有価証券報告書-第5期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

【提出】
2017/06/27 13:08
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116項目

業績等の概要

(1)業績
当連結会計年度におけるわが国経済は、期の半ばまでは円高が進行し、輸出・生産が停滞したが、後半は円安基調に転じたことから、これらの指標が上向き、さらに、好調な企業収益を背景に雇用・所得環境の改善が進行し、緩やかな回復基調で推移した。
アルミニウム業界においては、建設向けは横ばいとなったが、輸送分野において、自動車向けやトラック向けの需要が好調に推移したことなどから、アルミニウム製品の総需要は前期を上回った。一方、価格面では、アルミニウム地金市況が為替の影響もあり期央までは緩やかな下落基調、後半は上昇基調のうちに推移し、製品価格に影響を与えた。
このような環境の中、当社グループにおいては、中期経営計画(平成28年度~平成30年度)(以下「中計」という。)の初年度が経過したが、順調に推移している。
すなわち、中計第一の基本方針である「グループ連携による新商品・新ビジネスモデルの創出」においては、グループ連携から生み出される独自性・差別性を活かした付加価値の創造を追求した結果、当期においては、リチウムイオン電池関連材料、スマートフォン向け材料などにおいて、素材となる合金開発から加工・表面処理技術に至るまでの幅広い事業領域の組合せによって、高付加価値の新商品群を創出することができた。
中計第二の基本方針である「地域別×分野別戦略による事業展開」においては、地域と市場分野の組合せ(マトリクス)から経営資源を投入する分野を選別し、投資の収益性最大化に努めてきた。具体的には、中計において重要市場と位置付ける北米において、今後アルミニウム使用の拡大が見込まれる、自動車、電機・電子、食品・流通分野をターゲットに、マーケティング拠点の確立に着手した。また、タイでは、自動車向け二次合金事業を行う日軽エムシーアルミ株式会社の現地法人が建設を進めていた第2工場が稼働を開始したほか、インドでは、東洋アルミニウム株式会社が塗料向けアルミペーストの製造、販売を行う合弁会社を設立している。
中計第三の基本方針である「企業体質強化(事業基盤強化)」のうち、化成品、板などの課題事業の収益力向上については、化成品のアルミナ事業では、コスト低減等に努めた結果、損益が改善し、板事業においても、高収益品への傾注、グループ間の連携強化に取り組んだ結果、新規受注が増加し、収益体質の改善も着実に進行している。また、板加工を行う子会社の株式会社東陽理化学研究所では、グループを挙げて支援体制を構築し、生産体制の合理化、棚卸資産の削減・管理、品質向上などに取り組み、損益改善の基盤が確立しつつある。
各セグメントの概況は、次のとおりである。
(アルミナ・化成品、地金)
アルミナ・化成品部門においては、アルミナ関連では、主力製品の水酸化アルミニウムおよびアルミナにおいて、凝集剤向け、耐火物向けの国内販売が堅調に推移したが、韓国向けを中心に輸出が大幅に減少したため、前期を下回る売上となった。化学品関連では、凝集剤、無機塩化物の販売が堅調に推移し、有機塩化物でも、顧客により需要に波があったが、販売量が増加した。以上の結果、部門全体ではアルミナ関連の減少により、前期を下回る売上となったが、採算面では、コスト低減等に努めた結果、改善した。
地金部門においては、主力の自動車向け二次合金の分野において、国内では堅調な需要に支えられて販売増となり、海外でも、アメリカにおける新規顧客の獲得、中国における再溶解が不要で二酸化炭素排出抑制に効果があるアルミ溶湯の出荷増など、販売が好調に推移した。しかしながら、売上高は、アルミニウム地金市況を反映した販売価格の下落の影響が大きく、前期を下回った。一方、採算面では、販売量の増加に加え、燃料価格の下落により、改善した。
なお、平成29年3月、タイで自動車向け二次合金事業を行うニッケイ・エムシー・アルミニウム(タイランド)・カンパニー・リミテッドが建設を進めていた第2工場が稼働を開始した。
以上の結果、当期のアルミナ・化成品、地金セグメントの売上高は前期比7.3%減の1,018億40百万円となったが、営業利益は前期比10.8%増の101億26百万円となった。
(板、押出製品)
板製品部門においては、半導体・液晶製造装置向け厚板、鉄道向け厚板が好調に推移し、パソコン・タブレット筐体向け板材、トラック架装向け板材の販売も増加したため、販売量は前期を上回ったが、アルミニウム地金市況を反映して販売価格が下落したため、売上高は前期を下回った。一方、採算面では、販売量の増加、原燃料価格の下落に加え、高収益品の販売比率が上昇したことにより、前期に比べ大幅な増益となった。
押出製品部門においては、ソーラーパネル架台の販売が低迷し、中国の自動車向けでも搭載車種の販売不振を受け一部拠点で出荷が伸び悩んだが、トラック架装向けや鉄道向けが好調に推移したことに加え、下半期における、国内の自動車向け新製品の投入効果や原子力関連製品の販売増により、前期を上回る販売量となった。この結果、売上高はアルミニウム地金市況を反映した販売価格の下落により前期並みに止まったが、採算面では大幅に改善した。
以上の結果、当期の板、押出製品セグメントの売上高は前期比5.0%減の981億65百万円となったが、営業利益は前期比154.3%増の77億75百万円となった。
(加工製品、関連事業)
輸送関連部門のうち、トラックの架装事業においては、物流の増加、燃料安を背景とした物流関連企業の投資意欲の増大、排ガス規制関連の買替ニーズの高まりなどを受け、国内需要が引き続き高い水準で推移したことから増収となり、採算面でも、生産効率の向上、加工費の削減に努めた結果、大幅に改善した。
エアコン用コンデンサは、主力の国内軽自動車向けにおいて、軽自動車税の増税を受けた需要の低迷により上半期の販売は大幅減となったが、下半期は新型車投入効果もあって堅調となり、また、タイ・近隣アセアン諸国のルームエアコン向けでも販売量が増加したため、全体では、前期を上回る売上となった。
素形材製品は、国内自動車生産台数が回復する中、環境対応車関連部品の販売が上半期に伸長したが、下半期に入り北米市場向け需要が落ち込んだことに加え、高級車向けの販売も減少したため、前期を若干下回る売上となった。
電子材料部門においては、アルミ電解コンデンサ用電極箔は、家電、再生可能エネルギー、車載機器向けなどでコンデンサ需要が堅調に推移し、顧客であるコンデンサメーカー向け販売が増加したため、前期を大幅に上回る売上となった。一方、採算面では、急激な増産対応によるコスト増などにより、前期に比べ悪化した。
パネルシステム部門においては、業務用冷凍・冷蔵庫は、食の安全意識の高まりを背景に、前期に続いて食品加工工場向けが好調となり、また、店舗向け小型物件も底堅く推移した。クリーンルームにおいても、フラッシュメモリや有機ELディスプレイ関連投資、ジェネリック医薬品向けを中心とした医薬・バイオ関連需要が堅調に推移し、前期並みの売上を確保した。この結果、部門全体で、前期を上回る売上となった。
炭素製品部門においては、主力製品である高炉・電炉用カーボンブロック、カソード、電極用不定形材料などにおいて、顧客となる鉄鋼・アルミニウム製錬業界の業績悪化を受けた需要の大幅な落込みにより、販売量が激減したことに加えて、販売価格も下落したため、極めて厳しい状況となった。
以上の結果、当期の加工製品、関連事業セグメントの売上高は前期比3.7%増の1,546億84百万円、営業利益は前期比6.5%減の102億45百万円となった。
(箔、粉末製品)
箔部門においては、電解コンデンサ用高純度アルミ箔は、新製品の販売が堅調に推移し、全体としての需要も回復傾向にあるが、その一方で価格競争も厳しさを増したため、前期を下回る販売量となった。一般箔では、食品向け撥水性加工箔の販売は堅調に推移したが、医薬包材向け加工箔が伸び悩み、リチウムイオン電池外装用プレーン箔も在庫調整等の影響を受けて出荷減となったため、部門全体の売上は、前期を下回った。
パウダー・ペースト部門においては、ペースト製品は、食品包材のインキ向けが好調に推移し、新製品の着色アルミペースト、ガラスフレークも堅調だったが、主力の自動車塗料向け販売が伸び悩み、家電向けも減少した。また、粉末製品でも、主要製品の窒化アルミの販売が減少し、部門全体の売上は前期を下回った。
なお、平成28年5月、インドにおいて、現地企業との合弁により、汎用塗料向けアルミペーストの製造、販売を行うトーヤル・エムエムピー・インディア・プライベート・リミテッドを設立した。日本、アメリカ、フランス、中国に次ぐ5ヵ国目の生産拠点として、インド国内、アセアン・中東・アフリカ地域における販路拡大を目指していく。
ソーラー部門においては、太陽電池用機能性インキは、新型製品を他社に先駆けて展開し受注が好調に推移したが、主力の太陽電池用バックシートにおいて、一部ユーザーの与信懸念、中国政府の補助金減額を背景に出荷が減少したことに加え、価格競争も激化したため、部門全体の売上は前期を下回った。
以上の結果、当期の箔、粉末製品セグメントの売上高は前期比8.1%減の936億92百万円、営業利益は前期比19.8%減の54億78百万円となった。
(2)キャッシュ・フロー
当期末における連結ベースの現金および現金同等物については、前期末に比べ1億99百万円(0.5%)減少の362億86百万円となった。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当期における営業活動によるキャッシュ・フローは364億88百万円の収入となった。これは税金等調整前当期純利益や減価償却費などの非資金損益項目が、法人税等の支払などによる支出を上回ったことによるものである。なお、営業活動によるキャッシュ・フロー収入は前年同期と比べ12億82百万円減少しているが、これは主にたな卸資産の増減額が減少したことによるものである。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当期における投資活動によるキャッシュ・フローは118億87百万円の支出となった。これは、主として有形固定資産の取得による支出によるものである。なお、投資活動によるキャッシュ・フロー支出は前年同期と比べ75億32百万円減少しているが、これは主に投資有価証券の売却による収入が増加したことによるものである。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当期における財務活動によるキャッシュ・フローは244億32百万円の支出となった。これは、主として長期借入金の返済による支出があったことによるものである。なお、財務活動によるキャッシュ・フロー支出は前年同期と比べ137億24百万円増加しているが、これは主に長期借入れによる収入が減少したことによるものである。