有価証券報告書-第178期(2025/04/01-2026/03/31)
② 戦略
<人的資本経営の取組み>当社グループは企業理念のもと2030ビジョンを掲げ、成長し続ける永続企業(サステナブルカンパニー)を目指しております。これを実現する原動力は「人」そしてその力を最大限に引き出すために、ダイバーシティ&インクルージョン(以降D&I)の推進を、経営戦略の中核に位置づけております。
多様な人材が尊重され、それぞれの違いが価値として活かされる環境こそが、多様化する顧客ニーズに対応し、将来的な価値創出につながる基盤であると捉え、「一人ひとりの個を活かす」というD&Iの根幹となる考え方を基に、2030経営計画と連動した形で、人的資本の価値を最大化するための投資を継続的に行ってまいります。
このように、当社グループが上記の経営戦略を推進するにあたっては、他の経営資本と同等又はそれ以上の割合で、人的資本に依存しております。したがって、以下に記載するような各種取組みは、当社グループにおける人的資本をさらに充実させ、持続可能にする上で、人的資本に一定程度の影響を与えるものと引き続き認識しております。
その上で、当社グループにおける人的資本にかかる機会としては、あらゆる企業活動の根底にある企業理念の存在、従業員の帰属意識やエンゲージメントの相対的な高さ、挑戦を促す人事制度の導入による新たな基盤の構築などが挙げられます。一方で、リスクとしては、労働市場における雇用の流動化や今後予測されるデジタル化の一層の進展による、従業員への能力開発の遅延などが挙げられます。こうした機会やリスクを体系的に認識した上で、当社グループとしては、以下の全体像をもとにして経営戦略と連動した人事戦略を着実に推進してまいります。
人事戦略においては、会社と従業員の相互信頼を基盤に、従業員の幸せを実現するとともに、エンゲージメントを高め、生産性を向上することで、社会に対して持続的な価値を提供し続けることを目指しております。そのために、D&Iの考え方を基軸にして、重要戦略である「人材育成」及び「健康経営の推進」に取り組むことで、従業員の自律的な成長を促し、能力をいかんなく発揮できる環境を整備してまいります。これらの戦略を遂行することで、従業員の「働きがい」と「働きやすさ」の両立を追求するとともに、多様な人材が活躍し、組織としての創造性と競争力を高める「人的資本経営」の実践に取り組んでまいります。

<重要戦略への取組み>取組み1)人材育成
当社グループは全員活躍を掲げ、従業員一人ひとりが活躍できるような風土醸成を目指しております。2022年度より「プロティアン・キャリア(主体的かつ変幻自在なキャリア)」の考え方を中心に据え、従業員のキャリア自律を推進しつつ、「女性」「シニア」といった属性別の活躍に向けた施策も並行して実施しております。また、多様な人材の採用に積極的に取り組んでおります。
こうした考えのもと、「人材育成」については、「経営計画に連動した人材育成」と「個人のキャリア開発」との両立を目指しております。「経営計画に連動した人材育成」として、サクセッションプランの策定・推進、専門人材の確保・育成を実施するとともに、「個人のキャリア開発」を支援する取組み等を充実させております。
a.サクセッションプランの策定・推進
各階層候補者の継続的な育成に向けて、中長期的な視点で取組みを実施しております。
・役員候補
候補者を選抜し、8ヶ月間に及ぶプロフェッショナルコーチとの1対1のコーチングを通して、全社リーダーとしてのあり方などのテーマで、自ら気づきを得る機会を設けております。また、別の候補者を選抜し、グローバルスタンダードの経営哲学や価値観の習得を学ぶ外部研修に1年間派遣しております。それらにより、経営人材要件を備えた人材の継続的な育成に取り組んでおります。
・部長候補
他流試合型研修では、当社で選抜した従業員を派遣し、他社の選抜層とともに社会課題等をテーマにディスカッションを行っております。これにより、社会を捉える視野の拡大や、外部との共創力の醸成を図ってまいります。また、森永レシピ研修は、問題解決のフレームワークを学ぶワークショップで、2019年度にスタートして以降継続して実施しており、累計で約350名の受講者がおります。2026年度も継続して実施してまいります。
・マネジャー候補
30代の選抜社員に対し、9ヶ月にわたって次世代リーダーに求められる要件開発に取り組む研修を実施しております。現在5期まで実施しており、累計の受講者は62名であります。2026年度は5期メンバーのフォロー研修を実施いたします。また、次世代リーダー研修修了者の希望者を対象に、当社に勤務しながら、ベンチャー企業でのプロジェクト業務に副業として短期間参画し、越境体験の中で変化対応力を身に付ける機会を設けております。
b.専門性の高い人材の確保と育成
各業務領域において専門性の高い人材の確保、並びに重点分野を中心に高度な戦略を実行可能な人材の育成に取り組んでおります。2025年度は職務記述書と連動したグローバル人材定義マップによる計画的な育成を開始いたしました。DX人材、経理財務CFO人材についても高度な戦略実行が可能な人材の要件を再確認し、新たな育成プログラムを追加導入しております。2026年度は新たにR&D人材を対象に加え、各重点分野の人材要件に基づきながら全社視点で専門性の高い人材の育成を実施してまいります。
c.自律的な能力開発を推進する主な取組み
・人材育成プログラムによる育成
当社が定義する6つの能力の現状を上司と本人で把握し、さらに伸長させていくための育成メニューと連動させることで、計画的な能力開発に取り組んでおります。具体的には、年に1回、上司と本人が自身の能力に関するアセスメントを実施し、現状把握と能力開発に向けた対話の場を設けております。2025年度からは海外の現地法人など対象を拡大して実施しており、2026年度も継続して実施してまいります。
・従業員のキャリア自律の推進と主体的な学びの支援
従業員のWill・Can・Mustの重なりが増えることがキャリア自律を実現できている状態と捉え、さまざまな施策を組み合わせることでその支援を行っております。その上で、若手・中堅の従業員が自己理解の解像度を高め、変化に対応しようという意欲を持つことが重要と考え、2025年度は全社で約160名を対象に「30代向け対話型キャリアワークショップ」を実施いたしました。実施後のアンケートでは、『目指す姿と周囲からの期待・評価を客観的に捉え直すことができ、新たな気づきを得た』という感想が寄せられるなど、前向きな反応が見られました。

また、自己啓発用社内プラットフォーム「CO-MORI CAMPUS」では、集中的にキャリアに関するイベントや情報発信を実施する「MORINAGA CAREER MONTH」を試行し、参加者のさらなる増加につなげております。一例として、若手社員が目指したい部署で活躍する先輩社員と繋がり、疑問や不安を解消することを目的とした座談会型イベントを実施し、他部署理解の向上を促進しております。2026年度はさらなる活用促進に向けて、プラットフォームでの情報発信や周知強化に取り組んでまいります。

・社内公募
従業員の手挙げによる異動を可能とする仕組みを整備し、一部の部署を対象に運用しております。2025年度は、マーケティング本部や新規事業開発部などを中心に、7つの職種で社内公募を実施いたしました。2026年度も継続して実施してまいります。
d.多様な人材の活躍
・新卒採用
2025年度から品質保証コースを加え、事務系総合職4コース(マルチタレント・セールススペシャリスト・経理・IT)、技術系総合職4コース(研究開発・生産マネジメント・製造エキスパート・品質保証)計8コースにて、個人のキャリア意向や適性を踏まえた人材の採用につながるよう取り組んでおります。
・キャリア採用
2025年度のキャリア採用人数(登用者含む)は、全採用人数の28.9%となっております。今後も計画的に採用を継続してまいります。
・女性活躍推進
2025年度は、社外の女性経営者の基調講演や他社・管理職層との対話から自身のキャリアモデルとなる要素を見つけ、キャリアの軸となる重要な価値観等を再発見することを目的とした女性に特化した研修を実施いたしました。また、営業部門の女性に焦点を当て、彼女たちがより働きやすくなるための環境整備を目的としたプロジェクトにも継続的に取り組んだとともに、変革を実現できるリーダーを育成することを目的とした、外部研修プログラムへ女性従業員を派遣いたしました。さらに、2023年6月よりキャリア相談室を常設化し、育児と仕事の両立も含めた支援も継続しております。当社グループは女性だけでなく様々な背景を持つ多様な人材がより活躍できる労働環境の実現を図るため、D&Iポリシーに基づいた取組みを推進しておりますが、引き続き、女性活躍推進に向けた取組みも継続してまいります。
・ジェンダー平等の推進
多様な人材が意思決定に参画し、能力を発揮することが持続的成長に不可欠であるとの考えのもと、ジェンダー平等の推進に取り組んでおります。社内調査で明らかになったジェンダーに起因する意識や機会のギャップを課題とし、2025年度より全社プログラム「Gempower PROGRAM」を開始いたしました。本プログラムは、GenderとGenerationの視点を取り入れ、意識改革と機会創出の両面から、主体的にキャリアを描き挑戦できる環境づくりを目的としております。
2025年度は、女性管理職のキャリアを紹介するリレーインタビューや国際女性デーに合わせた啓発施策を通じ、理解促進と行動変容を推進いたしました。これまでも女性向け研修や外部研修への派遣、営業部門の働きやすさ向上施策、キャリア相談室の設置などにより支援体制を強化しております。今後もこれらの取組みを通じ、多様な人材の参画を促進し、意思決定の質と事業価値の向上を目指してまいります。
・多様な性の在り方に関する取組み
D&Iポリシーに基づき、LGBTQ+をはじめとする性的マイノリティを重要な多様性の一つと捉え、理解促進と環境整備の両面から取組みを推進しております。これまでに、就業規則における同性パートナーの配偶者認定や、トランスジェンダーに関する医療対応への休暇制度、オールジェンダートイレの設置など、誰もが安心して働ける職場環境の整備を進めてまいりました。
2025年度は、LGBTQ+に特化した外部相談サービスの導入に加え、プライド月間にあわせた社内映画上映会やニュースレター配信、アライワークショップの実施、アライガイドブックの整備、企業横断のアライプロジェクトへの参画など、理解の深化とアライの創出に重点を置いた施策を展開いたしました。これらの継続的な取組みが評価され、「PRIDE指標2025」において最高評価であるゴールドに初認定されました。今後も、性的指向や性自認にかかわらず、すべての従業員が自分らしく力を発揮できる職場環境の実現を目指してまいります。
e.シニア活躍推進
2022年度より50代従業員にキャリア自律の研修を実施しております。この内、Will×Can×Mustを自ら考え直すアンラーニング研修は4年間で累計328名が受講いたしました。また、アンラーニング研修の次ステップとして、自身の強みを市場性×希少性×再現性の観点で明確化する「自分の武器」探索ワークショップも試行し、多角的にキャリアを考え、その実現に向け前進するための施策を実施しております。自己研鑽の取組み事例増に加え、50代以上の従業員に関する社内アンケートでも貢献度が毎年向上しており、役職定年廃止などの人事制度改定を追い風とし、全社的なエイジズム解消に向けた取組みを継続的に実施いたします。
f.要員構成の最適化推進
中長期的視点で重点領域への人材配置のウェートを高めております。また、進捗のモニタリングを強化することで、実効性を担保し、会社としての生産性の向上を図っております。
g.職位者のマネジメント力・育成力の強化
2024年4月に、新たに職位を担うことになった従業員に対して実施する「新任職位者研修」の内容について、「目標達成責任」「人材育成責任」「労務管理責任」を網羅したカリキュラムへと変更いたしました。また、評価を含めた人材育成責任に関するインプットも強化することで、新任職位者のマネジメント力全般の底上げに取り組みました。
また各部門並びに職場において、D&Iの理解と行動を促進するため、さまざまな具体的施策を実施しております。2021年度からは、全社的な取組みとして、マネジメント層を対象にD&Iポリシー浸透研修を継続して実施しており、あわせて、D&Iにおいて重要な要素であるアンコンシャスバイアスに関する研修も行っております。さらに、多様性への理解を深めるためのセミナーやインプットの機会も提供しております。
2025年度にはROICマネジメントを現場に浸透させるため、職位者を対象にした研修を実施いたしました。
取組み2)健康経営の推進
当社グループが永続企業(サステナブルカンパニー)として、心と体をすこやかにする食を創造し、誰もが笑顔で過ごせる持続可能な社会の実現に貢献していくためには、従業員一人ひとりが心身ともに健康であることが重要と考えております。そして、当社グループでは2030ビジョン「ウェルネスカンパニーへ生まれ変わる」を掲げており、下記のとおり、健康経営を推進しております。
a.基本方針と推進体制
・健康宣言
「森永製菓健康宣言」を指針に掲げ、従業員の「心と体の健康」を維持・増進する取組みを支援しております。従業員が健康でやりがいをもって働くことができる職場環境を整備することで、従業員の活力向上や生産性向上等を通した組織の活性化を実現し、当社グループの持続的な成長と社会により良い価値を提供することを目指しております。
・推進体制
代表取締役社長を委員長とする人事委員会の傘下に「健康推進部会」を設置し、「健康管理最高責任者(Chief Health Officer:CHO)」、人事部、森永健康保険組合、統括産業医及び産業保健スタッフで、理念や方針の策定、施策の検討・実施に関する意思決定を行っております。全国の主要事業所に配置される健康管理担当者、安全衛生スタッフが具体的な施策の展開を担い、従業員や家族の健康課題に継続的に向き合い、健康増進を進めております。

b.健康経営を推進する主な取組み
心の健康
・「こころく」
2023年度に従業員・顧客に「心の健康」を提供することを目指し、心が健康な状態を6つの要素で定義した「こころく」を策定いたしました。この「こころく」に基づき、従業員一人ひとりが日々の業務に落とし込み、自発的に行動している状態を推進することで、従業員エンゲージメントの向上と事業活動への貢献を目指しております。これまで、全社的な意識浸透を中心とした取組みを実施してまいりましたが、一定の浸透が図られたことから、現在は、D&I関連の研修において各マネジメント者が策定するアクションプランと「こころく」を連動させ、日々のマネジメントや業務における具体的な行動として実践する取組みへと移行しております。あわせて、経営トップによるメッセージ発信を継続し、当社グループ全従業員に対して、「心の健康」の推進と達成に向けた取組みを進めております。

・メンタルヘルス対策
「こころく」の理解・推進に向けた従業員向けセミナー等を開催しております。自己管理能力の向上やメンタルヘルスに対する意識を高めるため、職位者研修やセルフケアセミナーでの啓発を定期的に実施しております。また、ストレスチェックの受検率は制度導入以降95%以上を維持しており、従業員自らがストレスに気づく機会の提供と集団分析による環境改善に活かしております。さらに、社内外に専門的な相談窓口を設け、従業員が相談しやすい環境も整備しております。
体の健康
・全社健康増進イベント「ハビット」
従業員とご家族の健康づくりと生活習慣改善を目的に、一人ひとりが健康に関する目標を立てて運動や食生活改善などを行う森永健康保険組合独自の取組み「ハビット」は、今年で24回目を迎え、2025年度の参加者も昨年に引き続き2,200名を超えました。
・エイジフレンドリーな職場づくり
職場には様々な年齢層の従業員がおりますが、年齢に関係なく、すべての従業員が活躍するエイジフレンドリーな職場づくりに力を入れております。たとえば、豊富な知識と経験を持つ55歳以上の従業員の安全とさらなる活躍を支援するため、当社グループの工場において教育や体力測定、当社独自の転倒予防体操を展開し、全員が安全かつ健康的に長く働き続けることを目指した取組みを行っております。
労働環境の整備
・ヘルスリテラシーの向上
外部機関などからも講師を迎え、毎年「健康フォーラム」を開催しており、2025年度は「熱中症対策」「依存症に負けない脳の守り方」をテーマに実施いたしました。全国各地より110名以上の従業員がオンラインで参加したほか、2023年度からはお取引先様も招待し開催しております。
・総労働時間短縮に向けた取組み
健康を損ないかねない長時間労働を発生させないため、労働時間管理の精度向上をはじめ様々な施策を実施しております。また労働組合とともに「労働時間対策労使会議」を開催し、現状把握と対策について意見交換を行い、労働環境の改善に努めております。2024年度からは管理職も労働時間管理の対象に含め、取組み範囲を拡大しております。
・労働安全衛生の取組み
企業経営の基盤である労働安全衛生活動を「労働安全衛生方針」に沿って行っております。年齢・経験・言語・雇用関係・働く場所等の一人ひとりの違いにかかわらず、安全で働きやすい職場環境の維持・向上を目指しております。具体的には、従業員の安全と健康を最優先に考えた定期的な安全教育の実施や、職場の安全管理の徹底、事故や災害の予防活動等に取り組んでおります。
取組み3)外部評価
・「健康経営※優良法人2026(大規模法人部門)」認定
当社は「健康経営※優良法人2026(大規模法人部門)」に認定され、今回で9年連続の認定となり上位500法人である「ホワイト500」企業としての認定も受けました。
※健康経営は、NPO法人健康経営研究会の登録商標であります。
・「東京都スポーツ推進企業」認定
2023年度より引き続き、2025年度も「東京都スポーツ推進企業※」の認定を取得いたしました。ウェルネスカンパニーへの生まれ変わりを加速させるためにも、今後も継続的な認定取得を目指してまいります。
※始業時の体操や、ウォーキングイベントなど、従業員が行う運動や健康増進に向けて1つ以上取り組んでいる都内企業等が 認定の対象となるものであります。
取組み4)従業員との対話
従業員のエンゲージメントを高める取組みとして、経営トップと従業員との対話を大切にしております。経営トップが各事業所を訪問し、従業員と対話し、従業員の理解を深めるよう取り組んでまいりました。さらに、CEO・COOの新体制がスタートしたことを受けて、2025年度からは新たにCOOが中心となり、従業員との対話の取組みを継続しております。結果として、2021年度から2025年度にかけて、海外グループ会社を含む約2,700名、計185回にわたり、従業員とのディスカッションを開催し、トップの想いを幅広く共有しております。とりわけ、2023年度から取り組んでまいりました少人数での対話を重視しながら、今後も重要取組みとして従業員との対話を継続してまいります。
<人的資本経営の取組み>当社グループは企業理念のもと2030ビジョンを掲げ、成長し続ける永続企業(サステナブルカンパニー)を目指しております。これを実現する原動力は「人」そしてその力を最大限に引き出すために、ダイバーシティ&インクルージョン(以降D&I)の推進を、経営戦略の中核に位置づけております。
多様な人材が尊重され、それぞれの違いが価値として活かされる環境こそが、多様化する顧客ニーズに対応し、将来的な価値創出につながる基盤であると捉え、「一人ひとりの個を活かす」というD&Iの根幹となる考え方を基に、2030経営計画と連動した形で、人的資本の価値を最大化するための投資を継続的に行ってまいります。
このように、当社グループが上記の経営戦略を推進するにあたっては、他の経営資本と同等又はそれ以上の割合で、人的資本に依存しております。したがって、以下に記載するような各種取組みは、当社グループにおける人的資本をさらに充実させ、持続可能にする上で、人的資本に一定程度の影響を与えるものと引き続き認識しております。
その上で、当社グループにおける人的資本にかかる機会としては、あらゆる企業活動の根底にある企業理念の存在、従業員の帰属意識やエンゲージメントの相対的な高さ、挑戦を促す人事制度の導入による新たな基盤の構築などが挙げられます。一方で、リスクとしては、労働市場における雇用の流動化や今後予測されるデジタル化の一層の進展による、従業員への能力開発の遅延などが挙げられます。こうした機会やリスクを体系的に認識した上で、当社グループとしては、以下の全体像をもとにして経営戦略と連動した人事戦略を着実に推進してまいります。
人事戦略においては、会社と従業員の相互信頼を基盤に、従業員の幸せを実現するとともに、エンゲージメントを高め、生産性を向上することで、社会に対して持続的な価値を提供し続けることを目指しております。そのために、D&Iの考え方を基軸にして、重要戦略である「人材育成」及び「健康経営の推進」に取り組むことで、従業員の自律的な成長を促し、能力をいかんなく発揮できる環境を整備してまいります。これらの戦略を遂行することで、従業員の「働きがい」と「働きやすさ」の両立を追求するとともに、多様な人材が活躍し、組織としての創造性と競争力を高める「人的資本経営」の実践に取り組んでまいります。

<重要戦略への取組み>取組み1)人材育成
当社グループは全員活躍を掲げ、従業員一人ひとりが活躍できるような風土醸成を目指しております。2022年度より「プロティアン・キャリア(主体的かつ変幻自在なキャリア)」の考え方を中心に据え、従業員のキャリア自律を推進しつつ、「女性」「シニア」といった属性別の活躍に向けた施策も並行して実施しております。また、多様な人材の採用に積極的に取り組んでおります。
こうした考えのもと、「人材育成」については、「経営計画に連動した人材育成」と「個人のキャリア開発」との両立を目指しております。「経営計画に連動した人材育成」として、サクセッションプランの策定・推進、専門人材の確保・育成を実施するとともに、「個人のキャリア開発」を支援する取組み等を充実させております。
a.サクセッションプランの策定・推進
各階層候補者の継続的な育成に向けて、中長期的な視点で取組みを実施しております。
・役員候補
候補者を選抜し、8ヶ月間に及ぶプロフェッショナルコーチとの1対1のコーチングを通して、全社リーダーとしてのあり方などのテーマで、自ら気づきを得る機会を設けております。また、別の候補者を選抜し、グローバルスタンダードの経営哲学や価値観の習得を学ぶ外部研修に1年間派遣しております。それらにより、経営人材要件を備えた人材の継続的な育成に取り組んでおります。
・部長候補
他流試合型研修では、当社で選抜した従業員を派遣し、他社の選抜層とともに社会課題等をテーマにディスカッションを行っております。これにより、社会を捉える視野の拡大や、外部との共創力の醸成を図ってまいります。また、森永レシピ研修は、問題解決のフレームワークを学ぶワークショップで、2019年度にスタートして以降継続して実施しており、累計で約350名の受講者がおります。2026年度も継続して実施してまいります。
・マネジャー候補
30代の選抜社員に対し、9ヶ月にわたって次世代リーダーに求められる要件開発に取り組む研修を実施しております。現在5期まで実施しており、累計の受講者は62名であります。2026年度は5期メンバーのフォロー研修を実施いたします。また、次世代リーダー研修修了者の希望者を対象に、当社に勤務しながら、ベンチャー企業でのプロジェクト業務に副業として短期間参画し、越境体験の中で変化対応力を身に付ける機会を設けております。
b.専門性の高い人材の確保と育成
各業務領域において専門性の高い人材の確保、並びに重点分野を中心に高度な戦略を実行可能な人材の育成に取り組んでおります。2025年度は職務記述書と連動したグローバル人材定義マップによる計画的な育成を開始いたしました。DX人材、経理財務CFO人材についても高度な戦略実行が可能な人材の要件を再確認し、新たな育成プログラムを追加導入しております。2026年度は新たにR&D人材を対象に加え、各重点分野の人材要件に基づきながら全社視点で専門性の高い人材の育成を実施してまいります。
c.自律的な能力開発を推進する主な取組み
・人材育成プログラムによる育成
当社が定義する6つの能力の現状を上司と本人で把握し、さらに伸長させていくための育成メニューと連動させることで、計画的な能力開発に取り組んでおります。具体的には、年に1回、上司と本人が自身の能力に関するアセスメントを実施し、現状把握と能力開発に向けた対話の場を設けております。2025年度からは海外の現地法人など対象を拡大して実施しており、2026年度も継続して実施してまいります。
・従業員のキャリア自律の推進と主体的な学びの支援
従業員のWill・Can・Mustの重なりが増えることがキャリア自律を実現できている状態と捉え、さまざまな施策を組み合わせることでその支援を行っております。その上で、若手・中堅の従業員が自己理解の解像度を高め、変化に対応しようという意欲を持つことが重要と考え、2025年度は全社で約160名を対象に「30代向け対話型キャリアワークショップ」を実施いたしました。実施後のアンケートでは、『目指す姿と周囲からの期待・評価を客観的に捉え直すことができ、新たな気づきを得た』という感想が寄せられるなど、前向きな反応が見られました。

また、自己啓発用社内プラットフォーム「CO-MORI CAMPUS」では、集中的にキャリアに関するイベントや情報発信を実施する「MORINAGA CAREER MONTH」を試行し、参加者のさらなる増加につなげております。一例として、若手社員が目指したい部署で活躍する先輩社員と繋がり、疑問や不安を解消することを目的とした座談会型イベントを実施し、他部署理解の向上を促進しております。2026年度はさらなる活用促進に向けて、プラットフォームでの情報発信や周知強化に取り組んでまいります。

・社内公募
従業員の手挙げによる異動を可能とする仕組みを整備し、一部の部署を対象に運用しております。2025年度は、マーケティング本部や新規事業開発部などを中心に、7つの職種で社内公募を実施いたしました。2026年度も継続して実施してまいります。
d.多様な人材の活躍
・新卒採用
2025年度から品質保証コースを加え、事務系総合職4コース(マルチタレント・セールススペシャリスト・経理・IT)、技術系総合職4コース(研究開発・生産マネジメント・製造エキスパート・品質保証)計8コースにて、個人のキャリア意向や適性を踏まえた人材の採用につながるよう取り組んでおります。
・キャリア採用
2025年度のキャリア採用人数(登用者含む)は、全採用人数の28.9%となっております。今後も計画的に採用を継続してまいります。
・女性活躍推進
2025年度は、社外の女性経営者の基調講演や他社・管理職層との対話から自身のキャリアモデルとなる要素を見つけ、キャリアの軸となる重要な価値観等を再発見することを目的とした女性に特化した研修を実施いたしました。また、営業部門の女性に焦点を当て、彼女たちがより働きやすくなるための環境整備を目的としたプロジェクトにも継続的に取り組んだとともに、変革を実現できるリーダーを育成することを目的とした、外部研修プログラムへ女性従業員を派遣いたしました。さらに、2023年6月よりキャリア相談室を常設化し、育児と仕事の両立も含めた支援も継続しております。当社グループは女性だけでなく様々な背景を持つ多様な人材がより活躍できる労働環境の実現を図るため、D&Iポリシーに基づいた取組みを推進しておりますが、引き続き、女性活躍推進に向けた取組みも継続してまいります。
・ジェンダー平等の推進
多様な人材が意思決定に参画し、能力を発揮することが持続的成長に不可欠であるとの考えのもと、ジェンダー平等の推進に取り組んでおります。社内調査で明らかになったジェンダーに起因する意識や機会のギャップを課題とし、2025年度より全社プログラム「Gempower PROGRAM」を開始いたしました。本プログラムは、GenderとGenerationの視点を取り入れ、意識改革と機会創出の両面から、主体的にキャリアを描き挑戦できる環境づくりを目的としております。
2025年度は、女性管理職のキャリアを紹介するリレーインタビューや国際女性デーに合わせた啓発施策を通じ、理解促進と行動変容を推進いたしました。これまでも女性向け研修や外部研修への派遣、営業部門の働きやすさ向上施策、キャリア相談室の設置などにより支援体制を強化しております。今後もこれらの取組みを通じ、多様な人材の参画を促進し、意思決定の質と事業価値の向上を目指してまいります。
・多様な性の在り方に関する取組み
D&Iポリシーに基づき、LGBTQ+をはじめとする性的マイノリティを重要な多様性の一つと捉え、理解促進と環境整備の両面から取組みを推進しております。これまでに、就業規則における同性パートナーの配偶者認定や、トランスジェンダーに関する医療対応への休暇制度、オールジェンダートイレの設置など、誰もが安心して働ける職場環境の整備を進めてまいりました。
2025年度は、LGBTQ+に特化した外部相談サービスの導入に加え、プライド月間にあわせた社内映画上映会やニュースレター配信、アライワークショップの実施、アライガイドブックの整備、企業横断のアライプロジェクトへの参画など、理解の深化とアライの創出に重点を置いた施策を展開いたしました。これらの継続的な取組みが評価され、「PRIDE指標2025」において最高評価であるゴールドに初認定されました。今後も、性的指向や性自認にかかわらず、すべての従業員が自分らしく力を発揮できる職場環境の実現を目指してまいります。
e.シニア活躍推進
2022年度より50代従業員にキャリア自律の研修を実施しております。この内、Will×Can×Mustを自ら考え直すアンラーニング研修は4年間で累計328名が受講いたしました。また、アンラーニング研修の次ステップとして、自身の強みを市場性×希少性×再現性の観点で明確化する「自分の武器」探索ワークショップも試行し、多角的にキャリアを考え、その実現に向け前進するための施策を実施しております。自己研鑽の取組み事例増に加え、50代以上の従業員に関する社内アンケートでも貢献度が毎年向上しており、役職定年廃止などの人事制度改定を追い風とし、全社的なエイジズム解消に向けた取組みを継続的に実施いたします。
f.要員構成の最適化推進
中長期的視点で重点領域への人材配置のウェートを高めております。また、進捗のモニタリングを強化することで、実効性を担保し、会社としての生産性の向上を図っております。
g.職位者のマネジメント力・育成力の強化
2024年4月に、新たに職位を担うことになった従業員に対して実施する「新任職位者研修」の内容について、「目標達成責任」「人材育成責任」「労務管理責任」を網羅したカリキュラムへと変更いたしました。また、評価を含めた人材育成責任に関するインプットも強化することで、新任職位者のマネジメント力全般の底上げに取り組みました。
また各部門並びに職場において、D&Iの理解と行動を促進するため、さまざまな具体的施策を実施しております。2021年度からは、全社的な取組みとして、マネジメント層を対象にD&Iポリシー浸透研修を継続して実施しており、あわせて、D&Iにおいて重要な要素であるアンコンシャスバイアスに関する研修も行っております。さらに、多様性への理解を深めるためのセミナーやインプットの機会も提供しております。
2025年度にはROICマネジメントを現場に浸透させるため、職位者を対象にした研修を実施いたしました。
取組み2)健康経営の推進
当社グループが永続企業(サステナブルカンパニー)として、心と体をすこやかにする食を創造し、誰もが笑顔で過ごせる持続可能な社会の実現に貢献していくためには、従業員一人ひとりが心身ともに健康であることが重要と考えております。そして、当社グループでは2030ビジョン「ウェルネスカンパニーへ生まれ変わる」を掲げており、下記のとおり、健康経営を推進しております。
a.基本方針と推進体制
・健康宣言
「森永製菓健康宣言」を指針に掲げ、従業員の「心と体の健康」を維持・増進する取組みを支援しております。従業員が健康でやりがいをもって働くことができる職場環境を整備することで、従業員の活力向上や生産性向上等を通した組織の活性化を実現し、当社グループの持続的な成長と社会により良い価値を提供することを目指しております。
・推進体制
代表取締役社長を委員長とする人事委員会の傘下に「健康推進部会」を設置し、「健康管理最高責任者(Chief Health Officer:CHO)」、人事部、森永健康保険組合、統括産業医及び産業保健スタッフで、理念や方針の策定、施策の検討・実施に関する意思決定を行っております。全国の主要事業所に配置される健康管理担当者、安全衛生スタッフが具体的な施策の展開を担い、従業員や家族の健康課題に継続的に向き合い、健康増進を進めております。

b.健康経営を推進する主な取組み
心の健康
・「こころく」
2023年度に従業員・顧客に「心の健康」を提供することを目指し、心が健康な状態を6つの要素で定義した「こころく」を策定いたしました。この「こころく」に基づき、従業員一人ひとりが日々の業務に落とし込み、自発的に行動している状態を推進することで、従業員エンゲージメントの向上と事業活動への貢献を目指しております。これまで、全社的な意識浸透を中心とした取組みを実施してまいりましたが、一定の浸透が図られたことから、現在は、D&I関連の研修において各マネジメント者が策定するアクションプランと「こころく」を連動させ、日々のマネジメントや業務における具体的な行動として実践する取組みへと移行しております。あわせて、経営トップによるメッセージ発信を継続し、当社グループ全従業員に対して、「心の健康」の推進と達成に向けた取組みを進めております。

・メンタルヘルス対策
「こころく」の理解・推進に向けた従業員向けセミナー等を開催しております。自己管理能力の向上やメンタルヘルスに対する意識を高めるため、職位者研修やセルフケアセミナーでの啓発を定期的に実施しております。また、ストレスチェックの受検率は制度導入以降95%以上を維持しており、従業員自らがストレスに気づく機会の提供と集団分析による環境改善に活かしております。さらに、社内外に専門的な相談窓口を設け、従業員が相談しやすい環境も整備しております。
体の健康
・全社健康増進イベント「ハビット」
従業員とご家族の健康づくりと生活習慣改善を目的に、一人ひとりが健康に関する目標を立てて運動や食生活改善などを行う森永健康保険組合独自の取組み「ハビット」は、今年で24回目を迎え、2025年度の参加者も昨年に引き続き2,200名を超えました。
・エイジフレンドリーな職場づくり
職場には様々な年齢層の従業員がおりますが、年齢に関係なく、すべての従業員が活躍するエイジフレンドリーな職場づくりに力を入れております。たとえば、豊富な知識と経験を持つ55歳以上の従業員の安全とさらなる活躍を支援するため、当社グループの工場において教育や体力測定、当社独自の転倒予防体操を展開し、全員が安全かつ健康的に長く働き続けることを目指した取組みを行っております。
労働環境の整備
・ヘルスリテラシーの向上
外部機関などからも講師を迎え、毎年「健康フォーラム」を開催しており、2025年度は「熱中症対策」「依存症に負けない脳の守り方」をテーマに実施いたしました。全国各地より110名以上の従業員がオンラインで参加したほか、2023年度からはお取引先様も招待し開催しております。
・総労働時間短縮に向けた取組み
健康を損ないかねない長時間労働を発生させないため、労働時間管理の精度向上をはじめ様々な施策を実施しております。また労働組合とともに「労働時間対策労使会議」を開催し、現状把握と対策について意見交換を行い、労働環境の改善に努めております。2024年度からは管理職も労働時間管理の対象に含め、取組み範囲を拡大しております。
・労働安全衛生の取組み
企業経営の基盤である労働安全衛生活動を「労働安全衛生方針」に沿って行っております。年齢・経験・言語・雇用関係・働く場所等の一人ひとりの違いにかかわらず、安全で働きやすい職場環境の維持・向上を目指しております。具体的には、従業員の安全と健康を最優先に考えた定期的な安全教育の実施や、職場の安全管理の徹底、事故や災害の予防活動等に取り組んでおります。
取組み3)外部評価
・「健康経営※優良法人2026(大規模法人部門)」認定
当社は「健康経営※優良法人2026(大規模法人部門)」に認定され、今回で9年連続の認定となり上位500法人である「ホワイト500」企業としての認定も受けました。
※健康経営は、NPO法人健康経営研究会の登録商標であります。
・「東京都スポーツ推進企業」認定
2023年度より引き続き、2025年度も「東京都スポーツ推進企業※」の認定を取得いたしました。ウェルネスカンパニーへの生まれ変わりを加速させるためにも、今後も継続的な認定取得を目指してまいります。
※始業時の体操や、ウォーキングイベントなど、従業員が行う運動や健康増進に向けて1つ以上取り組んでいる都内企業等が 認定の対象となるものであります。
取組み4)従業員との対話
従業員のエンゲージメントを高める取組みとして、経営トップと従業員との対話を大切にしております。経営トップが各事業所を訪問し、従業員と対話し、従業員の理解を深めるよう取り組んでまいりました。さらに、CEO・COOの新体制がスタートしたことを受けて、2025年度からは新たにCOOが中心となり、従業員との対話の取組みを継続しております。結果として、2021年度から2025年度にかけて、海外グループ会社を含む約2,700名、計185回にわたり、従業員とのディスカッションを開催し、トップの想いを幅広く共有しております。とりわけ、2023年度から取り組んでまいりました少人数での対話を重視しながら、今後も重要取組みとして従業員との対話を継続してまいります。