有価証券報告書-第110期(2024/04/01-2025/03/31)
⦅戦略⦆
連結売上高の95%以上を占める水産事業、食品事業、ファインケミカル事業を対象とし、TCFD提言に基づく気候変動のシナリオ分析を2つのシナリオで実施しました。気候変動リスクと機会の特定、財務インパクトの評価を行い、その対応策を検討しました。明確化された重要なリスクと機会に対して、対応策を講じることで、リスクの低減と機会の確実な獲得につなげ、気候変動に対してレジリエントな状態を目指します。
(イ)戦略におけるシナリオ分析の概要
TCFDの提言に従い、気候変動シナリオ分析を実施しました。分析対象は水産事業と食品事業、ファインケミカル事業とし、バリューチェーン全体を幅広く分析しました。1.5℃/2℃および4℃の気温上昇時の世界を想定し、リスク・機会の抽出と2030年における財務インパクトの評価、および対応策を検討しました。
その結果、1.5℃/2℃シナリオでは炭素税の導入による操業コストが事業成長の阻害要因となり、積極的な温室効果ガス削減とともに生産活動の効率化に取り組み、新たな顧客需要を捉えることにより、事業成長につなげることが可能であることがわかりました。また、4℃シナリオでは自然災害の激甚化に伴う物理リスクが事業成長の阻害要因となり、養殖事業の高度化に取り組みこれらのリスクに対応することで収益への影響を最小化することが必要であることがわかりました。
1.5℃/2℃シナリオ
影響時期は、短期(3年以内)、中期(3-10年以内)、長期(10-20年程度)とした。
(注1)ICP:インターナルカーボンプライシング
(注2)LCA:ライフサイクルアセスメント
4℃シナリオ
影響時期は、短期(3年以内)、中期(3-10年以内)、長期(10-20年程度)とした。
(ロ)カーボンプライシングの影響
財務インパクトの中でも特に影響が大きかったカーボンプライシングについては、将来CO2排出量(Scope1、2)を2030年売上予測に基づいて算出し、2℃シナリオ、4℃シナリオごとのIEAの予測(注1)による炭素価格を掛け合わせて運営コストの影響金額を算出しました。2030年目標であるCO2排出量を総量で30%削減することにより、グループ全体で2℃シナリオでは56.0億円、4℃シナリオでは17.4億円の削減につながることがわかりました。
炭素税:2℃シナリオ時 135ドル/t‐CO2、4℃シナリオ時 42ドル/t‐CO2と仮定、為替レートはいずれのシナリオも1ドル=150円と仮定
(注1)IEA World Energy Outlook 2023
(注2)対応策なし:Scope1、2を対象とし、基準年度(2018年度)と同様の原単位でCO2が排出されると仮定
(注3)対応策あり:Scope1、2を対象とし、2030年目標を達成することでCO2排出量が2018年度から30%削減されると仮定
(ハ)天然水産資源(カタクチイワシ・スケソウダラ)の影響評価
調達量が多く重要な魚種であるカタクチイワシとスケソウダラについて、FAOのモデルを使用して2種類のシナリオで2030年、2050年の漁獲可能量の変化を評価しました。その結果、1.5℃シナリオにおいては両魚種ともに微減が予想されました。4℃シナリオにおいては、カタクチイワシは2030年、2050年ともに減少となり、スケソウダラは2030年は微増、2050年は増加が予想されました。2030年時点での漁獲可能量の変化率は大きくないため、財務への影響は軽微であることが確認されました。しかし、2050年の漁獲可能量の変化率は比較的大きいため、特に減少が予想されるカタクチイワシについては、対応策を確実に進めていく必要があります。
漁獲可能量の変化率 (%)

出所:FAO (国連食糧農業機関)「Impacts of climate change on fisheries and aquaculture(2018)」を参考に当社推計
(ニ)水リスクの評価
水リスク評価のグローバルスタンダードのうち、2021年度は世界自然保護基金(WWF)のWater Risk Filterを用いて国内の製造・物流拠点全体の評価を行いましたが、水リスク評価の際には拠点別の影響額を試算するために浸水深のデータが必要であることから、2022年度以降は分析粒度が細かくより精緻なデータ収集が可能である世界資源研究所(WRI)のAqueduct(アキダクト)を用いて、国内・海外の生産・物流拠点別に評価を行いました。
水害による生産中断に伴う機会損失については、各拠点の所在地に示されるAqueductの浸水深により拠点別に運転停止日数・在庫毀損率を特定し、財務影響金額を算定しました。財務への影響は中程度であることを確認しました。また、水ストレス(渇水)については、最も高いリスクレベルに該当する拠点はありませんでしたが、日本、タイ、北米、南米の生産拠点の一部が、水ストレス下にある地域に所在していることがわかりました。今後は継続的に使用水の削減に取り組むとともに、水リスク評価方法の精緻化についても検討を進めていきます。
■Aqueductによる洪水リスク評価結果(拠点数)
■Aqueductによる渇水リスク評価結果(拠点数)と水使用量
(ホ)戦略への反映
シナリオ分析の結果を受けて、中期経営計画「GOOD FOODS Recipe2」でも引き続き、優先度の高い対応策から事業計画に反映し、戦略との整合を図っています。
連結売上高の95%以上を占める水産事業、食品事業、ファインケミカル事業を対象とし、TCFD提言に基づく気候変動のシナリオ分析を2つのシナリオで実施しました。気候変動リスクと機会の特定、財務インパクトの評価を行い、その対応策を検討しました。明確化された重要なリスクと機会に対して、対応策を講じることで、リスクの低減と機会の確実な獲得につなげ、気候変動に対してレジリエントな状態を目指します。
(イ)戦略におけるシナリオ分析の概要
TCFDの提言に従い、気候変動シナリオ分析を実施しました。分析対象は水産事業と食品事業、ファインケミカル事業とし、バリューチェーン全体を幅広く分析しました。1.5℃/2℃および4℃の気温上昇時の世界を想定し、リスク・機会の抽出と2030年における財務インパクトの評価、および対応策を検討しました。
その結果、1.5℃/2℃シナリオでは炭素税の導入による操業コストが事業成長の阻害要因となり、積極的な温室効果ガス削減とともに生産活動の効率化に取り組み、新たな顧客需要を捉えることにより、事業成長につなげることが可能であることがわかりました。また、4℃シナリオでは自然災害の激甚化に伴う物理リスクが事業成長の阻害要因となり、養殖事業の高度化に取り組みこれらのリスクに対応することで収益への影響を最小化することが必要であることがわかりました。
| シナリオ | 世界観の描写 |
| 1.5℃/2℃ シナリオ (RCP2.6) | ●社会からの脱炭素への要求により、コーポレートやバリューチェーン全体に対して、脱炭素に向けた規制や対応要請が強まる ●社会からの脱炭素への要求により、脱炭素な過程で生産された原材料の仕入れや持続可能な漁業・養殖が必要になる ●消費者や小売業者の志向変化により、低カーボンな製造・製品や持続性に配慮した調達品の取引や販売が求められる |
| 4℃ シナリオ (RCP8.5) | ●自然災害の激甚化に伴い、養殖・製造・物流等拠点の被災リスクが高まり、被災した場合、供給・運営停止などのリスクが高まる ●自然災害の激甚化や気温上昇により、植生や海洋環境が変化することで、作物の収量や水産資源の漁獲量・生産量の減少リスクが高まる ●自然災害が頻発することで災害食に対する需要の増加や、気温変化により健康状態が悪化することで健康ニーズを満たす製品要望が高まる |
1.5℃/2℃シナリオ
| リスク/機会 | 分類 | 想定される主なリスクと機会 | 事業インパクト | 影響時期 | 財務インパクト | 主な対応策 |
| 移行リスク | 規制 | 環境関連規制強化による影響 | カーボンプライシングの導入による対応コストの増加 | 中期 | 大 | ・事業所毎の排出量削減目標の設定 |
| ・再エネ導入拡大、省エネ設備投資 | ||||||
| 省エネ・GHG排出等の規制強化による対応コストの増加 | ・容器包装プラスチック削減 | |||||
| ・モーダルシフト、輸送効率化 | ||||||
| ・フードロス削減 | ||||||
| ・ICP(注1)導入の検討 | ||||||
| フロン規制強化による脱フロン要請の高まり | 中期 | 大 | ・自然冷媒への切り替え | |||
| 評判 | 気候変動対応が不十分な場合の投資家・金融機関からの評判低下 | - | 中期 | 大 | ・Scope 3まで含めたCO2削減目標の設定 | |
| ・気候変動対応情報の積極開示 | ||||||
| 機会 | 製品 と サービス | 消費者の購買行動の変化 (環境意識の高まり、持続可能性への配慮) | 持続可能性に配慮した製品に対する需要増加 | 短期 | 大 | ・取り扱い水産物の資源状態調査の継続実施 |
| ・環境配慮商品や認証品の取り扱い拡大 | ||||||
| 低カーボン需要の高まりによる代替タンパクへの需要増加 | 中期 | 大 | ・代替タンパク商品の開発、拡大 | |||
| 低カーボンとしての水産物の需要増加 | 長期 | 中 | ・LCA(注2)の実施と積極的な情報発信 | |||
| 資源の効率性 | 省エネ技術導入、再エネ・燃料転換による操業コスト低減 | エネルギーの消費量削減、効率化に伴う操業コストの低減 | 中期 | 中 | ・エネルギー高効率な省エネ設備対応 |
影響時期は、短期(3年以内)、中期(3-10年以内)、長期(10-20年程度)とした。
(注1)ICP:インターナルカーボンプライシング
(注2)LCA:ライフサイクルアセスメント
4℃シナリオ
| リスク/機会 | 分類 | 想定される主なリスクと機会 | 事業インパクト | 影響時期 | 財務インパクト | 主な対応策 |
| 物理リスク | 急性 | 風水害の激甚化による事業停止リスク/管理コスト増加 | 製造/物流拠点被災による被害 | 中期 | 中 | ・拠点の分散によるリスクヘッジ |
| ・物理的被害に備える保険内容の見直し | ||||||
| ・BCP見直し、社内訓練の実施 | ||||||
| 養殖施設の損壊による被害 | 短期 | 小 | ・浮沈式生簀の導入、施設の補強 | |||
| ・赤潮発生を予測し、被害を最小化 | ||||||
| ・陸上養殖への対応強化 | ||||||
| 異常気象による原材料(米・鶏肉)の調達リスク | 原材料調達コストの増加 | 短期 | 中 | ・産地の分散化や調達先の多様化によるリスク低減 | ||
| 異常気象による原材料(水産物)の調達リスク | 漁獲量減少と調達コストの増加 | 長期 | 小 | ・EPA原料魚油(カタクチイワシ)の在庫確保 | ||
| ・代替原料(ポストEPA)の開発 | ||||||
| 急性 ・慢性 | 渇水による操業停止リスク | 養殖拠点の渇水被害 | 短期 | 中 | ・高リスク拠点の特定、移転、設備強化 | |
| 製造/物流拠点の渇水被害 | 短期 | 中 | ・使用水の節約、井水の使用 | |||
| ・拠点の分散によるリスクヘッジ | ||||||
| 慢性 | 海洋環境の変化による水産物の調達リスク | 天然魚、養殖魚の漁獲量の減少 | 中期 | 小 | ・調達ネットワークの構築 | |
| ・陸上養殖の対応強化 | ||||||
| ・高温耐性品種の開発、養殖適地の探索 | ||||||
| 養殖飼料向け原料魚の漁獲量減少・調達コスト増加 | 中期 | 大 | ・代替飼料の開発(低魚粉配合飼料) | |||
| 機会 | 製品とサービス | 災害や気候変動に対応する製品・サービスを通じた需要増加 | 天然資源減少に伴う養殖需要の増加 | 短期 | 大 | ・陸上養殖の対応強化 |
| ・高温耐性品種の開発、養殖適地の探索 | ||||||
| スマート養殖対応によるコスト低減 | 短期 | 中 | ・AI、IoTを活用した効率化、省人化 | |||
| 気温上昇に伴う健康意識の高まり | 健康需要を満たす製品の需要増加 | 短期 | 中 | ・健康領域商品の販売拡大 | ||
| ・水産物の機能性追求 |
影響時期は、短期(3年以内)、中期(3-10年以内)、長期(10-20年程度)とした。
(ロ)カーボンプライシングの影響
財務インパクトの中でも特に影響が大きかったカーボンプライシングについては、将来CO2排出量(Scope1、2)を2030年売上予測に基づいて算出し、2℃シナリオ、4℃シナリオごとのIEAの予測(注1)による炭素価格を掛け合わせて運営コストの影響金額を算出しました。2030年目標であるCO2排出量を総量で30%削減することにより、グループ全体で2℃シナリオでは56.0億円、4℃シナリオでは17.4億円の削減につながることがわかりました。
| 2℃シナリオ | 4℃シナリオ | ||
| 対応策なし(注2) | 対応策あり(注3) | 対応策なし(注2) | 対応策あり(注3) |
| ▲106.5億円 | ▲50.5億円 | ▲33.1億円 | ▲15.7億円 |
炭素税:2℃シナリオ時 135ドル/t‐CO2、4℃シナリオ時 42ドル/t‐CO2と仮定、為替レートはいずれのシナリオも1ドル=150円と仮定
(注1)IEA World Energy Outlook 2023
(注2)対応策なし:Scope1、2を対象とし、基準年度(2018年度)と同様の原単位でCO2が排出されると仮定
(注3)対応策あり:Scope1、2を対象とし、2030年目標を達成することでCO2排出量が2018年度から30%削減されると仮定
(ハ)天然水産資源(カタクチイワシ・スケソウダラ)の影響評価
調達量が多く重要な魚種であるカタクチイワシとスケソウダラについて、FAOのモデルを使用して2種類のシナリオで2030年、2050年の漁獲可能量の変化を評価しました。その結果、1.5℃シナリオにおいては両魚種ともに微減が予想されました。4℃シナリオにおいては、カタクチイワシは2030年、2050年ともに減少となり、スケソウダラは2030年は微増、2050年は増加が予想されました。2030年時点での漁獲可能量の変化率は大きくないため、財務への影響は軽微であることが確認されました。しかし、2050年の漁獲可能量の変化率は比較的大きいため、特に減少が予想されるカタクチイワシについては、対応策を確実に進めていく必要があります。
漁獲可能量の変化率 (%)

出所:FAO (国連食糧農業機関)「Impacts of climate change on fisheries and aquaculture(2018)」を参考に当社推計
(ニ)水リスクの評価
水リスク評価のグローバルスタンダードのうち、2021年度は世界自然保護基金(WWF)のWater Risk Filterを用いて国内の製造・物流拠点全体の評価を行いましたが、水リスク評価の際には拠点別の影響額を試算するために浸水深のデータが必要であることから、2022年度以降は分析粒度が細かくより精緻なデータ収集が可能である世界資源研究所(WRI)のAqueduct(アキダクト)を用いて、国内・海外の生産・物流拠点別に評価を行いました。
水害による生産中断に伴う機会損失については、各拠点の所在地に示されるAqueductの浸水深により拠点別に運転停止日数・在庫毀損率を特定し、財務影響金額を算定しました。財務への影響は中程度であることを確認しました。また、水ストレス(渇水)については、最も高いリスクレベルに該当する拠点はありませんでしたが、日本、タイ、北米、南米の生産拠点の一部が、水ストレス下にある地域に所在していることがわかりました。今後は継続的に使用水の削減に取り組むとともに、水リスク評価方法の精緻化についても検討を進めていきます。
■Aqueductによる洪水リスク評価結果(拠点数)
| 浸水幅 | 1.5℃/2℃ | 4℃ | ||
| 河川 | 沿岸 | 河川 | 沿岸 | |
| 0m | 59 | 62 | 59 | 62 |
| 0-0.5m | 12 | 8 | 13 | 9 |
| 0.5-1m | 8 | 7 | 7 | 6 |
| 1-2m | 0 | 2 | 0 | 2 |
| 79 | 79 | 79 | 79 | |
■Aqueductによる渇水リスク評価結果(拠点数)と水使用量
| 渇水レベル | 1.5℃/2℃、4℃ | |
| 拠点数 | 2024年度 水使用量(千㎥) | |
| 低(Low) | 32 | 765 |
| 低‐中(Low-medium) | 23 | 2,497 |
| 中‐高(Medium-high) | 22 | 8,348 |
| 高(High) | 2 | 210 |
| 極めて高い(Extremely high) | 0 | 0 |
| 79 | 11,820 | |
(ホ)戦略への反映
シナリオ分析の結果を受けて、中期経営計画「GOOD FOODS Recipe2」でも引き続き、優先度の高い対応策から事業計画に反映し、戦略との整合を図っています。
| 基本戦略 | 項目 | 内容 | |
| 事業ポートフォリオ強化 | グローバル展開の加速 | 北米・欧州を中心とした事業成長 | ●資源アクセス力の強化 ●サステナビリティ情報開示の強化 ●代替タンパク商品の拡大 |
| 新規事業・事業境界領域の開拓 | 社会課題を解決するイノベーティブな食を通じた成長 | ●新規事業開発(藻類関連・廃棄物のアップサイクル等) ●素材の機能性強化 ●養殖技術の深化 | |
| 生産性の革新 | 業務効率化の定着 | ●養殖の高度化(AI・IoT活用) ●スマートファクトリー化 | |
| サステナビリティ経営の 深化 | サステナビリティと事業戦略の連動強化 | 温室効果ガス排出削減 | ●省エネルギー推進、燃料転換、再生可能エネルギーの利活用、モーダルシフト推進 ●養殖事業モデルの先鋭化 ●特定フロンから自然冷媒への移行 ●代替タンパク商品の販売拡大 |
| プラスチック削減 | ●容器包装のプラスチック削減、石油由来バージンプラスチックの低減 ●事業活動に伴う廃プラスチック排出抑制 ●物流資材のプラスチック削減、リサイクル推進 | ||
| 水産資源の持続的な利用 | ●取り扱い水産物の資源状態調査の継続実施 ●各種水産エコラベル認証取得率向上と認証原料の取り扱 い拡大 | ||
| 健康訴求の強化 | ●健康領域商品の拡大 ●素材の機能性強化 | ||