有価証券報告書-第82期(2025/01/01-2025/12/31)

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2026/03/13 15:43
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150項目
4.戦略
〈 気候変動に関するシナリオ分析(TCFD)〉
①リスク・機会の特定
カゴメグループでは、2050年までに当社グループの温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることを目指して、2030年に向けた温室効果ガス排出量の削減目標を策定し、SBTイニシアチブから「1.5ºC目標(※)」の認定を取得しています。この目標に整合するため、TCFDのシナリオ分析をこれまでの「2ºC」及び「4ºC」シナリオから、「1.5ºC」及び「4ºC」シナリオに変更し、気候変動が事業に与えるリスクと機会を特定しました。
※ 産業革命前からの気温上昇を1.5ºCに抑えるための科学的根拠に基づいた温室効果ガスの排出削減目標
気候変動に関するリスク・機会の一覧
大分類気候変動 リスク・機会影響度発現時期
移行リスク1炭素税導入による炭素税の支払いの増加短~中期
2炭素税の導入による購入した製品サービスや輸送に関わる調達コストの増加短~中期
3GHG排出量削減のための最新技術・設備投資の増加短~中期
4容器包装規制の対応費用の増加短~中期
5電力・エネルギー価格の高騰によるコストの増加短~長期
物理的
リスク
急性6極端な気象現象の増加(工場浸水時の想定損害額や大雨・洪水などの工場不稼働に伴う利益の逸失)短~中期
7降水パターンの変化(渇水による水価格の高騰)短~中期
慢性8降水パターンの変化(地下水位低下による生産コストの増加)短~中期
9気温上昇によるトマト収量減による調達コストの増加短~長期
10高温による農業従事者の生産性の低下に伴う調達コストの増加短~長期
機会1輸送効率化によるコストの削減短~中期
2容器包装の資源効率化によるコストの削減短~中期
3肥料・水使用量の削減によるコスト削減、開発利用・外販による売上の増加短~中期
4サステナブル製品・低炭素製品の開発・販売による売上の増加短~長期
5事業活動の多様化による売上機会の増加短~長期

※分析の時間軸として、短期は中期経営計画の最大4年間、中期は次の長期ビジョン終了年2035年、長期は2050年としています。
※TCFDにおける物理的リスクでは平均気温上昇幅に応じたIPCCの各SSPシナリオ、移行リスクでは主にIEAのNZEシナリオを参照しています。
※影響度は「小」を20億円未満程度、「中」を20~50億円程度、「大」を50億円以上を目安としています。

②リスク・機会による財務影響とその対応策
イ. 気候変動(GHG・炭素税) ~ 気候変動に関するリスク・機会への対応戦略(緩和)~
当社は、炭素税導入やエネルギーコスト上昇を気候変動に関する移行リスクとして認識しています。国際エネルギー機関(IEA)の「世界エネルギー見通し(WEO)」で提示されている気候変動シナリオを参照し、炭素税支払金額、エネルギー需要・価格をもとに影響を予測しました。炭素税導入による支払いコスト増としては、ネットゼロ排出(NZE:1.5ºCシナリオ)では約18億円、公表政策シナリオ(STEPS:4ºCシナリオ)では約16億円のコスト増が見込まれます。
当社は、SBTイニシアチブの認定を取得し、工場のエネルギー効率向上や再生可能エネルギーの活用等の温室効果ガス排出量削減に継続的に取り組みます。また、サプライヤーとの連携を強化し、輸送効率の改善、容器包装をはじめとした原材料調達における温室効果ガスの排出量削減を目指します。
SBT認定
気候変動対策を強化するため、温室効果ガス(GHG)排出量削減の新目標を策定し、2025年に新たなSBTイニシアチブ(※1)の認定を取得しました。今回の更新では、農業など土地利用に関するFLAG削減目標を設定し、Scope3削減目標も上方修正しています。
※1 企業の温室効果ガス排出削減目標が、パリ協定が定める水準と整合していることを認定する国際的イニシアチブ

リスク・機会認識
炭素税導入やエネルギー価格変動
(移行リスクNo.1,2,3,4,5、機会No.1)
財務影響
炭素税導入による支払いコストの増加炭素税導入による調達コストの増加
1.5ºC4ºC1.5ºC4ºC
2030年2030年2030年2030年
18億円16億円222億円190億円

対応策

※2 電力購入契約(Power Purchase Agreement)
ロ. 持続可能な農業 ~ 気候変動に関するリスク・機会への対応戦略(適応)~
気温上昇をはじめとした気候変動がトマトの収量に大きく影響する可能性が懸念されています。2017年6月、米国カリフォルニア州で高温が続き、トマトの収量が平年と比べて16.1%(米国農務省)減少する実害も出ています。
当社グループの原材料トマトの主要産地である同州のトマト収量データをもとに「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書」の各シナリオでの収量変化予測を分析しました。同州における6月の最低気温を分析し、2050年においてSSP1-1.9(1.5ºCシナリオ)では71億円、SSP5-8.5(4ºCシナリオ)では147億円の日本カゴメの調達コスト増が見込まれました。トマトの収量が低下した場合は、実際は生トマト単価やトマト加工品(原材料)の売値が上がり、海外子会社は利益増となるため、グループ全体の利益減となるわけではありません。当社は川上のバリューチェーンを持つことで収益の安定性を保っています。安定的な原材料トマトの確保に向け、気候変動への対応戦略として、高温耐性品種への改良(栽培技術・品種開発)、乾燥耐性品種の開発、節水・減肥栽培技術の導入、新たな産地の開発調査を実施していきます。
リスク・機会認識
気温上昇による農産物への影響
(物理的リスクNo.8,9、機会No.3,4,5)
財務影響
気温上昇に伴うトマトの収量変化によるコスト増加
1.5ºC4ºC
2035年2050年2035年2050年
61億円71億円71億円147億円

算定式: 調達金額の上昇額=「調達額」×「2017年のカリフォルニア州トマト収量USDAデータをもとにした高温による収量減少率」×「IPCCの気温上昇予測」

対応策


ハ. 水 ~ 気候変動に関するリスク・機会への対応戦略(適応) ~
台風や集中豪雨、水害が発生すると、トマトをはじめとする原材料の調達が困難になります。オーストラリア工場では2017年4月、記録的な大雨によってトマトの裂果や病気などで収量が低下し、工場も稼働が停止しました。他方で、カゴメグループは商品の原材料となる作物の栽培に水を使い、加工段階でも多くの水を使用しています。渇水が発生すると水使用コストが増加し、原材料収量が低下する可能性があります。実際に過去に干ばつが発生した際には水価格が400%上昇するなど、渇水によるリスクにさらされています。
カゴメグループの工場では、活動する地域の水資源を守るため、国内6工場、海外7工場で水管理計画を策定し、取水量・排水量、水リサイクル量、排水の水質などを管理して、それぞれの地域に合ったサステナブルな対応を進めています。また、国内6工場と海外7工場を対象に水リスク評価を行い、水リスクが高い海外の優先拠点においては、カゴメグループの各海外工場と現地関係者などでエンゲージメントを行い、各工場や地域に応じた様々な対策を講じています。
さらに、工場に対する水害や渇水の影響に対しては既に小坂井工場に防水壁を設置するなど、国内工場においてはリスク軽減措置を講じています。こうした取り組みをグループ全体に波及させていきます。
リスク・機会認識
水害、渇水による影響
(物理的リスクNo.6,7、機会No.3)

対応策

※2022年:国内全工場ハザード対策完了
二. サステナブル製品・事業活動の多様化 ~ 気候変動に関する機会への対応戦略 ~
気候変動によるリスクに適切に対応していくことで、カゴメグループにとっての事業機会が生まれます。例えば、異常気象や自然災害の増加により、長期保存可能な災害用保存野菜商品の需要が高まり、また、気候変動への関心が高まれば、「できるだけ環境にやさしい商品を選びたい」というサステナブルな選択肢の需要を増加させます。
その一例として、気候変動により災害が増加した場合の長期保存可能(賞味期間5.5年)な災害用保存野菜商品の売上の影響を試算しました。当社災害用保存野菜商品の平均年間売上金額と国土交通省の「気候変動を踏まえた治水計画のあり方」のシナリオ別洪水発生頻度をもとに算定したところ、1.5ºC(2ºC)シナリオでは7億円、4ºCシナリオでは10億円の財務影響(売上収益増)が見込まれました。
また、事業活動の多様化において、カゴメは世界各国の革新的な農業技術を有する優れたスタートアップ企業への出資及び協業を行うCVCファンドを設立しました。このファンドの取り組みにより、気候変動に適応する新品種や栽培技術の開発及び実装を目指すとともに、出資先とのオープンイノベーションによる新事業の開発を目指します。
リスク・機会認識
サステナブル製品の開発・販売、事業活動の多様化
(移行リスクNo.4、物理的リスクNo.10、機会№2,3,4,5)
財務影響
災害用などの長期保存可能な野菜商品の売上収益増加
1.5ºC(2ºC)4ºC
2035年2035年
7億円10億円

算定式: ローリングストック商品平均売上高(2020年-2023年)×洪水発生頻度の上昇率

対応策


〈 自然関連に関するLEAPアプローチ(TNFD)〉
カゴメグループ売上の多くを占める「トマトに関連する事業」を対象範囲として、自然への依存とインパクト、及び自然関連のリスクと機会をTNFDフレームワークのLEAPアプローチによって評価しました。
① Locate:自然との接点の発見
カゴメグループのトマトに関係する事業の自然との接点を、グローバルなデータに基づく評価ツールであるBRFを中心に、一部ENCOREを用いて評価しました。その結果、自然の状況の観点から43拠点を「優先地域の候補」として挙げました。
分析対象(270拠点)
・生鮮事業(14拠点):国内菜園(直轄、契約)
・加工事業(256拠点):国内工場(食品製造、農場)、海外工場(食品製造、農場)、国内委託加工、海外サプライヤー(二次含む)
分析ツールで抽出した優先地域の候補
国内菜園国内工場(食品製造)国内農場海外工場(食品製造)海外農場委託加工海外サプライヤー
区分生鮮事業加工事業加工事業加工事業加工事業加工事業加工事業
優先地域の候補数12拠点なし5拠点8拠点5ヶ国なし13拠点

拠点評価における優先地域の候補と、該当拠点でのトマト購入金額やトマト関連製品生産金額などからの拠点重要度を踏まえ、以下の通り、優先地域を特定しました。
• 日本の菜園、農場
• ポルトガル、米国、オーストラリアの3ヶ国の農場、工場
優先地域
区分拠点詳細
日本菜園、農場国内菜園12拠点、国内農場5拠点
ポルトガル農場6都市・町:Beja、Evora、Leiria、Lisboa、Santarem、Setubal
工場2工場:FIT、KFP
米国農場1州:California
工場2工場:Ingomar、KIU
オーストラリア農場2州:New South Wales、Victoria
工場1工場(KAU)

② Evaluate:依存とインパクトの分析
優先地域、かつBRF分析でリスクが「Very high」となった指標の依存とインパクトについて詳細分析を実施しました。
分析の結果、TCFDで調査した水の供給や物理的リスクへの依存のほかに、土壌や水質(富栄養化)、農地拡大・河川の利用による自然の変化や森林破壊、保護区・保全地域へのインパクトなどを特定しました。またトマトは花粉媒介への依存は低いですが、トマト栽培での農薬による周辺の生態系への影響などのほかへのインパクトについても特定しました。
詳細分析使用ツール
FAO GLoSIS、International Herbicide-Resistant Weed Database、Global Land Analysis and Discovery、Protected Planet、BirdLife International Data Zone、IBAT、Aqueduct、BRF、ENCORE
優先地域における依存・インパクトの特定


③ Assess:リスクと機会の特定
Locate・Evaluateの結果を中心に、食品・農業セクターガイダンスやTCFDの結果も参考にしながら、リスクと機会を整理しました。なお、「生態系サービスの劣化」と「市場原理と非市場原理の一貫性」の2軸で作られたシナリオを活用した分析も実施しました。
自然関連リスク・機会の一覧
大分類中分類No.自然関連 リスク・機会
移行
リスク
政策と法1農薬規制によるトマト収量の減少、調達コストの増加
2森林からトマト畑への土地利用変化により発生したGHG排出量削減コストの増加
3先住民族や地域コミュニティとのエンゲージメント失敗による事業機会の喪失
4バージン食品包装からリサイクル食品包装への代替など、容器包装規制への対応に伴う調達コストの増加
技術5生物多様性の危機への対応のための最新技術・設備投資の増加
市場6農業就業人口の減少に伴う耕作地の荒廃、生物多様性への認知度や対応の低下
評判7トマトの栽培に伴う生物多様性への影響によるブランドイメージの低下
物理的
リスク
急性8病害虫発生などによる生産量の減少
慢性9過剰な施肥に伴う土地の健全性低下、及びトマト収量の減少
10河川などにおける富栄養化による生物多様性の低下
機会製品とサービス1植物残渣(トマトの茎など)のアップサイクル・製品化による売上の増加
市場2農薬リスクを減じたサステナブルな農業で生産したトマトによるブランド価値の向上
評判3在来種、外来種対応によるブランドイメージの向上「外来の土壌害虫まん延防止のためのカゴメトマト品種の活用」
「花粉媒介者を増やす在来植物の植栽支援」


④ Prepare:対応策の検討、開示
Assessで特定した「リスクと機会」に紐付けながら、現時点で対応を進めている活動などを中心に具体的な内容とともに対応策を整理しました。
なお、Locate・Evaluateの結果は、これまでトマトに関する長年の取り組みによって得た知見と大きな齟齬がありませんでした。この結果を受け、これまでの活動の重要性を改めて認識し、引き続き活動を推進していきます。また、今後、地域別のリスク・機会の特定と対応策などについて、検討をさらに進めていく予定です。
対応戦略:「日本の生物多様性を脅かす4つの危機(生物多様性低下の要因)」を踏まえ、日本のみでな
く当社グループが関係する各国の周辺地域に対して自然を保全し、回復させる活動を拡大する
アクション:トマトの栽培を通じて関わる菜園・農場及びその周辺地域と、トマトを加工し製品化する工
場及びその周辺地域において自然を保全し、回復する
No.リスク・機会紐付け自然関連 対応策活動例(現時点及び今後の対応例)
1リスクNo.4
機会No.1
原材料・容器包装の調達、プラスチック包材や食品廃棄物の削減におけるサプライチェーン全体での持続可能な運用の実現に向けた取り組みの推進•FSC®認証紙パック飲料の展開
•プラントベースフードへの取り組み
•食品ロスの削減
•プラスチックストローの貼付廃止や石油から新たに作られるプラスチックの使用量ゼロへの取り組み
•プラスチック使用量の削減やリサイクル素材または植物由来素材への切替拡大
2リスク
No.1,2,5,7,8,9,10
機会No.2,3
最適なトマト栽培システムの開発・確立と運営(水、肥料、農薬使用量の削減、トマト品種の改良、循環型農業の展開)•環境負荷の低い栽培技術の開発
•グローバルでの品種開発、栽培技術の開発強化
3リスク
No.3,6,7機会No.3
自治体や地域コミュニティ、生物多様性の主流化、農業従事者などの支援、在来植物の植栽、保全活動への支援•農業振興・農業支援活動•生物多様性の教育、主流化活動
4基本全てのリスク・
機会に紐付く
・生物多様性行動計画の計画的な推進
・第三者認証の取得拡大
•認証取得やイニシアチブ・団体への参画


「カゴメ野菜生活ファーム富士見」が自然共生サイトに認定
「自然共生サイト」とは、環境省が「民間の取り組み等によって生物多様性の保全が図られている区域」を認定する制度です。
「カゴメ野菜生活ファーム富士見」では、生物多様性の保全に向けて、農地生態系における動植物の保全・復元活動及び環境教育の機会提供を行っていることが評価され、2025年に認定を受けました。

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