化に努めることにより、継続的な成長を支える効率的かつ安定的な経営を行っていく方針です。
③ 優秀な人材の確保と社内育成
当社グループが国内外の顧客に提供する投資サービスは投資に関する専門的知識はもとより、豊富かつ多様な業務経験や知識の裏付けがあって初めて提供できるものです。当社グループには、株式投資の分野で長年活躍してきた経験豊富な人材が複数所属しており、当社グループの業務において中心的な役割を担う優秀な人材の厚みは、現在の当社グループの大きな強みであると考えております。
今後においても、継続的に質の高いサービスを提供していくために、十分な経験を積んだ専門性の高い人材を確保する他、未経験であっても有望な若手を採用し、社内において教育を行うことにより、優秀な人材を継続的に育成していくことが当社グループの重要な課題であると認識しております。
④ ブランド価値の向上
当社グループが運用する投資信託のブランド価値の向上は、新たな運用資産の獲得につながり、日本の優良な成長企業に更なる投資を行うことで、結果としてお客様の資産形成に寄与することになります。また、当社グループのブランド価値の向上は、優秀な人材の確保にもつながることから、当社グループが更に成長していくうえで重要な課題であると認識しております。
⑤ 事業ポートフォリオの拡大
現在当社グループが運用する投資信託は、国内外の株式を中心に一部債券にも投資しております。当社グループの理念に合致し、投資家の方々にとって魅力的な商品は容易に開発できるものではありませんが、運用する投資信託の特性が偏ってしまうことは、事業リスクの面から見て当社グループの課題であると考えています。投資文化の浸透をより進めるにあたっても、新商品の開発の可能性を常に考えながら事業に取り組んでいきます。
また、投信投資顧問事業だけでなく、経営理念の実現のため、他の事業領域への事業ポートフォリオ拡大を進めることにも取り組んでいきます。
⑥ 新技術への対応
資産運用業界では、現在、AIの活用をはじめ、様々な技術革新が起きております。このような事業環境の下で当社グループが事業を継続的に拡大していくには、技術革新の動向を把握するとともに、新たな技術やサービスの活用のトライアルを行うなど、その活用可能性を積極的に模索していくことが必要であると認識しております。
⑦ 資金調達手段の拡充
当社は投資信託の直接販売を行っており、直販顧客管理システムの機能の追加や拡充のためのシステム更改費用や、直接販売の投資信託の申し込みの増加に対応するための顧客分別金信託の設定などに資金が必要となります。現在では、手元資金や、取引銀行からの借入にて対応しておりますが、金利上昇など不測の事態に備え、間接金融以外の柔軟な資金調達手段を確保する必要があると認識しております。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、主として、投信・投資顧問事業を行っており、営業収益は投資信託の運用から得られる委託者報酬と投資一任契約等による投資顧問報酬の2種類の収入によって構成されています。委託者報酬及び投資顧問報酬は、運用資産の残高に一定率を掛け合わせることで算定されます。投資顧問業務の一部では、運用成績に応じて発生する成功報酬がありますが、成功報酬が発生する運用資産残高は、当社グループの運用資産残高のごく一部です。
したがって、当社グループにとって最も重要な経営指標は、収益の源泉である運用資産残高となります。