有価証券報告書-第85期(2025/04/01-2026/03/31)

【提出】
2026/06/23 10:20
【資料】
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【項目】
182項目
(2)戦略
①気候変動
当社グループは、土木事業・建築事業・新規事業を対象として、気候変動に関連する中長期的なリスク及び機会を特定しています。
これらのリスク・機会については、複数の気候シナリオ(右記参照)を用いた分析を実施し、2030年及び2050年の時間軸において、当社グループの事業活動及び財務に与える影響を評価しています。財務に与える影響は、その重要性に応じて「大・中・小」の3段階で整理しています。
特に重要性が高いと判断した項目については、リスク低減及び機会獲得の観点から対応策を策定し、事業戦略及び設備投資計画等に反映しています。また、各施策の進捗についてはKPIを設定の上、定期的にモニタリングを実施し、その結果を踏まえて、政策動向や市場環境、技術革新等の外部環境の変化を継続的に把握し、必要な見直しを行うことで、戦略の実効性向上を図っています。
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②生物多様性・自然資本
当社グループの事業活動は、工事用地の地形、植生、水資源等の自然資本に依存しており、自然環境に対して一定の影響を及ぼしています。特に、自然度の高い地域や法的保護地域における施工については、工法の選定や施工時期への制約等を通じてコスト増加や工期延伸といった事業リスクとなる可能性があります。
一方で、環境配慮型施工技術や影響低減技術の高度化・導入は、発注者からの信頼性向上や、環境配慮を重視する案件への対応力強化につながると認識しています。
このような自然資本への依存及び影響を踏まえ、当社グループはTNFD提言に基づき、LEAPアプローチ(※)を活用して、バリューチェーン全体における自然資本との関係性の分析を実施しました。これらの分析結果を施工計画の策定やリスク管理プロセスに反映するとともに、重要性の高い案件については個別管理を行うことで、自然環境への影響と事業リスクの低減を図っています。今後は、定量的な評価手法の高度化及びKPIの整備を進めるとともに、自然資本に関する情報開示の充実を図っていきます。
※1 LEAPアプローチ:自然との接点、自然との依存関係、影響、リスク、機会など、自然関連課題の評価のための統合的なアプローチ手法。Locate(発見する)、Evaluate(診断する)、Assess(評価する)、Prepare(準備する)の4つのステップで分析を行う。
③人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針
当社グループは、技術力の源泉である「人」の成長こそが、持続的な企業価値向上の基盤であると考えています。社是「信用と技術」を次世代へ確実に継承し、変化の激しい経営環境において自律的に挑戦し続ける組織を構築するため、多層的な人材育成施策を展開しています。
主な取組は以下のとおりです。
a.人材育成の基本的アプローチと自律学習の深化
当社グループでは、物事に前向きに取り組み、自ら考え行動し問題を解決できる社員、及び困難な状況にあっても最後までやり遂げ目標を達成できる社員の育成を基本方針としています。この方針を具現化するため、職種ごとに必要なスキルと経験を定義した「人材育成ロードマップ」を運用しています。また、2025年度に導入した「タレントマネジメントシステム」については、蓄積されたデータの「活用フェーズ」へと移行しています。社員の保有スキル、実務経験、保有資格、及び個々のキャリア意向を可視化・分析することで、データに基づく戦略的な適材適所の配置や、個々の成長段階に応じたパーソナライズされた育成プログラムの提供を推進します。あわせて、WEB研修等を活用した「自律学習プログラム」を拡充し、社員が能動的に学び続ける環境を整備しています。
b.体系的な研修制度とキャリア形成支援
将来の当社グループを担う人材を育成するため、若手社員を対象とした階層別教育と、特定の役割を担うための専門教育をそれぞれ独立した体系として重層的に運用しています。
(a) 若手技術者の「基盤形成期」における階層別教育
入社1年目から7年目までの期間を、技術者としての基礎を築く「基盤形成期」と位置づけています。この期間、毎年の年次別研修を必須として実施し、職場での実践(OJT)と連動させながら、段階的に専門知識と安全意識を習得させています。これらは後述する「建設技術総合センター」での実地訓練を効果的に組み込むことで、年次に応じた技術レベルの確実な到達を図る全社共通の育成基盤となっています。
(b) 現場所長・マネジメント人材の専門育成体系
上記の階層別教育とは別に、現場運営や各部門のマネジメントを担うプロフェッショナルを輩出するための、独立した専門教育体系を構築しています。その中核となるのは、建設業の要である現場所長を早期に輩出するための「所長候補者研修」であり、30歳代の選抜社員に対し、施工管理の枠を超えた原価管理、リスクマネジメント、及び協力会社との高度な交渉能力を習得させています。さらに、現役の所長を対象とした「所長研修」をはじめ、「営業研修」や「部長研修」など、職能や役職ごとに求められる高度な専門性と組織運営能力を研鑽する多種多様なプログラムを展開しています。このように、社員がそれぞれのキャリアステップにおいて自律的に専門性を深め、責任ある立場へと成長していくための多層的な支援体制を整えています。
(c) 研修の実効性担保と継続的な改善
各研修の受講後には、職場での行動変容を上司が確認するフォローアップ体制を構築しています。研修内容が実務に即しているかを定期的に検証し、効果測定の結果をプログラムの改善に反映させることで、教育投資の最適化と質の維持を図っています。
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c.安全を担う人づくりと「建設技術総合センター」での実践教育
「安全はすべてに優先する」という当社安全理念のもと、安全教育を人材育成の最優先事項としています。千葉県成田市の「建設技術総合センター」は当社の技術力と安全意識を象徴する施設であり、実物大の鉄道設備(複線実習線、駅ホーム、踏切等)を活用し、実現場では困難な異常時対応訓練や危険体感教育を継続的に実施しています。施設内に設置された「事故の情報展示館」等を通じて過去の事象から学ぶ教育を徹底し、教訓を風化させることなく次世代へ引き継ぐ「安全の感性」の研鑽に注力しています。本施設は協力会社等にも広く開放しており、業界全体の安全レベル向上に貢献しています。
d.DX推進人材の育成とデジタル文化の醸成
「中期経営計画2028」に掲げるデジタル変革を加速させるため、全社員のITリテラシー底上げと、専門的なスキルを持つ人材の育成を推進しています。
(a) デジタルリテラシーの標準化
全社員を対象としたデジタル教育に加え、ITパスポートの取得支援を強力に推進し、組織全体のIT基礎力の向上を図っています。
(b) 実践的なDX推進人材の輩出
選抜社員を対象に、Low-Code/No-Codeツール(Power Platform等)を用いた業務アプリ開発や、BIツールによるデータ分析の実践研修を実施しています。現場の課題を自律的にデジタル化できる「DX推進人材」を計画的に輩出することで、生産性向上(月間12時間の時間創出)と、工事データの利活用による施工品質の向上を追求しています。
e.高度公的資格の取得支援とプロフェッショナル集団の構築
顧客からの信頼の裏付けであり、当社の技術力を客観的に証明する公的資格の取得を、全社を挙げて奨励しています。
(a) 重点資格に対する多角的なサポート
高度専門資格である技術士、一級建築士や建設業の必須資格の一級施工管理技士などを重点資格に指定し、受験費用の補助だけでなく、専門家による論文添削指導や模擬面接の実施など、合格に向けた多角的な支援体制を整えています。
(b) 若手技術者への早期取得奨励
資格取得をキャリア形成の重要な節目と位置づけ、合格時の報奨金支給や表彰を通じて自己研鑽のモチベーションを高めています。これにより、豊富な実務経験に高度な専門知識を兼ね備えたプロフェッショナル集団として、複雑な鉄道工事やインフラ維持管理に的確に対応できる体制を維持・強化しています。
④社内環境の整備に関する方針
当社グループは、社員一人ひとりが安全かつ健康に、高い意欲を持って能力を発揮できる環境こそが、持続的な価値創造の基盤であると考えています。「中期経営計画2028」の達成に向け、以下の4つの柱を中心に社内環境の整備を推進しています。
a.安全文化の深化と信頼の確保に向けた基盤整備
安全の確保は当社の存立基盤であり、いかなる経営環境下においても最優先されるべき事項です。過去に発生した事故の教訓を風化させることなく、全グループ社員及び協力会社一人ひとりに至るまで「安全の感性」を研鑽し続ける風土づくりに注力しています。
具体的には、千葉県成田市の「建設技術総合センター」を活用した実践的な異常時対応訓練を継続するとともに、ICT技術を活用した安全管理の高度化を推進しています。AIカメラによる重機接近検知システムやウェアラブルデバイスを用いた作業員の健康管理など、最新技術を現場に導入することで、ヒューマンエラーによる事故の未然防止を図っています。また、作業所長が主体となって全作業員と対話する「安全教育の日」を定着させ、一方的な指示に留まらない、現場一人ひとりの気づきを活かした双方向の安全活動を実践しています。
b.建設DXによる生産性向上と働き方の改革
長時間労働の是正と休日取得の改善に向け、デジタル技術を駆使した業務改革(DX)を推進しています。現場事務の効率化やリモートによる施工管理体制の構築により、2026年度までに月間12時間の余剰時間を創出することを目標に掲げています。BIM/CIMの活用によるフロントローディングの推進や、ウェアラブルカメラを用いた遠隔臨場の導入等により、生産性の向上と週休二日制の完全実施、有給休暇の取得促進を両立させ、魅力ある就業環境の構築に取り組んでいます。
c.従業員エンゲージメントの向上と対話の促進
当社グループは、持続的な成長に向け、パーパスの浸透を通じた組織風土改革を推進しています。その一環として、当社においては社員の意識や組織の状態を客観的に把握し、職場環境の改善につなげることを目的としたエンゲージメント調査を定期的に実施しています。この調査結果を基に、各部門において現状の課題を共有し、改善に向けた具体的な対話を行うことで、組織の活性化を図っています。当社で蓄積された調査活用の知見や改善のプロセスについては、グループ各社へも共有・展開し、グループ全体の組織力強化に努めています。
また、経営層が支店や作業所を訪問し、現場の社員と直接対話を行う機会を設けることで、経営方針の確実な浸透と、現場が抱える課題や意見を直接聴き取る双方向のコミュニケーションを実践しています。こうした対話を通じて、心理的安全性が高く、社員一人ひとりが自律的に挑戦し、やりがいを持って働くことができる職場環境の整備に注力しています。
d.ワークライフバランスの支援と健康経営の推進
多様なライフステージにある社員が、柔軟にキャリアを継続できるよう、就業環境の多様化を推進しています。フレックスタイム制やテレワークの活用範囲を拡大し、育児や介護と仕事の両立を支援する制度の充実を図っています。特に男性社員の育児休業取得については、取得を当たり前とする文化を醸成するための啓発活動や、代替要員の確保に向けた組織的な支援を行っています。
また、「健康経営優良法人」としての活動を継続し、定期健康診断の受診徹底に加え、ストレスチェック後のフォローアップや産業医による健康相談など、メンタル・フィジカル両面でケアを強化しています。社員が将来にわたって健康で元気に働き続けられることが、企業の持続的成長につながるという認識のもと、ウェルビーイングの向上を支援してまいります。
詳細は、「統合報告書2025 人材戦略」をご参照ください。
⑤人権
当社グループは、責任ある企業活動を促進し、社会全体における人権の保護及び推進に貢献すべく、2023年12月に国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づく「鉄建建設グループ人権方針」を策定しました。当社グループは、鉄建建設の「経営理念」に基づき、安全で良質な社会基盤を創造することを通じて社会の繁栄に貢献するとともに、持続的に成長し家族に誇れる働きがいのある企業をめざしています。この理念のもと、「人権の尊重」を企業活動指針に定め、企業活動における社会的使命を果たすべく取組を推進しています。
本方針は、当社グループで働く役員、従業員、出向・派遣社員等、全ての人に適用されます。また、当社グループのビジネスパートナー、サプライヤー、その他の関係者に対しても、本方針への理解と支持を求め、人権を尊重し、侵害しないよう求めています。当社グループは、全ての利害関係者に対し、人権の保護とその促進への取組を示すとともに、社会への貢献と持続可能な未来の構築に対する責任を明確に表明し、本方針を事業活動の基本的な原則として人権を尊重する取組を進めています。
当社グループは、人権尊重の取組を着実に進めるため、人権デュー・ディリジェンスを実施し、事業活動における人権への顕在的又は潜在的な負の影響に対して、防止、軽減を図っています。また、これらの取組の結果を継続的に評価し対応方針に反映させています。当社グループでは優先して取り組むべき5つの重点課題として、「健康と安全」「差別(性・ジェンダー)」「外国人労働者」「ハラスメント」「労働条件」を特定しました。2025年度はこれらの重点課題を中心に、社員への教育の他、協力会社、その他サプライヤーへのアンケートを実施、調査結果をもとに負の影響に対応することで人権啓発を推進しています。

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