有価証券報告書-第26期(2022/10/01-2023/09/30)

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2023/12/27 17:00
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【項目】
161項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針・経営戦略
①社是・経営理念
当社グループは、「未晃道(みこうどう)」を社是とし、「事業を通じ、物心両面の幸福を追求すると同時に、かけがえのない地球環境の維持にも貢献します」を経営理念に掲げており、未来の地球を照らし、輝き続ける事業を創造する"道"を常に追求するという思いが込められております。
②ビジョン
社是・経営理念のもと当社グループでは、社会インフラサービス企業として公共性の高い事業を展開することで、社会に必要とされ続ける「300年企業」の創造を目指しております。
③経営戦略
300年企業に向けて、当社の事業成長と社会の持続的な成長を同時に実現すべく、2030年に会社の目指す姿を示した「JESG Vision 2030」とそれを実現するための道筋として、2025年9月期を最終年度とした「中期経営計画2023-2025」を推進しております。
JESG Vision 2030
公共インフラの維持・管理・DX化の事業領域で、サービスプラットフォームを構築するため、以下の施策を推進してまいります。
a 群戦略の推進
当社グループは、グループ内に共存する複数の事業を、顧客のニーズに合わせて自在に組み合わせ、事業セグメントの壁を超えたサービスを提供することにより、同業他社との競争優位性を確保していると考えております。複数事業により可能となる複数サービスの同時提供体制を拡充するために、組織間連携の推進を強化してまいります。
b ワンストップ・ソリューションの提供
公共インフラのサービスプラットフォーム市場において、新規事業開発、企画・提案といった上流工程から、プロジェクト組成・管理、実行に至るまでの工程をすべて当社グループで行う「ワンストップ・ソリューション」を提供する体制を構築することで、上流工程の提案型営業の強化、高収益案件の受注拡大、他社との差別化を図ってまいります。
c エンジニアエコシステムの形成
事業セグメント間で共通する技術を活かした人材育成により、エンジニアを事業セグメント間で機動的かつ柔軟な配置転換を可能とするエコシステムを形成してまいります。これにより、事業間クロスセルの創出のみならず、生産性向上、労働力不足の解消、雇用の拡大を目指します。
中期経営計画2023-2025
a 各事業分野のポジショニングと方向性の明確化
各事業分野を、積極的に成長投資を実施し事業拡大を狙う「注力分野」、効率化を進め収益性を高める「深化分野」、長期的な成長を目指し、研究開発や新事業開拓を行う「長期成長分野」にポジショニングを行い、各分野の特性に応じて適切に経営資源を配分してまいります。
b M&Aの積極的な検討
当社は、専門性の高い技術者の獲得、事業ポートフォリオの強化・拡大を戦略上重要な目的と位置づけ、積極的にM&Aを実行してまいりました。自社と他社との技術・雇用・営業ネットワーク等の経営資源を複層的に組み合わせることを目的としたM&A戦略投資により、新たな付加価値・優位性を持つサービスを創出し、事業成長を続けてまいります。
M&A戦略
当社グループの具体的なM&A戦略といたしましては、2023年9月期から2025年9月期までの3年間におけるM&A戦略投資枠として30~50億円を設定しており、既存事業のエンジニアリングとの相性が良くシナジーが見込める事業とのM&A又は戦略的提携を積極的に検討してまいります。具体的には、専門性の高いエンジニアを有する企業、既存事業のエンジニアリング力が活用可能でシナジーが見込める事業をターゲットとしております。
当社グループの基盤事業は、高速道路や公営競技を対象としており、公共性が高いことから、受託企業には実績に基づく信頼性が要求され、参入障壁が高い点に特徴があります。したがいまして、そのような既存事業のバリューチェーン上にある関連事業をM&A等によってグループ化することにより、競争優位性が高まり、顧客に対しワンストップでサービスを提供することが可能となります。また、当社グループの既存事業の強化のためには、専門性の高い人材の確保及びエンジニアの技術力の強化が必要不可欠であり、技術者の採用・教育の観点からも、M&A戦略が今後の当社グループの事業拡大における最も重要な成長ドライバーの1つとなるものと捉えております。
また、当社グループ全体の業績目標として、事業の成長性を示す売上高CAGR6~7%以上の達成を目指し、2030年には連結売上高目標を138億円以上といたしました。これは、オーガニック成長による成長率2~3%/年をベースに、M&Aによる非連続的な成長等を加味して売上高CAGR6~7%としているものです。
当社グループのこれまでのM&A投資実績につきましては、以下のとおりです。
年月対象事業・部門
2009年6月㈱東海錦組交通インフラ事業
2011年11月オスカー電子㈱交通インフラ事業、公共サービス事業
2016年1月サテライト一宮㈱公共サービス事業
2017年3月日本ベンダーネット㈱、中央警備保障㈱公共サービス事業
2018年5月モデライズ㈱その他
2020年3月㈱ワンズライフ交通インフラ事業
2020年5月㈱セイネン環境事業
2020年10月㈲ぼくんちオジカオート交通インフラ事業
2022年2月㈱日新ブリッジエンジニアリング交通インフラ事業
2022年11月オー・ティー・エス技術サービス㈱公共サービス事業
2023年1月葵電気工業㈱公共サービス事業
2023年4月村川設備工業㈱、㈱zoom公共サービス事業
2023年7月㈱興電社交通インフラ事業
2023年9月㈱テッククリエイト交通インフラ事業

(2) 経営環境
公害、廃棄物、資源の枯渇等の環境問題は地域を越え、国境を越え地球規模になり、益々深刻化している状況であります。そのため、有限な資源の循環利用の促進や、廃棄物の発生の抑制及び環境の保全は、今や世界的な課題となっております。また、わが国では、社会インフラの長寿命化の要請、生産年齢人口の減少等による労働力の不足化傾向、現場の職人の高齢化、後継者不在問題を背景とした休廃業・解散企業件数の増加、地方における過疎化の進展など、国民生活やあらゆる社会経済活動を支える基盤の脆弱化が予想されております。持続的な社会の発展のためには、このような社会的課題を解決することが絶対的な必須事項であります。
当社グループでは、公共サービス事業では、公営競技を通じたコミュニティの形成や、空調衛生設備工事の施工管理を通じて、生活者の快適性・利便性の維持を図っております。環境事業では、排水浄化処理及び再生可能エネルギーへの取組みを通じて自然環境の維持・保護を図っております。交通インフラ事業では、人員不足に悩む自治体及び公共事業体の負荷を軽減すべく、民間委託を積極的に受け入れることで、社会インフラの長寿命化に貢献しております。
(公共サービス事業)
中期経営計画において深化分野として取り組んでいる公営競技の運営事業は、今後も国、自治体及び公共事業体の公益事業等の財源となる公営競技が存続する限り、継続的に需要は存在します。近年来場者数は減少している一方、ネット投票は拡大しており、トータリゼータシステムの機器製造販売ビジネスから、デジタルコンテンツを主としたサービス展開に力を入れてまいります。当社が運営するネット投票サイト「LotoPlace」と情報サイトを融合し、車券販売だけでなくユーザーへの有益情報をWEBコンテンツとして配信し、高品質で多様なサービスを展開することで収益性を高めてまいります。また、情報サイトでは基本情報に加え、AI予想情報や予想屋による動画配信などにより幅広い年齢層へ訴求し、情報サイトを活用することで競輪場やサテライト場の広告媒体としての収益化も図ります。
さらに、同事業では、既存事業に加え、システムメーカーとしての強みを活かすべく、成長性が見込まれる業務系システム開発の領域への参入も視野に入れております。元来、公営競技の発展と情報システムは密接に結びついており、最初は管理業務に用いられていたコンピュータが全国の公営競技場と電算センターを結ぶオンラインシステムへと整備され、場外の発売や電話投票、そして現在におけるインターネット投票へと発展しております。情報システムの整備は投票券の多様化を支えるのみならず、人手不足の課題を抱える建設業の現場においても、作業員の生産性向上を目指す業務アプリケーションの開発という面で高いシナジーが期待できると見込んでおります。
同計画において注力分野として強化している空調衛生設備工事などのファシリティ事業については、公共投資・民間設備投資は堅調な推移を続けております。成長戦略であるM&Aを積極的に活用して事業規模の拡大やエンジニアの増員を図るとともに、PMIの推進により、人事交流を通じたグループ内の連携強化・ノウハウ共有を推進するとともに、当社のシステム・DXを推進することで生産性向上・原価管理の強化・管理業務の集約による効率化を図ってまいります。さらに、社員の定着率・エンゲージメントの向上を図るため、働き方改革に向けた業務の改善についてもグループ一体となって注力してまいります。
(環境事業)
循環型社会の実現に向け、化石燃料によるエネルギーからの転換を支援するため、顧客に向けてカーボンニュートラルやCO2削減につながる再生可能エネルギーの導入を促進しております。2021年に経済産業省より「グリーン成長戦略」が発表されて以降、再生可能エネルギーに対するニーズが増えております。さらに、昨今のエネルギーコストの急騰により、相対的に再生可能エネルギーの競争力が上がり、CO2の排出を伴う電気を購入するよりもCO2を排出しない電気を自社で作る方がコストとして安価という状況が発生しております。海外由来の化石燃料の輸入に依存している状態から国産の再生可能エネルギー活用へ転換できるチャンスであり、中期経営計画では産業用太陽光発電設備の施工・販売を注力分野に定め、リソースを確保して体制を整えております。
同じく中期経営計画の成長分野であるアクアリウム(水族館)等の設計・施工・販売も推進してまいります。ユニット水槽の製造販売から企画運営を含めた包括業務へ業容を拡大し、エンターテイメント性の高い水族館や教育の現場として提供される水族館など、ニーズに合った意匠・機能を提供いたします。また、排水処理事業で培った水浄化のノウハウと合わせることにより、新たな水循環システムの開発を目指します。
(交通インフラ事業)
当社グループにおける競争優位性である「広域エリアの対応」と「他工種にわたる対応」をベースに、中期経営計画では、注力分野としてエンジニアリングサービスの拡大と、深化分野としてメンテナンスサービスの高収益化を掲げております。
エンジニアリング分野では、当社の祖業である、省エネ効果のある照明器具の販売事業を系譜に引くLED道路照明灯工事をはじめとして、高速道路のトンネル内設備や道路標示板、ETC設備保守の電気通信系業務や橋梁点検・点検補助等、高い専門性と豊富な経験に裏付けられた技術力に強みがございます。メンテナンス分野では、道路の補修工事、雪氷対策、事故・災害復旧工事、道路施設清掃、植栽管理、交通規制等、幅広い業務に対応できる点に強みがございます。
さらなる業務拡大を通じて、安定的な事業成長を可能とするためには、高速道路運営事業者の管轄エリア開拓を目的とした事業拠点の拡大、従業員の技術や経験・知識の増加・強化が必要だと考えております。そのため、成長戦略であるM&Aで拠点増設・事業エリアの拡大と工種増加・技術者増員を図るとともに、人材戦略である「エンジニアエコシステム」で社員の多能工化・柔軟な配置を促進し、技術者としての力量向上と複数業務に対応できる汎用性の高い人材の育成を目指しております。
(その他事業)
公共サービス事業・環境事業・交通インフラ事業における情報と、AI(人工知能)やICT等の最新技術を組み合わせることで、業務系基幹システムやアプリの開発(iOS、Android)、ベイジアンネットワークを活用した行動予測モデルの構築と運用サービスを提供しております。その他事業では、AIで競輪の着順を予想するAIソリューションサービス「LotoPlace」を開発しております。この他に、不動産売買・賃貸等不動産等に関わる事業を行っております。
なお、2023年1月には、グループ全体の研究開発・事業開発機能を一元化した組織として、「JESG事業開発研究室」を設置いたしました。最先端の酸化還元技術を使った研究開発等を行っております「ジオ環境開発研究所」を母体として、これまで事業部ごとに行っていた研究開発や事業開発機能を統合し、事業開発に特化した組織として再編いたしました。事業開発研究室では、環境事業だけでなく、公共サービスや交通インフラ事業に関わる研究も手掛け、新たな中核事業の創出を目指して最先端技術の研究開発に取り組んでまいります。また、それぞれの事業で埋もれていた技術や知識を活用し、それらをクロスセルで販売していくことも目指します。特許に対しても積極的に取得を進め、知的財産の活用によって競争優位性を高めていきたいと考えております。
また、当社グループは、「未晃道(みこうどう)」を社是とし、「事業を通じ、物心両面の幸福を追求すると同時に、かけがえのない地球環境の維持にも貢献します」を経営理念に掲げており、未来の地球を照らし、輝き続ける事業を創造する“道”を常に追求するという思いが込められております。
社是・経営理念のもと当社グループでは社会の課題を解決し必要とされ続ける300年企業の創造を目指しており、事業を通して地域に根差した企業として、環境に最大限配慮した事業活動を行っております。

(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、社会に貢献し必要とされ続ける会社の実現に向け、お客様への徹底的な「御用聞き」の姿勢に徹するとともに、オーガニック成長とM&Aの両面に注力し、事業の成長性を示す売上高CAGR 6~7%以上の達成を目指すため、以下の課題に取り組んでまいります。
① 時代に即した商品・サービスの拡充
社会が求めるサービスを提供する「300年企業」になるためには、その時代の関心・ニーズに応える商品やサービスをいち早く開発することが必要と考えております。当社は成長戦略であるM&Aを積極的に実施し、グループシナジーを生み出すため群戦略の推進による複数サービスの同時提供、グループ間のリレーション・ネットワークを生かしたサービス提供範囲の拡大、JESG事業開発研究室を中心とした事業開発体制の強化等に努めてまいります。
② M&Aによるシナジー効果の促進とグループ経営の効率化
M&Aによる事業規模の拡大や人材の拡充により、各グループ会社とのシナジー効果を促進して新たなサービスや事業の拡充を図ってまいります。また、当社グループの組織横断的な取り組みや人事交流を通じてグループ内の連携を強化し、ノウハウを共有するとともに、原価管理の強化や管理業務の集約による効率化に加え、働き方改革に向けた業務環境の改善についてもグループ全体で注力してまいります。
③ 機動的かつ柔軟な人材の確保・配置及び人材育成
中期経営計画の達成に向けては、全職種において人材の確保が不可欠であると考えております。そのためにも、グループでの一括採用の実施やM&Aによる専門性の高いエンジニアの獲得を行ってまいります。並行して、当社グループの人材プラットフォーム「エンジニアエコシステム」の構築により、社員の多能工化・柔軟な配置を促進させ、技術者としての経験・実績づくりを充実させる職場環境を整備するとともに、複数事業間を横断できる汎用性の高いスキルを保有する人材の育成を推進してまいります。
④ 海外展開の強化
当社グループが、中長期的な視野からさらなる成長を図るには海外市場、現地特許庁で特許登録を受けた海外各国での事業展開の強化が重要であると考えております。そのために今後は営業体制の強化、事業開発体制の強化を推進していく方針であります。
⑤ SDGsの達成による社会への貢献
社会インフラの老朽化への対応、温室効果ガス排出量の削減、水・空気・土壌の保全に事業を通じて取り組むことは、安心・安全・快適な暮らしを支える上で不可欠であると考えております。環境事業の収益安定化、働き方改革やダイバーシティの推進による従業員エンゲージメントの向上により、事業強化と安定的な運営を行ってまいります。
(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、事業活動の成果を示す売上高、営業利益、営業利益率及び事業の成長性を示す売上高CAGRを重要な経営指標と位置付け、企業経営に取り組んでおります。また、財務的視点では自己資本比率も重要な指標ととらえております。