訂正有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2025/12/10 15:30
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170項目

有報資料

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは、「永遠に、エネルギーに困らない地球」というビジョンのもとに、「日本のエネルギー自給率の向上を実現する」というミッションを掲げております。
日本政府は、2050年までにカーボンニュートラルを達成する目標を掲げ、再生可能エネルギーの導入に取り組んでおります。一方、太陽光発電や風力発電等の出力が変動する再生可能エネルギーの大規模導入に伴い、余剰電力の発生や電力供給の安定性の確保が課題となっております。また、昨今、エネルギーを巡る問題は世界規模で不確実性が高まっている中で、再生可能エネルギーの主力電源化が鍵とされております。
当社グループでは、自然エネルギーの普及並びに蓄電、送電技術にイノベーションを起こし、脱炭素時代を担う次世代型のエネルギー企業を目指して社会に貢献してまいります。
(2) 経営環境・戦略
Bloombergが発表したデータによりますと、温室効果ガスの主要因である二酸化炭素の排出量は年々増加しており、1990年から2022年にかけて約1.7倍に増加しております。また、全国地球温暖化防止活動推進センターが発表したデータによりますと、日本の部門別の二酸化炭素排出量の主要因の約40%が電力の発電によるものとされております(発電及び熱発生に伴うエネルギー起源の二酸化炭素排出量を、電気及び熱の生産者側の排出として生産者側の部門に計上した排出量で算定)。

出典:(左)Bloomberg「Global total CO2 emissions」、(右)全国地球温暖化防止活動推進センター「日本の部門別二酸化炭素排出量(2023年度)」より当社作成
また、日本における2022年のエネルギー自給率はわずか12.6%(OECD中37位)にとどまり、先進諸国と比較しエネルギー資源の対外依存が高い状態が継続しております。

出典:国際エネルギー機関(2024年 9月) 「World Energy Balances Highlights」より作成。エネルギー自給率は、当該国の国内エネルギー生産量(PJ)÷国内総エネルギー供給量(PJ)で算出
このようなエネルギー情勢の中、日本政府は2025年2月に第7次エネルギー基本計画を閣議決定しております。当エネルギー基本計画では、2040年までに温室効果ガスの排出量を2013年度から73%削減することを目指すこととしており、また、エネルギーの安定供給の観点から再生可能エネルギーや原子力などエネルギー安全保障に寄与し、かつ脱炭素効果の高い電源を最大限活用することによりエネルギー自給率を向上させる必要がある旨が示されております。2040年には総発電量のうち再生可能エネルギーの割合を4~5割程度とし、最大の電源とするとの指針が示されており、その中でも太陽光発電と風力発電が再生可能エネルギー供給構成の大きな部分を占める見込みであります。

再生可能エネルギーの普及拡大に伴い、電力安定化に不可欠な調整力に対する需要は増加することが見込まれ、今後、原子力の出力が増加したとしても過剰供給による充電ニーズ、瞬時の放電(出力)ニーズに応えるための調整力需要は依然として必要です。これに伴い調整力を提供する蓄電池に対する需要がより一層高まることが想定されます。

当社グループの各事業を取り巻く経営環境は以下のとおりであります。
(BESS事業)
再生可能エネルギーの調達促進、有効活用のニーズ増加に加えて、エネルギー安全保障の観点から、再生可能エネルギーを蓄えることができる蓄電池の導入加速等が要因で、市場規模の拡大が見込まれております。当社試算における定置用蓄電池の導入ポテンシャルは、2040年までに累計291~337GWh(累計約10.1兆円)(注)と見込んでおります。この2040年において必要と推定される蓄電池容量は、国内の原子力発電所すべての出力を上回る見込みであり、蓄電池から供給される電力が重要な供給源となることからその制御に関するサイバーセキュリティが重要となっております。日本の国家安全保障の観点からも、BESSのセキュリティ強化、堅牢な国内制御が重要となります。


(注1)経済産業省及び資源エネルギー庁を含む、様々な公表資料に基づき試算。2040年の数値は第7次エネルギー基本計画に基づく日本政府のエネルギーミックス予測値及び2040年の総発電量の日本政府の予測値を使用して推定。2050年の数値は、総発電量と2050年の洋上風力発電の発電量目標に関する日本政府の予測に基づいて推定されており、その他の再生可能エネルギー発電量の数値については、独自の仮定を適用。特に2050年の数値を計算する際には、2021年の再生可能エネルギー量と2040年の日本政府の目標を比較して算出した成長率を適用。2050年の再エネ以外の電源について、原発発電については現在建設済み・建設中の原発を超えた発電能力の増加は想定せず、水素・アンモニア発電の比率については政府想定の10%を前提としている。棒グラフの陰影部分は老朽化した揚水式水力発電が耐用年数を迎えた時点ですべて電力需要の調整機能を持つ蓄電システムに置き換わると推定した場合に必要となる蓄電容量を示しているが、様々な要因により想定したとおりに代替が進まない可能性がある。また、2040年までの価格変動が生じないと仮定し、蓄電池システムの単価を30,000円/kWhとして算出した。
(注2)GWh値を日本におけるリチウムイオン電池の一般的な放電時間である4時間で除して算出
(注3)日本に現在設置されている原子力発電所の平均出力(2025年時点で1,003 MW)に基づいて算出(出所: 日本原子力安全機構)
(注4)既存の国内原子力発電所の総認可発電容量(2025年時点で33.08GW)に基づき算出 (出所: 日本原子力安全機構)
当社グループのBESS事業は、主に大型定置用蓄電システム「PowerX Mega Power」及び中型定置用蓄電システム「PowerX Cube」の販売及びメンテナンスを行っております。当社製品は、自社開発のプラットフォーム(Power OS)で監視や制御、セキュリティサポートを行っており、ユーザーが自ら蓄電池の状態監視・充放電制御を管理することができます。また、このプラットフォームはAIアプリケーションと連携しており、蓄電池で生成された充放電データをAIモデルに学習させることで、バッテリーや周辺機器の制御、及び蓄電池に蓄えた電力の充放電制御の最適化を図り、その精度を向上させることを通じて卸電力市場取引の自動化や、より適切なタイミングで電力売買を行うことによる収益性の向上を図ることができます。また、ビハインド・ザ・メーター(BTM)やフロント・オブ・ザ・メーター(FTM) (注)への参加といった多様な方法で収益獲得が可能であり、潜在顧客の導入へのインセンティブになると考えております。
蓄電池製品の販売後においては、自社専門チーム及び外部の協力会社による保守メンテナンスや技術サポートを提供するとともに、運用面のサポートについても顧客ニーズに対応した提案を行っております。「PowerX Mega Power」は最長20年間の容量保証が付帯するなど、蓄電池製品は長期間の使用を想定していることから、購入後のサポート体制が充実していることは、顧客の製品購入の意思決定において重要なポイントであるとともに、当社としてもストック型収益を獲得することができる重要な事業機会であると認識しております。
このような高い付加価値を持つ蓄電池製品を生み出すことで、来るべき蓄電池需要に対応した事業展開をしてまいります。
(注)電気メーターを基準に、蓄電池を需要者側に設置する(ビハインド・ザ・メーター)か、供給者側に設置する(フロント・オブ・ザ・メーター)かという概念を意味します。ビハインド・ザ・メーターで設置された蓄電池は、太陽光発電設備と合わせて設置することで、発生した電力を蓄電池に蓄えて需要者が自家消費する場合などに用いられます。一方で、フロント・オブ・ザ・メーターで設置された蓄電池は、周波数調整やピークカット、及び再生可能エネルギーの出力変動の平準化など、電力系統全体の安定化のために用いられます。
(EVCS事業)
日本国内における電気自動車(EV)の普及により、またはEVの普及を促進するために日本国内におけるEV充電器の需要は高まることが予想されます。
当社グループのEVCS事業は、自社で製造した蓄電池型急速EV充電システム「PowerX Hypercharger」をカーディーラーや企業へ販売するとともに、自社でも「PowerX Hypercharger」を複合商業ビルや空港、コンビニ、マンション等の集合住宅の駐車場車室に設置し、「PowerX Charge Station」を運営しております。
当社グループが独自開発している蓄電池内蔵の「PowerX Hypercharger」を使用することで、最大出力240kWhの短時間充電を可能とし、商業施設等の短時間の滞在を見込む場所での充電をサポートすることができます。急速充電ができることで、時間の制約により充分な充電を行うことができないといった課題を解決し、フル充電を行うことも可能です。また、当社グループでは、EV充電ネットワークを利用できるアプリを自社開発しており、いつでもどこでも事前予約でき、待ち時間なくスムーズな充電を可能としております。スマホアプリによる分かり易い操作で、予約から決済まで高いユーザビリティを付与しております。
また、「PowerX Charge Station」は2023年より東京都内を中心に設置を開始しており、今後も急速充電、再生可能エネルギーの利用、予約のしやすさといった付加価値をもって、全国各地へ展開してまいります。
(電力事業)
上述のとおり、安定的かつ安価に再生可能エネルギーの供給を受けたいという企業のニーズは今後ますます増加することが見込まれております。
当社グループの電力事業では、再生可能エネルギーのベース電源(風力、バイオマス発電等)と太陽光発電に蓄電池を組み合わせることで太陽光だけのPPAでは実現できない高い再生可能エネルギー電源率を実現し、安定的に顧客へ電力を供給していくことが可能です。高い再生可能エネルギー電源率を保持したまま安定的に、安価な再生可能エネルギーを供給するには蓄電池が不可欠であり、自社で製造販売した蓄電池製品を利用した再生可能エネルギーソリューションを提供してまいります。
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループは、持続的な成長性と企業価値の向上に関する状況を測定するため、売上高、受注残高、EBITDA、ROA、ROE、及び温室効果ガス(GHG)削減貢献量を重要な経営指標として位置付けております。
当該指標を重視する理由は下記のとおりであります。
売上高、受注残高は、事業規模・成長性の目安であり、当社製品の市場シェアの動向把握にも適した指標であるためです。
EBITDAは、多額の初期投資を必要とする当社グループにおいて、会計上の償却負担に過度に左右されることなく、企業価値の向上を目指すために適した指標であるためです。なお、EBITDAの計算式は、「EBITDA=営業利益+減価償却費」としております。
ROA、ROEは、当社グループの事業戦略において、他人資本を取り入れながら資産効率・投資効率を最適化することを表す指標として有用であるためです。
温室効果ガス(GHG)削減貢献量は、カーボンニュートラルの実現のため自然エネルギーの爆発的普及を目指す当社にとって、重要な指標であるためです。なお、温室効果ガス(GHG)削減貢献量の算出方法については「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (4) 指標及び目標」をご参照ください。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 事業の稼働状況
当社グループでは、2021年3月の創業以来、蓄電池製品出荷、EVユーザー向け充電サービス「PowerX Charge Station」の展開、電力事業開始、電気運搬船の開発に向けて各事業の垂直立上げを行ってまいりましたが、事業立上げに係るコストは各事業が本格稼働するまでは損失を計上させる、又は利益を低下させる可能性があります。また、事業が計画どおりに推移せず投資回収が十分にできない場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
その対応策として、市場動向を充分に観察・分析し、事業計画等を慎重に検討した上で実行の判断をするほか、事業の進捗状況のバランスを勘案しながら、許容できるリスクについて判断してまいります。なお、今後の具体的な対応策については以下のとおりです。
各事業の基礎となる製品製造については、蓄電池製品の需要拡大に対して安定供給が可能な体制を早期に整備してまいります。具体的には、岡山県玉野市のPower Base敷地内に第2工場を建設し大型定置用蓄電システム「PowerX Mega Power」の生産能力拡大を計画しており、完成後の生産能力は年間5,760台を予定しております(設備投資計画の詳細につきましては「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」をご参照ください)。
BESS事業については、人材採用を推進して営業人員を増加させることで営業体制をより強化するとともに、蓄電池製品導入に必要となるパワーコンディショナーメーカーや大手エネルギー会社との戦略的アライアンスを通じて受注の獲得に注力してまいります。また、販売した製品に対する保守・メンテナンスサービスの提供は、当社製品を安心して長期間ご利用いただくとともに、当社の安定的な収益の源泉としても重要であると認識しており、今後一層の強化を図ってまいります。
EVCS事業については、自動車会社等とのパートナーシップ契約に基づきカーディーラー等へのEV急速充電器販売を拡大していくとともに、EVユーザー向け充電サービス「PowerX Charge Station」の自社拠点についても首都圏から全国へ順次拡大してまいります。
電力事業については、再生可能エネルギーの電源確保を進めるとともに蓄電池製品販売とセットで電力販売契約を提案するなど、単なる電力供給にとどまらない再生可能エネルギーソリューションを提供してまいります。
② 人材の確保と育成の強化
当社グループの継続的な事業の成長と発展のために、優秀な人材の確保と育成は重要な課題の1つと認識しております。当社グループとしては積極的な採用活動を継続するとともに、社内教育の充実、適切な目標管理と人事評価を行い、優秀な人材の確保と活用に努めてまいります。
③ 財務上の課題
当社グループは、「① 事業の稼働状況」に記載のとおり各事業の垂直立上げを行っており、2023年12月期より蓄電池製品の販売を開始し、2024年12月期においては蓄電池製品の納品が進んでいるほか、電力事業についても顧客への電力供給を開始するなど事業展開は順調に推移しております。しかしながら、年間の固定費を回収するには至らず、2024年12月期まで4期連続して営業損失、経常損失、当期純損失(2023年12月期連結会計年度及び2024年12月期連結会計年度においては親会社株主に帰属する当期純損失)を計上しており、2025年12月期第3四半期連結累計期間においても営業損益以降の各段階損益がマイナスとなっております。
当該状況を受けて、当社グループでは、「受注獲得に向けた営業体制の強化」、「徹底したコストコントロールの推進による利益率の改善」などの対策を実施し、当該状況の改善、解消に努めております(対策の詳細につきましては「3 事業等のリスク (3) 財務リスク等について ④継続企業の前提に関する重要事象等」をご参照ください)。
なお、資金面については、主に「PowerX Mega Power」の納品による売上計上や、契約締結に伴う前受金の入金により、2025年12月期中間連結会計期間における営業活動によるキャッシュ・フローは1,879百万円の収入となっております。また、2025年12月期第3四半期連結累計期間において法人7社及び個人17名に対する第三者割当増資により1,653百万円の払込みを受けております。さらに、株式会社みずほ銀行をアレンジャーとするコミットメントライン契約(総貸付極度額4,000百万円)を2025年3月26日付で締結し、そのうち2025年12月期第3四半期連結会計期間末において計2,500百万円を実行して既存借入金のリファイナンス及び運転資金に充当しております。この結果、2025年12月期第3四半期連結会計期間末において3,358百万円の現金及び預金を保有しており、資金繰りに重要な懸念はないと判断しております。
今後につきましても上記施策を着実に実行し早期の黒字転換を図るとともに、資金調達についても適宜適切な調達方法により機動的な資金確保を図ってまいります。
④ 成長戦略の推進
当社グループは、中長期的な事業拡大と収益基盤の確立に向けて、「市場拡大」「製品拡充」「競争力強化」の三点を軸とした成長戦略を優先課題として推進してまいります。
市場拡大においては、大型蓄電所向けに加え、EV関連、船舶関連、周辺機器市場、さらには海外市場など、多様な成長領域の開拓を進めてまいります。また、中小型蓄電池や海外案件を含む新規市場の獲得に向けて、営業体制の強化やパートナー企業との協業を進め、市場アクセスの拡大を図ってまいります。
製品戦略としては、当社の蓄電技術・制御技術を活かし、大型定置用蓄電システムのみならず、小型製品、EV充電関連製品、船舶関連製品など、製品ラインナップの多様化を進めることで、顧客ニーズへの対応力を強化してまいります。
競争戦略としては、部材の大量調達等によるコスト低減を継続しつつ、蓄電システムとしての性能、安全性、ソフトウェアを含む制御技術により差別化を図り、「低コスト」と「高付加価値」の両立による競争優位の確保に取り組んでまいります。
これらの施策を通じ、BESS市場の拡大や案件規模の大型化に対応しつつ、2030年に向けて収益拡大フェーズへの移行を確実に進めてまいります。当成長戦略の着実な実行により、中長期的な企業価値の向上を図ってまいります。

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