有価証券報告書-第8期(2025/01/01-2025/12/31)
有報資料
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループのミッションは、「自律型AIでROIを向上させる」です。
現在、あらゆるサービスやソリューションでAIの活用が進展しており、世界は急速に進展するAI革命の真只中にあります。当社は、このAI時代における大きな変革の機会を捉え、ビジネスドメインであるマーケティング分野において、業種特化・顧客中心型の自律型AIモデルを高性能化するための豊富な経験の蓄積、データを用いたAIの訓練と改善の積み重ね及びプロダクト開発のための研究開発投資を通じて、顧客企業のROI(投資リターン)向上を実現してきました。
当社グループは、マーケティング分野におけるAIソリューションを提供するパイオニアとして、マーケティングからセールス活動まで顧客接点の全領域を支援するソリューションを提供し、企業の収益最大化に貢献してきました。また近年では、AaaS(Agentic AI as a Service)を提供するAIネイティブ企業として、自律型AIが分断されていたデータを瞬時に統合・連携させることで、市場の変化をリアルタイムに捉える、自律的で適応力の高いオムニチャネルマーケティングを提供しています。これにより、当社の自律型AIは顧客企業にとって24時間365日稼働する自律的なマーケティングパートナーとなり、事業戦略の立案から実行まで継続してサポートすることで、明朗で説得力のある意思決定が可能になります。
(2) 経営環境
インターネット及びモバイルデバイスの普及によるデータの爆発的増加とAIへのニーズ
インターネット及びモバイルデバイスの急速な普及に伴い、検索や商取引等の膨大なトランザクション・データや、画像・動画等の非構造化データが爆発的に増加しています。これらのデータを保管・処理する技術も飛躍的に進化しており、企業がデータに基づいた意思決定を行う必要性は益々高まっていると考えています。
そのような環境の中で登場したAIソフトウェアは、各種デバイス、センサー、アプリケーション等を通じて収集される膨大なデータを統合し、より複雑な分析や処理を可能にしました。特にマーケティング領域においては、PCに加えてスマートフォンやタブレット等のモバイルデバイスを通じて収集されたユーザーデータを分析・活用することにより、ウェブサイトやモバイルアプリを通じたより効果的なマーケティングが可能となりました。
また、AIソフトウェアを用いて企業が保有するカスタマー・データからより有意義な知見を抽出し、顧客理解を深めるとともに、既存顧客や潜在顧客とのマーケティング・コミュニケーションにAIソフトウェアを活用することで、よりパーソナライズされた提案を行い、エンゲージメントを高める取り組みも進展しています。
AI活用の重要性に対する認識の高まり
近年、企業の様々な事業部門においてAI活用の重要性に対する認識が高まっており、多くの企業が既にAIを導入している、または導入を計画しているといわれています。しかし、既にAIを効果的に活用できている企業は依然として限られており、専門的な技術や知見を有する人材の不足が、AI導入における最も一般的な課題となっていると考えています。
内製AI組織ではなく、AIプラットフォームの活用が拡大する可能性
AI人材は不足しており、企業が自社内で大規模なAIデータサイエンティストチームを構築し、AIの活用を内製化するのは容易ではありません。そのため、当社のような外部ベンダーが提供するAIプラットフォームを導入するケースが今後さらに増加すると見込まれます。
デジタル化の加速
一般消費者や企業活動がデジタル領域にシフトする中で、良質なデータが大量に生成されています。新型コロナウイルスの流行を契機として、このデジタル化の動きは更に加速しました。こうした環境のもと、AIを導入してデータを分析・活用しようという動きが一層促進されていると考えています。
AIによる予測がマーケティング・セールス投資の中心に
マーケティングやセールスへの投資は、従来その投資対効果を事前に正確に予測することが難しい分野でした。しかし、AIを活用することで、データに基づいた精度の高い投資対効果の予測が可能となります。将来的には、マーケティングやセールスへの投資において、AIを活用したアプローチが中心となると考えています。
デジタルマーケティングにおけるAIによる自動化と効率化
現在のデジタルマーケティングでは、担当者が各種設定を手作業で調整するなど、労働集約的な業務プロセスがいまだ多く残っています。AIは過去のデータに基づき最適解を予測できるため、その普及によりデジタルマーケティング業務の自動化と効率化が進み、マーケティングROIの向上につながると考えています。
顧客企業のニーズを満たすことができない既存のソリューション
当社グループのAIを活用したソリューションは、既存のソリューションでは十分に対応できない顧客企業の課題に対して、以下の点において適切に対処することができると考えています。
① ユーザーの予測及び獲得
従来の多くのソリューションでは、デジタルマーケティング担当者が結果を改善するために手作業でA/Bテストを繰り返す必要があります。AIによる予測を活用することで、手作業に要する時間とコストを削減し、過去のデータから最適な結論を迅速に導き出すことができます。
② ユーザーの維持及び関係構築
従来のマーケティング・オートメーション・ツールの多くは、事前に設定されたルールに基づいて対応する手法を採用しており、ビジネスチャンスを逃すリスクがあります。AIによる行動予測を用いることで、ユーザーの将来行動を先読みし、最適なタイミングでエンゲージメントを行うことにより、そのようなリスクを軽減することができます。
③ 取引の実行
一般的に、購買を促すためのインセンティブは、ユーザー全員に一律に付与されるか、マーケティング担当者の経験や勘に基づいて特定ユーザーに付与されるケースが多く見られます。これらの手法では効果的に売上を拡大できず、収益性を損なうおそれがあります。当社グループのAI予測を活用することで、購買をためらっているユーザーを特定し、対象を限定したインセンティブを付与することが可能となります。
④ ユーザーの予測
AaaS(Agentic AI as a Service)ソリューションの場合、一定の品質が確保され、コストも明確であるのに対し、コンサルティング会社やAIシステム会社が構築する自社内製型の分析システムでは、開発に関与するAI人材のスキルが一定ではない場合が多く、時間とコストがかかるうえ、想定どおりのシステムが構築できないリスクが高まります。
ファーストパーティーデータ中心の世界におけるAIの重要性の高まり
当社グループの強力なAIプラットフォームは、リアルタイムに予測を行い、顧客企業がビジネス上の目標を達成するために必要なユーザーの獲得、維持、エンゲージメントを支援することができます。これらの予測は、外部のサードパーティーデータを利用せず、顧客企業がウェブサイト、アプリ、CRMデータベースなどから提供するファーストパーティーデータのみに基づいて行われます。
ファーストパーティーデータは、品質・関連性・精度のいずれにおいてもサードパーティーデータを上回ります。しかし、当社グループのプラットフォームを利用しない場合、断片的でサイロ化した膨大なデータを統合し、有効活用することは技術的に困難です。その結果、ユーザーIDやユーザー行動を同期させてユーザーの興味関心を把握するためにサードパーティーデータに依拠するか、あるいは膨大なデータを時間のかかる手作業で整理し、過去の分析結果や経験に基づき意思決定を行わざるを得ない状況が多く見られます。
当社グループのAI技術は、顧客企業が保有するファーストパーティーデータを自動的に統合し、ディープラーニング技術を活用して高精度なリアルタイム予測を実現します。これにより、ファーストパーティーデータの価値を最大限に引き出し、データ主導の意思決定を可能にします。
ファーストパーティーデータの活用は、デジタルマーケティング分野における最も重要なトレンドの一つとなっており、当社グループはこの領域でリーディングプレーヤーとなることができると考えています。
AI SaaSソリューションからAIコパイロット及びAIエージェントへの進展
当社グループの提供するAIソリューションは、AI SaaSソリューションからAIコパイロット、さらにはAIエージェントへと進化しています。
AIコパイロットは、業務を自動化しインサイトを生成するだけでなく、キャンペーン効果の要約、顧客セグメントの提案、次のアクションの推奨などのインテリジェンス活動を人間の承認及び指示をうけながら加速させます。
AIエージェントは、次の大きな変革であり、アプリケーションやデータを超えて自律的に目標設定し、具体的な戦略を計画、決定、実行を一気通貫で行うだけでなく、自ら結果を検証して改善する学習機能を備えています。
このように、当社のAIソリューションがAIツールの提供からAIが業務全体を担うモデルへと進化することにより、企業の業務にかかる時間を大幅に短縮するだけでなく精度と一貫性が向上し、安全性と説明責任を確保しながら測定可能な投資効果(ROI)を改善することができると考えております。
大きなチャンスのある市場
AIの市場規模は今後も拡大が見込まれており、その成長の大部分はソフトウェア分野によるものと予想されています。
当社グループは、IDCの定義による「カスタマーリレーションシップマネジメント」セグメントと「データ分析及びAIソフトウェア」セグメントにおける当社グループのTAM(注1)について、2026年に約1,234億米国ドルまで拡大すると見込んでいます。
(注) 1.Total Addressable Marketの略。当社グループが想定する最大の市場規模を意味する用語。
(3) 目標とする客観的な指標等
当社グループは、利益を伴う成長を重視しており、新規顧客及び既存顧客からの安定的な売上収益の拡大による中長期的な成長に加え、オペレーティング・レバレッジの改善に伴う営業利益及び当期利益の拡大が重要であると考えています。
このため、当社グループでは、目標達成の進捗を客観的に把握するための指標として、売上収益及び売上収益成長率、営業利益及び営業利益率を重視しています。
(4) 当社グループの強み
① 機械学習を用いたAI技術の継続的なイノベーション
当社グループは、AI分野において数々の表彰を受けています。フォーチュン誌からは、中国本土を除くアジアを拠点とする企業で唯一、「AI革命を牽引する50社(2017年)」に選定されました。さらに、2017年と2018年には、CBインサイツから「世界で最も有望なAIスタートアップ企業100社」に2年連続で選出されています。また、国際的なデータ・マイニング・コンテストであるKDDカップにおいて、2008年から2020年の間に当社グループの従業員が参加したチームが7回優勝しています。
当社グループのプラットフォームは、機械学習を活用した革新的なAI技術を基盤としており、以下の強みを有しています。
・深層表現学習技術(注1):当社グループの機械学習を活用したAIプラットフォームは、深層表現学習技術を有しており、この技術を活用することで、新たな言語への展開を容易に行うことができます。
・自動化された機械学習:分析対象のデータ量が増加すると、システムとAIアルゴリズムが自動的に拡張され、データサイエンティストの人手を介すること無く、AIモデルが自動的に構築されます。
・オンラインリアルタイム学習:従来の機械学習技術とは異なり、リアルタイムでの分析が可能な技術を有しています。これにより、ユーザーの嗜好の変化に速やかに適応し、データの適切性や予測結果の正当性に関わる問題を直ちに処理することができます。
・転移学習(注2):新しい顧客、業種、予測に対応するため、当社グループは先駆的にプラットフォームに転移学習を導入しました。これにより、AIモデル間で学習済みの「コンセプト」を効率的に伝達し、学習時間の短縮を実現しています。
そして、当社グループはAaaS(Agentic AI as a Service)形式のプラットフォームを提供しており、安定したパフォーマンスを発揮できる堅牢なシステム設計を有しています。
(注) 1.データから特徴検出や分類に必要な表現を自動的に発見し、テキストだけでなく画像や動画のソースからも深い意味を抽出することができる技術
2.ある領域で学習したAIモデルを別の領域に活用し、AIモデルの学習を効率化する技術
② AIのエキスパートとビジネスのベテランによる経営陣
当社グループの共同創業者の1人であり代表取締役CEOである游直翰は、米国スタンフォード大学で修士号を、米国ハーバード大学で博士号を取得している世界レベルのAIサイエンティストです。共同創業者兼取締役CIOの蘇家永は、大規模システム開発に関する豊富な経験を持ち、当社グループの技術とプロダクト開発を牽引しています。さらに、共同創業者兼取締役COOの李婉菱は、免疫学者や医学分野の研究者としての経歴を持ち、「オペレーションへの科学的アプローチ」を事業運営に取り入れています。
当社グループの技術部門には、研究分野で強いバックグラウンドを持つ経験豊富なAIおよびデータサイエンティストが多数在籍しています。役員及び従業員によるトップジャーナル、カンファレンス、ワークショップ(注3)における発表論文数は300本を超えており、国際的なデータ・マイニング・コンテストでの実績を持つ(注4)人材を多数擁しています。また、エンジニアの多くがAI、ビッグデータ、コンピューターサイエンス分野における博士号又は修士号を有しています。これらの人材により、当社グループにはAI業界の課題に立ち向かうための向上心、オープンマインド、ダイレクトコミュニケーションを重視する企業文化が根付いています。
さらに、ビジネスの執行面においても、ソフトウェア及びテクノロジー分野を含む大手企業で営業や財務の上級管理職を務めた経験を持つメンバーが多数在籍しています。また、他の取締役やアドバイザーの専門的な知見も活かせる強みを持っています。
(注) 3.アルバータ大学による定義
4.国際的なデータ・マイニング・コンテストであるKDDカップにおいて、当社の従業員が参加したチームが7回優勝
③ プラットフォームの価値を高めるネットワーク効果

当社グループは、相互に補完的かつ緊密に連携した複数のソリューションをプラットフォームとして提供しており、強力なネットワーク効果を生み出しています。
まず、顧客企業が当社グループのソリューションを採用すると、利用に応じてAIが学習するデータ量が増加します。これにより、AIアルゴリズムの精度が向上し、顧客企業のROI改善につながります。その結果、顧客企業は当該ソリューションをより一層利用するようになるとともに、別のソリューションを追加導入する意欲が高まります。
さらに、複数のソリューションを併用することで、AIが学習するデータの種類が多様化し、網羅性が高まります。その結果、AIアルゴリズムの予測精度が一層向上し、プラットフォームの価値が高まるという好循環が生まれます。
このようなネットワーク効果は、多様な業種の様々な利用方法に対応してきた当社グループのソリューションの経験の蓄積から生まれたものであり、他社が短期間で再現することは困難であると考えています。
また、デジタルマーケティングやセールスの領域で実証してきたように、当社グループは最先端の機械学習を活用したAIモデルを既存のソフトウェアやソリューションに適用することで、これまで実現できなかった新たなソリューションを提供してまいりました。このように、当社グループはソフトウェア業界に変革をもたらす能力を有していると考えています。
さらに、既存顧客からの利用拡大による好循環に加え、営業生産性の向上も継続しています。大規模なエンタープライズ顧客にフォーカスする戦略により、営業担当者1人当たりの売上収益を増加させています。各顧客が利用量を拡大し、より多くのソリューションを利用することで、1顧客当たりの売上総利益が増加します。これにより、販売及びマーケティング投資のROIが向上し、さらなる生産性の改善を実現します。高い営業生産性と1顧客当たりの売上総利益の上昇は、更なる好循環をもたらします。
④ 戦略的な買収によるプロダクトポートフォリオの拡大
当社グループは、内製によるプロダクト開発に加え、既存プロダクトと補完関係にあるプロダクトを持つ企業を戦略的に買収し、プロダクトポートフォリオを拡大してまいりました。
2018年にはQuantumgraph Solutions Private Limited.を、2019年にEmotion Intelligence株式会社を買収し、両社のプロダクトを当社グループの最先端AI技術により再設計・改良することで、AIQUAとAiDealを開発・提供し、顧客企業を着実に拡大しています。
2021年には邦妮科技有限公司(BotBonnie Inc.)を買収し、同社が提供するBotBonnieを複数言語にローカライズして販売地域を拡大しました。BotBonnieはオムニチャネルの会話型マーケティング・プラットフォームであり、既存ソリューションとの高いシナジーを発揮し、顧客企業のマーケティング活動の利便性を向上させています。
2022年には米国のWoopra,Inc.を買収し、同社が保有していたプロダクトとAIXONを組み合わせることにより、AIRISの提供を開始しました。AIRISは、AppierのAIによる予測アプローチと、Woopraの直感的なデータ可視化機能を組み合わせた、AI搭載の次世代カスタマー・データ・プラットフォーム(CDP)です。直感的なリアルタイムデータの可視化と予測により、インサイトを得るまでの時間を大幅に短縮することができます。
そして、2025年にはフランスのADYOUNEED SASを買収し、同社が開発・提供する生成AIプラットフォーム AdCreative.aiをプロダクトラインに追加しました。AdCreative.aiは、最先端のAI技術を活用し、デジタル広告クリエイティブの制作を自動化・効率化するAI搭載プラットフォームです。高度な生成AIモデルと独自の包括的データセットを活用することで、さまざまなデジタルチャネル向けに最適化された広告素材を迅速に生成し、クリエイティブ制作のリードタイムを大幅に短縮します。AdCreative.aiは、当社グループの主力AIネイティブソリューションである「広告クラウド」「パーソナライゼーションクラウド」「データクラウド」に統合されており、データから得られるインサイトをクリエイティブ生成に直接活用できる点が特長です。これにより、顧客企業は情報に基づいた意思決定が可能となり、市場環境の変化や消費者ニーズの進化にリアルタイムで対応することができます。
当社グループは、まず進出する領域を特定し、自社のソリューションや事業展開地域を補完する適切なターゲットを体系的に探索しています。買収後は、対象企業のソリューションを自社のシステムと融合し、最先端のAI機能を活用して再設計・改良することで顧客企業を拡大してきた実績があります。今後も同様のアプローチにより、新ソリューションの導入や地域的な拡大を柔軟に推進してまいります。
⑤ 多様な業種・地域における顧客基盤
当社グループには、ソリューションを多様な業種に適応させ、異なる国や地域で事業を拡大できるという強みがあります。創業以来、グローバルな事業拡大に成功し、現在は15ヵ国・地域に17のオフィスを構えています。
北東アジア地域(日本及び韓国)、米国及びEMEA地域、グレーターチャイナ地域(中国、台湾及び香港)の各主要地域においては、継続的な成長を維持しています。特に、米国及びEMEA地域では他の地域を上回る成長を示しています。各国・地域の特性に合わせて体系的に事業を拡大することができるよう、ノウハウ、インフラ、人材を整備しており、今後のグローバル展開においても積極的に活用してまいります。
当社グループは、主としてEコマース、デジタルコンテンツ、その他インターネットサービス、消費財ブランド・金融サービスを中心とする幅広い業種の顧客企業を多数有しており、多様な業界の著名な企業に対してAaaS(Agentic AI as a Service)プラットフォームを提供しています。
2025年12月31日現在、当社の顧客企業は2,111の企業グループとなっており、2024年12月31日時点の1,872の企業グループから増加しています。
⑥ 顧客企業の獲得・維持・拡大における実績
当社グループは、国際的かつ経験豊富なセールスチームを有しており、アジア太平洋、米国及び欧州の主要な市場で事業を展開しています。強固な市場獲得戦略のもと、事業拡大を進めるとともに、プロダクト利用継続率の高い顧客基盤を構築してまいりました。
さらに、当社グループのプロダクトを複数利用する顧客企業の数も大きく増加しています。顧客企業が当社グループのプロダクトを長期間利用することで、AIが学習するデータ量が拡大し、予測精度が向上します。その結果、当社グループのプロダクトが顧客企業にとって必要不可欠なプラットフォームになると考えています。
2025年12月期における月次顧客解約率(注5)は0.340%、月次顧客収益解約率(注6)は0.316%となりました。また、既存顧客からの売上収益は拡大し、NRRは120.4%(米国ドルベース)という高い水準を維持しています。
(注) 5.月末時点の顧客企業(当月のみの利用又は有償での試験的利用等により一時的に当社グループのソリューションを利用した顧客企業を除く。)の数に対する当月に離脱した顧客企業数の割合
6.月末時点の顧客企業(当月のみの利用又は有償での試験的利用等により一時的に当社グループのソリューションを利用した顧客企業を除く。)からの米国ドル建ての売上収益に対する当月に離脱した顧客企業からの米国ドル建ての売上収益の割合
月次顧客解約率及び月次顧客収益解約率
⑦ リカーリング売上収益の増加とオペレーティング・レバレッジ
前記「③ プラットフォームの価値を高めるネットワーク効果」に記載のとおり、当社グループのプロダクトには、顧客企業による利用量の増加や、別のプロダクトの追加導入を促すネットワーク効果があります。「ランド・アンド・エクスパンド」手法(まず顧客企業に1つのプロダクトを導入していただき、その後、別のプロダクトへの利用拡大を促すアプローチ)が有効に機能しており、2025年12月期のNRRは120.4%(米国ドルベース)となっています。
また、安定した収益源であるリカーリング売上収益は増加傾向にあります。2025年12月のARRは48,259百万円で、2024年12月の36,259百万円と比較した成長率は33.1%となっています。また、2025年のリカーリング売上収益比率は95%以上となっています。
さらに、当社グループの為替ニュートラル(為替レートが前期と同じであった場合)のARPC(注7)は2024年12月期の17.8百万円から2025年12月期の20.1百万円へと成長しました。これは、当社グループのプラットフォームを継続して利用する顧客企業によるプロダクトの利用の拡大を反映したものです。
また、CrossXについては、多くの顧客企業のデータを学習することでAIアルゴリズムが自動的に予測精度を高め、より少ないメディアコストで多くのユーザーを獲得できるようになることで、売上総利益率の改善が見込まれる仕組みとなっています。さらに、売上総利益率が比較的高いCrossX以外のプロダクトの顧客基盤を拡大することも、当社グループの売上総利益率の向上につながります。
加えて、収益基盤の拡大に伴い、販売及びマーケティング費用・研究開発費・一般管理費の売上収益に対する割合は減少すると想定しており、売上収益の増加に伴い営業利益率の改善が見込まれる、健全なコスト構造を維持しています。
(注) 7.Average Revenue Per Customerの略。1顧客当たりの平均売上収益を意味する。ある年度の売上収益を当該年度末の顧客企業数で除した、顧客企業1社当たりの平均年間売上収益(当月のみの利用又は有償での試験的利用等により一時的に当社グループのソリューションを利用した顧客企業及び対応する売上収益を除く。)
8.上記に記載の2024年12月期及び2025年12月期に係る各数値は未監査のものです。
(5) 中長期的な経営戦略
① AI技術の継続的な強化と新たなソリューションの開発
AI技術の革新に向けた投資を継続することは、当社グループにとって最も重要な優先事項の一つです。研究としてのAIには長い歴史がありますが、ビジネスとしてのAIはまだ黎明期にあります。当社グループは、AI研究のバックグラウンドを持つ経営陣が率いるAI企業のパイオニアとして、最先端の研究成果を実社会の課題解決に応用するために、その強みを発揮し続けています。
また、近年は生成AIの技術を取り入れた新たなソリューションの開発にも注力しています。従来、マーケティング領域におけるAI活用は、高精度な予測に重点を置いてきましたが、生成AIの登場により、新たな事業機会が広がっています。この傾向は、マーケティングのアイデアやコンテンツを生み出す生成AIの能力が、企業において受け入れられつつあることを示しています。例えば、生成AIは自動コンテンツ生成、マーケティング文章の生成、自動的なアイデアテストを可能にすることで、マーケティングに変革をもたらします。さらに、自律型AIは設定された目標に対して自ら計画を立て、生成AIを含む多様なAIモデル等のツールを活用してマーケティング活動を遂行します。当社グループは、これらの技術を活用し、顧客企業の生産性向上とROIの最大化を支援してまいります。
② 新規顧客の獲得
当社グループの新規顧客獲得戦略は、緻密なセールスの分析と、トップダウンでの市場分析に基づいています。AIの受容度、各業界における成功事例の有無、販売効率の予測を踏まえた上で、地域参入・顧客獲得戦略を策定し、優先順位を明確にしています。
また、隣接する業種や同一業種内で類似の課題を抱える企業に対して、当社グループのAI技術を活用し、既存の成功事例を応用することで、潜在的なターゲット顧客を拡大していきます。これにより、Eコマースやデジタルコンテンツなどの既存業種における活用事例を増やすとともに、消費財や金融業界などの新たな業種での活用事例を拡大し、さらに幅広い業種への参入を可能にしています。
これらの取り組みにより、当社グループは多様な業種における導入実績を拡大し、持続的な顧客基盤の拡大を実現してまいります。
③ 既存顧客からの売上収益の増加
当社グループは、常に顧客企業に対して価値を提供することで顧客ロイヤルティを高め、顧客基盤の拡大と強化に注力しています。
顧客企業が当社グループのソリューションを長期的に利用するほど、ネットワーク効果が高まります。顧客企業が保有する膨大なデータを学習することで、時間の経過とともに当社グループのAIアルゴリズムとAIモデルの精度が向上し、ソリューションの効率性が高まります。その結果、顧客企業が得られる価値が一層大きくなり、当社グループのソリューションへの依存度が高まる傾向にあります。
このようなネットワーク効果により、当社グループは既存顧客に対して、時間の経過とともにより大きな価値を提供してきた実績を有しています。今後も当社ソリューションの利用拡大によるメリットを顧客企業に実感していただけるよう、営業体制をさらに強化してまいります。
これまで、既存顧客からの売上収益成長の大部分はアップセルによるものでしたが、ソリューションの拡大に伴い、クロスセルの拡大を推進し、更なる売上収益拡大を目指してまいります。
④ アジア太平洋地域及び米国・欧州への一層の浸透と新たな地域への展開
計画的な海外展開は当社グループの強みであり、市場拡大に向けた取り組みを今後も積極的に推進してまいります。アジア太平洋地域は引き続き当社グループの最重点地域であり、当該地域におけるプレゼンスをさらに強化していく方針です。特に、日本と韓国のように市場規模が大きく、デジタル技術が高度に浸透した国では、さらなるシェア拡大の余地があると考えています。これらの国においては、既存業種でのシェアを継続的に拡大しながら、新たな業種への進出に注力しています。
2021年より本格的に進出を開始した米国・欧州市場においても、売上収益比率は着実に拡大しており、当社グループ全体の成長モメンタムの加速に貢献しています。また、デジタル経済大国である中国では、顧客企業の海外展開が加速しており、当社グループの成長に貢献しつつあります。
当社グループは、差別化されたAI技術と強力な業務運営能力を活かし、アジア太平洋地域及び米国・欧州で確立した成功モデルを他の地域にも展開することで、さらなる事業拡大とグローバルな成長を継続してまいります。
⑤ 外部成長の機会の追求、戦略的なM&A
当社グループは、AIを活用したエンタープライズ・ソフトウェアの革新を実現するうえで、自社のAI技術によって既存ソリューションを再設計・強化するM&A戦略を重要な施策の一つと位置付けています。
新たな業種や地域をターゲットにした新たなソリューションを開発する際には、まず既存ビジネスとのシナジーが期待できる隣接領域から取り組みを開始します。当社グループの方向性と一致するビジョンを持つ優れた企業とのパートナーシップの機会があれば、技術力とソリューション強化の観点からM&Aの実行可能性を検討します。
今後も、これまでの買収実績に裏付けられた経験を活かし、当社のAI技術が最大限のシナジー効果を発揮できるような、戦略的な買収・投資の機会を体系的に選定し、実行してまいります。
(6) 当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループが対処すべき主な課題は以下のとおりであります。
① 研究開発体制の強化
当社グループの事業領域であるAI関連技術は、将来的な利用可能性の高さから、世界的に研究開発が活発に行われています。このような事業環境の下で、当社グループが持続的に事業を拡大していくためには、急速に進化する新技術に的確かつ迅速に対応していくことが重要であると考えています。
そのためには、優秀な人材の確保と育成、研究開発への継続的な投資、社内におけるノウハウの共有や教育体制の強化が不可欠であると考えています。当社グループは、優秀な人材の確保・採用を積極的に進めるとともに、研究開発への投資を継続し、より強固な開発体制の構築に努めてまいります。
② 営業体制の強化
当社グループのソリューションはエンタープライズ向けであり、その販売にあたっては、顧客企業の経営課題を的確に把握し、それに基づいてAIプラットフォームを最適に活用したソリューションを提案することが求められます。また、見込み顧客の獲得や、契約後の円滑なオンボーディング、既存顧客に対する高品質なカスタマーサクセスの提供も重要です。このような認識のもと、当社グループは優秀なマーケティング・営業・カスタマーサクセス人材の採用を積極的に進めるとともに、適切なトレーニングを通じて営業生産性の向上に努めてまいります。
また、当社グループの売上収益の最大構成比を占めるソリューションは広告クラウドですが、引き続き他のソリューションの販売強化にも注力し、ソリューション別にバランスの取れた売上収益構成を目指してまいります。
③ 内部管理体制の強化
当社グループは、既存拠点に加え、アジア全域及び欧米への更なる事業展開を企図しております。これに伴い、多国間での事業運営に対応した経営管理体制の構築・強化を図るとともに、財務報告の適切性の確保、リスク管理及び内部統制の強化が重要な課題であると考えています。
このため、子会社管理の統一的な実施を進めるべく、人材の採用を含むバックオフィス機能の整備を推進し、経営の公正性・透明性を確保するため、より強固な内部管理体制の構築に取り組んでまいります。
④ 情報管理体制の強化
当社グループは、顧客企業へのサービス提供の過程において、顧客企業の機密情報やユーザーに関する情報を取り扱う可能性があり、その情報管理を徹底することが信頼確保の観点から重要であると考えています。
現在、社内において個人情報やデータの保護に関する各種方針を策定し、当社グループ全体に周知徹底を図るとともに、情報管理の強化に取り組んでいます。今後も社内教育・研修の実施を継続し、情報セキュリティ体制の一層の強化に努めてまいります。
⑤ 財務基盤の強化
当社グループは製品・サービスの開発、顧客基盤の拡大、事業領域及び市場の拡大を重視しており、今後も積極的な投資を継続してまいります。
また、直接金融及び間接金融を効果的に活用し、資本市場との対話を一層深めることで、事業展開に応じた財務基盤の強化を図ってまいります。
(1) 経営方針
当社グループのミッションは、「自律型AIでROIを向上させる」です。
現在、あらゆるサービスやソリューションでAIの活用が進展しており、世界は急速に進展するAI革命の真只中にあります。当社は、このAI時代における大きな変革の機会を捉え、ビジネスドメインであるマーケティング分野において、業種特化・顧客中心型の自律型AIモデルを高性能化するための豊富な経験の蓄積、データを用いたAIの訓練と改善の積み重ね及びプロダクト開発のための研究開発投資を通じて、顧客企業のROI(投資リターン)向上を実現してきました。
当社グループは、マーケティング分野におけるAIソリューションを提供するパイオニアとして、マーケティングからセールス活動まで顧客接点の全領域を支援するソリューションを提供し、企業の収益最大化に貢献してきました。また近年では、AaaS(Agentic AI as a Service)を提供するAIネイティブ企業として、自律型AIが分断されていたデータを瞬時に統合・連携させることで、市場の変化をリアルタイムに捉える、自律的で適応力の高いオムニチャネルマーケティングを提供しています。これにより、当社の自律型AIは顧客企業にとって24時間365日稼働する自律的なマーケティングパートナーとなり、事業戦略の立案から実行まで継続してサポートすることで、明朗で説得力のある意思決定が可能になります。
(2) 経営環境
インターネット及びモバイルデバイスの普及によるデータの爆発的増加とAIへのニーズ
インターネット及びモバイルデバイスの急速な普及に伴い、検索や商取引等の膨大なトランザクション・データや、画像・動画等の非構造化データが爆発的に増加しています。これらのデータを保管・処理する技術も飛躍的に進化しており、企業がデータに基づいた意思決定を行う必要性は益々高まっていると考えています。
そのような環境の中で登場したAIソフトウェアは、各種デバイス、センサー、アプリケーション等を通じて収集される膨大なデータを統合し、より複雑な分析や処理を可能にしました。特にマーケティング領域においては、PCに加えてスマートフォンやタブレット等のモバイルデバイスを通じて収集されたユーザーデータを分析・活用することにより、ウェブサイトやモバイルアプリを通じたより効果的なマーケティングが可能となりました。
また、AIソフトウェアを用いて企業が保有するカスタマー・データからより有意義な知見を抽出し、顧客理解を深めるとともに、既存顧客や潜在顧客とのマーケティング・コミュニケーションにAIソフトウェアを活用することで、よりパーソナライズされた提案を行い、エンゲージメントを高める取り組みも進展しています。
AI活用の重要性に対する認識の高まり
近年、企業の様々な事業部門においてAI活用の重要性に対する認識が高まっており、多くの企業が既にAIを導入している、または導入を計画しているといわれています。しかし、既にAIを効果的に活用できている企業は依然として限られており、専門的な技術や知見を有する人材の不足が、AI導入における最も一般的な課題となっていると考えています。
内製AI組織ではなく、AIプラットフォームの活用が拡大する可能性
AI人材は不足しており、企業が自社内で大規模なAIデータサイエンティストチームを構築し、AIの活用を内製化するのは容易ではありません。そのため、当社のような外部ベンダーが提供するAIプラットフォームを導入するケースが今後さらに増加すると見込まれます。
デジタル化の加速
一般消費者や企業活動がデジタル領域にシフトする中で、良質なデータが大量に生成されています。新型コロナウイルスの流行を契機として、このデジタル化の動きは更に加速しました。こうした環境のもと、AIを導入してデータを分析・活用しようという動きが一層促進されていると考えています。
AIによる予測がマーケティング・セールス投資の中心に
マーケティングやセールスへの投資は、従来その投資対効果を事前に正確に予測することが難しい分野でした。しかし、AIを活用することで、データに基づいた精度の高い投資対効果の予測が可能となります。将来的には、マーケティングやセールスへの投資において、AIを活用したアプローチが中心となると考えています。
デジタルマーケティングにおけるAIによる自動化と効率化
現在のデジタルマーケティングでは、担当者が各種設定を手作業で調整するなど、労働集約的な業務プロセスがいまだ多く残っています。AIは過去のデータに基づき最適解を予測できるため、その普及によりデジタルマーケティング業務の自動化と効率化が進み、マーケティングROIの向上につながると考えています。
顧客企業のニーズを満たすことができない既存のソリューション
当社グループのAIを活用したソリューションは、既存のソリューションでは十分に対応できない顧客企業の課題に対して、以下の点において適切に対処することができると考えています。
① ユーザーの予測及び獲得
従来の多くのソリューションでは、デジタルマーケティング担当者が結果を改善するために手作業でA/Bテストを繰り返す必要があります。AIによる予測を活用することで、手作業に要する時間とコストを削減し、過去のデータから最適な結論を迅速に導き出すことができます。
② ユーザーの維持及び関係構築
従来のマーケティング・オートメーション・ツールの多くは、事前に設定されたルールに基づいて対応する手法を採用しており、ビジネスチャンスを逃すリスクがあります。AIによる行動予測を用いることで、ユーザーの将来行動を先読みし、最適なタイミングでエンゲージメントを行うことにより、そのようなリスクを軽減することができます。
③ 取引の実行
一般的に、購買を促すためのインセンティブは、ユーザー全員に一律に付与されるか、マーケティング担当者の経験や勘に基づいて特定ユーザーに付与されるケースが多く見られます。これらの手法では効果的に売上を拡大できず、収益性を損なうおそれがあります。当社グループのAI予測を活用することで、購買をためらっているユーザーを特定し、対象を限定したインセンティブを付与することが可能となります。
④ ユーザーの予測
AaaS(Agentic AI as a Service)ソリューションの場合、一定の品質が確保され、コストも明確であるのに対し、コンサルティング会社やAIシステム会社が構築する自社内製型の分析システムでは、開発に関与するAI人材のスキルが一定ではない場合が多く、時間とコストがかかるうえ、想定どおりのシステムが構築できないリスクが高まります。
ファーストパーティーデータ中心の世界におけるAIの重要性の高まり
当社グループの強力なAIプラットフォームは、リアルタイムに予測を行い、顧客企業がビジネス上の目標を達成するために必要なユーザーの獲得、維持、エンゲージメントを支援することができます。これらの予測は、外部のサードパーティーデータを利用せず、顧客企業がウェブサイト、アプリ、CRMデータベースなどから提供するファーストパーティーデータのみに基づいて行われます。
ファーストパーティーデータは、品質・関連性・精度のいずれにおいてもサードパーティーデータを上回ります。しかし、当社グループのプラットフォームを利用しない場合、断片的でサイロ化した膨大なデータを統合し、有効活用することは技術的に困難です。その結果、ユーザーIDやユーザー行動を同期させてユーザーの興味関心を把握するためにサードパーティーデータに依拠するか、あるいは膨大なデータを時間のかかる手作業で整理し、過去の分析結果や経験に基づき意思決定を行わざるを得ない状況が多く見られます。
当社グループのAI技術は、顧客企業が保有するファーストパーティーデータを自動的に統合し、ディープラーニング技術を活用して高精度なリアルタイム予測を実現します。これにより、ファーストパーティーデータの価値を最大限に引き出し、データ主導の意思決定を可能にします。
ファーストパーティーデータの活用は、デジタルマーケティング分野における最も重要なトレンドの一つとなっており、当社グループはこの領域でリーディングプレーヤーとなることができると考えています。
AI SaaSソリューションからAIコパイロット及びAIエージェントへの進展
当社グループの提供するAIソリューションは、AI SaaSソリューションからAIコパイロット、さらにはAIエージェントへと進化しています。
AIコパイロットは、業務を自動化しインサイトを生成するだけでなく、キャンペーン効果の要約、顧客セグメントの提案、次のアクションの推奨などのインテリジェンス活動を人間の承認及び指示をうけながら加速させます。
AIエージェントは、次の大きな変革であり、アプリケーションやデータを超えて自律的に目標設定し、具体的な戦略を計画、決定、実行を一気通貫で行うだけでなく、自ら結果を検証して改善する学習機能を備えています。
このように、当社のAIソリューションがAIツールの提供からAIが業務全体を担うモデルへと進化することにより、企業の業務にかかる時間を大幅に短縮するだけでなく精度と一貫性が向上し、安全性と説明責任を確保しながら測定可能な投資効果(ROI)を改善することができると考えております。
大きなチャンスのある市場
AIの市場規模は今後も拡大が見込まれており、その成長の大部分はソフトウェア分野によるものと予想されています。
当社グループは、IDCの定義による「カスタマーリレーションシップマネジメント」セグメントと「データ分析及びAIソフトウェア」セグメントにおける当社グループのTAM(注1)について、2026年に約1,234億米国ドルまで拡大すると見込んでいます。
(注) 1.Total Addressable Marketの略。当社グループが想定する最大の市場規模を意味する用語。
(3) 目標とする客観的な指標等
当社グループは、利益を伴う成長を重視しており、新規顧客及び既存顧客からの安定的な売上収益の拡大による中長期的な成長に加え、オペレーティング・レバレッジの改善に伴う営業利益及び当期利益の拡大が重要であると考えています。
このため、当社グループでは、目標達成の進捗を客観的に把握するための指標として、売上収益及び売上収益成長率、営業利益及び営業利益率を重視しています。
(4) 当社グループの強み
① 機械学習を用いたAI技術の継続的なイノベーション
当社グループは、AI分野において数々の表彰を受けています。フォーチュン誌からは、中国本土を除くアジアを拠点とする企業で唯一、「AI革命を牽引する50社(2017年)」に選定されました。さらに、2017年と2018年には、CBインサイツから「世界で最も有望なAIスタートアップ企業100社」に2年連続で選出されています。また、国際的なデータ・マイニング・コンテストであるKDDカップにおいて、2008年から2020年の間に当社グループの従業員が参加したチームが7回優勝しています。
当社グループのプラットフォームは、機械学習を活用した革新的なAI技術を基盤としており、以下の強みを有しています。
・深層表現学習技術(注1):当社グループの機械学習を活用したAIプラットフォームは、深層表現学習技術を有しており、この技術を活用することで、新たな言語への展開を容易に行うことができます。
・自動化された機械学習:分析対象のデータ量が増加すると、システムとAIアルゴリズムが自動的に拡張され、データサイエンティストの人手を介すること無く、AIモデルが自動的に構築されます。
・オンラインリアルタイム学習:従来の機械学習技術とは異なり、リアルタイムでの分析が可能な技術を有しています。これにより、ユーザーの嗜好の変化に速やかに適応し、データの適切性や予測結果の正当性に関わる問題を直ちに処理することができます。
・転移学習(注2):新しい顧客、業種、予測に対応するため、当社グループは先駆的にプラットフォームに転移学習を導入しました。これにより、AIモデル間で学習済みの「コンセプト」を効率的に伝達し、学習時間の短縮を実現しています。
そして、当社グループはAaaS(Agentic AI as a Service)形式のプラットフォームを提供しており、安定したパフォーマンスを発揮できる堅牢なシステム設計を有しています。
(注) 1.データから特徴検出や分類に必要な表現を自動的に発見し、テキストだけでなく画像や動画のソースからも深い意味を抽出することができる技術
2.ある領域で学習したAIモデルを別の領域に活用し、AIモデルの学習を効率化する技術
② AIのエキスパートとビジネスのベテランによる経営陣
当社グループの共同創業者の1人であり代表取締役CEOである游直翰は、米国スタンフォード大学で修士号を、米国ハーバード大学で博士号を取得している世界レベルのAIサイエンティストです。共同創業者兼取締役CIOの蘇家永は、大規模システム開発に関する豊富な経験を持ち、当社グループの技術とプロダクト開発を牽引しています。さらに、共同創業者兼取締役COOの李婉菱は、免疫学者や医学分野の研究者としての経歴を持ち、「オペレーションへの科学的アプローチ」を事業運営に取り入れています。
当社グループの技術部門には、研究分野で強いバックグラウンドを持つ経験豊富なAIおよびデータサイエンティストが多数在籍しています。役員及び従業員によるトップジャーナル、カンファレンス、ワークショップ(注3)における発表論文数は300本を超えており、国際的なデータ・マイニング・コンテストでの実績を持つ(注4)人材を多数擁しています。また、エンジニアの多くがAI、ビッグデータ、コンピューターサイエンス分野における博士号又は修士号を有しています。これらの人材により、当社グループにはAI業界の課題に立ち向かうための向上心、オープンマインド、ダイレクトコミュニケーションを重視する企業文化が根付いています。
さらに、ビジネスの執行面においても、ソフトウェア及びテクノロジー分野を含む大手企業で営業や財務の上級管理職を務めた経験を持つメンバーが多数在籍しています。また、他の取締役やアドバイザーの専門的な知見も活かせる強みを持っています。
(注) 3.アルバータ大学による定義
4.国際的なデータ・マイニング・コンテストであるKDDカップにおいて、当社の従業員が参加したチームが7回優勝
③ プラットフォームの価値を高めるネットワーク効果

当社グループは、相互に補完的かつ緊密に連携した複数のソリューションをプラットフォームとして提供しており、強力なネットワーク効果を生み出しています。
まず、顧客企業が当社グループのソリューションを採用すると、利用に応じてAIが学習するデータ量が増加します。これにより、AIアルゴリズムの精度が向上し、顧客企業のROI改善につながります。その結果、顧客企業は当該ソリューションをより一層利用するようになるとともに、別のソリューションを追加導入する意欲が高まります。
さらに、複数のソリューションを併用することで、AIが学習するデータの種類が多様化し、網羅性が高まります。その結果、AIアルゴリズムの予測精度が一層向上し、プラットフォームの価値が高まるという好循環が生まれます。
このようなネットワーク効果は、多様な業種の様々な利用方法に対応してきた当社グループのソリューションの経験の蓄積から生まれたものであり、他社が短期間で再現することは困難であると考えています。
また、デジタルマーケティングやセールスの領域で実証してきたように、当社グループは最先端の機械学習を活用したAIモデルを既存のソフトウェアやソリューションに適用することで、これまで実現できなかった新たなソリューションを提供してまいりました。このように、当社グループはソフトウェア業界に変革をもたらす能力を有していると考えています。
さらに、既存顧客からの利用拡大による好循環に加え、営業生産性の向上も継続しています。大規模なエンタープライズ顧客にフォーカスする戦略により、営業担当者1人当たりの売上収益を増加させています。各顧客が利用量を拡大し、より多くのソリューションを利用することで、1顧客当たりの売上総利益が増加します。これにより、販売及びマーケティング投資のROIが向上し、さらなる生産性の改善を実現します。高い営業生産性と1顧客当たりの売上総利益の上昇は、更なる好循環をもたらします。
④ 戦略的な買収によるプロダクトポートフォリオの拡大
当社グループは、内製によるプロダクト開発に加え、既存プロダクトと補完関係にあるプロダクトを持つ企業を戦略的に買収し、プロダクトポートフォリオを拡大してまいりました。
2018年にはQuantumgraph Solutions Private Limited.を、2019年にEmotion Intelligence株式会社を買収し、両社のプロダクトを当社グループの最先端AI技術により再設計・改良することで、AIQUAとAiDealを開発・提供し、顧客企業を着実に拡大しています。
2021年には邦妮科技有限公司(BotBonnie Inc.)を買収し、同社が提供するBotBonnieを複数言語にローカライズして販売地域を拡大しました。BotBonnieはオムニチャネルの会話型マーケティング・プラットフォームであり、既存ソリューションとの高いシナジーを発揮し、顧客企業のマーケティング活動の利便性を向上させています。
2022年には米国のWoopra,Inc.を買収し、同社が保有していたプロダクトとAIXONを組み合わせることにより、AIRISの提供を開始しました。AIRISは、AppierのAIによる予測アプローチと、Woopraの直感的なデータ可視化機能を組み合わせた、AI搭載の次世代カスタマー・データ・プラットフォーム(CDP)です。直感的なリアルタイムデータの可視化と予測により、インサイトを得るまでの時間を大幅に短縮することができます。
そして、2025年にはフランスのADYOUNEED SASを買収し、同社が開発・提供する生成AIプラットフォーム AdCreative.aiをプロダクトラインに追加しました。AdCreative.aiは、最先端のAI技術を活用し、デジタル広告クリエイティブの制作を自動化・効率化するAI搭載プラットフォームです。高度な生成AIモデルと独自の包括的データセットを活用することで、さまざまなデジタルチャネル向けに最適化された広告素材を迅速に生成し、クリエイティブ制作のリードタイムを大幅に短縮します。AdCreative.aiは、当社グループの主力AIネイティブソリューションである「広告クラウド」「パーソナライゼーションクラウド」「データクラウド」に統合されており、データから得られるインサイトをクリエイティブ生成に直接活用できる点が特長です。これにより、顧客企業は情報に基づいた意思決定が可能となり、市場環境の変化や消費者ニーズの進化にリアルタイムで対応することができます。
当社グループは、まず進出する領域を特定し、自社のソリューションや事業展開地域を補完する適切なターゲットを体系的に探索しています。買収後は、対象企業のソリューションを自社のシステムと融合し、最先端のAI機能を活用して再設計・改良することで顧客企業を拡大してきた実績があります。今後も同様のアプローチにより、新ソリューションの導入や地域的な拡大を柔軟に推進してまいります。
⑤ 多様な業種・地域における顧客基盤
当社グループには、ソリューションを多様な業種に適応させ、異なる国や地域で事業を拡大できるという強みがあります。創業以来、グローバルな事業拡大に成功し、現在は15ヵ国・地域に17のオフィスを構えています。
北東アジア地域(日本及び韓国)、米国及びEMEA地域、グレーターチャイナ地域(中国、台湾及び香港)の各主要地域においては、継続的な成長を維持しています。特に、米国及びEMEA地域では他の地域を上回る成長を示しています。各国・地域の特性に合わせて体系的に事業を拡大することができるよう、ノウハウ、インフラ、人材を整備しており、今後のグローバル展開においても積極的に活用してまいります。
当社グループは、主としてEコマース、デジタルコンテンツ、その他インターネットサービス、消費財ブランド・金融サービスを中心とする幅広い業種の顧客企業を多数有しており、多様な業界の著名な企業に対してAaaS(Agentic AI as a Service)プラットフォームを提供しています。
2025年12月31日現在、当社の顧客企業は2,111の企業グループとなっており、2024年12月31日時点の1,872の企業グループから増加しています。
⑥ 顧客企業の獲得・維持・拡大における実績
当社グループは、国際的かつ経験豊富なセールスチームを有しており、アジア太平洋、米国及び欧州の主要な市場で事業を展開しています。強固な市場獲得戦略のもと、事業拡大を進めるとともに、プロダクト利用継続率の高い顧客基盤を構築してまいりました。
さらに、当社グループのプロダクトを複数利用する顧客企業の数も大きく増加しています。顧客企業が当社グループのプロダクトを長期間利用することで、AIが学習するデータ量が拡大し、予測精度が向上します。その結果、当社グループのプロダクトが顧客企業にとって必要不可欠なプラットフォームになると考えています。
2025年12月期における月次顧客解約率(注5)は0.340%、月次顧客収益解約率(注6)は0.316%となりました。また、既存顧客からの売上収益は拡大し、NRRは120.4%(米国ドルベース)という高い水準を維持しています。
(注) 5.月末時点の顧客企業(当月のみの利用又は有償での試験的利用等により一時的に当社グループのソリューションを利用した顧客企業を除く。)の数に対する当月に離脱した顧客企業数の割合
6.月末時点の顧客企業(当月のみの利用又は有償での試験的利用等により一時的に当社グループのソリューションを利用した顧客企業を除く。)からの米国ドル建ての売上収益に対する当月に離脱した顧客企業からの米国ドル建ての売上収益の割合
月次顧客解約率及び月次顧客収益解約率
| 期間 | 2024年 | 2025年 |
| 月次顧客解約率 | 0.389% | 0.340% |
| 月次顧客収益解約率 | 0.292% | 0.316% |
⑦ リカーリング売上収益の増加とオペレーティング・レバレッジ
前記「③ プラットフォームの価値を高めるネットワーク効果」に記載のとおり、当社グループのプロダクトには、顧客企業による利用量の増加や、別のプロダクトの追加導入を促すネットワーク効果があります。「ランド・アンド・エクスパンド」手法(まず顧客企業に1つのプロダクトを導入していただき、その後、別のプロダクトへの利用拡大を促すアプローチ)が有効に機能しており、2025年12月期のNRRは120.4%(米国ドルベース)となっています。
また、安定した収益源であるリカーリング売上収益は増加傾向にあります。2025年12月のARRは48,259百万円で、2024年12月の36,259百万円と比較した成長率は33.1%となっています。また、2025年のリカーリング売上収益比率は95%以上となっています。
さらに、当社グループの為替ニュートラル(為替レートが前期と同じであった場合)のARPC(注7)は2024年12月期の17.8百万円から2025年12月期の20.1百万円へと成長しました。これは、当社グループのプラットフォームを継続して利用する顧客企業によるプロダクトの利用の拡大を反映したものです。
また、CrossXについては、多くの顧客企業のデータを学習することでAIアルゴリズムが自動的に予測精度を高め、より少ないメディアコストで多くのユーザーを獲得できるようになることで、売上総利益率の改善が見込まれる仕組みとなっています。さらに、売上総利益率が比較的高いCrossX以外のプロダクトの顧客基盤を拡大することも、当社グループの売上総利益率の向上につながります。
加えて、収益基盤の拡大に伴い、販売及びマーケティング費用・研究開発費・一般管理費の売上収益に対する割合は減少すると想定しており、売上収益の増加に伴い営業利益率の改善が見込まれる、健全なコスト構造を維持しています。
(注) 7.Average Revenue Per Customerの略。1顧客当たりの平均売上収益を意味する。ある年度の売上収益を当該年度末の顧客企業数で除した、顧客企業1社当たりの平均年間売上収益(当月のみの利用又は有償での試験的利用等により一時的に当社グループのソリューションを利用した顧客企業及び対応する売上収益を除く。)
8.上記に記載の2024年12月期及び2025年12月期に係る各数値は未監査のものです。
(5) 中長期的な経営戦略
① AI技術の継続的な強化と新たなソリューションの開発
AI技術の革新に向けた投資を継続することは、当社グループにとって最も重要な優先事項の一つです。研究としてのAIには長い歴史がありますが、ビジネスとしてのAIはまだ黎明期にあります。当社グループは、AI研究のバックグラウンドを持つ経営陣が率いるAI企業のパイオニアとして、最先端の研究成果を実社会の課題解決に応用するために、その強みを発揮し続けています。
また、近年は生成AIの技術を取り入れた新たなソリューションの開発にも注力しています。従来、マーケティング領域におけるAI活用は、高精度な予測に重点を置いてきましたが、生成AIの登場により、新たな事業機会が広がっています。この傾向は、マーケティングのアイデアやコンテンツを生み出す生成AIの能力が、企業において受け入れられつつあることを示しています。例えば、生成AIは自動コンテンツ生成、マーケティング文章の生成、自動的なアイデアテストを可能にすることで、マーケティングに変革をもたらします。さらに、自律型AIは設定された目標に対して自ら計画を立て、生成AIを含む多様なAIモデル等のツールを活用してマーケティング活動を遂行します。当社グループは、これらの技術を活用し、顧客企業の生産性向上とROIの最大化を支援してまいります。
② 新規顧客の獲得
当社グループの新規顧客獲得戦略は、緻密なセールスの分析と、トップダウンでの市場分析に基づいています。AIの受容度、各業界における成功事例の有無、販売効率の予測を踏まえた上で、地域参入・顧客獲得戦略を策定し、優先順位を明確にしています。
また、隣接する業種や同一業種内で類似の課題を抱える企業に対して、当社グループのAI技術を活用し、既存の成功事例を応用することで、潜在的なターゲット顧客を拡大していきます。これにより、Eコマースやデジタルコンテンツなどの既存業種における活用事例を増やすとともに、消費財や金融業界などの新たな業種での活用事例を拡大し、さらに幅広い業種への参入を可能にしています。
これらの取り組みにより、当社グループは多様な業種における導入実績を拡大し、持続的な顧客基盤の拡大を実現してまいります。
③ 既存顧客からの売上収益の増加
当社グループは、常に顧客企業に対して価値を提供することで顧客ロイヤルティを高め、顧客基盤の拡大と強化に注力しています。
顧客企業が当社グループのソリューションを長期的に利用するほど、ネットワーク効果が高まります。顧客企業が保有する膨大なデータを学習することで、時間の経過とともに当社グループのAIアルゴリズムとAIモデルの精度が向上し、ソリューションの効率性が高まります。その結果、顧客企業が得られる価値が一層大きくなり、当社グループのソリューションへの依存度が高まる傾向にあります。
このようなネットワーク効果により、当社グループは既存顧客に対して、時間の経過とともにより大きな価値を提供してきた実績を有しています。今後も当社ソリューションの利用拡大によるメリットを顧客企業に実感していただけるよう、営業体制をさらに強化してまいります。
これまで、既存顧客からの売上収益成長の大部分はアップセルによるものでしたが、ソリューションの拡大に伴い、クロスセルの拡大を推進し、更なる売上収益拡大を目指してまいります。
④ アジア太平洋地域及び米国・欧州への一層の浸透と新たな地域への展開
計画的な海外展開は当社グループの強みであり、市場拡大に向けた取り組みを今後も積極的に推進してまいります。アジア太平洋地域は引き続き当社グループの最重点地域であり、当該地域におけるプレゼンスをさらに強化していく方針です。特に、日本と韓国のように市場規模が大きく、デジタル技術が高度に浸透した国では、さらなるシェア拡大の余地があると考えています。これらの国においては、既存業種でのシェアを継続的に拡大しながら、新たな業種への進出に注力しています。
2021年より本格的に進出を開始した米国・欧州市場においても、売上収益比率は着実に拡大しており、当社グループ全体の成長モメンタムの加速に貢献しています。また、デジタル経済大国である中国では、顧客企業の海外展開が加速しており、当社グループの成長に貢献しつつあります。
当社グループは、差別化されたAI技術と強力な業務運営能力を活かし、アジア太平洋地域及び米国・欧州で確立した成功モデルを他の地域にも展開することで、さらなる事業拡大とグローバルな成長を継続してまいります。
⑤ 外部成長の機会の追求、戦略的なM&A
当社グループは、AIを活用したエンタープライズ・ソフトウェアの革新を実現するうえで、自社のAI技術によって既存ソリューションを再設計・強化するM&A戦略を重要な施策の一つと位置付けています。
新たな業種や地域をターゲットにした新たなソリューションを開発する際には、まず既存ビジネスとのシナジーが期待できる隣接領域から取り組みを開始します。当社グループの方向性と一致するビジョンを持つ優れた企業とのパートナーシップの機会があれば、技術力とソリューション強化の観点からM&Aの実行可能性を検討します。
今後も、これまでの買収実績に裏付けられた経験を活かし、当社のAI技術が最大限のシナジー効果を発揮できるような、戦略的な買収・投資の機会を体系的に選定し、実行してまいります。
(6) 当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループが対処すべき主な課題は以下のとおりであります。
① 研究開発体制の強化
当社グループの事業領域であるAI関連技術は、将来的な利用可能性の高さから、世界的に研究開発が活発に行われています。このような事業環境の下で、当社グループが持続的に事業を拡大していくためには、急速に進化する新技術に的確かつ迅速に対応していくことが重要であると考えています。
そのためには、優秀な人材の確保と育成、研究開発への継続的な投資、社内におけるノウハウの共有や教育体制の強化が不可欠であると考えています。当社グループは、優秀な人材の確保・採用を積極的に進めるとともに、研究開発への投資を継続し、より強固な開発体制の構築に努めてまいります。
② 営業体制の強化
当社グループのソリューションはエンタープライズ向けであり、その販売にあたっては、顧客企業の経営課題を的確に把握し、それに基づいてAIプラットフォームを最適に活用したソリューションを提案することが求められます。また、見込み顧客の獲得や、契約後の円滑なオンボーディング、既存顧客に対する高品質なカスタマーサクセスの提供も重要です。このような認識のもと、当社グループは優秀なマーケティング・営業・カスタマーサクセス人材の採用を積極的に進めるとともに、適切なトレーニングを通じて営業生産性の向上に努めてまいります。
また、当社グループの売上収益の最大構成比を占めるソリューションは広告クラウドですが、引き続き他のソリューションの販売強化にも注力し、ソリューション別にバランスの取れた売上収益構成を目指してまいります。
③ 内部管理体制の強化
当社グループは、既存拠点に加え、アジア全域及び欧米への更なる事業展開を企図しております。これに伴い、多国間での事業運営に対応した経営管理体制の構築・強化を図るとともに、財務報告の適切性の確保、リスク管理及び内部統制の強化が重要な課題であると考えています。
このため、子会社管理の統一的な実施を進めるべく、人材の採用を含むバックオフィス機能の整備を推進し、経営の公正性・透明性を確保するため、より強固な内部管理体制の構築に取り組んでまいります。
④ 情報管理体制の強化
当社グループは、顧客企業へのサービス提供の過程において、顧客企業の機密情報やユーザーに関する情報を取り扱う可能性があり、その情報管理を徹底することが信頼確保の観点から重要であると考えています。
現在、社内において個人情報やデータの保護に関する各種方針を策定し、当社グループ全体に周知徹底を図るとともに、情報管理の強化に取り組んでいます。今後も社内教育・研修の実施を継続し、情報セキュリティ体制の一層の強化に努めてまいります。
⑤ 財務基盤の強化
当社グループは製品・サービスの開発、顧客基盤の拡大、事業領域及び市場の拡大を重視しており、今後も積極的な投資を継続してまいります。
また、直接金融及び間接金融を効果的に活用し、資本市場との対話を一層深めることで、事業展開に応じた財務基盤の強化を図ってまいります。