有価証券報告書-第97期(2025/04/01-2026/03/31)
有報資料
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当金庫グループ(以下、本項目においては「当金庫」という。)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。なお、これらのリスクは必ずしも全てを網羅したものではありません。また、リスクは独立して発生するとは限らず、あるリスクの発生が他のリスクの発生につながり、様々なリスクを増大させる可能性があります。
当金庫は、経営環境の変化を踏まえて、適切にリスク事象の抽出と評価を行いながら実効性のある対応策を講じていくとともに、リスクマネジメントの更なる強化に取り組んでまいります。
本項目においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は、別段の記載のない限り、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
1 トップリスク
当金庫では、経営層による議論のもと、定期的に当金庫を取り巻くリスク事象を選定するとともに、経営として最も注視すべきリスク事象をトップリスクとして決定し、必要な対応策を講じてリスクを適切に管理・コントロールしていく態勢を整備しております。
2026年3月の取締役会において、長期戦略・変革プランの中で新たに想定し得るリスクも考慮し、従来、トップリスク以外の主要なリスクとして認識していた「企業倒産の増加」及び「大口与信先の企業業績の悪化」を「投融資の毀損増加」と見直した上でトップリスクとすることを決定しました。また、「システム障害」をトップリスクとすることを決定しました。一方で、従来、トップリスクとして認識していた「当金庫グループのビジネス戦略に関するリスク」及び「DXに関するリスク」について、長期戦略・変革プランの決定を以て、引き続き主要なリスクとして認識しつつも、トップリスクからは除外することを決定しました。
これに伴い、当金庫が認識するトップリスクは、以下の9個のリスク事象となります。
① 人財の確保・育成
② 投融資の毀損増加
③ 産業構造の変化
④ 気候変動リスクへの対応
⑤ 大規模自然災害の発生
⑥ サイバー攻撃に関するリスク
⑦ システム障害
⑧ マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策の不備
⑨ 地政学リスク・経済安全保障
① 人財の確保・育成
労働力人口の減少に加え、労働市場における流動化の動きや働き手の価値観の多様化等を背景に、企業と従業員を取り巻く環境が大きく変化しています。当金庫は、幅広い分野で高度な専門性を要する業務を展開しており、戦略の遂行に必要な人財の確保・育成が重要な経営課題となっています。 必要な人財を確保・育成できない場合には、主要分野におけるビジネス戦略が想定通りに実施できず、その結果、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
また、人的資本経営に対して、機関投資家を含めたステークホルダーや社会の関心が高まる中で、企業の取組みや情報開示が不十分であると見なされた場合には、必要な人財の確保が困難となるほか、当金庫のレピュテーションの毀損や資金調達への影響を通じて、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当金庫では、こうした課題への対応として、採用活動にさらに力を入れるとともに、従業員一人ひとりのWell-beingや働きがいのある組織の実現、働き方改革、キャリア開発・スキルアップ支援に取り組み、経営戦略と連動した人財の確保・育成を図っております。詳細な内容については、「第2 事業の状況 2サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。
② 投融資の毀損増加
当金庫は、お取引先の業況、債権の保全状況及び過去の貸倒実績率等に基づき、貸倒引当金を計上しております。しかしながら、国内外の経済動向、特定の地域や業種における経営環境の変化等、様々な原因によって、お取引先の業況が想定を超えて悪化した場合、あるいは地価下落等に伴い担保価値が低下し債権の保全状況が悪化した場合等には、不良債権及び貸倒引当金の積み増しによる与信関係費用が大幅に増加し、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
また、長期戦略・変革プランのもとで、高度ファイナンスやエクイティ投資などを拡充していくため、これらのリスクが増大する可能性があります。
当金庫では、過去からの融資ノウハウに基づく融資審査基準及び審査体制により信用リスクの把握及び評価を適切に行った上で、信用ポートフォリオの状況をモニタリングするなど必要な管理を行っておりますが、今後、より一層の高度化に取り組んでまいります。また、長期戦略・変革プランの注力分野の1つとして「経営改善・事業再生」の取組みを強化し、お取引先の経営危機の未然防止や業況回復に向けた支援に積極的に取り組むことで投融資毀損額を抑制してまいります。
③ 産業構造の変化
日本を含む世界各国で、経済安全保障等の観点から産業政策を強化する動きが加速しており、特にデジタル分野・グリーン分野では顕著となっています。急速に進む技術革新とあわせて、今後、産業構造が大きく変容し、当金庫の事業環境・競争環境が大きく変化する可能性があります。この場合、当金庫が想定していたビジネス戦略の前提条件が崩れ、戦略投資の効果が剥落する、または、必要な人財を確保できないことで、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
また、自動車産業のEV化の動向の変化や物流産業における規制強化の動き等が、当金庫のお取引先の事業に影響を及ぼし、これにより、当金庫の信用ポートフォリオが影響を受けることで、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当金庫では、こうした事業環境・競争環境の変化に対応するため、広く情報収集を行い、当金庫の経営に与える影響を分析・評価するとともに、様々な戦略や施策を実行しております。自動車産業のEV化の動向の変化に対しては、トランジション支援のための外部関係先との連携強化やお取引先との課題共有に注力しております。物流産業における規制強化、それに伴う業界構造変化の動きに対しては、お取引先の属性ごとにソリューションメニューを用意し、お取引先のニーズに対応しております。今後は、インダストリー事業本部を中心に、DX・GX等、大きな産業構造の変革により生じる業界ごとの課題並びに社会的課題に対するソリューションの構築・提供をこれまで以上に進めてまいります。
④ 気候変動リスクへの対応
近年、異常気象による被害が甚大化しており、世界各国で気候変動に対応する動きが広がっています。日本でも2050年温室効果ガス排出ネット・ゼロが宣言され、今後、脱炭素社会への移行に向けた社会の変革が予想されます。
異常気象等によってもたらされる物理的な被害や、脱炭素社会への移行に伴う政策変更及び規制強化、社会通念や産業構造の変化等が、当金庫のお取引先の事業に影響を及ぼし、これにより、当金庫の事業戦略や信用ポートフォリオが影響を受けることで、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
また、気候変動問題に対して、機関投資家を含めたステークホルダーや社会の関心が高まる中で、企業としての取組みや情報開示が不十分であると見なされた場合には、当金庫のレピュテーションを毀損する、あるいは資金調達に影響するなど、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当金庫では、お取引先の脱炭素化策の実行を伴走支援するとともに、当金庫におけるCO2排出量の削減に向けて取り組んでおります。詳細な内容については、「第2 事業の状況 2サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。
⑤ 大規模自然災害の発生
当金庫は国内外の営業拠点やシステムセンター等の施設において事業活動を行っております。これらの施設等は大規模な地震や風水害等の自然災害により被害を受け、被害の程度によっては、業務の一部が停止する可能性があります。かかる事態が発生した場合には、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、当金庫のお取引先の事業所が被災した場合、お取引先の業績や担保資産の価値が悪化し、これにより、当金庫の信用ポートフォリオが影響を受けることで、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当金庫では、不測の事態の発生に対し、迅速に対応できるよう、事業継続計画(BCP)を整備し、シナリオに基づく事前対策を検討するとともに、実効性を高めるため、定期的に各種訓練や研修を実施しております。加えて、地方自治体が公表しているハザードマップをもとに、年1回、浸水リスクのある拠点と被害予測を調査するなど、リスクを適切に認識しております。また、お取引先の被災リスクに関しては、自然災害の発生を想定したストレステストを定期的に実施し、ストレス下におけるリスク量と資本の十分性を検証しております。
⑥ サイバー攻撃に関するリスク
近年のデジタル技術の著しい発展により、インターネットを利用した取引が増加している一方、サイバー攻撃手法の高度化・巧妙化も急速に進んでおり、金融機関を取り巻くサイバーリスクは一層高まっております。サイバー攻撃によるシステムの停止、データ改ざん、情報漏洩、不正送金等が発生した場合、それに伴う損失により、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当金庫では、組織内CSIRTとして「商中SIRT」を設置し、サイバー攻撃に関する情報収集・分析や、サイバー攻撃に備えた定期的な対応訓練、コンティンジェンシープランの見直し等を実施するとともに、サイバー攻撃への多層防御対策やマルウェア侵入に備えた対策を講じております。
また、2024年金融庁から発出された「金融分野におけるサイバーセキュリティに関するガイドライン」への対応ロードマップを策定し対応を進めるとともに、2026年4月にコンプライアンス統括部に「情報セキュリティ対策室」を設置する等、継続して管理態勢の高度化を図っております。
⑦ システム障害
システムの停止又は誤作動等の不具合が生じた場合、当金庫業務やサービスの停止等に伴う損失により、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。長期戦略・変革プランの実行の中で、利便性の高い資金決済サービスの提供や、様々なサービス・ソリューション・サポートを提供するための外部システムとのAPI連携拡大等により、大規模システム障害が今後発生した場合には、お客さまへの影響や社会的影響が極めて大きくなる可能性があります。この場合、障害に伴う損失やレピュテーションの毀損から、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当金庫では、システム構築段階から障害を未然防止する対策を講じるほか、重要なシステムの二重化やバックアップ体制の構築、大規模災害等不測の事態に備えたコンティンジェンシープランの整備等を行うとともに、大規模システム障害及びBCP(業務継続)訓練にも努め、システムリスクに対し万全の態勢で臨んでおります。
⑧ マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策の不備
金融犯罪が複雑化・巧妙化し、世界各所でテロ犯罪が継続的に発生する等、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策(以下「マネロン対策」という)の重要性が急速に高まっております。したがって、当金庫のマネロン対策が有効に機能せず、仮に法令諸規制への違反やマネロン対策の重大な不備等の事態が発生した場合には、内外の金融当局からの業務停止・制裁金等の行政処分、コルレス契約の解除による海外送金業務等の停止、レピュテーションの毀損等により、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当金庫では、有効性検証による実効性の確保や、役職員に対する教育・研修の充実に努める等、マネロン対策の強化に継続的に取り組んでおります。2026年度は、2028年のFATF対日審査や、社会問題となっている詐欺事件からの顧客保護に向けて、「2026年度金融犯罪対策プログラム」を策定し、計画的に対策を実施しております。
⑨ 地政学リスク・経済安全保障
米中を軸として大国間競争が激化しており、制裁・関税・投資規制・輸出管理が安全保障の手段として常態化しつつあり、また、中東・ウクライナ情勢の緊迫を受けた原油価格上昇等、物価や経済動向の不確実性も高まっております。グローバルなサプライチェーンの分断が意識され、世界的な供給網の見直しが進む可能性があります。これらの動きが、お取引先のビジネスモデルや業況に影響を及ぼし、ひいては当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、金融機関は、基幹的なインフラの一つとして、情報の適切な管理や、機器・システムの利用、業務提携・委託等について、わが国を含む各国の経済安全保障政策の観点から制約を受ける可能性があり、この場合、当金庫の業務に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当金庫では、中東・ウクライナ情勢・原油価格上昇等により影響を受けた中小企業・小規模事業者を対象とする「中東・ウクライナ情勢・原油価格上昇等に関する特別相談窓口」を、2026年3月23日、全営業店に設置しました。影響を受けられた中小企業等の皆さまからのお借入のお申込み等に対して、懇切・丁寧かつ個別の実情に応じた対応を行ってまいります。
2 トップリスク以外の主要なリスク
有価証券報告書提出日現在、認識しているリスクは以下のとおりであります。
① 当金庫グループのビジネス戦略に関するリスク
当金庫は、2023年6月の改正商工中金法成立を受け、政府保有株式が処分され、民間株主のみがオーナーの金融機関となりました。民営化により、真に「中小企業による中小企業のための金融機関」として、長期的な産業構造・社会構造の変化を見据えたマーケティング機能の発揮や、当金庫及びお取引先の生産性向上、グリーン化、デジタル化に向けての施策立案・実行など、当金庫が果たすべき機能・役割がより問われていく中、仮に求められる機能・役割を果たせない場合、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当金庫では、当金庫の機能・役割がより一層問われている重要な転換期にあるとの認識のもと、長期的に目指す姿に向け、「中小企業経済圏」と「集めて・つなげて・価値を創る」をキーワードとして、ビジネスモデル・経営の仕組み・人財・組織風土の変革に全社を挙げて取り組む方針を示した、長期戦略・変革プランを策定しました。PURPOSE実現に向け、中小企業を支える「プロデューサー」として「中小企業経済圏」の確立・活性化を通じ、圏の参加者の価値向上に貢献してまいります。詳細な内容については、「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
② DXに関するリスク
生成AIを始めとするデジタル・IT分野における技術革新の進展は早く、企業経営を大きく転換させる可能性があります。また、多くの企業が導入課題として「専門人材が不足している」ことを挙げており、本分野の人財確保が困難化する可能性が高まっております。あわせて、デジタル技術や生成AIの活用にあたっては、システム障害やサイバー攻撃によるサービス停止、誤った情報に基づく判断、ガバナンスやルール整備が追いつかないことによる影響等が生じるリスクがあります。これらの対応が不十分になることにより、デジタル・ITを活用したサービスや業務の浸透が遅れ、変革が進まない結果、生産性や競争力が大きく劣後し、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当金庫では、法人・個人事業主さま向けにポータルサイト(「商工中金Bizリンク」)を提供し、全店で利用拡大を進めております。また、同サイトと営業支援システム、顧客関係管理システムを連携させ、お取引先の生産性向上、課題解決支援の一層の強化を図っております。生成AIにつきましては、全役職員向け生成AIの利用環境を導入しており、文章の要約や校正、社内ナレッジ検索等、具体的な活用により効率化が進んでおります。ハルシネーション等、活用に伴うリスクに留意しつつ、本部企画業務への活用、お取引先に対する事業性評価や融資審査における調査への活用等、様々な用途・領域での活用を着実に進めてまいります。あわせて、デジタル技術全般について、業務の重要性や影響度に応じた適切な管理のもとで活用を進めてまいります。その他、DX・デジタル人財の確保と環境整備、全役職員のデジタルスキル向上につきましても、より一層、取り組んでまいります。
③ 資金調達に関するリスク
金利環境の一段の変化やデジタルバンクの台頭等により、金融機関同士の預金獲得競争が激化する中、国内外の急激な景気の悪化や金融市場の混乱等の資金調達環境の悪化だけではなく、平常時も含めてビジネス戦略の実行に必要な資金調達コストが想定以上に上昇する可能性があります。また、金融市場の混乱や当金庫に対する評判の悪化が生じた場合には、必要な資金を確保できずに資金繰りが悪化する可能性や通常の取引よりも著しく高い金利での資金調達を余儀なくされる可能性があります。かかる事態が発生した場合、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当金庫では、預金調達強化に向けた施策を検討するとともに、資金繰りに関する各種リミットを設定し、運用と調達のバランスを意識しながら、資金繰りを適切にコントロールしております。また、ストレス時を想定して、流動性の高い資産を一定以上保有するなど円滑な資金繰りに努めております。
④ 格付低下
格付機関により当金庫の格付が引き下げられた場合、当金庫の資金調達や市場業務等が悪影響を受けるおそれがあります。具体的には、金融債の発行や外貨調達において、資金調達コストの上昇や資金調達の困難化が想定されるほか、デリバティブ業務において、追加担保の提供、一部取引の困難化、既存取引の解約等が発生する可能性があります。かかる事態が発生した場合、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当金庫では、財務体質の強化策や収益力増強策等の諸施策に取り組み、格付の維持・向上に努めております。また、ストレス時を想定して流動性の高い資産を一定以上保有するなど安定的な資金繰り運営に努めております。
⑤ コンダクトリスク
当金庫においては、役職員の行動や判断が、法令・社会規範、並びに当金庫が掲げる理念やお客さま本位の考え方から逸脱した場合、お客さまや社会からの信頼を損なうおそれのあるリスク(コンダクトリスク)が想定されます。
特に、長期戦略・変革プランを進めていく過程において、その趣旨や目的の理解が十分に浸透・徹底されないまま推進された場合などには、結果としてお客さま本位を欠いた対応や、社会通念に照らし不適切な行動につながり、当金庫が中長期的に目指す方向性と乖離するリスクがあるものと認識しております。
当金庫では、こうしたリスクに対し、倫理憲章及びコンプライアンス行動基準の徹底を図るとともに、長期戦略・変革プランを支える基盤として、PURPOSE起点での行動を重視した教育・研修、各部室店における自律的なリスク管理の取組み、並びに各種モニタリングなどを通じて、役職員一人ひとりが適切な行動判断を行うための態勢整備に取り組んでおります。
これらの取組みを継続・高度化することにより、健全な企業文化の醸成を通じて、長期戦略・変革プランの実行を支える基盤を確かなものとし、長期的な企業価値の維持・向上に努めてまいります。
⑥ 情報漏洩・情報管理の不備
サイバー攻撃リスクの高まりや、外部委託先をはじめとしたサードパーティとの連携拡大等に伴い、当金庫が保有する情報資産の管理に係るリスクが高まっております。
役職員による不適切な取扱いや管理不備、委託先等における情報管理態勢の不十分さ等により、お取引先の情報等の重要な情報が外部に漏洩した場合、また、不正に利用された場合には、お取引先からの信用や社会的信用の失墜のほか、損害賠償請求や行政処分の対象となるなど、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当金庫では、情報セキュリティに関する規定等を整備するとともに、役職員に対する研修等を通じて情報管理の重要性の周知徹底を図っております。また、システム上の統制や外部委託先を含めた情報管理態勢の整備を行うなど、保有する情報資産の適切な管理に継続的に取り組んでおります。
⑦ 国内外の金融経済環境の悪化
米中を軸とした大国間競争の激化、中東・ウクライナ情勢の緊迫を受けた原油価格上昇等、世界経済を巡る不確実性は高く、先行きの国内外の金融経済環境への影響には注意が必要な状況であります。国内外において、経済状況の悪化や金融市場の混乱等が生じた場合には、お取引先の企業業績の悪化に伴う与信関係費用の増加や、保有有価証券の価格下落、資金調達環境の悪化等により、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当金庫では、こうした金融経済環境の悪化に対して、リスク管理態勢の整備・高度化を進めながら、様々な対策を講じることで、リスクが顕在化した場合の影響の極小化に努めております。
⑧ 日本銀行の金融政策に関するリスク
当金庫の収益は、運用・調達の金利収益に大きく依存します。日本銀行は2025年12月に政策金利を0.75%に引き上げ、「金利のある世界」が次第に本格化しており、今後、更なる政策の見直しがあった場合には、貸出債権や有価証券ポートフォリオに変動が生じ、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当金庫では、金利や株価などのリスクの種類や業務の内容に応じてリスク限度や損失限度等を設定し、市場環境に応じて適切にリスクコントロールを行うとともに、市場環境急変時には速やかに必要な対応を審議する態勢を構築する等のリスク管理態勢を整備するとともに、お取引先への影響等を分析・評価しております。また、市場金利の低下に伴う金利収益の低下リスクも念頭に入れたALM(※)運営を行い、金利収益の適切なコントロールに努めております。
※Asset Liability Management 資産・負債の一元的な総合管理
⑨ コーポレートガバナンスの機能低下
コーポレートガバナンスが有効に機能しない場合、ステークホルダーの利益に反する企業運営や組織的な不祥事に繋がる可能性があり、この場合、社会的信用を大きく失墜し、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当金庫では、過去、危機対応業務における不正行為並びにその他の不適切な業務運営により二度の行政処分を受けたことを教訓に、監督と執行の分離によるモニタリング型の取締役会を実現するためのガバナンス体制とし、過半数の社外取締役を登用するとともに、毎年、取締役会の実効性を分析・評価し、洗い出された課題に対し、改善策を検討・実施する等、企業価値向上の実現に向けて、取締役会の機能強化に取り組んでまいりました。
2024年6月20日には監査等委員会設置会社へ移行し、取締役会の監督機能を強化するとともに、重要な業務執行の決定権限を取締役会から取締役へ委任することで、迅速な意思決定、業務執行を可能とし、更なるガバナンス強化を図ってまいりました。また、2025年7月1日に、グループチーフオフィサー(CxO)制を導入し、グループCEOによる全体統括のもと、CTrO・CDIO及びCCO・CROを設置し、グループの一体性を持ったガバナンス体制の確立も図ってまいりました。2026年4月1日には、組織再編及び長期戦略の推進に向けて、グループ一体で一層の経営管理体制の高度化を図るべく、CSO及びCHROを新設しております。
2026年度取締役会の取組方針は、「パーパス実現に向けた中長期的な戦略を議論する取締役会」の定義のもと、「中長期的な方向性や戦略に関する議論の充実」「多様なステークホルダーとの関係性の深化」を重点テーマとして取り組み、重点テーマの議論に注力するため、審議時間の有効活用及び議論の質向上にも取り組んでおります。
⑩ サードパーティ管理に関するリスク
長期戦略・変革プランでは、「中小企業経済圏」の確立・活性化のためのキーワードは、中小企業に関わる様々な関係者を「集めて」、「つなげて」、「価値を創る」であり、より一層、多種多様なカウンターパーティと連携や協働をしていくこととなります。当金庫業務の委託先や業務提携先をはじめとした様々なサードパーティにおいて、サイバー攻撃やシステム障害、重大な事務ミスの発生等により、情報漏洩や業務の一部停止が発生する可能性があります。かかる事態が発生した場合、お取引先からの信用、並びに社会的な信用が失墜するほか、損害賠償請求や行政処分の対象となり、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当金庫では、外部委託業務に係る管理手続きに基づき、業務委託先の経営の健全性や委託業務の遂行能力、情報管理態勢等の確認・検証を実施し、内在するリスクの低減に取り組んでおりますが、より幅広い経済主体を含むサードパーティに係るリスク管理態勢の整備にも取り組んでまいります。
⑪ 人権問題への対応
企業には社会の持続可能な発展に貢献することが期待されており、企業の事業活動について、社会や環境に及ぼす影響への配慮と倫理的な行動が求められています。人権問題への対応もその一つであり、企業は国際的に認められた人権を尊重し、あらゆる事業活動の中で、児童労働・強制労働等の搾取的労働慣行を排除していくことが必要となります。人権問題に対し、機関投資家を含めたステークホルダーや社会の関心が高まる中、企業としての取組みが不十分である場合、当金庫のレピュテーションを毀損する、または資金調達に影響するなど、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当金庫では、人権の尊重は企業の社会的責任を果たすうえで重要な経営課題であるとの認識のもと、役職員を対象に人権意識を高める研修・啓蒙活動を行っております。また、人権問題に関して広く情報収集を行い、当金庫の経営に与える影響を分析・評価する取組みを実施しております。「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」に沿って2024年4月に策定いたしましたグループ人権方針に基づき、事業活動が与え得る人権への負の影響を防止または軽減するために、適切な人権デュー・ディリジェンスを行うよう努めております。
当金庫は、経営環境の変化を踏まえて、適切にリスク事象の抽出と評価を行いながら実効性のある対応策を講じていくとともに、リスクマネジメントの更なる強化に取り組んでまいります。
本項目においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は、別段の記載のない限り、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
1 トップリスク
当金庫では、経営層による議論のもと、定期的に当金庫を取り巻くリスク事象を選定するとともに、経営として最も注視すべきリスク事象をトップリスクとして決定し、必要な対応策を講じてリスクを適切に管理・コントロールしていく態勢を整備しております。
2026年3月の取締役会において、長期戦略・変革プランの中で新たに想定し得るリスクも考慮し、従来、トップリスク以外の主要なリスクとして認識していた「企業倒産の増加」及び「大口与信先の企業業績の悪化」を「投融資の毀損増加」と見直した上でトップリスクとすることを決定しました。また、「システム障害」をトップリスクとすることを決定しました。一方で、従来、トップリスクとして認識していた「当金庫グループのビジネス戦略に関するリスク」及び「DXに関するリスク」について、長期戦略・変革プランの決定を以て、引き続き主要なリスクとして認識しつつも、トップリスクからは除外することを決定しました。
これに伴い、当金庫が認識するトップリスクは、以下の9個のリスク事象となります。
① 人財の確保・育成
② 投融資の毀損増加
③ 産業構造の変化
④ 気候変動リスクへの対応
⑤ 大規模自然災害の発生
⑥ サイバー攻撃に関するリスク
⑦ システム障害
⑧ マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策の不備
⑨ 地政学リスク・経済安全保障
① 人財の確保・育成
労働力人口の減少に加え、労働市場における流動化の動きや働き手の価値観の多様化等を背景に、企業と従業員を取り巻く環境が大きく変化しています。当金庫は、幅広い分野で高度な専門性を要する業務を展開しており、戦略の遂行に必要な人財の確保・育成が重要な経営課題となっています。 必要な人財を確保・育成できない場合には、主要分野におけるビジネス戦略が想定通りに実施できず、その結果、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
また、人的資本経営に対して、機関投資家を含めたステークホルダーや社会の関心が高まる中で、企業の取組みや情報開示が不十分であると見なされた場合には、必要な人財の確保が困難となるほか、当金庫のレピュテーションの毀損や資金調達への影響を通じて、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当金庫では、こうした課題への対応として、採用活動にさらに力を入れるとともに、従業員一人ひとりのWell-beingや働きがいのある組織の実現、働き方改革、キャリア開発・スキルアップ支援に取り組み、経営戦略と連動した人財の確保・育成を図っております。詳細な内容については、「第2 事業の状況 2サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。
② 投融資の毀損増加
当金庫は、お取引先の業況、債権の保全状況及び過去の貸倒実績率等に基づき、貸倒引当金を計上しております。しかしながら、国内外の経済動向、特定の地域や業種における経営環境の変化等、様々な原因によって、お取引先の業況が想定を超えて悪化した場合、あるいは地価下落等に伴い担保価値が低下し債権の保全状況が悪化した場合等には、不良債権及び貸倒引当金の積み増しによる与信関係費用が大幅に増加し、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
また、長期戦略・変革プランのもとで、高度ファイナンスやエクイティ投資などを拡充していくため、これらのリスクが増大する可能性があります。
当金庫では、過去からの融資ノウハウに基づく融資審査基準及び審査体制により信用リスクの把握及び評価を適切に行った上で、信用ポートフォリオの状況をモニタリングするなど必要な管理を行っておりますが、今後、より一層の高度化に取り組んでまいります。また、長期戦略・変革プランの注力分野の1つとして「経営改善・事業再生」の取組みを強化し、お取引先の経営危機の未然防止や業況回復に向けた支援に積極的に取り組むことで投融資毀損額を抑制してまいります。
③ 産業構造の変化
日本を含む世界各国で、経済安全保障等の観点から産業政策を強化する動きが加速しており、特にデジタル分野・グリーン分野では顕著となっています。急速に進む技術革新とあわせて、今後、産業構造が大きく変容し、当金庫の事業環境・競争環境が大きく変化する可能性があります。この場合、当金庫が想定していたビジネス戦略の前提条件が崩れ、戦略投資の効果が剥落する、または、必要な人財を確保できないことで、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
また、自動車産業のEV化の動向の変化や物流産業における規制強化の動き等が、当金庫のお取引先の事業に影響を及ぼし、これにより、当金庫の信用ポートフォリオが影響を受けることで、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当金庫では、こうした事業環境・競争環境の変化に対応するため、広く情報収集を行い、当金庫の経営に与える影響を分析・評価するとともに、様々な戦略や施策を実行しております。自動車産業のEV化の動向の変化に対しては、トランジション支援のための外部関係先との連携強化やお取引先との課題共有に注力しております。物流産業における規制強化、それに伴う業界構造変化の動きに対しては、お取引先の属性ごとにソリューションメニューを用意し、お取引先のニーズに対応しております。今後は、インダストリー事業本部を中心に、DX・GX等、大きな産業構造の変革により生じる業界ごとの課題並びに社会的課題に対するソリューションの構築・提供をこれまで以上に進めてまいります。
④ 気候変動リスクへの対応
近年、異常気象による被害が甚大化しており、世界各国で気候変動に対応する動きが広がっています。日本でも2050年温室効果ガス排出ネット・ゼロが宣言され、今後、脱炭素社会への移行に向けた社会の変革が予想されます。
異常気象等によってもたらされる物理的な被害や、脱炭素社会への移行に伴う政策変更及び規制強化、社会通念や産業構造の変化等が、当金庫のお取引先の事業に影響を及ぼし、これにより、当金庫の事業戦略や信用ポートフォリオが影響を受けることで、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
また、気候変動問題に対して、機関投資家を含めたステークホルダーや社会の関心が高まる中で、企業としての取組みや情報開示が不十分であると見なされた場合には、当金庫のレピュテーションを毀損する、あるいは資金調達に影響するなど、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当金庫では、お取引先の脱炭素化策の実行を伴走支援するとともに、当金庫におけるCO2排出量の削減に向けて取り組んでおります。詳細な内容については、「第2 事業の状況 2サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。
⑤ 大規模自然災害の発生
当金庫は国内外の営業拠点やシステムセンター等の施設において事業活動を行っております。これらの施設等は大規模な地震や風水害等の自然災害により被害を受け、被害の程度によっては、業務の一部が停止する可能性があります。かかる事態が発生した場合には、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、当金庫のお取引先の事業所が被災した場合、お取引先の業績や担保資産の価値が悪化し、これにより、当金庫の信用ポートフォリオが影響を受けることで、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当金庫では、不測の事態の発生に対し、迅速に対応できるよう、事業継続計画(BCP)を整備し、シナリオに基づく事前対策を検討するとともに、実効性を高めるため、定期的に各種訓練や研修を実施しております。加えて、地方自治体が公表しているハザードマップをもとに、年1回、浸水リスクのある拠点と被害予測を調査するなど、リスクを適切に認識しております。また、お取引先の被災リスクに関しては、自然災害の発生を想定したストレステストを定期的に実施し、ストレス下におけるリスク量と資本の十分性を検証しております。
⑥ サイバー攻撃に関するリスク
近年のデジタル技術の著しい発展により、インターネットを利用した取引が増加している一方、サイバー攻撃手法の高度化・巧妙化も急速に進んでおり、金融機関を取り巻くサイバーリスクは一層高まっております。サイバー攻撃によるシステムの停止、データ改ざん、情報漏洩、不正送金等が発生した場合、それに伴う損失により、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当金庫では、組織内CSIRTとして「商中SIRT」を設置し、サイバー攻撃に関する情報収集・分析や、サイバー攻撃に備えた定期的な対応訓練、コンティンジェンシープランの見直し等を実施するとともに、サイバー攻撃への多層防御対策やマルウェア侵入に備えた対策を講じております。
また、2024年金融庁から発出された「金融分野におけるサイバーセキュリティに関するガイドライン」への対応ロードマップを策定し対応を進めるとともに、2026年4月にコンプライアンス統括部に「情報セキュリティ対策室」を設置する等、継続して管理態勢の高度化を図っております。
⑦ システム障害
システムの停止又は誤作動等の不具合が生じた場合、当金庫業務やサービスの停止等に伴う損失により、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。長期戦略・変革プランの実行の中で、利便性の高い資金決済サービスの提供や、様々なサービス・ソリューション・サポートを提供するための外部システムとのAPI連携拡大等により、大規模システム障害が今後発生した場合には、お客さまへの影響や社会的影響が極めて大きくなる可能性があります。この場合、障害に伴う損失やレピュテーションの毀損から、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当金庫では、システム構築段階から障害を未然防止する対策を講じるほか、重要なシステムの二重化やバックアップ体制の構築、大規模災害等不測の事態に備えたコンティンジェンシープランの整備等を行うとともに、大規模システム障害及びBCP(業務継続)訓練にも努め、システムリスクに対し万全の態勢で臨んでおります。
⑧ マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策の不備
金融犯罪が複雑化・巧妙化し、世界各所でテロ犯罪が継続的に発生する等、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策(以下「マネロン対策」という)の重要性が急速に高まっております。したがって、当金庫のマネロン対策が有効に機能せず、仮に法令諸規制への違反やマネロン対策の重大な不備等の事態が発生した場合には、内外の金融当局からの業務停止・制裁金等の行政処分、コルレス契約の解除による海外送金業務等の停止、レピュテーションの毀損等により、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当金庫では、有効性検証による実効性の確保や、役職員に対する教育・研修の充実に努める等、マネロン対策の強化に継続的に取り組んでおります。2026年度は、2028年のFATF対日審査や、社会問題となっている詐欺事件からの顧客保護に向けて、「2026年度金融犯罪対策プログラム」を策定し、計画的に対策を実施しております。
⑨ 地政学リスク・経済安全保障
米中を軸として大国間競争が激化しており、制裁・関税・投資規制・輸出管理が安全保障の手段として常態化しつつあり、また、中東・ウクライナ情勢の緊迫を受けた原油価格上昇等、物価や経済動向の不確実性も高まっております。グローバルなサプライチェーンの分断が意識され、世界的な供給網の見直しが進む可能性があります。これらの動きが、お取引先のビジネスモデルや業況に影響を及ぼし、ひいては当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、金融機関は、基幹的なインフラの一つとして、情報の適切な管理や、機器・システムの利用、業務提携・委託等について、わが国を含む各国の経済安全保障政策の観点から制約を受ける可能性があり、この場合、当金庫の業務に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当金庫では、中東・ウクライナ情勢・原油価格上昇等により影響を受けた中小企業・小規模事業者を対象とする「中東・ウクライナ情勢・原油価格上昇等に関する特別相談窓口」を、2026年3月23日、全営業店に設置しました。影響を受けられた中小企業等の皆さまからのお借入のお申込み等に対して、懇切・丁寧かつ個別の実情に応じた対応を行ってまいります。
2 トップリスク以外の主要なリスク
有価証券報告書提出日現在、認識しているリスクは以下のとおりであります。
① 当金庫グループのビジネス戦略に関するリスク
当金庫は、2023年6月の改正商工中金法成立を受け、政府保有株式が処分され、民間株主のみがオーナーの金融機関となりました。民営化により、真に「中小企業による中小企業のための金融機関」として、長期的な産業構造・社会構造の変化を見据えたマーケティング機能の発揮や、当金庫及びお取引先の生産性向上、グリーン化、デジタル化に向けての施策立案・実行など、当金庫が果たすべき機能・役割がより問われていく中、仮に求められる機能・役割を果たせない場合、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当金庫では、当金庫の機能・役割がより一層問われている重要な転換期にあるとの認識のもと、長期的に目指す姿に向け、「中小企業経済圏」と「集めて・つなげて・価値を創る」をキーワードとして、ビジネスモデル・経営の仕組み・人財・組織風土の変革に全社を挙げて取り組む方針を示した、長期戦略・変革プランを策定しました。PURPOSE実現に向け、中小企業を支える「プロデューサー」として「中小企業経済圏」の確立・活性化を通じ、圏の参加者の価値向上に貢献してまいります。詳細な内容については、「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
② DXに関するリスク
生成AIを始めとするデジタル・IT分野における技術革新の進展は早く、企業経営を大きく転換させる可能性があります。また、多くの企業が導入課題として「専門人材が不足している」ことを挙げており、本分野の人財確保が困難化する可能性が高まっております。あわせて、デジタル技術や生成AIの活用にあたっては、システム障害やサイバー攻撃によるサービス停止、誤った情報に基づく判断、ガバナンスやルール整備が追いつかないことによる影響等が生じるリスクがあります。これらの対応が不十分になることにより、デジタル・ITを活用したサービスや業務の浸透が遅れ、変革が進まない結果、生産性や競争力が大きく劣後し、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当金庫では、法人・個人事業主さま向けにポータルサイト(「商工中金Bizリンク」)を提供し、全店で利用拡大を進めております。また、同サイトと営業支援システム、顧客関係管理システムを連携させ、お取引先の生産性向上、課題解決支援の一層の強化を図っております。生成AIにつきましては、全役職員向け生成AIの利用環境を導入しており、文章の要約や校正、社内ナレッジ検索等、具体的な活用により効率化が進んでおります。ハルシネーション等、活用に伴うリスクに留意しつつ、本部企画業務への活用、お取引先に対する事業性評価や融資審査における調査への活用等、様々な用途・領域での活用を着実に進めてまいります。あわせて、デジタル技術全般について、業務の重要性や影響度に応じた適切な管理のもとで活用を進めてまいります。その他、DX・デジタル人財の確保と環境整備、全役職員のデジタルスキル向上につきましても、より一層、取り組んでまいります。
③ 資金調達に関するリスク
金利環境の一段の変化やデジタルバンクの台頭等により、金融機関同士の預金獲得競争が激化する中、国内外の急激な景気の悪化や金融市場の混乱等の資金調達環境の悪化だけではなく、平常時も含めてビジネス戦略の実行に必要な資金調達コストが想定以上に上昇する可能性があります。また、金融市場の混乱や当金庫に対する評判の悪化が生じた場合には、必要な資金を確保できずに資金繰りが悪化する可能性や通常の取引よりも著しく高い金利での資金調達を余儀なくされる可能性があります。かかる事態が発生した場合、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当金庫では、預金調達強化に向けた施策を検討するとともに、資金繰りに関する各種リミットを設定し、運用と調達のバランスを意識しながら、資金繰りを適切にコントロールしております。また、ストレス時を想定して、流動性の高い資産を一定以上保有するなど円滑な資金繰りに努めております。
④ 格付低下
格付機関により当金庫の格付が引き下げられた場合、当金庫の資金調達や市場業務等が悪影響を受けるおそれがあります。具体的には、金融債の発行や外貨調達において、資金調達コストの上昇や資金調達の困難化が想定されるほか、デリバティブ業務において、追加担保の提供、一部取引の困難化、既存取引の解約等が発生する可能性があります。かかる事態が発生した場合、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当金庫では、財務体質の強化策や収益力増強策等の諸施策に取り組み、格付の維持・向上に努めております。また、ストレス時を想定して流動性の高い資産を一定以上保有するなど安定的な資金繰り運営に努めております。
⑤ コンダクトリスク
当金庫においては、役職員の行動や判断が、法令・社会規範、並びに当金庫が掲げる理念やお客さま本位の考え方から逸脱した場合、お客さまや社会からの信頼を損なうおそれのあるリスク(コンダクトリスク)が想定されます。
特に、長期戦略・変革プランを進めていく過程において、その趣旨や目的の理解が十分に浸透・徹底されないまま推進された場合などには、結果としてお客さま本位を欠いた対応や、社会通念に照らし不適切な行動につながり、当金庫が中長期的に目指す方向性と乖離するリスクがあるものと認識しております。
当金庫では、こうしたリスクに対し、倫理憲章及びコンプライアンス行動基準の徹底を図るとともに、長期戦略・変革プランを支える基盤として、PURPOSE起点での行動を重視した教育・研修、各部室店における自律的なリスク管理の取組み、並びに各種モニタリングなどを通じて、役職員一人ひとりが適切な行動判断を行うための態勢整備に取り組んでおります。
これらの取組みを継続・高度化することにより、健全な企業文化の醸成を通じて、長期戦略・変革プランの実行を支える基盤を確かなものとし、長期的な企業価値の維持・向上に努めてまいります。
⑥ 情報漏洩・情報管理の不備
サイバー攻撃リスクの高まりや、外部委託先をはじめとしたサードパーティとの連携拡大等に伴い、当金庫が保有する情報資産の管理に係るリスクが高まっております。
役職員による不適切な取扱いや管理不備、委託先等における情報管理態勢の不十分さ等により、お取引先の情報等の重要な情報が外部に漏洩した場合、また、不正に利用された場合には、お取引先からの信用や社会的信用の失墜のほか、損害賠償請求や行政処分の対象となるなど、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当金庫では、情報セキュリティに関する規定等を整備するとともに、役職員に対する研修等を通じて情報管理の重要性の周知徹底を図っております。また、システム上の統制や外部委託先を含めた情報管理態勢の整備を行うなど、保有する情報資産の適切な管理に継続的に取り組んでおります。
⑦ 国内外の金融経済環境の悪化
米中を軸とした大国間競争の激化、中東・ウクライナ情勢の緊迫を受けた原油価格上昇等、世界経済を巡る不確実性は高く、先行きの国内外の金融経済環境への影響には注意が必要な状況であります。国内外において、経済状況の悪化や金融市場の混乱等が生じた場合には、お取引先の企業業績の悪化に伴う与信関係費用の増加や、保有有価証券の価格下落、資金調達環境の悪化等により、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当金庫では、こうした金融経済環境の悪化に対して、リスク管理態勢の整備・高度化を進めながら、様々な対策を講じることで、リスクが顕在化した場合の影響の極小化に努めております。
⑧ 日本銀行の金融政策に関するリスク
当金庫の収益は、運用・調達の金利収益に大きく依存します。日本銀行は2025年12月に政策金利を0.75%に引き上げ、「金利のある世界」が次第に本格化しており、今後、更なる政策の見直しがあった場合には、貸出債権や有価証券ポートフォリオに変動が生じ、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当金庫では、金利や株価などのリスクの種類や業務の内容に応じてリスク限度や損失限度等を設定し、市場環境に応じて適切にリスクコントロールを行うとともに、市場環境急変時には速やかに必要な対応を審議する態勢を構築する等のリスク管理態勢を整備するとともに、お取引先への影響等を分析・評価しております。また、市場金利の低下に伴う金利収益の低下リスクも念頭に入れたALM(※)運営を行い、金利収益の適切なコントロールに努めております。
※Asset Liability Management 資産・負債の一元的な総合管理
⑨ コーポレートガバナンスの機能低下
コーポレートガバナンスが有効に機能しない場合、ステークホルダーの利益に反する企業運営や組織的な不祥事に繋がる可能性があり、この場合、社会的信用を大きく失墜し、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当金庫では、過去、危機対応業務における不正行為並びにその他の不適切な業務運営により二度の行政処分を受けたことを教訓に、監督と執行の分離によるモニタリング型の取締役会を実現するためのガバナンス体制とし、過半数の社外取締役を登用するとともに、毎年、取締役会の実効性を分析・評価し、洗い出された課題に対し、改善策を検討・実施する等、企業価値向上の実現に向けて、取締役会の機能強化に取り組んでまいりました。
2024年6月20日には監査等委員会設置会社へ移行し、取締役会の監督機能を強化するとともに、重要な業務執行の決定権限を取締役会から取締役へ委任することで、迅速な意思決定、業務執行を可能とし、更なるガバナンス強化を図ってまいりました。また、2025年7月1日に、グループチーフオフィサー(CxO)制を導入し、グループCEOによる全体統括のもと、CTrO・CDIO及びCCO・CROを設置し、グループの一体性を持ったガバナンス体制の確立も図ってまいりました。2026年4月1日には、組織再編及び長期戦略の推進に向けて、グループ一体で一層の経営管理体制の高度化を図るべく、CSO及びCHROを新設しております。
2026年度取締役会の取組方針は、「パーパス実現に向けた中長期的な戦略を議論する取締役会」の定義のもと、「中長期的な方向性や戦略に関する議論の充実」「多様なステークホルダーとの関係性の深化」を重点テーマとして取り組み、重点テーマの議論に注力するため、審議時間の有効活用及び議論の質向上にも取り組んでおります。
⑩ サードパーティ管理に関するリスク
長期戦略・変革プランでは、「中小企業経済圏」の確立・活性化のためのキーワードは、中小企業に関わる様々な関係者を「集めて」、「つなげて」、「価値を創る」であり、より一層、多種多様なカウンターパーティと連携や協働をしていくこととなります。当金庫業務の委託先や業務提携先をはじめとした様々なサードパーティにおいて、サイバー攻撃やシステム障害、重大な事務ミスの発生等により、情報漏洩や業務の一部停止が発生する可能性があります。かかる事態が発生した場合、お取引先からの信用、並びに社会的な信用が失墜するほか、損害賠償請求や行政処分の対象となり、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当金庫では、外部委託業務に係る管理手続きに基づき、業務委託先の経営の健全性や委託業務の遂行能力、情報管理態勢等の確認・検証を実施し、内在するリスクの低減に取り組んでおりますが、より幅広い経済主体を含むサードパーティに係るリスク管理態勢の整備にも取り組んでまいります。
⑪ 人権問題への対応
企業には社会の持続可能な発展に貢献することが期待されており、企業の事業活動について、社会や環境に及ぼす影響への配慮と倫理的な行動が求められています。人権問題への対応もその一つであり、企業は国際的に認められた人権を尊重し、あらゆる事業活動の中で、児童労働・強制労働等の搾取的労働慣行を排除していくことが必要となります。人権問題に対し、機関投資家を含めたステークホルダーや社会の関心が高まる中、企業としての取組みが不十分である場合、当金庫のレピュテーションを毀損する、または資金調達に影響するなど、当金庫の財政状態、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当金庫では、人権の尊重は企業の社会的責任を果たすうえで重要な経営課題であるとの認識のもと、役職員を対象に人権意識を高める研修・啓蒙活動を行っております。また、人権問題に関して広く情報収集を行い、当金庫の経営に与える影響を分析・評価する取組みを実施しております。「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」に沿って2024年4月に策定いたしましたグループ人権方針に基づき、事業活動が与え得る人権への負の影響を防止または軽減するために、適切な人権デュー・ディリジェンスを行うよう努めております。