有価証券報告書-第101期(2023/04/01-2024/03/31)

【提出】
2024/06/27 10:10
【資料】
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【項目】
161項目
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
2024年度から中期経営計画「Vision 2030 Stage Ⅱ」をスタートしました。その中でパーパスのもと、2050年の当
社のありたい姿を「健康で心豊かな暮らしを実現し、人と社会から愛されるグローバルな会社」と定め、事業活動を
通じて社会課題を解決することで、持続可能な地球環境・社会の実現に貢献し、新たな企業価値を創造し続けます。
(1)ガバナンス
「Vision 2030 Stage Ⅱ」を推進するにあたり、社長直轄であったサステナビリティ推進委員会を取締役会のもとに設置し、統制を強化しました。また、サステナビリティ推進室を新たに設け、サステナビリティ経営の施策の企画立案・推進を加速します。それぞれ具体的な取り組みは、サステナビリティ推進室の傘下にある各チームにて遂行しております。
・ 気候変動対策チーム・・・カーボンニュートラルに向けたCO2排出量の把握・削減やICP(インターナル
カーボンプライシング)の導入、環境配慮型製品の認定制度の設計、生物多様性の
保全を推進
・ 人権デューデリジェンス推進チーム・・・当社グループのみならず、サプライチェーンを含めた人権リスクに
ついて、PDCAを推進
・ 人的資本経営推進チーム・・・当社グループ全体の価値創造の源泉である人的資本の拡充や健康経営を推進
・ 統合報告書制作チーム・・・財務、非財務に係る当社グループの取り組み状況の的確な開示を推進
・ DX推進チーム・・・デジタル人材育成、生成AIの活用などにより生産性を向上し、既存ビジネスの強化と
新規ビジネスの創出を推進
各チームのメンバーは、取締役や執行役員をリーダー・サブリーダー等におき、当社関係部門、並びに関係会社も含めたメンバーで構成されております。
各チームの取り組みや施策については、1年に2回以上開催されるサステナビリティ推進委員会にて審議・報告され、承認事項は、取締役会に諮って決議されます。また、全チームを含めたサステナビリティ推進室の活動進捗状況は、3カ月ごとに取締役会に報告され、取締役会において監督を行っております。
(2)戦略
○気候変動
2023年度は、対象の範囲を当社全グループの全事業(有機化学事業/無機化学事業)へと拡大してシナリオ分析を行い、主な気候変動リスク・機会を外部情報に基づいて整理し、それぞれのリスク・機会に関する将来予想データを収集しました。
これに基づいて、脱炭素社会への移行に伴うリスク・機会と気候変動に起因する物理的リスク・機会について1.5~2℃/4℃シナリオのそれぞれで検討し、当社グループの事業に2050年までに影響を与え得る重要なリスクと機会を分析しました。
今後は、各事業を取りまく環境や社会の変化に応じ、シナリオ分析の見直しを定期的に行っていきます。
表)リスク重要度評価及びシナリオ分析から特定した事業リスク・機会
(時間軸) 短:0-5年、中:5-10年、長:10年以上
(財務影響) 大:±10億円以上、小:±10億円未満
重要なリスク・機会の項目対象事業リスク・機会の説明事業機会・対応
説明時間軸財務影響
移行
リスク
政策/
規制
炭素税の導入、CO2排出量規制の強化有機
無機
CO2排出への炭素税賦課によるコストの増加
(1.5℃:約172億円(2050年)のコスト影響*)
中~長大(▲)・石炭ボイラー等の燃料転換
・生産体制の再構築
・CO2回収及び再生可能エネルギーの利用
技術消費者ニーズの低炭素
型製品への変化
有機無機低環境負荷製品の開発及び生産体制の強化
(財務影響は半導体需要の増加を試算対象として評価)
大(+)・環境負荷低減につながる電子部品(半導体等)や資材(IPM製品)などの拡販
・新技術・新製品の創出(有機:AIやIoT等のスマート農業を視野に入れたIPM製品の開発)
・設備投資/製品の開発時における補助金や補助制度の活用
市場原材料価格の上昇(チタン鉱石・コークスなど)無機調達コスト増や入手難による価格上昇大(▲)・収率の向上と廃棄物の削減
・サプライヤーや業界と連携した調達段階のCO2削減
エネルギー価格の変化有機無機石油・重油・ガス・電気などの急激な価格変化短~中小(▲)・多様なエネルギーミックス
・徹底した省エネ
評判顧客企業の環境配慮の意識の高まり有機無機脱炭素対応が遅れることによる受注減少や投資家評価の低下・積極的な環境負荷低減への取り組み
・情報開示の充実
物理的リスク急性台風や洪水などの極端な異常気象の過酷さの増加有機無機被災による物損コスト及び逸失利益の発生大(▲)・BCP対策の拡充と訓練の実施
・調達先の複数化
・生産バックアップ体制の検討
有機無機拠点の被災リスクが高まることによる保険料の上昇小(▲)・保険契約内容の見直し
有機農家の洪水被害による農薬資材の売上減少小(▲)・異常気象によって発生する新たな課題に対応する資材の開発(耐雨性の高い資材や熱ストレスに対するバイオスティミュラントなど)
・不確実性の高い生態系の変化(病害虫・雑草の発生等)を予測した重点開発・販売国の設定
慢性平均気温の上昇/気象パターンの極端な変動有機生態系の変化に応じた資材を販売することによる売上機会の増加中~長小(+)

*1.5℃シナリオ:2030年の炭素価格130ドル/tCO2、2050年の炭素価格250ドル/tCO2と想定(IEA Net Zero By 2050 参照)
〇人的資本、多様性
2030年までに国内外の社会で起こるとみられる、気候変動や食糧問題をはじめとする数々の変化を前提に、当社グループのパーパスのもと、サステナブルな社会の実現に向けて貢献するとともに、その事業活動を通じて企業価値の向上を両立させるためには、当社グループの価値創造のコアがドライビングフォースとして機能し続けることが必要です。それら価値創造のコアとその拡充に必要と考えられる人事施策である人的資本項目を図のように特定・関連付けております。

「人財が競争力の源泉」であるとの考えのもと、人的資本を拡充し経営戦略の達成につなげるためには、これまでの延長線上にない将来動向を踏まえ、新たな挑戦による改革・変革を評価する文化と仕組みが必要であることから、図のように当社グループの人財マネジメント方針を策定しました。これを常に人財に対する考え方の軸とすることで、会社のパーパスと個人のキャリアビジョンが重なりあい、会社と共に個人も成長できるようにすることを目指しております。

特に人財育成においては、目指す人財像を「ものごとの基本を理解し、実践した上で“変える”ために、“変わる”ことのできる人」と定めており、その具体化として以下の5つを掲げ、その実現のための研修教育体系を整えております。
1.プロフェッショナルとしての責任感を持ち、高い成果を生み出す人財
2.変化に対し、敏感・柔軟で、難局を乗り越える力のある人財
3.会社の進むべき道、取り組むべき課題を捉え、推進する人財
4.常に一段上、一歩前を目指し、進化し続ける人財
5.ステークホルダーと協働し、仕事を通じてともに成長できる人財
今後も「Vision 2030」の達成に向け、当該人財を育成するための施策、また当該人財が定着するための環境整備を推進するとともに、事業及びその事業環境の変化に応じ、必要なタイミングで戦略・施策の見直しや追加を実施します。
(3)リスク管理
当社グループは、16のマテリアリティ(重要課題)の中から、8つの最重要課題「気候変動・環境負荷低減」「技術開発力」「サプライチェーンマネジメント」「労働安全衛生・保安防災」「ダイバーシティ&インクルージョン」「BCP、リスクマネジメント」「コーポレート・ガバナンス」「DXの推進、業務効率化による働き方改革」を特定しております。
当社グループとして特に「気候変動対策の推進」、「人権リスクへの対応」や「人的資本経営の推進」は喫緊の重要課題であることを認識し、サステナビリティ推進室のもとに気候変動対策チーム、人権デューデリジェンス推進チーム並びに人的資本経営推進チームを設置しております。
各チームでは、気候変動、人権、並びに人的資本経営に係るリスクの検討を行い、その結果をサステナビリティ推進委員会で評価・管理し、必要に応じて企業リスク管理委員会への報告を行っております。
(4)指標及び目標
○気候変動
当社グループはCO2排出量(Scope1+Scope2)の削減目標を下記の通りに設定しております。今後も引き続きカーボンニュートラルに向けた排出量削減に取り組むことにより、気候変動影響の緩和と適応を推進してまいります。目標と2022年度までの進捗は、以下の通りです。2022年度からScope1+Scope2について、これまで算出していた当社国内グループ会社に加え、海外グループ会社の排出量も算出し、当社グループ全体を把握しました。さらに、サプライチェーン排出量であるScope3も算出し、当社グループの事業活動に伴うGHG排出量の全体像を把握しました。
2030年:CO2排出量30%削減を目指す(2019年度比)
2050年:カーボンニュートラル(実質排出ゼロ)に挑戦する

表)当社グループの温室効果ガス(GHG)排出量[千t-CO2]
GHG排出量
(千t-CO2)
2019年度
(基準年)
2020年度2021年度2022年度
Scope1471408488476
Scope220192322
合計490427511498

GHG排出量はGHGプロトコルに基づき算定
表)Scope3のGHG排出量[千t-CO2]
Scope3カテゴリ算出範囲2022年度
カテゴリ1購入した製品・サービス単体444.23
カテゴリ2資本財連結14.55
カテゴリ3Scope1、2に含まれない
燃料及びエネルギー関連活動
連結52.71
カテゴリ4輸送・配送(上流)単体4.33
カテゴリ5事業活動から出る廃棄物国内連結3.00
カテゴリ6出張連結0.23
カテゴリ7雇用者の通勤単体0.47
Scope3排出量合計519.52

当社の主力生産拠点である四日市工場では、石炭火力によるコージェネレーションシステムにより、最適なエネルギーコストを実現し生産活動を行ってきました。今後は、無機化学事業の構造改革に合わせ、当社グループ全体で、段階的にCO2排出量を削減し、カーボンニュートラルに挑戦してまいります。

〇人的資本、多様性
価値創造のコアに関連するものとして特定した項目について、その指標と目標を以下のように設定しております。
人的資本項目KPI
目標数値目標年度2023年度実績
外部ナレッジ活用中途採用者比率安定的に50%以上継続57.4%
開発力指数研究職人員比率20%以上2030年度22.4%
エンゲージメント向上エンゲージメント指数※14.72030年度4.55
離職率(自己都合退職)※13%以下継続2.9%
人材育成従業員一人あたり研修費※16万円/人以上2024年度6.2万円/人
柔軟な働き方育児休業取得率男性60%
女性100%
2026年度男性55%
女性100%
有給休暇取得率※180%以上2030年度82.8%
安全衛生労働災害度数率※20達成2024年度0
女性活躍女性管理職比率10%以上2026年度9.1%
採用者の女性比率※130%以上2030年度36.8%
組織強化・推進力向上サステナビリティ専任部門創設(定性的事項)2021年実施済み

(注) 特に記載がない限り、単体の集計値を記載
※1 出向者の取扱いについては、社外への出向者を含め、社外からの出向者を除くものとしております。
※2 単体生産拠点のみで算出しております。