有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2018/11/19 15:00
【資料】
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【項目】
84項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針
当社は、「資本市場を通じて社会に貢献します」という経営理念をかかげ、「わたしたちは、高い専門性と倫理観を持ち続けます」、「活力ある人を育み、社会によい流れを生み出します」、「思いを分かち合い、共に未来を創造します」という行動指針を持ち、変化をチャンスととらえ時代と共に成長する企業や時代の変化に左右されず本質的に成長し続ける優れた企業を発掘し投資を行なっています。
(2)経営戦略等
①商品戦略
既存商品をさらに磨きつつ、日本を代表するエクイティハウス(株式投資を柱とする投資運用会社)を目指します。
(ア)既存商品のさらなる強化
当社は、公募投信である「ひふみ」シリーズの3ファンド(ひふみ投信、ひふみプラス、ひふみ年金)をはじめ、私募投信である「レオス日本小型株ファンド」や、複数の投資顧問業務のファンドを運用しています。運用面からみると、「ひふみ」シリーズは、企業規模に関わらず主に日本の企業に投資を行なうオールキャップ戦略の商品に該当し、私募投信である「レオス日本小型株ファンド」は、主に時価総額300億円未満の企業に投資を行なう日本マイクロキャップ戦略の商品に該当します。また、投資顧問業務のファンドには、主に時価総額300億円から3,000億円の企業に投資を行なう日本中小型戦略の商品もあります。それぞれの商品を大切に育てながらも、当社は主に、新たな資金流入にも対応できるオールキャップ戦略の拡大を目指します。
WFE(World Federation of Exchanges)によれば、2018年8月時点で全世界の株式時価総額は9,485兆円にのぼり、そのうちアメリカの株式市場が4,016兆円で42.4%を占め、日本の株式市場が671兆円で7.0%を占めています。投資先となる株式市場は、日本はもちろん世界に幅広く存在すると認識しています。
(イ)事業ポートフォリオの拡大
現時点において具体的な計画はありませんが、前述した戦略の異なる3つの商品に加え、投信投資顧問事業における新商品の提供のほか、他の事業領域への事業ポートフォリオ拡大を進める可能性があります。
②営業戦略
(ア)投資信託委託業務
公募投信の販売においては、当社自身が販売会社となって販売を行なう直接販売(ダイレクト営業)と、販売会社経由での間接販売(パートナー営業)の2つの販売チャネルがあります。
(a)直接販売(ダイレクト営業)
「投資で日本を根っこから元気に」をスローガンとして、初心者向け投資入門セミナー、運用報告会、お子様連れ限定セミナー、学生・若手社会人応援セミナー、女子勉強会、海外出張報告会、工場や店舗見学等を行なう社会科見学など、直接販売のメリットを生かした様々な対面の企画や、web経由でのコンテンツ提供を通じて、投資の魅力やわたしたちの運用について理解を深める機会を提供することで、新規のお客様の獲得および既存のお客様の満足度向上による長期保有を目指します。投資をすることで金融資産が伸び、豊かになる可能性を広めていきたいと考えています。
(b)間接販売(パートナー営業)
全国の販売パートナー(販売会社)とお客様向けセミナー等を通して投資の啓蒙活動の企画を提供します。販売活動をしていただく販売パートナーにわたしたちの考え方に共感していただくことが重要であり、そのための販売員向けフォローアップ研修にも力を入れています。
(イ)投資顧問業務
これまでの運用実績や採用実績をもとに、国内外で年金等の機関投資家向けの営業活動を行ないます。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、主として、投信投資顧問事業を行なっており、営業収益は投資信託の運用から得られる委託者報酬と投資一任契約等による投資顧問報酬の2種類の収入によって構成されています。委託者報酬および投資顧問報酬は、運用資産の残高に一定率を掛け合わせることで算定されます。投資顧問業務の一部では、運用成績に応じて発生する成功報酬がありますが、成功報酬が発生する運用資産残高は、当社の運用資産残高のごく一部です。
当社の運用資産残高の多くは公募投信によりますが、当社は長期投資を普及させたいという考えより、公募投信の委託者報酬をアクティブファンドとしては比較的低廉なものに設定しています。そのため、当社にとって最も重要な経営指標は、収益の源泉である運用資産残高です。
(4)経営環境
当社が行なう投信投資顧問事業における経営環境について、政策・規制動向の面、経済動向の面、社会動向の面、技術動向の面から概観すると、以下のとおりです。
政策・規制動向の面について、長期投資を促す制度として、2014年1月にNISA、2018年1月につみたてNISAが始まりました。また、iDeCoを利用しやすくする法改正も適宜実施されています。監督官庁は、家計金融資産残高の日米の伸びの差の拡大要因が日米家計のポートフォリオの違い等による運用リターンの差にあるとみて問題視しています。金融庁のレポート(平成28事務年度金融レポート)によれば、1995年から2016年にかけ、日本の家計金融資産の伸びが1.54倍だったのに対し、米国のそれは3.32倍となっており、同期間の運用リターンによる家計金融資産の推移は、日本1.20倍に対し、米国2.45倍となっており、投資している国ほど金融資産が伸びているといえます。監督官庁は、長期投資の普及を重要なテーマに位置づけ、家計の安定的な資産形成を促すために顧客本位の業務運営を強力に推進しています。
経済動向の面について、公募投信における株式投信純資産残高、投資運用業者の契約資産は、過去5年間でいずれも増加傾向にあります。また、マイナス金利の継続から、地方銀行の稼ぐ力は低下しており、地方銀行では融資以外の収益への期待が高まっていると考えられます。
社会動向の面について、日本銀行の「資金循環の日米欧比較」によれば、日本の家計金融資産における現金・預金比率は50%を超える状況が続いており、米欧と比較して高い水準にあります。投資信託の比率は、2018年3月末時点で4.0%(日本の家計金融資産残高1,829兆円のうち73兆円)にとどまり、米国の11.8%や欧州の9.6%と比べて低い水準にあります。また、OECDのレポート(Entrepreneurship at a Glance 2017)によれば、日本のVC(ベンチャーキャピタル)投資額の対GDP比率は0.04%で、0.28%となっている米国の7分の1にとどまっています。
技術動向の面について、ロボアドバイザー投資やおつり投信、スマホ証券など、スマホネイティブの新たな運用サービスが登場しています。これらについては、投資や運用をより身近にするものと考えられます。また、価格上昇は一巡したものの、仮想通貨への注目は引き続き高まっており、投資を身近にする一助となっている可能性があります。さらに、投資におけるAIの利活用を容易にする技術やクラウドベースのサービスも広がりつつあります。
(参考)家計金融資産の日米欧比較(日本銀行「資金循環の日米欧比較」(2018年8月14日))
(5)事業上及び財務上の対処すべき課題
①新規投資家層の拡大と運用資産残高の獲得
当社は、国内外投資家の資金を受託し運用する投資運用業を主たる業務としていることから、運用資産残高が当社の重要な収益の源泉であります。
独立系の資産運用会社として当社は、顧客本位のサービスや顧客の安定的な資産形成に資する商品の提供等、独自性と一貫性をもった営業活動を継続的に行ないながら国内における顧客基盤と販売チャネルを構築してまいりましたが、その顧客基盤は必ずしも磐石とは言えず、新規顧客の獲得と既存顧客からの追加運用資産の獲得、また既存顧客の離反を防ぐためのサービスの拡充が重要な課題であると認識しております。顧客との積極的なコミュニケーションを通じた金融・投資に関するリテラシー向上に貢献しつつ、運用資産残高の安定的成長を目指していく方針です。
また、国外顧客基盤に関しても、投資家・投資家候補との更なるコミュニケーションの強化を図り、これらの課題に対処していく方針です。
②内部管理体制の強化
現在、当社の内部管理体制は、小規模体制に適応したものとなっております。今後の事業拡大を見据え、業務運営の効率化、金融商品取引業者としての法令遵守、リスク管理のための内部管理体制の強化が重要な課題であると認識しております。
これらの課題に対処するために、必要に応じて人材を適時に採用し、社内教育を充実させ内部管理体制の強化に努めることにより、継続的な成長を支える効率的かつ安定的な経営を行なっていく方針です。
③優秀な人材の確保と社内育成
当社が国内外の顧客に提供する投資サービスは投資に関する専門的知識はもとより、豊富かつ多様な業務経験や知識の裏付けがあって初めて提供できるものです。当社には、日本株の投資分野で長年活躍してきた経験豊富な人材が複数所属しており、当社の業務において中心的な役割を担う優秀な人材の厚みは、現在の当社の大きな強みであると考えております。
今後においても、継続的に質の高いサービスを提供していくために、十分な経験を積んだ専門性の高い人材を確保する他、未経験であっても有望な若手を採用し、社内において教育を行なうことにより、優秀な人材を継続的に育成していくことが当社の重要な課題であると認識しております。
④ブランド構築および維持
投資は素敵な経済活動であるという考え方を広く浸透させ投資文化を構築するなど、資本市場を通じて社会に貢献することを目的として、当社は誕生しました。レオスとは、古代ギリシャ語で“流れ・流れを作り出す”という意味があります。
日本には人財・資本・知恵そして技術など多くの資産(キャピタル)がありますが、現在の日本はこれらが結びつかずに停滞している状態だと認識しています。当社は、人財・資本・知恵というキャピタルが強固に結びつく(ワークする)ことで経済・資本市場が活発になり、よりよい社会が実現できると考えております。
当社および当社投資信託のブランドの価値向上は、運用資産の獲得につながり、更なる日本の優良な成長企業に投資を行なうことが出来るようになることで、当社経営理念「資本市場を通じて社会に貢献します」を実現することにつながります。また、当社ブランド価値の向上は、優秀な人材の確保につながるため、当社が更に成長していくうえで重要だと考えております。そして当社は、お客様との緊密なコミュニケーションを継続する(=∞の価値改善運動)ことがお客様からの信頼を得ることにつながり、それがブランドになると考えております。
⑤新技術への対応
当社が属する資産運用業界では、現在、AIの活用をはじめ、様々な技術革新が起きております。このような事業環境の下で当社が事業を継続的に拡大していくには、技術革新の動向を把握するとともに、新たな技術やサービスの活用のトライアルを行なうなど、その活用可能性を積極的に模索していくことが必要であると認識しております。