有価証券報告書-第18期(2022/04/01-2023/03/31)
② 戦略
地球への環境負荷が増大する中、持続可能な社会が実現されなければ、企業活動を行っていくことはできません。特に、生命関連製品である医薬品は、気象災害の激甚化に伴うサプライチェーンの寸断や医薬品供給能力の低下は大きな事業リスクであり、社会リスクでもあります。したがって、当社事業の環境負荷低減・脱炭素化を推し進めていくと同時に、ビジネスパートナーとの協働によりサプライチェーン全体の脱炭素化も推進し、カーボンニュートラルの達成と物理的影響を緩和することが重要であると考えています。
一方で、CO2排出量は事業から直接排出される排出量(Scope1、Scope2)は少なく、サプライチェーンから排出される排出量(Scope3)が多いことが特徴です。このような認識に基づき、気候変動に伴う当社ビジネスへの影響を把握し、当社のレジリエンス(強靭性)を明確にするため、シナリオ分析を実施しました。
(ⅰ)シナリオ分析の方法
2021年度には部門横断のタスクチームを立ち上げ、関係部門に対し、シナリオ分析の概要及びIEA(国際エネルギー機関)・ IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が公表するネットゼロシナリオなどに関する勉強会を実施し、2030年以降の事業リスク及び機会について検討を行いました。IEA・ IPCCのシナリオを用い、「移行」及び「物理」双方について、バリューチェーン全体のリスク・機会を洗い出し、洗い出されたリスク・機会については、2022年度にEHS経営委員会で審議・評価を行い、承認を受けています。具体的には「調達」「直接操業」「製品・サービス需要」の観点からリスク・機会を洗い出し、6つに分類しました。IEA・IPCCの脱炭素化シナリオ(1.5℃)と、脱炭素化が達成されないシナリオ(4℃)について選択したのは、移行リスク・物理的リスクの両方において、その極端なケースを想定し、予め備えることが重要であると判断したためです。それぞれについて、「発生頻度」「事業影響・財務影響」「投資家の関心有無」の観点から2030年と2050年までを対象に総合的なリスク・機会の評価を実施し、事業への潜在的影響及びレジリエンスを整理しました。
(ⅱ)シナリオ分析の結果と第一三共のレジリエンス
1.5℃シナリオ(移行が進んだ世界)
4℃シナリオ(物理的影響が大きくなる世界)
*影響度は、軽微(1億円未満)、小(1億円~50億円)、中(50億円~100億円)、大(100億円~300億円)を基準に評価
*事業リスクは影響度と発生頻度を考慮し総合的に評価
事業活動に対する直接的な移行リスクは限定的であると認識していますが、サプライチェーンについては、今後、炭素税や移行対策などのコスト上昇がリスクとして考えられます。また、物理的リスクについては、気象災害などの激甚化による安定供給についての懸念があります。このような分析結果に基づき、移行リスクについてはこれまでの省エネ対策の推進に加え、再生可能エネルギーの活用や脱炭素技術の導入、ビジネスパートナーとの協働により、炭素税などの負担回避によるコスト低減を機会として創出していきます。また、物理的リスクについては、水害対策を含めたBCPの深化、サプライチェーンの安定性を高める予防策の実施、多様性の確保、支援策の確保、代替策の確保等の対策を実施することで、当社グループにおける毀損を回避し、持続的な企業価値向上を目指していきます。 シナリオ分析で評価・特定された重要なリスク対策については、EHS経営委員会及び取締役会でグループ全体の進捗管理を行っていきます。
地球への環境負荷が増大する中、持続可能な社会が実現されなければ、企業活動を行っていくことはできません。特に、生命関連製品である医薬品は、気象災害の激甚化に伴うサプライチェーンの寸断や医薬品供給能力の低下は大きな事業リスクであり、社会リスクでもあります。したがって、当社事業の環境負荷低減・脱炭素化を推し進めていくと同時に、ビジネスパートナーとの協働によりサプライチェーン全体の脱炭素化も推進し、カーボンニュートラルの達成と物理的影響を緩和することが重要であると考えています。
一方で、CO2排出量は事業から直接排出される排出量(Scope1、Scope2)は少なく、サプライチェーンから排出される排出量(Scope3)が多いことが特徴です。このような認識に基づき、気候変動に伴う当社ビジネスへの影響を把握し、当社のレジリエンス(強靭性)を明確にするため、シナリオ分析を実施しました。
(ⅰ)シナリオ分析の方法
2021年度には部門横断のタスクチームを立ち上げ、関係部門に対し、シナリオ分析の概要及びIEA(国際エネルギー機関)・ IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が公表するネットゼロシナリオなどに関する勉強会を実施し、2030年以降の事業リスク及び機会について検討を行いました。IEA・ IPCCのシナリオを用い、「移行」及び「物理」双方について、バリューチェーン全体のリスク・機会を洗い出し、洗い出されたリスク・機会については、2022年度にEHS経営委員会で審議・評価を行い、承認を受けています。具体的には「調達」「直接操業」「製品・サービス需要」の観点からリスク・機会を洗い出し、6つに分類しました。IEA・IPCCの脱炭素化シナリオ(1.5℃)と、脱炭素化が達成されないシナリオ(4℃)について選択したのは、移行リスク・物理的リスクの両方において、その極端なケースを想定し、予め備えることが重要であると判断したためです。それぞれについて、「発生頻度」「事業影響・財務影響」「投資家の関心有無」の観点から2030年と2050年までを対象に総合的なリスク・機会の評価を実施し、事業への潜在的影響及びレジリエンスを整理しました。
(ⅱ)シナリオ分析の結果と第一三共のレジリエンス
1.5℃シナリオ(移行が進んだ世界)
| 環境の変化 | リスク・機会 | 当社グループへの潜在的影響 | 影響度 | 当社グループのレジリエンス | 事業リスク |
| 脱炭素関連の政策・法規制強化 | 炭素税導入 | 2030年時点の炭素税が130$/t-CO2に上昇すると想定しても、年間のコスト負担は約15億円~30億円。 | 小 | 財務的インパクトは限定的であり、1.5℃目標に引き上げた気候変動対策を推進することで更に軽微なものにしていく。 | 低 |
| 再エネ導入に伴う炭素税負担回避 | 将来的な炭素税導入・上昇の対策として、再エネ調達による排出量削減が重要。 | 小 | 再生可能エネルギーを積極的に活用することにより、2030年時点の年間の炭素税負担回避額は約16億円~32億円。 国内外事業所の電力は、2030年度までに100%再生可能エネルギー由来に転換する。 | 機会 | |
| 再エネ設備導入コスト増 | エネルギー源は電気・ガスが中心。地域によっては既に再エネ電力を調達。 既存の電力をすべて再エネにした場合、年間のコスト負担は約3~6億円。 | 小 | 再エネ・省エネ設備の追加費用は低下傾向であり、対策の推進によりコスト削減に繋げる。 | 低/機会 | |
| エネルギーコスト等増加 | エネルギー事業会社の脱炭素対策が実施されるが、対策自体の導入・運用コストが増加すると将来的なエネルギー調達コスト増を予想。 | 小 | 化石燃料由来のエネルギーコストの上昇が予想されるが、現時点では影響は限定的。 | 低 | |
| 調達コストへの価格転嫁 | ビジネスパートナーが自らの炭素税負担を価格転嫁することで調達コストが上昇する可能性があり、供給網全体での排出量削減が重要。 | 中 | ビジネスパートナーとの協働により、Scope3の削減を進め、炭素税負担の回避に繋げることで調達コストの上昇を抑える。 | 低/機会 | |
| 企業評価に対する脱炭素への取組の影響増大 | 企業価値の増大 | 脱炭素への取組がESG投資家から評価され、株価上昇など企業価値向上。 | 大 | 脱炭素社会に向けた取り組み、TCFD提言への積極的な対応、株主・投資家の期待に応える情報開示を行うことで評価向上に繋げる。 | 機会 |
4℃シナリオ(物理的影響が大きくなる世界)
| 環境の変化 | リスク・機会 | 当社グループへの潜在的影響 | 影響度 | 当社グループのレジリエンス | 事業リスク |
| 気象災害(大雨・洪水・台風)の発生頻度増、規模拡大 | サプライチェーン寸断 | 安定供給に支障をきたすリスクの高まり。 生産・出荷不能により、工場停止や売上減などのリスク。 | 大 | 在庫管理を強化し、災害時でも安定供給に努める 複数社からの購買を実施、複数社から購買できていない原料については今後検討していく。 | 中 |
| 自社拠点の一時操業停止 | 重要な研究・製造拠点が浸水する可能性(水災リスクは総計約94億円)。 製造拠点の一部は河川に近くとも浸水の可能性は低いが、交通寸断などにより一時操業停止の可能性。 | 大 | 事業継続計画(BCP)の観点から拠点の水災リスク評価を実施し、強靭化を進めている。 緊急事態訓練における洪水対応・減災対策を強化し、水災マニュアルの整備・実証を担保してレジリエンスを高める。 | 低 | |
| 異常気象(浸水)による不良在庫化 | 物流拠点などの浸水に伴い、操業停止に加えて製品在庫も被害を受ける可能性。 | ||||
| 気温上昇 | 気候変動に伴う疾患増加等 | 悪性黒色腫、循環器、呼吸器疾患、各種熱帯病などに対する関連医薬品の需要拡大と社会からの要請・期待の高まり。 疾病構造の変化に伴う既存製品の需要減少の可能性。 | 大 | 需要拡大に応える生産ラインの確保、在庫管理強化に努める。 疾病構造の変化やパンデミックも含め、アンメットメディカルニーズ・社会要請の高い疾患に対する研究開発を外部リソースとの連携も合わせ検討する。 | 中/機会 |
| 空調設備のコスト増 | 本社、研究開発、製造拠点ともに屋内作業が基本であり、気温上昇に伴い空調コスト増が予想されるが影響は限定的。 | 軽微 | コスト増は吸収可能な範囲であり、財務影響は軽微であるが、引き続きエネルギー効率改善に努める。 | 低 | |
| 保険料/BCPコストの増加 | 気温上昇に伴う風水害の激甚化により、現在でも火災保険料が上昇傾向にある。ただし、将来的な保険料の上昇見通しは限定的。 | 軽微 | 日本では4℃上昇時、洪水発生頻度が4倍上昇すると予想されているが、その結果、保険料が数倍に上昇したとしても財務影響は軽微である。 | 低 |
| 環境の変化 | リスク・機会 | 当社グループへの潜在的影響 | 影響度 | 当社グループのレジリエンス | 事業リスク |
| 水不足 | 自社拠点の一時操業停止 | 最も取水リスクの高い工場である中国とブラジルでの操業停止の可能性。 その他地域で想定を超える短期的な渇水の可能性。 | 中 | 雨水タンク設置・リサイクル水活用などの渇水対策を推進する。 長期に渡り渇水となった場合、薬事規制の動向をみつつ、他拠点活用・製造委託などの緊急時供給対応を検討する。 | 中 |
| 生物多様性の喪失 | 天然化合物由来製品の生産性低下 | 生物多様性の喪失により原料が入手できず生産が止まってしまった場合、約20億円/年の損失を予想。 | 中 | 数年分の原料在庫は確保されており、リスクが顕在化する前に迅速な対応を実施する。 | 低 |
*影響度は、軽微(1億円未満)、小(1億円~50億円)、中(50億円~100億円)、大(100億円~300億円)を基準に評価
*事業リスクは影響度と発生頻度を考慮し総合的に評価
事業活動に対する直接的な移行リスクは限定的であると認識していますが、サプライチェーンについては、今後、炭素税や移行対策などのコスト上昇がリスクとして考えられます。また、物理的リスクについては、気象災害などの激甚化による安定供給についての懸念があります。このような分析結果に基づき、移行リスクについてはこれまでの省エネ対策の推進に加え、再生可能エネルギーの活用や脱炭素技術の導入、ビジネスパートナーとの協働により、炭素税などの負担回避によるコスト低減を機会として創出していきます。また、物理的リスクについては、水害対策を含めたBCPの深化、サプライチェーンの安定性を高める予防策の実施、多様性の確保、支援策の確保、代替策の確保等の対策を実施することで、当社グループにおける毀損を回避し、持続的な企業価値向上を目指していきます。 シナリオ分析で評価・特定された重要なリスク対策については、EHS経営委員会及び取締役会でグループ全体の進捗管理を行っていきます。