有価証券報告書-第16期(2023/04/01-2024/03/31)

【提出】
2024/06/27 16:00
【資料】
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【項目】
125項目

事業内容

(1)パーパス
少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少、労働生産性の低迷、多様な働き方への対応、テクノロジーの飛躍的進化など、日本の社会は大きく変容しています。当社グループは、こうした変化を適切に捉えながら、人や社会に必要とされる存在であり続けることを目指しており、職歴・学歴や年収など目に見える事項だけでひとを判断するのではなく、さまざまな情報を集めて人物像に奥行きをもたせることで、ひとの可能性を正しく理解できる世界をつくりたいと考えております。このような考えに基づき、当社グループが長期的に目指す姿や持続的に社会へ提供していく価値を明らかにするため、社会的な存在意義を明文化したパーパスを策定しております。
パーパス:“はたらく”にテクノロジーを実装し、個の力から社会の仕様を変える
このパーパスのもと、テクノロジーによって一人ひとりの個性や才能を理解することで、個人のキャリア形成や働き方が多様化される社会の実現を目指してまいります。
(2)サービス概要
当社グループは、HRテクノロジー領域におけるSaaS(注1)サービスを開発・提供しております。具体的には、当社は、企業の人材情報をクラウド(注2)上で一元管理し、データ活用のプラットフォームとなるタレントマネジメントシステム(TMS)『カオナビ』を提供しております。『カオナビ』は、社員の顔や名前、経験、評価、スキル、才能などの人材情報を一元管理して可視化することができ、最適な人材配置や育成といった企業の人材戦略をサポートするシステムです。タレントマネジメントに役立つさまざまな機能を提供することで、次のような戦略的人事の実現に貢献します。
① 人材情報の一元化・見える化
② 人事業務の効率化
③ 経営の意思決定支援
④ 評価運用の効率化
⑤ 採用のミスマッチ・ハイパフォーマー(注3)分析
⑥ 人材配置・要員シミュレーション
⑦ スキル管理・人材育成
⑧ モチベーション分析・離職分析
⑨ 従業員満足度調査・エンゲージメント(注4)向上
⑩ リスキリング・学習管理
また、さらなるサービスの拡充に向けて、2024年1月には労務管理をスマートフォンでも完結できるクラウドサービス『WelcomeHR』を提供するワークスタイルテック株式会社を子会社化しました。
なお、当社グループの報告セグメントは、タレントマネジメントシステム事業のみであり、その他の事業セグメントの重要性が乏しいため、セグメント別の記載は省略しております。
(3)『カオナビ』が選ばれる理由
正解のないタレントマネジメントへの取り組みに対して、「システム」と「サポート」の両輪を顧客に提供できることが当社の強みとなって、『カオナビ』を活用する企業が増えております。
① システム:柔軟性とユーザビリティを徹底的に追求したシステム設計
『カオナビ』のシンプルなユーザー・インターフェースは、社員の誰もがマニュアル不要で直感的に操作することが可能であり、また、人材データベースを自由にカスタマイズすることができます。人材情報のなかで必要とされる項目は企業や業界によって大きく異なります。そのため、データベースに入力・保存できる項目が固定化されている場合、一部の情報がシステム化されず、紙やエクセルなどで別に管理する必要が生じてしまいます。『カオナビ』の技術的特徴として、ドラッグ&ドロップなどの簡単な操作でデータベースの設定やレイアウトをカスタマイズできるため、工数と費用をかけずに顧客自身で自由自在にデータベースを構築し、人材情報の一元管理を実現します。
また、機微性の高い人材情報を一元管理すると同時に、全社員での活用ができるよう、セキュアなアクセス管理が可能となっております。
② サポート:タレントマネジメントの成功確率を高めるサポート体制
3,600社以上の顧客を支援する当社に蓄積されたタレントマネジメントの活用ノウハウを、顧客に対して存分に提供しております。経験豊富な専任スタッフによるサポートは勿論のこと、カスタマーサクセスの取り組みとして、他社と交流し活きた事例を学び合えるコミュニティ「カオナビキャンパス」を設立し、自社の課題に合わせた学習プログラムや豊富な活用事例を検索できるライブラリなどを体系的に提供しております。また、顧客と人事分野の専門家をつなぐオンラインプラットフォーム「カオナビキャンパスLab」にて、人事コンサルタントや社会保険労務士などの専門知識や知見を活用する機会を提供することで、タレントマネジメントの支援体制を強化しております。
(4)ビジネスモデル
当社グループは、企業を主な顧客としてクラウドサービス型でのサービス提供を行っております。クラウドサービスとは、インターネットなどのコンピュータネットワークを経由してソフトウエアをサービスとして提供する形態のことで、SaaSと呼ばれております。
当社グループは、自社のマーケティング活動と紹介パートナーからの紹介による新規顧客の獲得に加えて、販売パートナー及びOEM(注5)経由での販売も行っております。
当社グループの主要サービスである『カオナビ』の収益構造は、クラウド上で提供するサービスの利用料金を使用期間に応じて受領するサブスクリプション(月額課金)モデルとなっており、これをストック収益として計上しております。『カオナビ』の利用料金は従業員の登録人数に応じた料金体系となっており、さらに利用プランに応じて料金が異なります。各プランの概要は以下のとおりです。
0101010_001.png*1:オプションサービスとしては、「パルスサーベイ」や「申請ワークフロー」などがあります。
2012年4月に事業を開始して以来、『カオナビ』は継続的に成長し、2024年3月期におけるストック収益は6,723百万円、売上高ストック比率(注6)は88.2%となっております。また、マーケティングから受注に至る一連のプロセスにおけるモニタリング体制の強化と市場のニーズに合わせた機能開発を重ねることで、『カオナビ』を利用する企業や団体等のユーザー数も成長を続けており、2024年3月末のTMSの利用企業数(注7)は3,677社となっております。なお、直近5事業年度における各指標の推移は以下のとおりです。
2020年
3月期
2021年
3月期
2022年
3月期
2023年
3月期
2024年
3月期
(連結)
ストック収益
(百万円)
2,1022,9913,9305,1566,723
売上高ストック比率(%)80.187.987.486.188.2
TMSの利用企業数(社)1,7912,0612,4973,0593,677

※当社は2022年3月期の期首より「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号)等を適用しております。また、2024年3月期より連結財務諸表を作成しております。
サービスの継続利用が前提となるビジネスモデルのため、当社グループでは顧客のサービス活用推進を図るためのカスタマーサクセスやプロダクト開発・機能強化に注力しております。この取り組みにより、TMSの解約率(注8)の直近12ヶ月平均は、2024年3月において0.42%と低い水準を維持しております。今後も顧客体験価値を高めることで、低い解約率を維持できるよう努めてまいります。
(注)1.SaaS
Software as a serviceの略語で、顧客側のコンピューターにソフトウエアをインストールするのではなく、ネットワーク経由でソフトウエアを利用する形態のサービスをいいます。
2.クラウド
クラウドコンピューティングの略語で、インターネット経由で必要な時に必要なだけITシステムを利用する仕組みの総称をいいます。サーバーやソフトウエアなどのITシステムの設備を自社で保有することに比べ、ITシステムに関する開発や保守・運用の負担が軽減され、コスト削減に寄与します。
3.ハイパフォーマー
スキルや経験、ノウハウを生かして高い成果を生み出せる優れたパフォーマンスを持つ人材のことをいいます。ハイパフォーマーの特徴や行動パターンを分析することで、人材育成のためのデータや、採用時に用いる採用基準への活用も期待できます。
4.エンゲージメント
企業と従業員が相互に影響し合い、共に必要な存在として絆を深めながら成長できるような関係を築いていくことをいいます。
5.OEM
Original Equipment Manufacturingの略語で、生産委託を受けてソフトウエアを開発し、他社のブランドとして当該他社が販売することをいいます。
6.売上高ストック比率
売上高全体に占めるストック収益の比率をいいます。
7.TMSの利用企業数
四半期末のタレントマネジメントシステム『カオナビ』を導入している企業や団体の数をいいます。
8.TMSの解約率
MRRの解約率を示しています。MRRとはMonthly Recurring Revenueの略語で、月額利用料金の合計額をいいます。MRRの解約率は、当月の解約により減少したMRRを、前月末のMRRで除して算出しております。
[事業系統図]
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