有価証券報告書-第17期(2025/04/01-2026/03/31)
有報資料
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは、優れた特性を持つダイヤモンドの広い応用によって、様々な分野でのイノベーションの創出を進め、地球規模での環境維持や各種の社会問題の解決を通じ、世界への貢献を目指しています。
当社グループで活動する従業員が、健康で充実した日々を送れるよう、様々な施策を講じています。また、株主や顧客、取引先などのあらゆるステークホルダーへの責任を果たすことを、経営方針としています。
(2) 経営環境等
当社グループの事業は、基本的には人工合成のダイヤモンドを販売する材料ビジネスですが、ほとんどがダイヤモンドの新しい応用を目指す分野に向けられています。天然のダイヤモンドは形状や組成が広い応用に適さないことから、人工合成のダイヤモンドを使った開発が進められています。また、伝統的な分野である宝石についても、人工合成ダイヤモンドへの転換が進んできており、米国では既に50%を超えるシェアになっているとの報道もあります。これに伴って多数の企業が設立され、活発な市場環境となっています。
しかし、2024年3月期後半から、小型宝石を中心に価格低下が急激に起こり、製造会社の採算が悪化しました。このために2025年3月期においてイスラエル、米国、インド、欧州等で関連企業の倒産や製造の停止が起こり、当社の種結晶事業にも大きな影響を与えました。特に、当社の主要ユーザーの中には、小型宝石の生産を主体とする企業があり、その倒産などによる受注の減少が、売上の減少につながりました。
一方、工具用素材としての利用も既存市場と言えます。その市場規模は安定的ではありますが、種結晶や基板及びウエハの市場と比較して市場規模が小さく、当社が幅広く参入する環境ではありません。一方で、ダイヤモンドデバイスの開発は近年急速に活発化しています。これはパワーデバイスとしてEVやHEVの電力制御等の用途へ適用できる可能性が高くなっており、量子センサーとして弱磁場計測が可能となる等の開発が進んでいます。この用途は、競合する他の材料よりダイヤモンドの方が理論的には優れた特性を持っており、優位に立てるという可能性があるからです。このためダイヤモンド素材市場は、次第に拡大してきましたが、デバイスの製品化には至っておらず、近い将来に形成されると考えられます。デバイスの製作には、既存のデバイス製作プロセスを使用することが必須であり、このためには最小でも2インチウエハ(直径50mmの円盤状)を開発する必要があります。その他にも様々な基板やウエハ、さらには基板やウエハの表面に薄い半導体動作層を形成したエピタキシャルウエハ等が商品として要求されています。2インチウエハなどのインパクトのある製品が実用化できれば、当社としては大きな展開が可能となると考え、開発に注力しております。
現在製品を供給している分野について、市場環境を以下に示します。
①ダイヤモンドデバイスウエハ及び基板の市場
ダイヤモンドデバイスの開発は、国家レベルの支援が広がっていること等で、この数年に活発化してきました。現在検討されている主なデバイスとしては、以下のようなものが挙げられます。
1⦆大電力を制御するパワーデバイス
2⦆高周波の大電力デバイス
3⦆耐放射線デバイス
4⦆量子コンピューター
5⦆量子センサー(主として弱磁場のセンサー)
これらのデバイスの開発の一部は実用に供するレベルの性能が確認され、量産への移行も視野に入っています。さらに、その開発を各国政府が支援するプログラムも、日米欧豪の各国で進められており、ベンチャー企業の設立支援も行われております。ベンチャー企業は各社ごとに開発製品の対象を持っており、そのために要求されるウエハ、基板及びエピタキシャルウエハは多岐に渡っております。
大電力制御のパワーデバイスの有力の応用は、EVやHEVの電力制御ユニットへの適用であります。既に自動車メーカー及び部品メーカーがこの分野の開発に着手しておりますが、自動車への適用には非常に長期に渡る信頼性確認試験が必須であり、必ずしも早期に実用化するとは言えません。当社はこの開発を手掛ける株式会社本田技術研究所(以下、「本田技術研究所」)と、共同研究を進めるべく、その基本合意書を2026年3月19日締結し、同年8月の共同研究契約の締結を進めるべく、テーマの設定などについて協議を行っています。自動車に搭載するデバイスは、要求される価格が非常に厳しいことから、従前から使われているデバイス製造プロセスを利用することは必須の条件であります。このためには最小でも2インチ(直径50mm)ウエハを実用化することが必要であり、要求されるコストを実現するには4インチ(直径100mm)以上のウエハを開発する必要があります。
当社は各デバイス開発機関が、それぞれのデバイスを製造するプロセスを確立するために、必要なウエハを供給できる時期について、ロードマップを示しております。このロードマップは、最初に2024年11月に開示し、その中で1インチウエハから4インチウエハの開発時期を示しました。1インチウエハにつきましてはほぼ計画通りに製品化できましたが、2インチウエハの開発は計画より約半年遅れております。2026年5月27日に、2インチウエハ用のモザイク結晶の開発に成功したことを公表しましたが、2インチウエハについては現在製品化を進めており、2027年3月期下期に実現できると計画しております。
耐放射線デバイスは、規模の小さい応用であり、2インチウエハが製品化できれば生産が可能と考えられますので、比較的早い時期に実用化できると想定されます。
量子センサーは、弱磁場検出用として、バッテリーの寿命検知や、心磁場計測等の医療分野への応用が期待されています。この場合にも製造コストが大きな課題となると考えており、2インチ以上のウエハを開発することは必須と考えられます。しかしこの用途では、窒素(N)と空格子(V)のペアになった欠陥(N-Vセンターと呼ぶ)を制御することが必要で、上記の各応用のような単純なダイヤモンド単結晶ウエハでは、対応できない可能性もあり、今後必要な特性を把握して開発を行う所存です。
この市場においては、当社の持っている30x30mmの単結晶が最大であり、不純物含有量や欠陥密度などの特性面においても、当社製品は優位にあります。競合する材料としては、金属などダイヤモンド以外の単結晶材料を基板として成長させたダイヤモンドを使う案が出ています。これはヘテロエピタキシャルと呼ばれる手法で、最大4インチウエハも製造できることを複数の企業が公表しています。しかしこの結晶は、一種の多結晶であり、デバイスの製作には問題があるというのが、開発機関の共通の見方です。今後結晶性能が改善される可能性は否定できませんが、現時点においては、単結晶を基本とする当社のウエハ製作方針には、一定の優位性があるものと考えております。
②人工ダイヤモンド宝石製造用の種結晶市場
a.人工宝石の製造と市場
人工ダイヤモンド宝石は超高圧合成法と気相合成法によって製作されるダイヤモンド宝石です。ダイヤモンドとしては、天然に比べ不純物が少なく純粋で、無色だけでなくピンク、ブルー、グリーン等の色がついたものも販売されております。「Fortune Business InsightのLab Grown Diamonds Global Market Report 2026によれば、ダイヤモンド宝石市場でラボグローンダイヤモンドは34%以上の市場を獲得しており、今後10年間、年13%のペースで市場拡大が進むと予測されています。
一方、生産量の拡大によって価格低下も進行しております、同一のグレードなら天然の20%以下の価格で販売されているところもあります。欧米においては、天然ダイヤモンドの採掘による自然破壊や、以前から指摘されている鉱山における児童労働等の問題があるため、人工ダイヤモンドのSDGsにおける優位点を意識する消費者が増加しております。これに対応して、宝飾店においても人工宝石を積極的に販売するところが増加しております。
人工合成のダイヤモンドを製造する方法は、超高圧法と気相合成法があります。気相合成法で作る人工ダイヤモンド宝石は、超高圧法で製造される宝石に比べ、高品質で大型のものを作ることが可能です。このため、新規に人工宝石に参入する企業の多くは、気相合成法で製造しております。特にインドにおいては、毎年多くの新規企業が設立され、既存企業の生産能力も大幅な拡大を続けております。
b.種結晶に要求される形状
この気相合成法で製作している宝石は、製作するに際して種結晶が必要とされます。通常は0.2mmないし0.3mm厚の薄い単結晶を種結晶として使用し、3~10mmの厚さに成長し、これをカット、研磨して宝石に仕上げます。
気相合成法では、結晶の成長は厚さ方向のみ成長しますが、面積方向の成長がほとんどありません。このため、成長によって種結晶の形状からの面積的な拡大が無く、宝石としての形状は上部から見た形状と厚さの関係が一定であるため、種結晶形状が宝石の大きさ(カラット数)を決定します。例えば、ブリリアントカットの場合では、直径と厚さの関係は約0.6です。このように、種結晶のサイズが、最終的に宝石となるダイヤモンドの大きさを決めるため、大きな宝石の製造を目指すには、大きな種結晶が必要となります。
最近の人工宝石市場では、大型宝石の出荷が活発となっています。天然ではほとんど市場で見られない5カラット以上の宝石を目指す動きもあり、当社は大型種結晶のニーズがあると見込んでおります。当社は5x5mm~15x15mmの広い範囲の形状を持つ種結晶を製作できますが、当連結会計年度において12x12mm以上の大型種結晶の販売数が大幅に増加しています。
現在では成長装置を1,000台以上も保有する人工宝石製造会社が複数あり、これらの会社が必要とする月当たりの一つのサイズの種結晶は1,000個を超える場合もあります。このような大量の種結晶を、品質の揃ったものとするためには、生産技術の安定が必要で、当社は既にこの能力を具備しております。
当社は2026年5月13日に、16x16mm~20x20mmの大型種結晶の販売を決断し、公表いたしました。次項にも記載しましたが、インドでは大型の種結晶を用いて、一つの原石から複数の形状の異なる宝石を切り出す製造方法が普及し、種結晶の大型化が要求されてきました。このような状況に鑑み、当社はこれまで出荷していなかった大型種結晶の販売に踏み切りました。これによって新たなユーザーの獲得が可能となると考えております。
c.種結晶ビジネスの競合
当社は種結晶を独自技術により製造し人工宝石製造会社等に販売しておりますが、当社の販売先である人工宝石製造会社の一部が、成長した結晶を薄く切断して、その表面を研磨することで、自社で種結晶を製作しております。その場合には、当社と競合することになります。この手法の製造コストは、現時点では当社より高いと判断しております。また、金属等の基板上に成長した疑似単結晶を、種結晶として製造している企業もありますが、種結晶としての性能は当社種結晶より劣ることが判明しております。
インドの人工宝石製造会社は、大型の種結晶から大型の原石を製作し、そこから大小織り交ぜて複数個の宝石を切り出す技術を持っております。このことによって、小型の宝石を大型の種結晶から作る技術が実現できており、小型種結晶の需要が減少したと考えられます。また、このような技術を保有しない企業は、採算性の悪化から事業を停止することも起こったと考えられます。宝石の結晶としての品質は、後述するような半導体デバイスに要求される結晶品質に比べると、一般的には悪いものでも使用できます。宝石としての見映えは重要で、カラーやクラリティーは宝石鑑定の重要項目ですが、これらと結晶品質が必ずしも直接結びついているわけではありません。そのため、当社の種結晶より品質が劣るとされている疑似単結晶の種結晶を利用する企業もたくさんあります。
d.宝石及び宝飾品
人工宝石市場については、前述のとおり既に一定の市場が形成されており、多数の企業が参入しております。一方で、市場規模は相応に大きく、また、日本国内においては海外市場と比較して普及の余地があるものと考えております。そのため、当社が当該市場に取り組むことは、当社が製造するダイヤモンドの特長を活かした新たな事業機会の創出につながる可能性があるものと認識しております。
当社は大型単結晶を製作できることから、大型の宝石を製作できます。また、薄く大型な原石を製作することで、これまでなかったようなデザインの宝石を開発することも可能です。さらに、既に商品化しておりますように、ブルーやピンクのカラーダイヤも販売可能です。多様な宝石を製作できることから、これらを組み合わせて新しいデザインの宝飾品を検討することも可能です。
このように、当社には独自の宝石や宝飾品を市場に出せる環境ができており、日本でダイヤモンドを生産しているという他にはない特徴を持っています。これを最大限に利用して、Japan Made Diamondとして販売することを進めています。この販売方法は、日本ブランドが有効な東アジア圏でも有力な販売手段となると考えられ、ブランド化を進める所存です。一方で、宝石の製造コストは、インドや中国企業に比べて高くなることは避けられないと考えられますので、デザインのみならず、販売方法も戦略的に進める必要があると考えられます。
③光学部品及びヒートシンク
ダイヤモンドの持っている高熱伝導率や、光やX線を透過する特性を利用し、デバイスの除熱や、各種計測器、放射光施設等の部品などに利用されております。
5Gシステムに代表される先端通信分野や、データーセンターで用いられるパワーデバイス等では、高発熱のデバイスが使用されることから、熱を除去して安定的なデバイスの動作を実現する材料としてダイヤモンドの利用検討が進んでおります。また、高出力レーザーや自動車で使用するパワーデバイスの実装において、ダイヤモンドの高熱伝導率を利用する試みも、広く行われています。
ダイヤモンドを光学部品として利用し、大エネルギー密度光の透過窓として利用したり、検査機器で使用するX線源のX線を透過する窓としての利用が開始されております。また、放射光施設の窓材や計測機器に、適用することも検討が進んでいます。
これまでの市場は、散発的なアイデアで開発される部品の供給が多かったのですが、X線用窓が量産に移行した等の新しい動きがあります。当社は現在開発が進んでいるヒートシンクとしての利用について、実現性が高く、将来の大型市場を形成できることを期待しています。
④工具素材
ダイヤモンド単結晶を利用する切削、耐摩耗工具は、加工する相手材料が限定され、特殊な加工に限られております。また、工具素材の全市場では、ほとんどが超高圧合成単結晶を使用しております。超高圧合成単結晶のサイズが限定されていることから、当社の大型結晶への要求があります。なお、工具素材については、積極的に販売拡大を行わない方針であります。
(3) 目標とする経営指標
当社グループは先端技術を使っている製造業であり、製造設備への投資を継続的に行っていく必要があります。このために、高い利益率を維持し、確固たる資金調達手段を保持することが重要と考えられます。このような観点から、主な経営指標として、以下の経営指標を重視しております。
①売上高成長率
②経常利益率
③ROE
④自己資本比率
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、2027年3月期を始期とする以下の3ヶ年の中期経営計画を策定(2026年5月27日に公表)し、その最終年度である2029年3月期に、以下の数値の達成を目標としております。第2の創業と位置づけ、当社グループ企業あげて取り組んでまいります。
<中期経営計画>(当社及びSFD India Private Limited、SFD Antwerp BVの連結ベース)
(単位:百万円)
当社グループのビジネス分野は半導体デバイス開発に必要な素材であるウエハ・基板等(ダイヤモンドデバイス)及びラボグローンダイヤモンド関連の種結晶・ルースの2つで構成されております。中期経営計画の達成に向けての、当社グループ共通の課題、それぞれの事業分野ごとの課題は以下のとおりです。
①ダイヤモンドデバイス分野の活動に係る課題
ダイヤモンドの持つ優れた半導体特性を利用する、パワーデバイスや量子デバイス等に応用するための開発は世界各地で進められており、各国政府もこの開発に資金支援を行っております。この数年の開発によって、ダイヤモンドデバイスの実用性の可能性が高まり、生産を目指したベンチャー企業等も設立されてきました。しかし、本格的な量産にはまだ数年以上が必要と見られ、ウエハ等の市場形成はこれから進むと見られます。
半導体デバイスの量産のために既存の半導体プロセス技術を使うことは、コスト低減に重要な意味があり、その中では円盤状のウエハを使うことが必須です。その最低の大きさは2インチウエハ(直径50mm)であり、この実用化が早まれば、量産技術の開発が進み、デバイス実用化が早まるとみられます。
当社グループは、単結晶の大型化を進め、最終的に4インチウエハの実用化を目指すロードマップを2024年11月に開示し、これに沿った開発を遂行しております。30x30mmの世界最大級の単結晶を2025年2月に実用化し、これから1インチ(直径25mm)ウエハを2025年4月に製品化しました。
2インチウエハを製作するために、25x25mm以上の単結晶4個を横方向に接合したモザイク結晶で50x50mm以上のサイズのモザイク結晶を作り、そこから直径50mmの円盤を切断すれば2インチウエハとなります。この2インチウエハを2025年末までに完成させることを目標とし、開発を行ってまいりましたが、目標時期での開発は完了しませんでした。このような大面積のモザイク結晶では、接合部分に想定以上の応力が発生することが分かりました。
2インチモザイクウエハ開発は今後も継続して進めるとともに、次の目標である4インチウエハに向けた開発を開始しております。50x50mm単結晶の開発は2028年3月の完成を目標としており、これを使った4インチモザイクウエハ開発が目標となります。しかし、4インチウエハの開発については、先に示したロードマップ以外にも到達できる手法が考えられますので、今後は複数の手段を検討して、なるべく早く4インチウエハの実用化を目指してまいります。
さらに、自動車などの大電力を使用するパワー制御ユニットでは、縦型構造のデバイスが必要とされており、導電性を持つウエハ開発が強く要求されております。当社は既に2024年8月に、高濃度のボロン(B)を含有する低抵抗基板を商品化し、このデバイス開発を行っている機関からの受注に応えてきました。このダイヤモンドの製法は、通常のダイヤモンド結晶とは異なり、当社グループの基本技術であるイオン注入による分離技術が利用できず、異なった製作手順で作製しておりますので、大型ウエハの製造には新たな製造方法の開発を行う必要があり、この課題に取り組んでおります。
半導体応用のダイヤモンドウエハは、単にサイズだけを拡大すれば使用できるということではなく、ダイヤモンドの結晶品質や表面の粗さ等の改善すべき課題があります。当社グループはそれらの課題にも取り組むために、研磨技術や形状計測等の技術開発にも着手しております。また、これらの製品は、販売直後から量産に向けて低価格化が強く要求されます。このような価格動向を事前に想定して、コスト削減を進めることも重要な開発要素です。最終的にはこれらの技術を集約し、実用的に利用できるダイヤモンドウエハの規格を確立することが、普及への道筋と考えております。
2026年3月19日付で、当社は本田技術研究所とダイヤモンドウエハ等の共同研究を行うための意向確認書を締結しました。本田技術研究所は本田技研工業株式会社が製造する自動車に係る技術開発を担っており、ダイヤモンドパワーデバイスをEVやHEV等で利用することを目標とした開発を進めております。当社が材料の開発を担当し、この実用化に協力することで、開発期間の短縮や開発費用の削減を進める計画です。当社グループにとっても、実用におけるダイヤモンドへの課題を明確にできることで、開発のスピードを上げることが期待できます。
当社グループは、他のダイヤモンドデバイス開発を進める各企業や研究機関とも密接にコミュニケーションを取っており、ユーザーの要求仕様を正確に把握し、開発計画に反映してまいりますが、それらも含めた現時点でのダイヤモンドデバイスの実用化に向けた当社グループとしての重要な課題を以下に列挙いたします。
ⅰ.2インチ~4インチへの大型モザイク結晶の作製技術開発とコスト削減
ⅱ.目標とするデバイス性能へ対応できるレベルへのダイヤモンド結晶品質の向上
ⅲ.低抵抗ダイヤモンドの2インチ、4インチウエハの開発
ⅳ.高純度ダイヤモンド結晶の実用化(量子デバイス対応)
ⅴ.エピタキシャル基板(薄いドーピングダイヤモンド等を成長した基板)の用途ごとの要求に対応する多様化への対応
ⅵ.提携する各社とのコミュニケーションによる市場へのタイムリーな製品の投入
これらの各種の取り組みには、多額の研究開発投資が必要となります。資金調達を多様化するとともに、国レベルの支援を受ける等の対応により、必要な設備投資を行ってまいります。さらには、人的なリソースの拡充も重要であり、継続的な募集を行って、多数の人材を確保してまいります。
②ラボグローンダイヤモンド関連ビジネスに係る課題
ラボグローンダイヤモンドの本格的な宝石ビジネスは10数年前に始まりましたが、市場アナリストの情報として、現在ではダイヤモンド宝石市場における流通量の20%以上にも達しているとの推定もあります。米国では50%を超えたとの情報も出ており、いよいよラボグローンダイヤモンドが本格的に天然ダイヤモンドに置き換わる方向に進んでおります。ビジネス規模は依然として急速に拡大しており、当社グループは2024年11月に公表した基本方針で、種結晶に偏重していたそれまでの取り組みを改め、宝石の販売などこの分野全体へのアクセスを行うことといたしました。
この方針の皮切りとして、2024年1月に宝石の製造販売を担う子会社エス・エフ・ディー株式会社(以下、「SFD」)を設立し、宝石販売を行うことを決断いたしました。このビジネスを実施するためのグループとしての構造について、当社が原石を生産し、SFD India Private Limited(以下、「SFD India」)で加工し、SFDが国内及び東アジアで販売し、SFD Antwerp BV(以下、「SFD Antwerp」)が欧米市場で販売する、との構想で各社を設立しました。SFD Indiaは当社が製造する種結晶を、インド国内で販売する役割も持つ計画でした。
しかしながらこれらの活動については、2つ問題が生じました。その1つはSFD Indiaが種結晶や原石を当社から購入するための輸入ライセンスの取得に長期間を要したことです。2026年2月に輸入ライセンスの取得を完了しておりますが、同地で在庫販売するための日本からの輸出許可が取得できておりませんので、まだインドでの種結晶の在庫販売を行うための体制が整っておりません。2つ目は、SFD Antwerpが開始したEC(Electronic Commerce:電子商取引)が、SFDからのルースの供給が十分ではなかったこともあって、売上が想定を大きく下回ったことです。
これら2つのビジネスについての今後の課題を以下に示します。
種結晶は、2023年3月期までは主力製品として当社の発展に貢献してきましたが、その第4四半期から製品価格が大幅に低下したことによって需要が減少し、小型種結晶の販売は困難な状況を余儀なくされました。ラボグローンダイヤモンド製造企業の自家用に製作する種結晶が増加したこと及びラボグローンダイヤモンド生産手法が変化し、大型の種結晶を用いた原石から複数の宝石を切り出すCAD-CAM技術も確立しました。これにより、小型種結晶から大型種結晶への需要シフトが生じ、小型種結晶の販売が減少いたしました。当社グループは、このような状況の変化に対する情報収集能力不足により対応が遅れました。
一方、宝石や宝飾品の販売については、当社グループとしては初めてのビジネスであり、販売体制の構築を進めてまいりましたが、まだその製造及び販売の体制は不十分な状況です。Japan Made Diamondのコンセプトは、日本の宝石店などに支持されておりますが、それをどのように販売することで大きなブランドに育てることができるかは、まだ明確になっていない状況です。また、販売方法の独自性をどのように発揮できるかについても、重要な課題と考えておりますが、以下の課題認識の下、適切に対応してまいります。
ⅰ.大型種結晶の要求に対応すべくこれまで販売してきた15x15mm以上の大型種結晶の販売を開始し、種結晶売上を回復する。
ⅱ.種結晶の安定的な販売のために、インドでのユーザー数を拡大し、長期的な受注を獲得する。
ⅲ.宝石の国内販売体制を確立し、Japan Made Diamondのブランド化を進める。
ⅳ.ルース及び装飾品のデザイン、製作ができる体制を整える。
ⅴ.ECの販売体制を構築する(SNSの利用等)。
宝石や宝飾品の販売につきましては、豊富な経験を有する外部人材の確保を積極的に進める必要があり、また、海外においても販売を可能とする組織作り、人材確保が課題と考えております。
③当社グループの共通の課題
当社が東京証券取引所グロース市場へ上場して4年程度経過し、上場企業としての各業務フローは安定的な運用期に入っております。内部統制報告制度(J-SOX)への対応をはじめ、上場企業に求められる管理体制の構築は概ね完了したものと認識しております。これからさらに成長して行くためには、ガバナンスの強化だけでなく、経営企画、開発体制、人材確保等に関して、以下の課題があると考えております。
ⅰ.他社との連携
先に公表した本田技術研究所との共同研究契約締結に向けての合意等、今後当社グループはダイヤモンドデバイスに関する各種の開発を、関連企業や大学、公立研究機関とともに技術開発を行い、それらの成果によって実用的な製品として市場に出すことを考えております。ダイヤモンドのデバイスとしての応用は多岐に渡ると考えられており、要求される素材の形態、特性等は様々になると考えられます。このように多種類のダイヤモンド素材の開発が可能となれば、当社グループがこの分野での主導的な地位を維持することができると考えられます。
しかし、連携当事者間において競合関係が生じるケースが大半であることから、当社グループとしては、各社の機密情報が相互に漏洩することのないよう、情報管理体制の徹底に最大限注力をしております。また、開発項目の重複も、知的財産権を出願する場合に問題を起こす可能性があります。一方で、連携先からの了承を得て、開発内容を学会発表などで発信することは、この分野の研究開発の活性化に貢献できると考えられます。
これから活発化する他社や他機関との連携において、問題のない契約を締結し、普段からコミュニケーションを欠かさず、当社グループの意思を正確に伝える等の努力を行ってまいります。
ⅱ.技術開発
当社グループの大型単結晶技術は多くの技術内容で世界的に優位な地位にあり、今後もこの地位を維持することが重要であると認識しております。製品そのものだけでなく、製造技術や評価技術等の幅広い分野での研究開発活動が必要です。当社グループのビジネス分野であるラボグローンダイヤモンド関連産業においては、インドを中心に装置技術の発達や変化が常に発生しており、これらの情報を確実に入手し、対応策を講じることが重要です。上記のように、2027年3月期からは他社や他機関との連携がデバイス関連素材の分野では重要な意味を持ってまいります。これらの連携から得られる情報を利用することで、他社に先駆けた製品開発を行えると考えております。
また、当社グループの新しい技術開発内容を積極的に外部に発信することで、不特定多数の技術者などとの交流を活発化させ、新しいアイデアを創出することも重要と考えております。
ⅲ.連結子会社の管理
当社グループは、ラボグローンダイヤモンド分野の事業活動のために、国内外に連結子会社を設立してまいりましたが、国内子会社であるSFDは、2026年3月31日に当社と吸収合併いたしました。残る海外2社につきましても、今後どのような活動が可能であるか検討しております。海外の連結子会社は、その国ごとの事情を理解できていなかったこともあり、想定していなかった困難な状況にも見舞われました。
当社グループはこのような状況の反省に立ち、ガバナンス強化を図りながら連結子会社の活動方針を検討してまいります。
ⅳ.人材の確保
当社グループは、技術開発において世界の最先端を行く企業として、多様な技術開発人材の確保が必要な状況にあります。また、販売についてもこれまでにない製品分野への対応が必要となっております。これらの専門性を持った人材の確保は喫緊の課題です。
これまで主として人材紹介会社を経由して人材を採用してまいりましたが、専門性の高い人材の確保が困難な状況は、今後も継続するものと考えております。今後は、当社ウェブサイトでの情報発信をこれまで以上に積極的に行うとともに、新卒者の採用を行って人材を育てることにも注力したいと考えております。
ⅴ.経営陣の高齢化と後継者の育成
当社グループの部長以上の経営陣は、60歳以上の比率が高く、将来の後継者の育成と併せて、年齢構成を検討する必要があると認識しております。次世代を担う若手人材の中間管理職への登用を積極的に進めるとともに、将来の経営を担うリーダー層の育成に向けた教育機会の提供を継続してまいります。
前連結会計年度には役員の平均年齢を下げることができましたが、将来の当社グループを担う経営体制を構築するという意味では、まだ不十分と考えております。今後は、経営企画を担当する人材の採用などによって、将来の経営層を育成する必要があると考えております。
ⅵ.輸出管理
経済安全保障の観点から、2022年12月に輸出貿易管理令の一部を改正する政令が施行され、ダイヤモンドの基板等が、新たな規制対象品目に入りました。また、2025年5月にも輸出貿易管理令の改正があり、規制品であるダイヤモンドの輸出に際しては、より厳格な許可基準が適用されております。当社グループといたしましても、法令遵守を最優先に、当局の動向を注視しつつ適切な輸出管理体制を維持してまいります。
当社グループは、2022年12月から2023年4月にかけてのダイヤモンド基板等の輸出について、経済産業省より2024年5月21日に「厳正な輸出管理の徹底について(厳重注意)」を受領しました。この事態を厳粛に受け止め、同法令を遵守する立場から社内体制を整備し、関連規程等の制定を行って、再発防止に努めてまいりました。
しかしながら、ダイヤモンドデバイスが経済安全保障上の極めて重要な課題となっており、当社グループとしては従前以上に輸出について厳密な判断が求められる状況です。当局との連絡を密にし、法令順守に万全を期して輸出業務を行ってまいります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは、優れた特性を持つダイヤモンドの広い応用によって、様々な分野でのイノベーションの創出を進め、地球規模での環境維持や各種の社会問題の解決を通じ、世界への貢献を目指しています。
当社グループで活動する従業員が、健康で充実した日々を送れるよう、様々な施策を講じています。また、株主や顧客、取引先などのあらゆるステークホルダーへの責任を果たすことを、経営方針としています。
(2) 経営環境等
当社グループの事業は、基本的には人工合成のダイヤモンドを販売する材料ビジネスですが、ほとんどがダイヤモンドの新しい応用を目指す分野に向けられています。天然のダイヤモンドは形状や組成が広い応用に適さないことから、人工合成のダイヤモンドを使った開発が進められています。また、伝統的な分野である宝石についても、人工合成ダイヤモンドへの転換が進んできており、米国では既に50%を超えるシェアになっているとの報道もあります。これに伴って多数の企業が設立され、活発な市場環境となっています。
しかし、2024年3月期後半から、小型宝石を中心に価格低下が急激に起こり、製造会社の採算が悪化しました。このために2025年3月期においてイスラエル、米国、インド、欧州等で関連企業の倒産や製造の停止が起こり、当社の種結晶事業にも大きな影響を与えました。特に、当社の主要ユーザーの中には、小型宝石の生産を主体とする企業があり、その倒産などによる受注の減少が、売上の減少につながりました。
一方、工具用素材としての利用も既存市場と言えます。その市場規模は安定的ではありますが、種結晶や基板及びウエハの市場と比較して市場規模が小さく、当社が幅広く参入する環境ではありません。一方で、ダイヤモンドデバイスの開発は近年急速に活発化しています。これはパワーデバイスとしてEVやHEVの電力制御等の用途へ適用できる可能性が高くなっており、量子センサーとして弱磁場計測が可能となる等の開発が進んでいます。この用途は、競合する他の材料よりダイヤモンドの方が理論的には優れた特性を持っており、優位に立てるという可能性があるからです。このためダイヤモンド素材市場は、次第に拡大してきましたが、デバイスの製品化には至っておらず、近い将来に形成されると考えられます。デバイスの製作には、既存のデバイス製作プロセスを使用することが必須であり、このためには最小でも2インチウエハ(直径50mmの円盤状)を開発する必要があります。その他にも様々な基板やウエハ、さらには基板やウエハの表面に薄い半導体動作層を形成したエピタキシャルウエハ等が商品として要求されています。2インチウエハなどのインパクトのある製品が実用化できれば、当社としては大きな展開が可能となると考え、開発に注力しております。
現在製品を供給している分野について、市場環境を以下に示します。
①ダイヤモンドデバイスウエハ及び基板の市場
ダイヤモンドデバイスの開発は、国家レベルの支援が広がっていること等で、この数年に活発化してきました。現在検討されている主なデバイスとしては、以下のようなものが挙げられます。
1⦆大電力を制御するパワーデバイス
2⦆高周波の大電力デバイス
3⦆耐放射線デバイス
4⦆量子コンピューター
5⦆量子センサー(主として弱磁場のセンサー)
これらのデバイスの開発の一部は実用に供するレベルの性能が確認され、量産への移行も視野に入っています。さらに、その開発を各国政府が支援するプログラムも、日米欧豪の各国で進められており、ベンチャー企業の設立支援も行われております。ベンチャー企業は各社ごとに開発製品の対象を持っており、そのために要求されるウエハ、基板及びエピタキシャルウエハは多岐に渡っております。
大電力制御のパワーデバイスの有力の応用は、EVやHEVの電力制御ユニットへの適用であります。既に自動車メーカー及び部品メーカーがこの分野の開発に着手しておりますが、自動車への適用には非常に長期に渡る信頼性確認試験が必須であり、必ずしも早期に実用化するとは言えません。当社はこの開発を手掛ける株式会社本田技術研究所(以下、「本田技術研究所」)と、共同研究を進めるべく、その基本合意書を2026年3月19日締結し、同年8月の共同研究契約の締結を進めるべく、テーマの設定などについて協議を行っています。自動車に搭載するデバイスは、要求される価格が非常に厳しいことから、従前から使われているデバイス製造プロセスを利用することは必須の条件であります。このためには最小でも2インチ(直径50mm)ウエハを実用化することが必要であり、要求されるコストを実現するには4インチ(直径100mm)以上のウエハを開発する必要があります。
当社は各デバイス開発機関が、それぞれのデバイスを製造するプロセスを確立するために、必要なウエハを供給できる時期について、ロードマップを示しております。このロードマップは、最初に2024年11月に開示し、その中で1インチウエハから4インチウエハの開発時期を示しました。1インチウエハにつきましてはほぼ計画通りに製品化できましたが、2インチウエハの開発は計画より約半年遅れております。2026年5月27日に、2インチウエハ用のモザイク結晶の開発に成功したことを公表しましたが、2インチウエハについては現在製品化を進めており、2027年3月期下期に実現できると計画しております。
耐放射線デバイスは、規模の小さい応用であり、2インチウエハが製品化できれば生産が可能と考えられますので、比較的早い時期に実用化できると想定されます。
量子センサーは、弱磁場検出用として、バッテリーの寿命検知や、心磁場計測等の医療分野への応用が期待されています。この場合にも製造コストが大きな課題となると考えており、2インチ以上のウエハを開発することは必須と考えられます。しかしこの用途では、窒素(N)と空格子(V)のペアになった欠陥(N-Vセンターと呼ぶ)を制御することが必要で、上記の各応用のような単純なダイヤモンド単結晶ウエハでは、対応できない可能性もあり、今後必要な特性を把握して開発を行う所存です。
この市場においては、当社の持っている30x30mmの単結晶が最大であり、不純物含有量や欠陥密度などの特性面においても、当社製品は優位にあります。競合する材料としては、金属などダイヤモンド以外の単結晶材料を基板として成長させたダイヤモンドを使う案が出ています。これはヘテロエピタキシャルと呼ばれる手法で、最大4インチウエハも製造できることを複数の企業が公表しています。しかしこの結晶は、一種の多結晶であり、デバイスの製作には問題があるというのが、開発機関の共通の見方です。今後結晶性能が改善される可能性は否定できませんが、現時点においては、単結晶を基本とする当社のウエハ製作方針には、一定の優位性があるものと考えております。
②人工ダイヤモンド宝石製造用の種結晶市場
a.人工宝石の製造と市場
人工ダイヤモンド宝石は超高圧合成法と気相合成法によって製作されるダイヤモンド宝石です。ダイヤモンドとしては、天然に比べ不純物が少なく純粋で、無色だけでなくピンク、ブルー、グリーン等の色がついたものも販売されております。「Fortune Business InsightのLab Grown Diamonds Global Market Report 2026によれば、ダイヤモンド宝石市場でラボグローンダイヤモンドは34%以上の市場を獲得しており、今後10年間、年13%のペースで市場拡大が進むと予測されています。
一方、生産量の拡大によって価格低下も進行しております、同一のグレードなら天然の20%以下の価格で販売されているところもあります。欧米においては、天然ダイヤモンドの採掘による自然破壊や、以前から指摘されている鉱山における児童労働等の問題があるため、人工ダイヤモンドのSDGsにおける優位点を意識する消費者が増加しております。これに対応して、宝飾店においても人工宝石を積極的に販売するところが増加しております。
人工合成のダイヤモンドを製造する方法は、超高圧法と気相合成法があります。気相合成法で作る人工ダイヤモンド宝石は、超高圧法で製造される宝石に比べ、高品質で大型のものを作ることが可能です。このため、新規に人工宝石に参入する企業の多くは、気相合成法で製造しております。特にインドにおいては、毎年多くの新規企業が設立され、既存企業の生産能力も大幅な拡大を続けております。
b.種結晶に要求される形状
この気相合成法で製作している宝石は、製作するに際して種結晶が必要とされます。通常は0.2mmないし0.3mm厚の薄い単結晶を種結晶として使用し、3~10mmの厚さに成長し、これをカット、研磨して宝石に仕上げます。
気相合成法では、結晶の成長は厚さ方向のみ成長しますが、面積方向の成長がほとんどありません。このため、成長によって種結晶の形状からの面積的な拡大が無く、宝石としての形状は上部から見た形状と厚さの関係が一定であるため、種結晶形状が宝石の大きさ(カラット数)を決定します。例えば、ブリリアントカットの場合では、直径と厚さの関係は約0.6です。このように、種結晶のサイズが、最終的に宝石となるダイヤモンドの大きさを決めるため、大きな宝石の製造を目指すには、大きな種結晶が必要となります。
最近の人工宝石市場では、大型宝石の出荷が活発となっています。天然ではほとんど市場で見られない5カラット以上の宝石を目指す動きもあり、当社は大型種結晶のニーズがあると見込んでおります。当社は5x5mm~15x15mmの広い範囲の形状を持つ種結晶を製作できますが、当連結会計年度において12x12mm以上の大型種結晶の販売数が大幅に増加しています。
現在では成長装置を1,000台以上も保有する人工宝石製造会社が複数あり、これらの会社が必要とする月当たりの一つのサイズの種結晶は1,000個を超える場合もあります。このような大量の種結晶を、品質の揃ったものとするためには、生産技術の安定が必要で、当社は既にこの能力を具備しております。
当社は2026年5月13日に、16x16mm~20x20mmの大型種結晶の販売を決断し、公表いたしました。次項にも記載しましたが、インドでは大型の種結晶を用いて、一つの原石から複数の形状の異なる宝石を切り出す製造方法が普及し、種結晶の大型化が要求されてきました。このような状況に鑑み、当社はこれまで出荷していなかった大型種結晶の販売に踏み切りました。これによって新たなユーザーの獲得が可能となると考えております。
c.種結晶ビジネスの競合
当社は種結晶を独自技術により製造し人工宝石製造会社等に販売しておりますが、当社の販売先である人工宝石製造会社の一部が、成長した結晶を薄く切断して、その表面を研磨することで、自社で種結晶を製作しております。その場合には、当社と競合することになります。この手法の製造コストは、現時点では当社より高いと判断しております。また、金属等の基板上に成長した疑似単結晶を、種結晶として製造している企業もありますが、種結晶としての性能は当社種結晶より劣ることが判明しております。
インドの人工宝石製造会社は、大型の種結晶から大型の原石を製作し、そこから大小織り交ぜて複数個の宝石を切り出す技術を持っております。このことによって、小型の宝石を大型の種結晶から作る技術が実現できており、小型種結晶の需要が減少したと考えられます。また、このような技術を保有しない企業は、採算性の悪化から事業を停止することも起こったと考えられます。宝石の結晶としての品質は、後述するような半導体デバイスに要求される結晶品質に比べると、一般的には悪いものでも使用できます。宝石としての見映えは重要で、カラーやクラリティーは宝石鑑定の重要項目ですが、これらと結晶品質が必ずしも直接結びついているわけではありません。そのため、当社の種結晶より品質が劣るとされている疑似単結晶の種結晶を利用する企業もたくさんあります。
d.宝石及び宝飾品
人工宝石市場については、前述のとおり既に一定の市場が形成されており、多数の企業が参入しております。一方で、市場規模は相応に大きく、また、日本国内においては海外市場と比較して普及の余地があるものと考えております。そのため、当社が当該市場に取り組むことは、当社が製造するダイヤモンドの特長を活かした新たな事業機会の創出につながる可能性があるものと認識しております。
当社は大型単結晶を製作できることから、大型の宝石を製作できます。また、薄く大型な原石を製作することで、これまでなかったようなデザインの宝石を開発することも可能です。さらに、既に商品化しておりますように、ブルーやピンクのカラーダイヤも販売可能です。多様な宝石を製作できることから、これらを組み合わせて新しいデザインの宝飾品を検討することも可能です。
このように、当社には独自の宝石や宝飾品を市場に出せる環境ができており、日本でダイヤモンドを生産しているという他にはない特徴を持っています。これを最大限に利用して、Japan Made Diamondとして販売することを進めています。この販売方法は、日本ブランドが有効な東アジア圏でも有力な販売手段となると考えられ、ブランド化を進める所存です。一方で、宝石の製造コストは、インドや中国企業に比べて高くなることは避けられないと考えられますので、デザインのみならず、販売方法も戦略的に進める必要があると考えられます。
③光学部品及びヒートシンク
ダイヤモンドの持っている高熱伝導率や、光やX線を透過する特性を利用し、デバイスの除熱や、各種計測器、放射光施設等の部品などに利用されております。
5Gシステムに代表される先端通信分野や、データーセンターで用いられるパワーデバイス等では、高発熱のデバイスが使用されることから、熱を除去して安定的なデバイスの動作を実現する材料としてダイヤモンドの利用検討が進んでおります。また、高出力レーザーや自動車で使用するパワーデバイスの実装において、ダイヤモンドの高熱伝導率を利用する試みも、広く行われています。
ダイヤモンドを光学部品として利用し、大エネルギー密度光の透過窓として利用したり、検査機器で使用するX線源のX線を透過する窓としての利用が開始されております。また、放射光施設の窓材や計測機器に、適用することも検討が進んでいます。
これまでの市場は、散発的なアイデアで開発される部品の供給が多かったのですが、X線用窓が量産に移行した等の新しい動きがあります。当社は現在開発が進んでいるヒートシンクとしての利用について、実現性が高く、将来の大型市場を形成できることを期待しています。
④工具素材
ダイヤモンド単結晶を利用する切削、耐摩耗工具は、加工する相手材料が限定され、特殊な加工に限られております。また、工具素材の全市場では、ほとんどが超高圧合成単結晶を使用しております。超高圧合成単結晶のサイズが限定されていることから、当社の大型結晶への要求があります。なお、工具素材については、積極的に販売拡大を行わない方針であります。
(3) 目標とする経営指標
当社グループは先端技術を使っている製造業であり、製造設備への投資を継続的に行っていく必要があります。このために、高い利益率を維持し、確固たる資金調達手段を保持することが重要と考えられます。このような観点から、主な経営指標として、以下の経営指標を重視しております。
①売上高成長率
②経常利益率
③ROE
④自己資本比率
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、2027年3月期を始期とする以下の3ヶ年の中期経営計画を策定(2026年5月27日に公表)し、その最終年度である2029年3月期に、以下の数値の達成を目標としております。第2の創業と位置づけ、当社グループ企業あげて取り組んでまいります。
<中期経営計画>(当社及びSFD India Private Limited、SFD Antwerp BVの連結ベース)
(単位:百万円)
| 2027年3月期 | 2028年3月期 | 2029年3月期 | |
| 売上高 | 1,100 | 1,530 | 2,080 |
| 営業利益又は営業損失(△) | △283 | △5 | 195 |
| 経常利益又は経常損失(△) | △189 | 39 | 189 |
| 親会社株主に帰属する当期純利益又は当期純損失(△) | △195 | 4 | 132 |
| 1株当たり当期純利益又は当期純損失(△)(円) | △10.36 | 0.21 | 7.01 |
当社グループのビジネス分野は半導体デバイス開発に必要な素材であるウエハ・基板等(ダイヤモンドデバイス)及びラボグローンダイヤモンド関連の種結晶・ルースの2つで構成されております。中期経営計画の達成に向けての、当社グループ共通の課題、それぞれの事業分野ごとの課題は以下のとおりです。
①ダイヤモンドデバイス分野の活動に係る課題
ダイヤモンドの持つ優れた半導体特性を利用する、パワーデバイスや量子デバイス等に応用するための開発は世界各地で進められており、各国政府もこの開発に資金支援を行っております。この数年の開発によって、ダイヤモンドデバイスの実用性の可能性が高まり、生産を目指したベンチャー企業等も設立されてきました。しかし、本格的な量産にはまだ数年以上が必要と見られ、ウエハ等の市場形成はこれから進むと見られます。
半導体デバイスの量産のために既存の半導体プロセス技術を使うことは、コスト低減に重要な意味があり、その中では円盤状のウエハを使うことが必須です。その最低の大きさは2インチウエハ(直径50mm)であり、この実用化が早まれば、量産技術の開発が進み、デバイス実用化が早まるとみられます。
当社グループは、単結晶の大型化を進め、最終的に4インチウエハの実用化を目指すロードマップを2024年11月に開示し、これに沿った開発を遂行しております。30x30mmの世界最大級の単結晶を2025年2月に実用化し、これから1インチ(直径25mm)ウエハを2025年4月に製品化しました。
2インチウエハを製作するために、25x25mm以上の単結晶4個を横方向に接合したモザイク結晶で50x50mm以上のサイズのモザイク結晶を作り、そこから直径50mmの円盤を切断すれば2インチウエハとなります。この2インチウエハを2025年末までに完成させることを目標とし、開発を行ってまいりましたが、目標時期での開発は完了しませんでした。このような大面積のモザイク結晶では、接合部分に想定以上の応力が発生することが分かりました。
2インチモザイクウエハ開発は今後も継続して進めるとともに、次の目標である4インチウエハに向けた開発を開始しております。50x50mm単結晶の開発は2028年3月の完成を目標としており、これを使った4インチモザイクウエハ開発が目標となります。しかし、4インチウエハの開発については、先に示したロードマップ以外にも到達できる手法が考えられますので、今後は複数の手段を検討して、なるべく早く4インチウエハの実用化を目指してまいります。
さらに、自動車などの大電力を使用するパワー制御ユニットでは、縦型構造のデバイスが必要とされており、導電性を持つウエハ開発が強く要求されております。当社は既に2024年8月に、高濃度のボロン(B)を含有する低抵抗基板を商品化し、このデバイス開発を行っている機関からの受注に応えてきました。このダイヤモンドの製法は、通常のダイヤモンド結晶とは異なり、当社グループの基本技術であるイオン注入による分離技術が利用できず、異なった製作手順で作製しておりますので、大型ウエハの製造には新たな製造方法の開発を行う必要があり、この課題に取り組んでおります。
半導体応用のダイヤモンドウエハは、単にサイズだけを拡大すれば使用できるということではなく、ダイヤモンドの結晶品質や表面の粗さ等の改善すべき課題があります。当社グループはそれらの課題にも取り組むために、研磨技術や形状計測等の技術開発にも着手しております。また、これらの製品は、販売直後から量産に向けて低価格化が強く要求されます。このような価格動向を事前に想定して、コスト削減を進めることも重要な開発要素です。最終的にはこれらの技術を集約し、実用的に利用できるダイヤモンドウエハの規格を確立することが、普及への道筋と考えております。
2026年3月19日付で、当社は本田技術研究所とダイヤモンドウエハ等の共同研究を行うための意向確認書を締結しました。本田技術研究所は本田技研工業株式会社が製造する自動車に係る技術開発を担っており、ダイヤモンドパワーデバイスをEVやHEV等で利用することを目標とした開発を進めております。当社が材料の開発を担当し、この実用化に協力することで、開発期間の短縮や開発費用の削減を進める計画です。当社グループにとっても、実用におけるダイヤモンドへの課題を明確にできることで、開発のスピードを上げることが期待できます。
当社グループは、他のダイヤモンドデバイス開発を進める各企業や研究機関とも密接にコミュニケーションを取っており、ユーザーの要求仕様を正確に把握し、開発計画に反映してまいりますが、それらも含めた現時点でのダイヤモンドデバイスの実用化に向けた当社グループとしての重要な課題を以下に列挙いたします。
ⅰ.2インチ~4インチへの大型モザイク結晶の作製技術開発とコスト削減
ⅱ.目標とするデバイス性能へ対応できるレベルへのダイヤモンド結晶品質の向上
ⅲ.低抵抗ダイヤモンドの2インチ、4インチウエハの開発
ⅳ.高純度ダイヤモンド結晶の実用化(量子デバイス対応)
ⅴ.エピタキシャル基板(薄いドーピングダイヤモンド等を成長した基板)の用途ごとの要求に対応する多様化への対応
ⅵ.提携する各社とのコミュニケーションによる市場へのタイムリーな製品の投入
これらの各種の取り組みには、多額の研究開発投資が必要となります。資金調達を多様化するとともに、国レベルの支援を受ける等の対応により、必要な設備投資を行ってまいります。さらには、人的なリソースの拡充も重要であり、継続的な募集を行って、多数の人材を確保してまいります。
②ラボグローンダイヤモンド関連ビジネスに係る課題
ラボグローンダイヤモンドの本格的な宝石ビジネスは10数年前に始まりましたが、市場アナリストの情報として、現在ではダイヤモンド宝石市場における流通量の20%以上にも達しているとの推定もあります。米国では50%を超えたとの情報も出ており、いよいよラボグローンダイヤモンドが本格的に天然ダイヤモンドに置き換わる方向に進んでおります。ビジネス規模は依然として急速に拡大しており、当社グループは2024年11月に公表した基本方針で、種結晶に偏重していたそれまでの取り組みを改め、宝石の販売などこの分野全体へのアクセスを行うことといたしました。
この方針の皮切りとして、2024年1月に宝石の製造販売を担う子会社エス・エフ・ディー株式会社(以下、「SFD」)を設立し、宝石販売を行うことを決断いたしました。このビジネスを実施するためのグループとしての構造について、当社が原石を生産し、SFD India Private Limited(以下、「SFD India」)で加工し、SFDが国内及び東アジアで販売し、SFD Antwerp BV(以下、「SFD Antwerp」)が欧米市場で販売する、との構想で各社を設立しました。SFD Indiaは当社が製造する種結晶を、インド国内で販売する役割も持つ計画でした。
しかしながらこれらの活動については、2つ問題が生じました。その1つはSFD Indiaが種結晶や原石を当社から購入するための輸入ライセンスの取得に長期間を要したことです。2026年2月に輸入ライセンスの取得を完了しておりますが、同地で在庫販売するための日本からの輸出許可が取得できておりませんので、まだインドでの種結晶の在庫販売を行うための体制が整っておりません。2つ目は、SFD Antwerpが開始したEC(Electronic Commerce:電子商取引)が、SFDからのルースの供給が十分ではなかったこともあって、売上が想定を大きく下回ったことです。
これら2つのビジネスについての今後の課題を以下に示します。
種結晶は、2023年3月期までは主力製品として当社の発展に貢献してきましたが、その第4四半期から製品価格が大幅に低下したことによって需要が減少し、小型種結晶の販売は困難な状況を余儀なくされました。ラボグローンダイヤモンド製造企業の自家用に製作する種結晶が増加したこと及びラボグローンダイヤモンド生産手法が変化し、大型の種結晶を用いた原石から複数の宝石を切り出すCAD-CAM技術も確立しました。これにより、小型種結晶から大型種結晶への需要シフトが生じ、小型種結晶の販売が減少いたしました。当社グループは、このような状況の変化に対する情報収集能力不足により対応が遅れました。
一方、宝石や宝飾品の販売については、当社グループとしては初めてのビジネスであり、販売体制の構築を進めてまいりましたが、まだその製造及び販売の体制は不十分な状況です。Japan Made Diamondのコンセプトは、日本の宝石店などに支持されておりますが、それをどのように販売することで大きなブランドに育てることができるかは、まだ明確になっていない状況です。また、販売方法の独自性をどのように発揮できるかについても、重要な課題と考えておりますが、以下の課題認識の下、適切に対応してまいります。
ⅰ.大型種結晶の要求に対応すべくこれまで販売してきた15x15mm以上の大型種結晶の販売を開始し、種結晶売上を回復する。
ⅱ.種結晶の安定的な販売のために、インドでのユーザー数を拡大し、長期的な受注を獲得する。
ⅲ.宝石の国内販売体制を確立し、Japan Made Diamondのブランド化を進める。
ⅳ.ルース及び装飾品のデザイン、製作ができる体制を整える。
ⅴ.ECの販売体制を構築する(SNSの利用等)。
宝石や宝飾品の販売につきましては、豊富な経験を有する外部人材の確保を積極的に進める必要があり、また、海外においても販売を可能とする組織作り、人材確保が課題と考えております。
③当社グループの共通の課題
当社が東京証券取引所グロース市場へ上場して4年程度経過し、上場企業としての各業務フローは安定的な運用期に入っております。内部統制報告制度(J-SOX)への対応をはじめ、上場企業に求められる管理体制の構築は概ね完了したものと認識しております。これからさらに成長して行くためには、ガバナンスの強化だけでなく、経営企画、開発体制、人材確保等に関して、以下の課題があると考えております。
ⅰ.他社との連携
先に公表した本田技術研究所との共同研究契約締結に向けての合意等、今後当社グループはダイヤモンドデバイスに関する各種の開発を、関連企業や大学、公立研究機関とともに技術開発を行い、それらの成果によって実用的な製品として市場に出すことを考えております。ダイヤモンドのデバイスとしての応用は多岐に渡ると考えられており、要求される素材の形態、特性等は様々になると考えられます。このように多種類のダイヤモンド素材の開発が可能となれば、当社グループがこの分野での主導的な地位を維持することができると考えられます。
しかし、連携当事者間において競合関係が生じるケースが大半であることから、当社グループとしては、各社の機密情報が相互に漏洩することのないよう、情報管理体制の徹底に最大限注力をしております。また、開発項目の重複も、知的財産権を出願する場合に問題を起こす可能性があります。一方で、連携先からの了承を得て、開発内容を学会発表などで発信することは、この分野の研究開発の活性化に貢献できると考えられます。
これから活発化する他社や他機関との連携において、問題のない契約を締結し、普段からコミュニケーションを欠かさず、当社グループの意思を正確に伝える等の努力を行ってまいります。
ⅱ.技術開発
当社グループの大型単結晶技術は多くの技術内容で世界的に優位な地位にあり、今後もこの地位を維持することが重要であると認識しております。製品そのものだけでなく、製造技術や評価技術等の幅広い分野での研究開発活動が必要です。当社グループのビジネス分野であるラボグローンダイヤモンド関連産業においては、インドを中心に装置技術の発達や変化が常に発生しており、これらの情報を確実に入手し、対応策を講じることが重要です。上記のように、2027年3月期からは他社や他機関との連携がデバイス関連素材の分野では重要な意味を持ってまいります。これらの連携から得られる情報を利用することで、他社に先駆けた製品開発を行えると考えております。
また、当社グループの新しい技術開発内容を積極的に外部に発信することで、不特定多数の技術者などとの交流を活発化させ、新しいアイデアを創出することも重要と考えております。
ⅲ.連結子会社の管理
当社グループは、ラボグローンダイヤモンド分野の事業活動のために、国内外に連結子会社を設立してまいりましたが、国内子会社であるSFDは、2026年3月31日に当社と吸収合併いたしました。残る海外2社につきましても、今後どのような活動が可能であるか検討しております。海外の連結子会社は、その国ごとの事情を理解できていなかったこともあり、想定していなかった困難な状況にも見舞われました。
当社グループはこのような状況の反省に立ち、ガバナンス強化を図りながら連結子会社の活動方針を検討してまいります。
ⅳ.人材の確保
当社グループは、技術開発において世界の最先端を行く企業として、多様な技術開発人材の確保が必要な状況にあります。また、販売についてもこれまでにない製品分野への対応が必要となっております。これらの専門性を持った人材の確保は喫緊の課題です。
これまで主として人材紹介会社を経由して人材を採用してまいりましたが、専門性の高い人材の確保が困難な状況は、今後も継続するものと考えております。今後は、当社ウェブサイトでの情報発信をこれまで以上に積極的に行うとともに、新卒者の採用を行って人材を育てることにも注力したいと考えております。
ⅴ.経営陣の高齢化と後継者の育成
当社グループの部長以上の経営陣は、60歳以上の比率が高く、将来の後継者の育成と併せて、年齢構成を検討する必要があると認識しております。次世代を担う若手人材の中間管理職への登用を積極的に進めるとともに、将来の経営を担うリーダー層の育成に向けた教育機会の提供を継続してまいります。
前連結会計年度には役員の平均年齢を下げることができましたが、将来の当社グループを担う経営体制を構築するという意味では、まだ不十分と考えております。今後は、経営企画を担当する人材の採用などによって、将来の経営層を育成する必要があると考えております。
ⅵ.輸出管理
経済安全保障の観点から、2022年12月に輸出貿易管理令の一部を改正する政令が施行され、ダイヤモンドの基板等が、新たな規制対象品目に入りました。また、2025年5月にも輸出貿易管理令の改正があり、規制品であるダイヤモンドの輸出に際しては、より厳格な許可基準が適用されております。当社グループといたしましても、法令遵守を最優先に、当局の動向を注視しつつ適切な輸出管理体制を維持してまいります。
当社グループは、2022年12月から2023年4月にかけてのダイヤモンド基板等の輸出について、経済産業省より2024年5月21日に「厳正な輸出管理の徹底について(厳重注意)」を受領しました。この事態を厳粛に受け止め、同法令を遵守する立場から社内体制を整備し、関連規程等の制定を行って、再発防止に努めてまいりました。
しかしながら、ダイヤモンドデバイスが経済安全保障上の極めて重要な課題となっており、当社グループとしては従前以上に輸出について厳密な判断が求められる状況です。当局との連絡を密にし、法令順守に万全を期して輸出業務を行ってまいります。