訂正有価証券届出書(新規公開時)
有報資料
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1) 経営方針
当社は、「『記録』で世界をアップデートする。」をミッションに掲げ、写真とテクノロジーによりフィジカル産業のDXを支援する企業を目指しております。フィジカル産業では、現場で生じる事実を正確かつ継続的に記録し、関係者への説明、業務判断及び将来の改善に活用することが重要です。当社は、現場に定着する入力手段、AIによる認識・構造化及びクラウドによる共有・活用を一体で提供することにより、記録業務の効率化と信頼性の向上に貢献します。
(2) 中長期の経営戦略
当社は、施工記録領域を収益成長の基盤とし、成長記録領域における安定的な収益の確保、及び整備記録領域の立ち上げを進めます。共通の記録DX基盤を各フィジカル産業に転用することで、次なる収益機会の創出を両立する方針です。中長期的な成長を実現するための各領域の取り組みは以下のとおりです。

・施工記録領域:既存顧客基盤に対する施工記録のクラウドへの移行支援と蔵衛門プレミアム契約会社における顧客企業内のID拡大を推進し、ストック売上を中心とした継続的な成長を図ります。

・成長記録領域:主力サービスである「みんなの写真屋さん」による安定的な収益基盤を確保・維持しつつ、そこで得た保護者接点を生かした付加価値サービスの提供等により、第二の収益基盤としてのさらなる収益性向上を図ります。
・整備記録領域:将来の第三の収益の柱として育成すべく、AITURBOの初期導入顧客の獲得及び販売パートナー網の構築に注力します。
当社の中長期戦略を支える競争優位性の源泉は、主力事業である施工記録領域において長年にわたり培ってきた「ブランド力」、現場業務への「定着力」及び記録データと業務知見に基づく「理解力」の三つにあります。当社は、施工記録領域で確立した三つの強みを共通の「記録DX基盤」として抽象化し、他領域へも転用することで全社の事業展開を支えております。

具体的には、「ブランド力」は、1998年の「蔵衛門」発売以来形成した約11万社の顧客基盤と、施工現場で培った顧客からの厚い信頼を基礎としております。

「定着力」は、IT化が難しい現場においても、サービスを日常業務として使い続けてもらう力であります。
製品面では、粉塵や水濡れ、衝撃などが伴う現場環境に耐える専用端末と、現場技術者や技能者が直感的に操作できるアプリ及びクラウドサービスを提供しております。ITに不慣れな利用者でも説明を受けずに使い始められることが、利用の継続につながります。
サポート面では、営業提案、オンライン導入及びカスタマーサクセスを一体で提供しております。導入時の設定や運用ルールの整備を当社が支援し、導入後も利用状況を確認しながら活用を促すことで、一部の担当者の利用にとどまらず、組織としての利用が定着いたします。

「理解力」は、長年にわたる顧客との接点を通じて蓄積した現場業務への深い知見と、約17億枚を超える施工写真等の記録データを活用し、記録AIの精度向上や現場起点の製品開発につなげる力であります。

これら三つの強みは、それぞれ独立したものではなく、顧客基盤を通じて得られる現場との接点がサービスの導入及び利用定着を促し、利用を通じて蓄積される記録データ及び顧客の意見が現場理解と製品・AIの高度化につながり、その成果がさらなる信頼とブランド力を高めるという循環を形成しております。当社は、施工記録領域で確立したこの事業基盤と好循環の仕組みを、同領域におけるクラウドへの移行及び顧客企業内のID拡大の推進力とするだけでなく、成長記録領域や整備記録領域へ展開するための全社的なプラットフォームとして活用してまいります。
(3) 経営環境
① 建設業界及び施工記録DX市場
建設業は、総売上高136.4兆円(令和6年)、会社数48.4万社(令和7年度末)、就業者数478万人(令和7年平均)という国内有数規模を有する巨大フィジカル産業であります。しかし課題として、建設就業者数は約20年間で106万人減少する一方、年間労働時間は全産業平均を237時間上回ります。また、労働生産性は製造業の半分以下となり、DXに取り組む企業の割合も他のフィジカル産業との比較の中で低位にとどまっております。施工記録領域が対象とする市場は、建設業のIT投資額であり、その規模は下表のとおりであります。
※出典(総売上高):政府統計の総合窓口より経済構造実態調査(産業横断調査)
※出典(会社数):国土交通省「建設業許可業者数調査」(令和7年度末現在)
※出典(就業者):総務省「労働力調査」より、建設業就業者数(令和7年平均)
※出典(年間労働時間):一般社団法人日本建設業連合会「建設業デジタルハンドブック」
※出典(DXへの取組状況):株式会社帝国データバンクが実施した「DX推進に関する企業の意識調査(2022年1月)」

こうした状況において、工事写真は現場のデジタル化の入口となる業務であります。工事写真は、発注者への説明や検査対応のために撮影と提出が義務付けられており、工事の種類や企業規模を問わず必ず発生します。撮影した写真は、品質管理、原価管理、工程管理、安全管理及び環境管理のすべてに関わる記録であり、出来形の確認、品質記録の作成、追加・変更工事の確認、安全設備の点検、産業廃棄物の分別・搬出の管理等、現場技術者が担う幅広い業務の根拠となります。

一方で、現場技術者の業務は日中の巡回と撮影にとどまらず、帰社後の写真の整理や台帳の作成まで続き、長時間労働の一因となっております。この必ず発生する記録業務において、AIによる認識・構造化を通じて写真を工事及び工種等の情報と結び付け、クラウドでの共有・活用につなげることにより、写真の整理及び台帳作成の負担を軽減するとともに、蓄積された記録を出来形や品質の確認、追加・変更工事の証跡及び安全管理の記録として関係者間で共有し、写真業務以外の現場業務にも活用することが可能となります。

※1:「営繕工事写真撮影要領による工事写真撮影ガイドブック(令和5年版)」国土交通省大臣官房官庁営繕部(著),公共建築協会(著)
※2:「蔵衛門クラウド」で管理する工事データのうち2021年9月から2026年7月までの工事を対象に、工事種別ごとの1工事当たりの写真枚数を集計し、平均値を算出
② 保育・教育業界及び成長記録DX市場
当社は、少子化を市場の制約要因と認識する一方、子ども一人ひとりの成長記録を施設と家庭で安全に共有する需要及び教職員・保育者の業務負担を軽減する需要は継続すると考えております。中期経営計画の期間においては、「みんなの写真屋さん」の利用者基盤を維持しつつ、「うちの子」等の継続課金型サービスとクロスセル商品によりARPUを高めることに取り組みます。「せんせいみて!」等を通じた未就学児の保護者への展開は、中期経営計画の期間を超える取り組みとして進めてまいります。
③ 修理・整備業界及び整備記録DX市場
自動車の修理・整備業界では、修理工程に関する不正事件を背景として、作業内容の透明性向上が求められております。当社は、これらの需要に対応するため、2026年6月から修理・整備AIクラウド「AITURBO」を提供しております。「AITURBO」は、修理工程で撮影した写真を起点として、工程管理、品質管理、リソース管理及び案件管理に必要な情報を一元化するとともに、写真打刻(特許出願中)と「RecAI」を組み合わせて管理業務を自動化するサービスです。当社は、同サービスの導入を進め、整備記録領域における事業基盤の構築を図ります。

※1:令和5年公正取引委員会特別調査:自動車整備業は、労務費の転嫁率が低い受注者の割合が高い業種「ワースト1位」から引用
※1:特許出願中(特願2026-97959)
(4) 経営上重視する指標
当社は、中期経営計画の進捗及び収益基盤の質的向上を客観的に把握するため、以下の指標を主要な経営管理指標としております。
① 主要な経営管理指標
当社は、売上高及び営業利益率に加え、継続収益の規模と各領域の成長ドライバーを表す次の指標を重視しております。指標の定義、対象サービス及び算定期間を明示し、期間比較が可能となるよう継続的に管理します。
(注) 1.ARR(Annual Recurring Revenue)は、当該月におけるストック売上高(「蔵衛門プレミアム」のID利用料等、継続課金により発生する売上高)を12倍して算出した数値であります。
2.解約率は、エンタープライズプランを契約する会社単位の解約率であり、2025年9月期の各月の解約率(当月の解約会社数÷当月末時点の契約会社数(累計))を単純平均して算出。なお、ライセンスパックプランは、工事現場単位で導入する商品であり、当該現場の工事完了に伴って利用が終了することを前提としております。当該利用終了は顧客の離反によるものではなく、サービスの継続的な利用状況を示す指標には適さないと考えられることから、解約率の算定対象に含めておりません。
3.YAU(Year Active Users)は、該当年度内に販売サイトで一度でもセキュリティキーを認証した保護者数を対象として算出した数値です。
4.ARPU(Average Revenue Per User)は、売上高をアクティブユーザー数で除して算出した数値です。
② 全社指標
当社のクラウドサービスの拡大に伴い、ARR(年間経常収益)及びストック売上比率を重要指標として位置づけております。ARRの増加は継続的な収益基盤の確立を示し、ストック売上比率の上昇は収益構造の安定性向上に資するものであります。
③ 施工記録領域の指標
施工記録領域においては、「蔵衛門プレミアム」の有料利用者数、契約社数及び解約率を主要指標としております。有料利用者数は現場における利用の広がりを、契約社数は導入企業の広がりを、それぞれ示しております。解約率は、企業単位で導入するエンタープライズプラン(表注3)を対象として、契約後の顧客がサービスの利用を継続しているかを示す指標であります。下表のとおり低位で推移しており、「蔵衛門プレミアム」が顧客の施工記録業務に定着し、安定的かつ継続的な収益基盤の確保に寄与していると当社では考えております。
(注) 1.有料利用者数は、「蔵衛門プレミアム」の有料契約に基づき利用可能なID数であり、エンタープライズプラン及びパックプランの合計であります。
2.契約社数は、「蔵衛門プレミアム」を契約している法人顧客数であり、エンタープライズプラン及びパックプランの合計であります。
3.「エンタープライズプラン」とは、当社が提供する「蔵衛門」シリーズのうち、企業単位で契約し、企業内の利用者を一括して管理するプランをいい、「ライセンスパックプラン」とは、必要なライセンス数を選択して購入するプランをいいます。ライセンスパックプランは、主として個別の工事における利用を想定した商品であります。
4.解約率は、エンタープライズプランを対象として算出しております。パックプランは現場単位で導入するものであり、工事現場の終了に伴って契約が終了することを前提としているため、サービスの継続的な利用状況を示す指標には適さないと考えております。算定方法は、各月における同プランの解約企業数を当該月末時点の同プランの契約企業数で除して月次解約率を算出し、各事業年度末を基準とする直近12ヶ月の月次解約率の単純平均によっております。なお、当該算定の分母はエンタープライズプランの契約企業数であり、上記2に記載の契約社数(エンタープライズプラン及びパックプランの合計)とは母集団が異なります。
5.「解約企業」とは、当該月において対象プランの契約を全て解約した法人顧客をいいます。一部の契約を継続している顧客は含めておりません。
④ 成長記録領域の指標
成長記録領域においては、年間累計アクティブユーザー数(YAU)と顧客単価(ARPU)を主要指標としております。同指標は、サービスの顧客基盤及び顧客単価向上を図る上で重要な指標であります。YAUは、当該年度内に「みんなの写真屋さん」の販売サイトでセキュリティキーを認証した保護者の数であり、写真の購入の有無を問わず、当社が接点を有する保護者基盤の規模を示すものであります。一方、ARPUは、当該保護者基盤から得られる利用者1人当たりの年間収益の水準を示すものであります。なお、「うちの子」等の継続課金型サービスは2026年7月に有料での提供を開始したものであり、2025年9月期のARPUには含まれておりません。
(注) 1.YAU(Year Active Users)は、該当年度内に販売サイトで一度でもセキュリティキーを認証した保護者数を対象として算出した数値です。
2.ARPU(Average Revenue Per User)は、売上高をアクティブユーザー数で除して算出した数値です。
⑤ 整備記録領域の指標
整備記録領域においては、月間処理台数を主要指標としております。同指標は、新領域の立ち上がりを図る上で重要な指標であります。
(注) 月間処理台数は、該当月に修理対応を行った台数の合計です。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財政上の課題
① 施工記録領域のクラウドへの移行とID拡大
施工記録領域では、買切り版ソフトを利用する既存顧客のクラウドへの移行が着実に進展しており、ストック売上高は継続的に拡大しております。当社は、この移行をさらに加速させ、ストック収益を中心とする収益構造への転換を早期に進めることを課題としております。移行の対象は「蔵衛門御用達」等の買切り版ソフトを継続して利用している顧客であり、これらの顧客に対する移行支援を強化します。あわせて、「蔵衛門プレミアム」において検査機能等の機能追加を進め、施工管理の担当者に加えて、検査及び品質管理に関わる担当者並びに技能者層へと利用者を広げることにより、既存の導入企業における利用部門・現場の拡大(全社展開)を促し、契約社数及びID数の拡大を図ります。
② 成長記録領域の利用者及び収益機会の拡大
成長記録領域では、少子化により対象となる子どもの数が中長期的に減少する見込みであることに加え、子どもの写真は個人情報及び肖像に関わる情報であり、教育施設及び保護者による取扱いへの要求が年々厳しくなっていることが課題であります。当社は、共通基盤である写真証明基盤により記録の出所及び撮影後の改変の有無を検証できる状態を確保するとともに、個人情報の取扱い及びアクセス権限の管理を継続的に強化し、施設と家庭が安心して成長記録を共有できる環境を提供します。これを前提に、教育施設、写真事業者及び保護者との接点を維持・拡大し、行事写真の販売から日常的な成長記録へサービス範囲を広げることにより、YAU及びARPUの向上を図ります。
③ 整備記録及び新領域の事業化
整備記録領域は2026年6月に立ち上げた新領域であり、販売網及び顧客支援体制の構築が課題であります。整備機器・用品の販売網を有する既存の販売パートナーを中心とした販売体制とし、当該販売網を通じた導入を積み上げるとともに、販売パートナーの新規開拓を進めます。導入社数及び月間処理台数を確認しながら投資を段階的に管理し、新領域は既存の顧客接点、記録及び説明責任の必要性並びに基盤の転用可能性を基準に選定します。
④ AI・セキュリティ・データガバナンスの強化
RecAIの認識精度及び業務適用範囲を高めるとともに、サイバーセキュリティ、サービス安定性、プライバシー保護、データ利用目的及びアクセス権限の管理を継続的に強化します。
⑤ 人材・組織基盤及びガバナンスの強化
プロダクト、AI、営業、カスタマーサクセス及び管理部門の専門人材を確保・育成し、領域横断で共通基盤を活用できる組織体制を整備します。投資判断、内部統制及びリスク管理の高度化を通じ、上場会社として持続的な成長を支える経営基盤を構築します。
(1) 経営方針
当社は、「『記録』で世界をアップデートする。」をミッションに掲げ、写真とテクノロジーによりフィジカル産業のDXを支援する企業を目指しております。フィジカル産業では、現場で生じる事実を正確かつ継続的に記録し、関係者への説明、業務判断及び将来の改善に活用することが重要です。当社は、現場に定着する入力手段、AIによる認識・構造化及びクラウドによる共有・活用を一体で提供することにより、記録業務の効率化と信頼性の向上に貢献します。
(2) 中長期の経営戦略
当社は、施工記録領域を収益成長の基盤とし、成長記録領域における安定的な収益の確保、及び整備記録領域の立ち上げを進めます。共通の記録DX基盤を各フィジカル産業に転用することで、次なる収益機会の創出を両立する方針です。中長期的な成長を実現するための各領域の取り組みは以下のとおりです。

・施工記録領域:既存顧客基盤に対する施工記録のクラウドへの移行支援と蔵衛門プレミアム契約会社における顧客企業内のID拡大を推進し、ストック売上を中心とした継続的な成長を図ります。

・成長記録領域:主力サービスである「みんなの写真屋さん」による安定的な収益基盤を確保・維持しつつ、そこで得た保護者接点を生かした付加価値サービスの提供等により、第二の収益基盤としてのさらなる収益性向上を図ります。
・整備記録領域:将来の第三の収益の柱として育成すべく、AITURBOの初期導入顧客の獲得及び販売パートナー網の構築に注力します。
当社の中長期戦略を支える競争優位性の源泉は、主力事業である施工記録領域において長年にわたり培ってきた「ブランド力」、現場業務への「定着力」及び記録データと業務知見に基づく「理解力」の三つにあります。当社は、施工記録領域で確立した三つの強みを共通の「記録DX基盤」として抽象化し、他領域へも転用することで全社の事業展開を支えております。

具体的には、「ブランド力」は、1998年の「蔵衛門」発売以来形成した約11万社の顧客基盤と、施工現場で培った顧客からの厚い信頼を基礎としております。

「定着力」は、IT化が難しい現場においても、サービスを日常業務として使い続けてもらう力であります。
製品面では、粉塵や水濡れ、衝撃などが伴う現場環境に耐える専用端末と、現場技術者や技能者が直感的に操作できるアプリ及びクラウドサービスを提供しております。ITに不慣れな利用者でも説明を受けずに使い始められることが、利用の継続につながります。
サポート面では、営業提案、オンライン導入及びカスタマーサクセスを一体で提供しております。導入時の設定や運用ルールの整備を当社が支援し、導入後も利用状況を確認しながら活用を促すことで、一部の担当者の利用にとどまらず、組織としての利用が定着いたします。

「理解力」は、長年にわたる顧客との接点を通じて蓄積した現場業務への深い知見と、約17億枚を超える施工写真等の記録データを活用し、記録AIの精度向上や現場起点の製品開発につなげる力であります。

これら三つの強みは、それぞれ独立したものではなく、顧客基盤を通じて得られる現場との接点がサービスの導入及び利用定着を促し、利用を通じて蓄積される記録データ及び顧客の意見が現場理解と製品・AIの高度化につながり、その成果がさらなる信頼とブランド力を高めるという循環を形成しております。当社は、施工記録領域で確立したこの事業基盤と好循環の仕組みを、同領域におけるクラウドへの移行及び顧客企業内のID拡大の推進力とするだけでなく、成長記録領域や整備記録領域へ展開するための全社的なプラットフォームとして活用してまいります。
(3) 経営環境
① 建設業界及び施工記録DX市場
建設業は、総売上高136.4兆円(令和6年)、会社数48.4万社(令和7年度末)、就業者数478万人(令和7年平均)という国内有数規模を有する巨大フィジカル産業であります。しかし課題として、建設就業者数は約20年間で106万人減少する一方、年間労働時間は全産業平均を237時間上回ります。また、労働生産性は製造業の半分以下となり、DXに取り組む企業の割合も他のフィジカル産業との比較の中で低位にとどまっております。施工記録領域が対象とする市場は、建設業のIT投資額であり、その規模は下表のとおりであります。
※出典(総売上高):政府統計の総合窓口より経済構造実態調査(産業横断調査)
※出典(会社数):国土交通省「建設業許可業者数調査」(令和7年度末現在)
※出典(就業者):総務省「労働力調査」より、建設業就業者数(令和7年平均)
※出典(年間労働時間):一般社団法人日本建設業連合会「建設業デジタルハンドブック」
※出典(DXへの取組状況):株式会社帝国データバンクが実施した「DX推進に関する企業の意識調査(2022年1月)」

こうした状況において、工事写真は現場のデジタル化の入口となる業務であります。工事写真は、発注者への説明や検査対応のために撮影と提出が義務付けられており、工事の種類や企業規模を問わず必ず発生します。撮影した写真は、品質管理、原価管理、工程管理、安全管理及び環境管理のすべてに関わる記録であり、出来形の確認、品質記録の作成、追加・変更工事の確認、安全設備の点検、産業廃棄物の分別・搬出の管理等、現場技術者が担う幅広い業務の根拠となります。

一方で、現場技術者の業務は日中の巡回と撮影にとどまらず、帰社後の写真の整理や台帳の作成まで続き、長時間労働の一因となっております。この必ず発生する記録業務において、AIによる認識・構造化を通じて写真を工事及び工種等の情報と結び付け、クラウドでの共有・活用につなげることにより、写真の整理及び台帳作成の負担を軽減するとともに、蓄積された記録を出来形や品質の確認、追加・変更工事の証跡及び安全管理の記録として関係者間で共有し、写真業務以外の現場業務にも活用することが可能となります。

※1:「営繕工事写真撮影要領による工事写真撮影ガイドブック(令和5年版)」国土交通省大臣官房官庁営繕部(著),公共建築協会(著)
※2:「蔵衛門クラウド」で管理する工事データのうち2021年9月から2026年7月までの工事を対象に、工事種別ごとの1工事当たりの写真枚数を集計し、平均値を算出
② 保育・教育業界及び成長記録DX市場
当社は、少子化を市場の制約要因と認識する一方、子ども一人ひとりの成長記録を施設と家庭で安全に共有する需要及び教職員・保育者の業務負担を軽減する需要は継続すると考えております。中期経営計画の期間においては、「みんなの写真屋さん」の利用者基盤を維持しつつ、「うちの子」等の継続課金型サービスとクロスセル商品によりARPUを高めることに取り組みます。「せんせいみて!」等を通じた未就学児の保護者への展開は、中期経営計画の期間を超える取り組みとして進めてまいります。
③ 修理・整備業界及び整備記録DX市場
自動車の修理・整備業界では、修理工程に関する不正事件を背景として、作業内容の透明性向上が求められております。当社は、これらの需要に対応するため、2026年6月から修理・整備AIクラウド「AITURBO」を提供しております。「AITURBO」は、修理工程で撮影した写真を起点として、工程管理、品質管理、リソース管理及び案件管理に必要な情報を一元化するとともに、写真打刻(特許出願中)と「RecAI」を組み合わせて管理業務を自動化するサービスです。当社は、同サービスの導入を進め、整備記録領域における事業基盤の構築を図ります。

※1:令和5年公正取引委員会特別調査:自動車整備業は、労務費の転嫁率が低い受注者の割合が高い業種「ワースト1位」から引用
※1:特許出願中(特願2026-97959)
(4) 経営上重視する指標
当社は、中期経営計画の進捗及び収益基盤の質的向上を客観的に把握するため、以下の指標を主要な経営管理指標としております。
① 主要な経営管理指標
当社は、売上高及び営業利益率に加え、継続収益の規模と各領域の成長ドライバーを表す次の指標を重視しております。指標の定義、対象サービス及び算定期間を明示し、期間比較が可能となるよう継続的に管理します。
| 区分 | 主要KPI | 経営上の意味 |
| 全社 | 売上高、営業利益率、ARR(表注1)、ストック売上比率 | 成長投資を継続しつつ、収益性及び継続収益の拡大を確認 |
| 施工記録 | 契約社数、有料利用者数(ID)、解約率(表注2) | クラウド移行、顧客内利用拡大及び継続性を確認 |
| 成長記録 | YAU(ID、表注3)、ARPU(円、表注4) | 利用者基盤の維持と付加価値サービスの浸透を確認 |
| 整備記録 | 月間処理台数 | 新領域の立ち上がりと現場への定着を確認 |
(注) 1.ARR(Annual Recurring Revenue)は、当該月におけるストック売上高(「蔵衛門プレミアム」のID利用料等、継続課金により発生する売上高)を12倍して算出した数値であります。
2.解約率は、エンタープライズプランを契約する会社単位の解約率であり、2025年9月期の各月の解約率(当月の解約会社数÷当月末時点の契約会社数(累計))を単純平均して算出。なお、ライセンスパックプランは、工事現場単位で導入する商品であり、当該現場の工事完了に伴って利用が終了することを前提としております。当該利用終了は顧客の離反によるものではなく、サービスの継続的な利用状況を示す指標には適さないと考えられることから、解約率の算定対象に含めておりません。
3.YAU(Year Active Users)は、該当年度内に販売サイトで一度でもセキュリティキーを認証した保護者数を対象として算出した数値です。
4.ARPU(Average Revenue Per User)は、売上高をアクティブユーザー数で除して算出した数値です。
② 全社指標
当社のクラウドサービスの拡大に伴い、ARR(年間経常収益)及びストック売上比率を重要指標として位置づけております。ARRの増加は継続的な収益基盤の確立を示し、ストック売上比率の上昇は収益構造の安定性向上に資するものであります。
| 2024年9月末時点(実績) | 2025年9月末時点(実績) | |
| ARR(千円) | 714,114 | 1,067,693 |
| 第30期事業年度 (自 2023年10月1日 至 2024年9月30日) | 第31期事業年度 (自 2024年10月1日 至 2025年9月30日) | |
| 売上高(千円) | 2,224,188 | 2,920,113 |
| 営業利益率(%) | 3.5 | 11.2 |
| ストック売上比率(%) | 24.7 | 30.8 |
③ 施工記録領域の指標
施工記録領域においては、「蔵衛門プレミアム」の有料利用者数、契約社数及び解約率を主要指標としております。有料利用者数は現場における利用の広がりを、契約社数は導入企業の広がりを、それぞれ示しております。解約率は、企業単位で導入するエンタープライズプラン(表注3)を対象として、契約後の顧客がサービスの利用を継続しているかを示す指標であります。下表のとおり低位で推移しており、「蔵衛門プレミアム」が顧客の施工記録業務に定着し、安定的かつ継続的な収益基盤の確保に寄与していると当社では考えております。
| 対象範囲 | 2024年9月末時点(実績) | 2025年9月末時点(実績) | |
| 有料利用者数(ID) | エンタープライズプラン及びパックプランの合計 | 62,923 | 95,157 |
| 契約社数(社) | エンタープライズプラン及びパックプランの合計 | 7,574 | 10,763 |
| 解約率(%) (会社単位、月次・直近12ヶ月平均) | エンタープライズプラン | 0.12 | 0.16 |
(注) 1.有料利用者数は、「蔵衛門プレミアム」の有料契約に基づき利用可能なID数であり、エンタープライズプラン及びパックプランの合計であります。
2.契約社数は、「蔵衛門プレミアム」を契約している法人顧客数であり、エンタープライズプラン及びパックプランの合計であります。
3.「エンタープライズプラン」とは、当社が提供する「蔵衛門」シリーズのうち、企業単位で契約し、企業内の利用者を一括して管理するプランをいい、「ライセンスパックプラン」とは、必要なライセンス数を選択して購入するプランをいいます。ライセンスパックプランは、主として個別の工事における利用を想定した商品であります。
4.解約率は、エンタープライズプランを対象として算出しております。パックプランは現場単位で導入するものであり、工事現場の終了に伴って契約が終了することを前提としているため、サービスの継続的な利用状況を示す指標には適さないと考えております。算定方法は、各月における同プランの解約企業数を当該月末時点の同プランの契約企業数で除して月次解約率を算出し、各事業年度末を基準とする直近12ヶ月の月次解約率の単純平均によっております。なお、当該算定の分母はエンタープライズプランの契約企業数であり、上記2に記載の契約社数(エンタープライズプラン及びパックプランの合計)とは母集団が異なります。
5.「解約企業」とは、当該月において対象プランの契約を全て解約した法人顧客をいいます。一部の契約を継続している顧客は含めておりません。
④ 成長記録領域の指標
成長記録領域においては、年間累計アクティブユーザー数(YAU)と顧客単価(ARPU)を主要指標としております。同指標は、サービスの顧客基盤及び顧客単価向上を図る上で重要な指標であります。YAUは、当該年度内に「みんなの写真屋さん」の販売サイトでセキュリティキーを認証した保護者の数であり、写真の購入の有無を問わず、当社が接点を有する保護者基盤の規模を示すものであります。一方、ARPUは、当該保護者基盤から得られる利用者1人当たりの年間収益の水準を示すものであります。なお、「うちの子」等の継続課金型サービスは2026年7月に有料での提供を開始したものであり、2025年9月期のARPUには含まれておりません。
| 2024年9月末時点(実績) | 2025年9月末時点(実績) | |
| YAU(ID) | 210,029 | 218,481 |
| ARPU(円) | 2,620 | 4,136 |
(注) 1.YAU(Year Active Users)は、該当年度内に販売サイトで一度でもセキュリティキーを認証した保護者数を対象として算出した数値です。
2.ARPU(Average Revenue Per User)は、売上高をアクティブユーザー数で除して算出した数値です。
⑤ 整備記録領域の指標
整備記録領域においては、月間処理台数を主要指標としております。同指標は、新領域の立ち上がりを図る上で重要な指標であります。
| 2026年6月末時点(実績) | 2026年7月末時点(実績) | |
| 月間処理台数(件) | 460 | 760 |
(注) 月間処理台数は、該当月に修理対応を行った台数の合計です。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財政上の課題
① 施工記録領域のクラウドへの移行とID拡大
施工記録領域では、買切り版ソフトを利用する既存顧客のクラウドへの移行が着実に進展しており、ストック売上高は継続的に拡大しております。当社は、この移行をさらに加速させ、ストック収益を中心とする収益構造への転換を早期に進めることを課題としております。移行の対象は「蔵衛門御用達」等の買切り版ソフトを継続して利用している顧客であり、これらの顧客に対する移行支援を強化します。あわせて、「蔵衛門プレミアム」において検査機能等の機能追加を進め、施工管理の担当者に加えて、検査及び品質管理に関わる担当者並びに技能者層へと利用者を広げることにより、既存の導入企業における利用部門・現場の拡大(全社展開)を促し、契約社数及びID数の拡大を図ります。
② 成長記録領域の利用者及び収益機会の拡大
成長記録領域では、少子化により対象となる子どもの数が中長期的に減少する見込みであることに加え、子どもの写真は個人情報及び肖像に関わる情報であり、教育施設及び保護者による取扱いへの要求が年々厳しくなっていることが課題であります。当社は、共通基盤である写真証明基盤により記録の出所及び撮影後の改変の有無を検証できる状態を確保するとともに、個人情報の取扱い及びアクセス権限の管理を継続的に強化し、施設と家庭が安心して成長記録を共有できる環境を提供します。これを前提に、教育施設、写真事業者及び保護者との接点を維持・拡大し、行事写真の販売から日常的な成長記録へサービス範囲を広げることにより、YAU及びARPUの向上を図ります。
③ 整備記録及び新領域の事業化
整備記録領域は2026年6月に立ち上げた新領域であり、販売網及び顧客支援体制の構築が課題であります。整備機器・用品の販売網を有する既存の販売パートナーを中心とした販売体制とし、当該販売網を通じた導入を積み上げるとともに、販売パートナーの新規開拓を進めます。導入社数及び月間処理台数を確認しながら投資を段階的に管理し、新領域は既存の顧客接点、記録及び説明責任の必要性並びに基盤の転用可能性を基準に選定します。
④ AI・セキュリティ・データガバナンスの強化
RecAIの認識精度及び業務適用範囲を高めるとともに、サイバーセキュリティ、サービス安定性、プライバシー保護、データ利用目的及びアクセス権限の管理を継続的に強化します。
⑤ 人材・組織基盤及びガバナンスの強化
プロダクト、AI、営業、カスタマーサクセス及び管理部門の専門人材を確保・育成し、領域横断で共通基盤を活用できる組織体制を整備します。投資判断、内部統制及びリスク管理の高度化を通じ、上場会社として持続的な成長を支える経営基盤を構築します。