有価証券報告書-第7期(2022/10/01-2023/09/30)

【提出】
2023/12/22 16:26
【資料】
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【項目】
121項目

対処すべき課題

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営の基本方針
当社グループは「Happiness」「Beauty」「Wellness」をテーマに掲げています。当社グループの目的は、店舗を通して、当社グループの価値観をお客様に明確に提示し、幸福を感じていただける方を一人でも多く増やしていくことです。このテーマの下、当社グループでは年間約2万組(2023年9月期時点の当社のフォトウエディング撮影組数とHAPISTAの撮影組数の合計)のお客様にサービスを提供しており、お客様の「想い」に寄り添い、株主の皆様に信頼され、社会貢献できる経営を確立してまいります。
当社グループでは、3年間の中期経営計画を策定しており、これまでは1年経過するごとに新たな3年間の計画に更新し、経営目標を設定していましたが、2023年11月6日に適時開示しました「2023年9月期決算及び中期経営計画
説明資料」に記載している2026年9月期までの中期経営計画につきましてはローリングすることなく今後3年間で達成すべき目標として設定しています。今後は3年ごとに新たな中期経営計画を策定してまいります。2026年9月期までのテーマとして「フォトウエディングサービスのさらなる成長」、「ライフフォトカンパニーの礎を創る」、「インバウンド向け事業の強化」の3点を掲げています。フォトウエディングサービスの成長と、アニバーサリーフォトサービスの成長、その他のライフイベント領域への事業拡大について、具体的な戦略を策定し、これらスタジオ事業のより一層の成長に注力してまいります。
(2) 経営環境
当社グループを取り巻く経営環境は少子高齢化が一段と進み、厚生労働省が公表している「人口動態統計調査(2022年)」によれば平均婚姻年齢は2005年で男性29.8歳、女性28.0歳から2022年で男性31.1歳、女性29.7歳と上昇しています。また同調査によると年間の婚姻組数は長期に渡り減少傾向が続き、近年では2012年に一時的に増加した後は減少が続き、2019年には599千組に増加したものの、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を大きく受けた2020年においては525千組、2021年においては501千組と大きく減少し、2022年は504千組と同水準での推移となり先行き不透明な状況が続いています。近年では家族を中心とした少人数での挙式や披露宴を行わない結婚スタイル、SNSを利用した体験の共有等、従来の結婚式の様式にとらわれない、新たな価値観が醸成されていると当社では考えています。このような環境下において、結婚写真についても従来は挙式会場で当日に撮影を行うスタイルが主流でしたが、当日の式場とは異なるスタジオ、ロケーションの中で、参列者に気兼ねすることなく、挙式当日には撮影できないような写真を残せるフォトウエディングサービスの需要が増加し、今後もその傾向は続いていくものと当社では考えています。また、披露宴を行わない結婚スタイルにおいてもフォトウエディングで花嫁衣裳に袖を通し、結婚の報告等を行うことで花嫁体験をするケースが認知されつつあると考えています。
2020年以降は新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、ブライダル業界においては、従来型の挙式・披露宴業態では参列者への配慮からの「3密」回避や、大人数のイベントの自粛傾向の強まりを受け、挙式・披露宴の延期や中止による実施組数が減少しました。フォトウエディング業態は、新郎新婦だけで「3密」を回避しつつ撮影が可能であり、挙式・披露宴の延期・中止が増える中で思い出を残したいカップルの写真へのニーズが高まったと当社では考えています。2023年5月8日に新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行したことにより行動制限が大きく緩和され、挙式・披露宴市場は徐々に回復しつつありますが、コロナ禍において加速した結婚式に対する新たな価値観の浸透は今後も続き、フォトウエディングに対するニーズと存在感は今後さらに高まっていくものと当社は考えています。
(3) 経営戦略、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
上記の経営の基本方針及び経営環境を踏まえた中長期的な経営戦略、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下のとおりです。
スタジオ事業では「フレームを超える感動を」を行動指針として、「新しい感動体験をつくり、文化として浸透させる」を使命としています。
2026年9月期までの中期経営計画においては「フォトウエディングサービスのさらなる成長」、「ライフフォトカンパニーの礎を創る」、「インバウンド向け事業の強化」をテーマとして、事業を成長させ使命を果たすために、以下の成長戦略を進めてまいります。
フォトウエディングサービスのさらなる成長
・フォトウエディングのリーディングカンパニーとして自ら市場を広げる活動とともに、新規出店を進め、さらなる成長を目指す
・スタジオを持たない接客専用の「相談カウンター」の開設など投資効率の高い集客強化策や、業務のセンター化など事業効率を高める取り組みを進める
・地方中核都市を中心に「地方都市型店舗」の出店を2025年9月期から開始予定
ライフフォトカンパニーの礎を創る
・HAPISTAは2024年9月期に店舗の収益力を高めたうえで新規出店を再開
・関西圏に続き首都圏での出店を加速することでブランド認知を高める
・MIXIグループとの連携を深めアニバーサリーフォトサービスの拡大を図る
インバウンド向け事業の強化
・コロナ禍前にも実施していた香港でのマーケティング活動を再開すると同時に、中国本土及び台湾でのマーケティング活動を順次開始
・インバウンド顧客向けにフォトウエディング以外の新サービスを展開
これらの成長戦略を実現するため、以下の具体的な取組を実行しています。
①フォトグラファー、メイクアップアーティストの人材確保及び育成
当社グループはフォトグラファー及びメイクアップアーティストについて、外注依存することなく自社で正社員として雇用しています。専門学校の卒業生や未経験者を積極的に正社員として採用し、当社グループの研修を行う専門部署が技術研修・指導を継続的に行うことにより、写真撮影に関わる職種ごとの専門技術・ノウハウを習得したプロフェッショナル人材として育成しています。
研修は当社で設定した技術等級に応じて実施され、等級別に以下の目標を設定しています。
第1等級(入社1年後):一般的・標準的な要求に対し、上位者の指示やマニュアル、研修で教わった内容のもとに対応できる、もしくは習得中の段階であり必要とされる基本的なスキルを知るレベル
第2等級(入社2年後):行動を振り返り習熟することで、一般的・標準的な要求に、独力で対応できるレベル
第3等級(入社5年超):難しさ・複雑さのある要求に、独力で対応できるような、プロとして完成するレベル
整備された教育システムにより、フォトグラファー及びメイクアップアーティストの技術力を高めつつ高水準で均質化し個人差を極小化することで、当社グループが提供するフォトウエディングサービスは安定した品質でのサービス提供が担保されていると当社では考えています。
また、撮影・メイクの専門技術を保有する人員を正社員として確保(2023年9月30日時点において、フォトグラファー:158名、メイクアップアーティスト:151名)していることで、フォトウエディングサービスの平均単価が上昇する春秋の繁忙期の需要を確実に取り込むことを可能としています。また、少人数で日程調整が容易かつ短時間で撮影可能なフォトウエディングの特性を活かし平日に顧客を取り込むことで人員と設備の稼働を平準化し、稼働が土日に集中する結婚式や披露宴と比較してより多くの撮影を可能としています。
当社グループのフォトグラファー及びメイクアップアーティストの人員数の推移
(単位:人)
2019年9月2020年9月2021年9月2022年9月2023年9月
271262280283309

②Web集客力の強化
当社ではWebサイト制作について制作チームを内製化しており、適時適切なWebサイトの更新、SEO対策(*)、Web集客状況のモニタリング等を行っています。また、社員であるフォトグラファーやメイクアップアーティストからのSNSを通じた情報発信にも積極的に取り組んでいます。
「ゼクシィ結婚トレンド調査2023」(株式会社リクルートマーケティングパートナーズ)によれば、首都圏における顧客によるフォトウエディング事業者の選定媒体として、SNSが52.8%、その他インターネット上のWebサイトが30.6%と多く利用されています。
別撮りのスタジオ・ロケーション撮影の依頼先を検討する際に利用した情報源
(単位:%、複数回答可)
媒体2021年2022年2023年
SNS47.448.752.8
その他Webサイト30.631.030.6
結婚情報サイト25.524.120.6
結婚式場の紹介15.418.215.0
友人・知人の紹介10.18.610.0
結婚情報誌13.09.68.3
挙式会場などのHP5.67.86.7

(株式会社リクルートマーケティングパートナーズ「ゼクシイ結婚トレンド調査2023」)
当社グループの接客件数のうち90%以上は自社Webサイトでの予約によるものであり、その入口となるWeb検索においては、SEO対策(*)と、競合他社に先行してWebサイトからの集客に注力してきたことによる過去の検索数の蓄積等により、「フォトウエディング」「前撮り」等のキーワード検索で各地域において上位を占める結果を導いています。SNSを通じた情報発信にも積極的に取り組み、当社グループの提供するサービスの認知度を向上させる活動を進めています。スタジオ事業においては、各店舗の公式アカウントに加えて、技術水準等の社内認定基準を満たしたフォトグラファーやメイクアップアーティストについては個人アカウントを開設し、フォロワー数を増やし情報発信力を強化することによる認知度の向上に取り組んでいます。さらに、SNSにおいては当社グループのサービスに満足いただけた顧客自身により情報発信されることで、当社グループ・顧客の双方向からの情報発信が当社グループのサービスの認知度を高める仕組み作りを推進しています。
(*)「Search Engine Optimization」の略であり、インターネット検索結果でWebサイトを上位表示させたり、より多く露出するための一連の取組のことを「SEO」といいます。
③衣裳
和装の品揃えの充実と、洋装ドレスはデザインを内製化して国内外の仕入先に直接発注することで最新のデザインのトレンドを取り入れた衣裳をいち早く提供することを可能とし、品質とコストを自社でコントロールしつつ、顧客に「多くの衣裳の中からお気に入りを選ぶ楽しさ」を提供し満足度を高める取組を進めています。
④地域に根差した店舗展開
当社グループは首都圏で「スタジオAQUA」、関西圏で「スタジオTVB」、名古屋で「スタジオ 8」、福岡で「スタジオAN」、沖縄で「スタジオSUNS」、北海道で「スタジオSOLA」を展開しており、それぞれの地域に応じたブランディング・店舗づくりを行っています。大都市圏の店舗はターミナル駅近辺を中心に出店することにより、地域のお客様にとって利便性の高い店舗展開を行っています。
今後は、未進出エリアへの店舗出店を進めることにより顧客獲得を目指すことに加え、接客専用の「ウエディングフォト相談カウンター」を大型店舗とは少し距離を置いたアクセスの良い場所に設けるなど、様々な手法で集客の強化を推進します。これらの施策と併せて、郊外や地方都市における中規模商圏に対応した省スペース・少人数で運営可能な地方都市型店舗の展開、リゾート地におけるフォトウエディングサービスを提供するリゾート型店舗の展開を推進してまいります。
これらの取組により、当社グループでは、2026年9月期までの中期経営計画期間においてフォトウエディングサービスの店舗を9店舗、アニバーサリーフォトサービス(HAPISTA)の店舗を23店舗出店する計画です。
スタジオ事業の店舗数の推移は以下のとおりです。
2010年2011年2012年2013年2014年2015年2016年
店舗数57911121517
(ウエディング)57810111315
(アニバーサリー)--11122
出店数3222132
退店数0000000
2017年2018年2019年2020年2021年2022年2023年
店舗数19191820222632
(ウエディング)17171617182023
(アニバーサリー)2222358
(インバウンド・ペット・成人式写真)---1111
出店数2102348
退店数0110101

(注)2010年から2022年は12月末の情報であり、2023年は9月末現在の情報です。
⑤衛生管理
当社グループでは新型コロナウイルス感染症対策を含めた適切な衛生管理体制を構築するため、各店舗への必要な衛生設備の配置及び衛生管理の指導を徹底し、お客様が安心してサービスの提供を受けることができる環境を整備しています。
⑥衣裳の品質管理
当社グループではグループ全体の衣裳を管理する部門を設置し、定期的な衣裳の購入と廃棄、店頭在庫の入替等を行い衣裳デザインの陳腐化や使用過多・経年による劣化品の使用を防止することで品質を確保しています。衣裳の買付けにあたっては仕入先と直接交渉し、デザイン・品質を確認した上で大量購入することで低価格を実現しています。
⑦フォトウエディング事業領域の拡大及びライフイベント領域への展開加速
近郊の旅行先でフォトウエディングを行う「フォトジェニックジャーニー」、新郎新婦だけでなく家族と一緒に撮影する「家族フォトウエディング」、本格的なチャペルでフォトウエディングを行う「チャペルフォトプラン」等の取組や、入国規制緩和及び円安により市場の再拡大が見込めるインバウンド需要の取込みを推進し、フォトウエディング事業領域の拡大を加速してまいります。
また、スマートフォンやコンパクトデジタルカメラによる手軽な個人撮影とは異なる写真に対する消費者のニーズに対し、当社グループの持つフォトグラフィック技術を活用し、ライフイベント領域への展開に取り組んでまいります。既に多店舗展開を進めている、家族や子供の記念日(アニバーサリー)をテーマとしたフォトスタジオである「HAPISTA」については、中期経営計画において店舗展開をさらに加速し、事業基盤を強固なものとしてまいります。また、アジアには写真を大切にする文化を持つ国が多く、コロナ禍から急激に訪日観光客数が回復していることから、今後も拡大していくと考えられるインバウンド市場は、当社にとって非常に魅力的なマーケットとなっています。2023年6月からは、コロナ禍前から実施していた香港でのマーケティング活動の再開だけでなく、中国本土及び台湾へも拡大すべくマーケティング活動を開始しています。
(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社では、経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、調整後営業利益による評価を行っています。調整後営業利益は「営業利益±その他の収益・費用+本社費(※)」で算定しています。調整後営業利益の金額・内容は「4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容d.経営方針・経営戦略・経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況について」をご参照ください。
(※)本社費:管理部門等で発生する全社的な管理費用等