訂正有価証券届出書(新規公開時)

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2025/10/08 15:30
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有報資料

本書提出日現在における経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。また、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
半導体生産における金型ともいうべきフォトマスクは、半導体メーカーの内作マスクショップ又は当社グループのようなフォトマスク生産を専業とする外販マスクベンダーによって供給されており、半導体市場全体の歴史的な離合集散の中、内作・外販から成る今日のフォトマスク市場は限られたプレイヤーによって形成されております。
当社グループは長年培ってきたフォトマスクに関する微細加工技術及び生産技術により、世界各国に生産体制を有する外販フォトマスクベンダーとして、半導体向け外販フォトマスク市場におけるシェア38.9%と世界トップ(出典:SEMI「2024 PHOTOMASK CHARACTERIZATION STUDY」)の地位を確立しており、今後も質と量、最先端とレガシーといった全方位的な需要に対応していくことで、外販フォトマスクベンダーとしての現在の地位を堅持するとともに、市場の発展に寄与していく方針です。
具体的には、最先端領域では積極的な設備投資や人的投資、半導体メーカーや設備・材料ベンダーとの戦略的提携により、EUVフォトマスクをはじめとした新興技術の開発に注力してまいります。
また、レガシー領域に対しては計画的な装置の更新投資や、EOLとなった保守パーツの在庫確保、設備保守技術の内製対応、さらには第三者ベンダーとの代替保守パーツ共同開発など、様々な既存設備延命施策を実施するとともに、生産技術・生産管理の向上により、コスト競争力と生産キャパシティの維持・強化を図ってまいります。
さらに、フォトマスクの製造技術を応用したナノインプリントモールド製品などの事業化を進めており、今後はMRグラス向けWaveguide※モールドやメタレンズ※といった周辺事業領域も開拓することにより、半導体向けフォトマスク以外のビジネスポートフォリオの多様化を図ってまいります。
(2) 経営環境
① 経営状況
半導体市場は歴史的に微細化の追求とともに成長してきましたが、近年ではEUVリソグラフィの実用化等の技術革新により微細化競争は更に激化しており、最先端半導体メーカーは一桁ナノメートル台あるいは1ナノメートルより更に微細な次世代半導体の開発を追求しております。現在これら最先端半導体に用いられるフォトマスクは、その殆どが各半導体メーカーの内作フォトマスクショップにより供給されておりますが、今後他の半導体メーカーがこれら最先端領域にキャッチアップする際、その多くが内作マスクショップを持たないことから、先端半導体向けフォトマスクの外注需要が高まることが予想されます。同時に、現在最先端半導体を生産する半導体メーカーも、更なる微細化に経営資源を集中する目的で、現在内作で対応しているフォトマスクを外注化することも予想されます。
併せて、今日ではエッジAIやIoTといった過去には存在しなかった半導体の用途が拡充されたことにより、先端光マスクの需要も顕著に増加しており、多くの半導体メーカーにおいてフォトマスクの外注需要が増加しております。一方で、これまでレガシー半導体向けフォトマスク生産に使用されてきた各種の生産設備がEOLを迎えており、設備更新にあたってはオーバースペックとなる最新設備を導入せざるを得ず、コスト競争力が業界全体での課題となっております。
加えて、米中摩擦を筆頭に安全保障などの観点から、半導体市場はデカップリングが進みつつあり、各国において自国の半導体産業を確立すべく様々な産業支援策がとられております。これにより従来、国際的な水平分業モデルとして一極集中的な供給体制を取ってきた半導体業界全体、各プレイヤーが、各国地域に分散した製造拠点を構築する方針に舵を切ると共に、各地において新たなファウンドリが勃興する事態に発展しつつあります。
② 市場動向
2025年の半導体市場規模は前年比11.2%増の7,009億ドルになると予測されております(出典:WSTS「2025年春季半導体市場予測について」)。その大部分を占めるのがロジック半導体とメモリ半導体となりますが、中でもロジック半導体はASIC※やASSP※といった特定用途向け半導体において、産業機器向けや車載向けなどの用途拡大と性能の向上により半導体市場全体の成長を牽引しており(図1)、半導体用フォトマスクの需要も拡大しております。
2024年における世界の半導体フォトマスク市場は約55.6億ドルとなりました(出典:SEMI「2024 PHOTOMASK CHARACTERIZATION STUDY」)。ハイエンド品、特にEUVマスクの需要がけん引したことで前年比2.3%の増となりました。2025年はEUVの量産適用が更に加速することが想定され、半導体フォトマスク市場は、58.5億ドル(前年比5.3%増)まで成長することが見込まれております。
フォトマスク市場においては、内作の市場占有度が2024年でも63%(出典:SEMI「2024 PHOTOMASK CHARACTERIZATION STUDY」)と高いものの、コロナ禍を経て幅広いノードで半導体不足が顕在した現在、先端ノードを採用するファウンドリが事業拡大を続けていることに加え、IoTや車載用途の普及により、レガシーノードのデバイス需要も旺盛になっており、外販マスク市場は着実に市場規模を拡大しております(図2)。現在、レガシーノードにおいては、業界全体として製造装置の老朽化が進んでいることから、今後、既存の製造能力に制約が生じる懸念も高まっております。
(図1) 用途別半導体市場

出典:世界半導体市場統計(CY23~CY26E)、及び富士経済「2025年 半導体材料市場の現在と将来展望」
(CY27E~CY30E)に基づき当社にて作成
(図2) 半導体用フォトマスクの市場規模推移

出典:当社が調査を委託した第三者機関の調査に基づき当社にて作成
近年はファブレス・ファンダリモデルの定着に加え、半導体設計ツールの普及などを背景に、専用に設計した特定用途に特化した半導体チップの需要が、レガシー領域も含めて増加しております(図3)。フォトマスクは半導体チップ生産における原版であるところ、半導体用フォトマスク市場においては、レガシー領域の堅調な需要に加え、プロセスノードマイグレーション(微細化、より微細なプロセスノードへの生産移行)による先端ノード需要が増加傾向にあり、広範なプロセスノードにおいてフォトマスクの量的需要(フォトマスクセット数)が増加しております。特に最先端領域においては、微細化の進展に伴い、半導体のチップ構造がより多層化、複雑化するため、その生産に必要な1セット当たりのフォトマスク枚数が増加することに加え、1セットあたりのASP(平均販売価格)も上昇傾向にあります(図4)。
(図3) プロセスノード別半導体チップ設計数の推移

出典:IBS 「2025 Analysis on Design Starts」に基づき当社にて作成
(図4) プロセスノードごとの半導体チップ構造と必要となるフォトマスクの相関関係イメージ

出典:富士経済「2025年 半導体材料市場の現在と将来展望」に基づき当社にて作成
また、経済安全保障の観点から半導体サプライチェーンの自国・自地域回帰の動きが活発化しており、IDMやファウンドリの新工場・ライン建設への投資が加速傾向にあります。SEMI「World Fab Forecast 3Q23」による半導体製造拠点の建設開始数は以下のように推測されており、この傾向は当社グループのような外販フォトマスクベンダーにとっては追い風となると考えております。
(単位:拠点数)
2023年~2027年(5年間)
全世界+108
中国+45
米国+18
欧州+12
日本+11
台湾+11
東南アジア+7
韓国+4
出典:SEMI「World Fab Forecast 3Q23」

以上のとおり、半導体市場の拡大、チップデザインの多様化、プロセスノードの微細化、自国・自地域回帰に伴う半導体デバイスの新工場・ラインの増加等を背景に、マスク外販需要は引き続き成長すると考えられます。併せて、今後内作がHigh-NA EUVに資金と人材を集中させ、既存ノードについては外販を活用する可能性が高いこと、並びに、ファウンドリが最先端ノードの適用を進めることで先端フォトマスクの外販需要の成長がさらに加速していくことが考えられます。
(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① フォトマスク事業の拡大
a フォトマスク事業成長領域の戦略的連携強化と成長
当社グループの持続的な成長実現には、市場成長が予想される地域に対し適切に設備投資を行い、生産能力を拡大するとともに、新たな技術領域に対して技術力・研究開発力を強化し差別化していくことが不可欠です。
地域軸では、各国地域における業界動向と産業政策や輸出規制等を注視しつつ、投資機会を見極めてまいりますが、特に量的需要の拡大が見込まれるアメリカ及び中国を除くアジア各国の需要を重視し、当社グループの生産能力拡大に向けた設備投資を進めてまいります。これまで市場成長をけん引してきた中国市場については、米中間のデカップリング強化と、それに伴い同国政府が進める国産化政策によって現地競合企業との競争が激化していることに鑑み、収益性を重視した選択的な事業展開と設備投資を行ってまいります。
いずれの地域においても、現地当局との関係構築や、有力な顧客との間に長期供給契約を締結することで安定的な取引関係を構築するなど、強固な事業基盤を構築することで、現在の当社グループのポジションを盤石なものとしていくことが重要であると考えております。
先端技術領域においては、当社グループは既に、同領域におけるフォトマスクの技術開発・生産に不可欠となるマルチビーム描画装置を朝霞工場及びドレスデン工場に導入済みであり、EUVフォトマスクの開発・生産に加え、Curvilinearなど最新技術を用いた光マスクの生産にも適用を進めております。特に、EUVフォトマスクに関しては、ブランクスメーカーと共同でHigh-NAリソグラフィ向けの新規ブランクス開発や、IBM社とのプロセス共同開発等を実施し、次世代のEUVフォトマスク開発において競合他社に先行することを目指しております。
b レガシー領域の戦略的強化
前掲「プロセスノード別半導体チップ設計数の推移」にあるように、今日の半導体市場では28nm以細の先端ノードのみならず、いわゆるレガシー半導体領域においても成長が見込まれております。これはAIやデータセンター向けに比較的高性能な半導体需要が増加する一方で、レガシー領域においてはIoTや自動運転など多様なアプリケーションの開発と普及により、必ずしも高い性能を必要としない半導体の量的需要が増加することに起因しております。
当社グループでは、こうした旺盛な需要に対するタイムリーなフォトマスク供給体制を維持すべく、各工場におけるレガシー装置について、グループ全体最適の目線で更新投資計画を策定し、効率的・計画的な更新に取り組んでおります。加えて、装置延命と自社内保守技術の高度化により稼働率の維持・向上と原価低減を図るとともに、元の装置ベンダーとは異なる後発ベンダーと連携した代替パーツの共同開発等も進めており、競争力のある生産設備ラインナップの確保に努めてまいります。
c グローバル製造拠点のバーチャル「1」工場化
当社グループ各社では、得意先と同一国内に存在する製造拠点での生産を原則としながらも、顧客要求仕様や各製造拠点における稼働状況、生産能力等に鑑みて、拠点間で互いに生産委託を行うことにより、グループ全体で需給最適化及び生産量の最大化に努めております。本施策の更なる向上のため、8生産拠点が連携し、あたかも1つの工場(バーチャル「1」工場)として機能するよう、拠点間の生産委託の自動化と、生産日程計画におけるAIエンジンの開発・適用を推進し、ワークフロー改革に取り組んでおります。
② 新事業の開拓
当社グループでは、フォトマスク事業で培った微細加工技術を応用し、ナノインプリント技術において金型として用いられるモールドを製品化しております。ナノインプリント技術は多様な用途で応用が期待されておりますが、当社では特に今後大きな市場形成が期待されるARグラスに用いられるWaveguide用モールドを事業化すべく、現在普及しているバイナリー構造に加え、各種3D構造マスターモールドによる競争力のある製品の開発と顧客開拓を進めております。現在、日本及び欧州において3D構造マスターモールドの生産体制を構築しており、3Dモールド市場における当社グループのプレゼンスを強化し、顧客ニーズに迅速に応えられる体制の確立を推進しております。
さらに、中期的な戦略としてはナノインプリント技術を活用した試作ビジネスを日本で展開すべく、朝霞工場において試作ラインを構築するとともに、ARグラス市場が求める高品質な光学部品の開発能力を強化し、本格量産に向けたOEMやターンキーソリューションの提供体制を構築することを計画しております。
ナノインプリントモールドの形状

③ ESGの強化
当社グループは、社会的責任のある企業として、脱炭素・低炭素を目指す取り組みを積極的に推進しております。特に、フォトマスク製造には大きな電力を消費することを意識し、設備投資によるエネルギー効率の改善や、IoT技術を用いた運用管理の最適化を実施し、事業を拡大しながらも炭素排出量の削減に努めてまいります。
(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、持続的な企業価値の向上につながる収益性の管理に加え、積極的な事業投資と財務の健全性の両立及び利益成長に応じた株主還元の強化を図るべく、「売上収益成長率」「営業利益率」を経営上の重要な経営指標として位置付けております。
(※用語)
Waveguide光を特定の方向に導くための光学デバイスのことで、AR/VRヘッドセットなどのデバイスで使用される。
メタレンズナノスケールの構造を利用して光を精密に制御する光学デバイスのことで、スマートフォンカメラ、AR/VRデバイス、医療機器、LiDARシステムなど、多岐にわたる応用分野で使用される。
ASIC「Application Specific Integrated Circuit」の略称。特定用途向けICのこと。
ASSP「Application Specific Standard Product」の略称。特定用途向け専用標準ICのこと。
マスターモールドナノインプリント技術において使用される金型のこと。当社では3D構造のマスターモールドをフォトマスク事業で培ったリソグラフィ技術により作成している。

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