訂正有価証券報告書-第21期(2025/04/01-2026/03/31)
(ⅰ) 第5期中期経営計画の振り返り
第5期中期経営計画(2021-2025年度)では、「3ADC最大化の実現」、「既存事業・製品の利益成長」、「更なる成長の柱の見極めと構築」、「ステークホルダーとの価値共創」の4つの戦略の柱を掲げ、2025年度目標である「がんに強みをもつ先進的グローバル創薬企業」を実現し成長ステージに移行できるよう取り組んで参りました。その結果、エンハーツの着実な市場浸透、上市国・地域の拡大、新適応取得による当初計画を上回るペースでの売上収益拡大、ダトロウェイの承認及び追加の適応取得により、世界中の患者さんに新たな治療の選択肢を提供するとともに、2025年度目標実現に向けた成長を牽引いたしました。
サステナブルな社会の発展に貢献するため、長期視点でサステナビリティ経営を進めていく上で、患者さん、医療関係者、株主・投資家、社会・環境、従業員といった「ステークホルダーとの価値共創」も重要な課題でありました。当社グループでは、中長期的な企業価値への影響と社会からの期待の両面からマテリアリティを特定し、「革新的な医薬品の創出」、「高品質な医薬品の安定供給」、「医療アクセスの拡大」、「環境経営の推進」、「多様な人材の活躍推進と育成」等のマテリアリティと連動したKPIを設定・管理して参りました。マテリアリティへの対応として、日本における初のCOVID-19に対するmRNAワクチンであるダイチロナ筋注(1価:オミクロン株 JN.1)の供給によるパンデミックリスクへの対応や、国際イニシアチブである「RE100」への加盟を含む自社拠点における使用電力の再生可能エネルギー化、及びバリューチェーン全体での環境負荷低減の取組等を進めて参りました。
(ⅱ) 第6期中期経営計画及びサステナビリティ関連の方針
第5期中期経営計画を通じて、当社グループが掲げた2025年度目標である「がんに強みを持つ先進的グローバル創薬企業」を実現したことから、第6期中期経営計画(2026-2030年度)の策定にあたり、新たに2035年ビジョン「Trusted healthcare innovator transforming the lives of people through our science and technology」を設定いたしました。あわせて、第5期中期経営計画で掲げた2030年ビジョン「サステナブルな社会の発展に貢献する先進的グローバルヘルスケアカンパニー」を2030年度に向けた具体的な目標として改めて位置づけました。第6期中期経営計画は、価値創造プロセスの循環のもと、2030年度目標の達成を通じて、2035年ビジョンの実現に向けたさらなる成長ステージに移行するための計画であります。

当社グループの長期ビジョン、第6期中期経営計画については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
(a) 「Be a Global Top 5 Oncology Company by 2035」
(b) 「Identify next BGTs by 2030」
(c) 「Operational Excellence」
(d) 「Be a trusted partner for sustainable society」
(e) 「気候」関連
ア.「気候」関連のリスクが戦略や意思決定に与える影響
・シナリオ分析の手法及び実施期間
当社グループは2024年度に、グループ全体(バリューチェーンを含む)を対象として気候シナリオ分析を実施いたしました。分析にあたっては、脱炭素社会への移行を想定するIEA WEO2021 SDS・IEA NZE2050(1.5℃シナリオ)及び物理的リスクの深刻化を想定するIPCC RCP8.5(4℃シナリオ)を採用し、2030年及び2050年の時間軸でリスク・機会を評価しております。1.5℃シナリオにおいては、脱炭素政策・規制の強化により調達・物流を含むコスト増や供給制約が生じ得ることを想定しております。4℃シナリオにおいては、豪雨・洪水・台風の頻発・規模拡大、気温上昇、干ばつ等による水不足(特に米国・中国・ブラジルでの操業影響)を想定しております。なお、今後も外部環境の変化に応じて定量化の拡充及び開示対象の見直しを継続的に行って参ります。
・「気候」関連の移行計画
当社グループは、脱炭素社会への移行は中長期的に避けられない潮流であると認識しており、早期から積極的に投資・体制整備を進めることが、将来リスクへの備えとなるとともに、長期的な企業価値の向上につながると判断しております。2050年ネットゼロ達成を前提に、2015年度を基準年として段階的な削減目標(2025年度:Scope1及びScope2で2015年比42%削減、2030年度:同63%削減、2040年度:Scope1及びScope2ネットゼロ、2050年度:Scope3を含むサプライチェーン全体でネットゼロ)を設定しており、これらを投資・調達・運用・物流・サプライヤー協働に係る中長期戦略及び主要な意思決定に反映しております。
具体的な施策として、省エネルギー活動の強化(省エネ・脱炭素機器の導入及び運用改善)、再生可能エネルギー由来電力の100%導入、営業車両のEV化、持続可能な燃料(SAF等)の活用やモーダルシフト・共同配送等の物流施策、及びサプライヤーとの連携による脱炭素化等を、移行計画ロードマップに沿って推進しております。あわせて、CCUS(注)等の革新的技術についても導入の可能性を検討して参ります。
これらの施策の実行にあたっては、移行計画に関連する投資・費用を第6期中期経営計画及び年度予算に組み込み、CO₂削減効果や将来の炭素税等のコスト負担等を考慮のうえ、脱炭素推進に向けた重要施策を特定し、当該施策に関連する予算を優先的に配分することを検討しております。また、Scope3削減に向けては、サプライヤーとの定期的な対話・情報収集の仕組みを整備し、サプライチェーン全体での脱炭素化を推進しております。なお、削減目標の詳細は「⑤ 指標及び目標 (ⅰ)「気候」関連」をご参照ください。
上記の移行計画に基づき、第6期中期EHS経営方針において「バリューチェーン全体での脱炭素施策を推進し、気候変動緩和に貢献する」ことを掲げ、各種施策・取組を推進しております。
(注)Carbon Capture, Utilization and Storage/二酸化炭素を回収し有効利用又は地中等への貯留を行う技術の総称
<主なトレードオフ>再生可能エネルギーの導入やサプライチェーンの強靭化は短期的には調達コストや製造原価の上昇要因となります。しかしながら、将来的な炭素税負担の回避や社会的信用の維持が中長期的な企業価値向上に不可欠であると判断し、短期的なコスト増加を許容しております。
また、環境投資が他の投資案件に劣後することを防ぐため、温室効果ガス削減効果を経済価値として定量評価する手法として内部炭素価格(ICP)の導入を検討しており、将来的に設備投資判断へ活用することで、環境対応設備への投資促進を図って参ります。
・気候関連のリスクに関する対応
<サプライチェーン寸断(物理的リスク)への対応>気象災害の激甚化に起因するサプライチェーン寸断リスクへの対応として、当社グループは、重要製品の安全在庫水準の見直し及び代替調達先の確保に取り組んでおり、主要製品を対象に代替調達体制の整備を実施いたしました。なお、在庫の積み増しによる供給リスク低減と運転資本の増加に伴う資本効率への影響はトレードオフの関係にあることを認識しており、需要予測の高度化や在庫配置の最適化を通じて過剰在庫の抑制に努め、両者のバランスを図っております。
<自社拠点の水不足に伴う一時操業停止(物理的リスク)への対応>水ストレスの長期的な深刻化を起因とする自社拠点の水不足リスクへの対応として、当社グループは、2024年度においてWRI Aqueductを活用した製造拠点の水リスク評価を実施し、優先的に対応すべき拠点の把握を行っております。現在、特定された優先拠点を対象に、水処理設備・再利用設備の導入に向けた検討をしております。なお、設備投資による水使用量削減・安定操業の維持と、投資負担に伴う資本効率への影響はトレードオフの関係にあることを認識しており、再生可能エネルギーの活用や工程全体の効率改善との統合的な取組を通じて、水資源の保護・環境負荷の抑制と投資効率の両立を図って参ります。
イ.気候レジリエンス
・物理的リスクに対する戦略及びビジネスモデルの調整能力
当社グループは、第6期中期経営計画期間において、防災設備への投資や戦略在庫の確保に必要な経営資源を配分する方針としております。設備投資予算及び運転資本の範囲内で機動的に対応するとともに、サプライチェーンの可視化を進め、リスクの早期把握や代替調達先への切替えを円滑に行う体制の整備を進めております。
<サプライチェーン寸断(物的リスク)に関するレジリエンス>当社グループは、BCPの観点から拠点ごとの水災リスクを評価し、防災対策の強化を進めております。あわせて、洪水対応を含む緊急時訓練やマニュアル整備を実施し、初動対応力の向上に努めております。また、製品の安定供給に向けて、一定の在庫を確保するとともに、複数調達の推進により調達先の分散を図っております。さらに、防災情報サービス等を活用し、調達先の被災状況を速やかに把握できる体制の整備を進めております。これらの取組により、供給途絶の影響を一定程度抑制できる可能性があると考えております。
<自社拠点の水不足に伴う一時操業停止(物理的リスク)に関するレジリエンス>当社グループは、拠点ごとの水リスク評価を進めるとともに、一部の高リスク拠点においては雨水利用設備や節水設備の導入・再利用水の活用を進めております。他拠点での代替生産や製造委託の活用についても検討し、緊急時の供給継続能力の向上に努めております。これらの対応により、操業停止リスクの低減につながる可能性があります。
・不確実性の領域
気候関連のリスク及び機会の評価にあたっては、各国の気候政策の導入時期や内容、温室効果ガス規制の強化の程度、技術進展の速度、気象災害の頻度及び強度、水資源の地域別の利用可能性等に不確実性があると認識しております。規制負担の水準や関連技術の普及動向については、当社グループの財務影響や対応方針の判断に影響を及ぼす可能性があることから、継続的にモニタリングを行って参ります。
・気候レジリエンスの評価
当社グループは、短期・中期・長期の時間軸で気候レジリエンスを評価しております。短期的には定期的な指標確認を通じて省エネルギー・再生可能エネルギー利用・BCP対応の改善を、中期的にはサプライチェーン対応や関連投資の進捗を踏まえた目標・計画の見直しを、長期的には技術の見直しや事業基盤の強化を通じた事業運営・ビジネスモデルの適応力強化を進める方針としております。
第5期中期経営計画(2021-2025年度)では、「3ADC最大化の実現」、「既存事業・製品の利益成長」、「更なる成長の柱の見極めと構築」、「ステークホルダーとの価値共創」の4つの戦略の柱を掲げ、2025年度目標である「がんに強みをもつ先進的グローバル創薬企業」を実現し成長ステージに移行できるよう取り組んで参りました。その結果、エンハーツの着実な市場浸透、上市国・地域の拡大、新適応取得による当初計画を上回るペースでの売上収益拡大、ダトロウェイの承認及び追加の適応取得により、世界中の患者さんに新たな治療の選択肢を提供するとともに、2025年度目標実現に向けた成長を牽引いたしました。
サステナブルな社会の発展に貢献するため、長期視点でサステナビリティ経営を進めていく上で、患者さん、医療関係者、株主・投資家、社会・環境、従業員といった「ステークホルダーとの価値共創」も重要な課題でありました。当社グループでは、中長期的な企業価値への影響と社会からの期待の両面からマテリアリティを特定し、「革新的な医薬品の創出」、「高品質な医薬品の安定供給」、「医療アクセスの拡大」、「環境経営の推進」、「多様な人材の活躍推進と育成」等のマテリアリティと連動したKPIを設定・管理して参りました。マテリアリティへの対応として、日本における初のCOVID-19に対するmRNAワクチンであるダイチロナ筋注(1価:オミクロン株 JN.1)の供給によるパンデミックリスクへの対応や、国際イニシアチブである「RE100」への加盟を含む自社拠点における使用電力の再生可能エネルギー化、及びバリューチェーン全体での環境負荷低減の取組等を進めて参りました。
(ⅱ) 第6期中期経営計画及びサステナビリティ関連の方針
第5期中期経営計画を通じて、当社グループが掲げた2025年度目標である「がんに強みを持つ先進的グローバル創薬企業」を実現したことから、第6期中期経営計画(2026-2030年度)の策定にあたり、新たに2035年ビジョン「Trusted healthcare innovator transforming the lives of people through our science and technology」を設定いたしました。あわせて、第5期中期経営計画で掲げた2030年ビジョン「サステナブルな社会の発展に貢献する先進的グローバルヘルスケアカンパニー」を2030年度に向けた具体的な目標として改めて位置づけました。第6期中期経営計画は、価値創造プロセスの循環のもと、2030年度目標の達成を通じて、2035年ビジョンの実現に向けたさらなる成長ステージに移行するための計画であります。

当社グループの長期ビジョン、第6期中期経営計画については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
(a) 「Be a Global Top 5 Oncology Company by 2035」
| 関連する主なサステナビリティ課題:医薬品アクセスの向上、医薬品の安定供給 | |
| 機会 | がん治療を「治癒」へと近づけられる革新的な医薬品の提供 |
| ビジネスモデルに 与える影響 | 第5期中期経営計画においては、エンハーツとダトロウェイが牽引し、がん事業は飛躍的な成長を遂げ、中核事業へと進化いたしました。また、アストラゼネカ及び米国メルクとの提携により、グローバルでの開発・商業化に向けた体制が強化され、外部パートナーとの連携を軸としたビジネスモデルが進展いたしました。 今後は当該提携により培ったがん事業のノウハウを活かし、当社グループのScience & Technologyに裏付けされた有数のパイプラインを自社単独で開発・商業化できる体制を構築・強化することで将来の利益創出力を高めて参ります。 |
| 関連する主なサステナビリティ課題:医薬品アクセスの向上、医薬品の安定供給 | |
| バリューチェーンに 与える影響 | 当社グループは、がん事業で2035年までにグローバルトップ5企業となることを目指し、自社ケイパビリティをR&D Excellence(開発)、Business Excellence(商業化)、最適化されたグローバルサプライチェーンの三本柱で構築し、バリューチェーン全体の強化を推進して参ります。 |
| 財務的影響 | 当連結会計年度においては、売上収益2兆1,230億円のうち、がん領域売上収益9,540億円を計上しております。第6期中期経営計画においては、主にエンハーツやダトロウェイの売上の成長により、2030年度のがん領域売上収益2兆3,000億円超を目指しております。 |
| 戦略及び意思決定 への影響 | 世界中の重篤な疾患を持つ患者さんに、がん治療を治癒へと一歩近づけられる革新的な治療を提供し、個別化医療により、従来の治療では十分に治療効果が得られなかった患者さんに新たな治療オプションを提供して参ります。そして、医療従事者への付加価値の高い情報提供を通して、2035年には年間70万人以上の対象患者さんに当社の医薬品を届けて参ります。 <主なトレードオフ>適応追加や製品上市、自社開発・商業化体制の構築・強化に向けた投資は、短期的な利益の確保を制約する可能性があります。当社グループはこのトレードオフを認識したうえで、長期的な企業価値の向上と高収益・高成長型ビジネスモデルへの構造転換を最優先とした意思決定を行って参ります。 |
(b) 「Identify next BGTs by 2030」
| 関連する主なサステナビリティ課題:医薬品アクセスの向上 | |
| 機会 | DXd ADCに続く、新BGTsを通じたビジネスポテンシャルのさらなる拡大 |
| ビジネスモデルに 与える影響 | 第5期中期経営計画では、最重要なBGTsとして位置付けているDXd ADCを通じ、がん領域における事業とプレゼンスの拡大を達成いたしました。DXd ADCでは、第6期中期経営計画期間においても、複数の大規模臨床試験のデータリードアウトが予定されており、適応症が拡大していく見込みであります。 第6期中期経営計画では、DXd ADCに続くBGTs候補の継続的な創出、DXd ADCの独占的販売期間終了(Loss of Exclusivity、以下「LOE」という。)後も持続的な成長を実現するためのBGTsの早期同定、開発加速化へ向けた取組をすでに開始しております。これらの取組により、持続的成長を可能とするビジネスモデルの構築を推進して参ります。 |
| バリューチェーンに 与える影響 | 当社グループは、① 中核技術に基づいた複数の新薬創出による標準治療の変革、② 臨床的に実証された技術を次期プログラムへ応用することによる確度の高い新薬創出、③ 研究・開発・製造の各部門の知見の統合による革新的な医薬品のより迅速かつ効率的な患者さんへの提供、といった研究開発モデルによる、バリューチェーン全体の構造転換を推進して参ります。 |
| 財務的影響 | 第6期中期経営計画では、上記の取組の実現に向けた投資を行い、DXd ADC事業に続く新たな収益基盤の構築を目指して参ります。 |
| 戦略及び意思決定への影響 | 当連結会計年度において、ADC創薬のパラダイムシフトを目指すBGTs候補、マルチモダリティ研究から生まれたBGTs候補、がん免疫におけるブレークスルーアセット等、既に幾つかの候補があります。2030年までにDXd ADCに続く有望な成長の柱と成り得る複数のBGTsを同定し、DXd ADCのLOE後も現在の標準治療を超える製品を患者さんに提供して参ります。 <主なトレードオフ>成功確率の高い既存技術への投資と、将来の成長を担う新規技術への投資のバランスは、重要なトレードオフとして認識しております。なお、ポートフォリオマネジメントによる撤退判断も含めた早期の意思決定(Go/No-go)の厳格化により、リスクを適切に管理して参ります。 |
(c) 「Operational Excellence」
| 関連する主なサステナビリティ課題:医薬品アクセスの向上、医薬品の安定供給 | |
| 機会 | AI活用等による生産性の飛躍的向上 |
| 機会 | 調達・外注構造の抜本的最適化 |
| ビジネスモデルに 与える影響 | 当社グループは、グローバルな事業拡大に伴う費用構造の最適化を重要な経営課題と位置づけ、全社横断的なOperational Excellenceの実現に向けた取組を開始しております。AI活用等による生産性の飛躍的向上及び業務効率化と戦略的人材配置の一体的推進、並びに調達・外注構造の抜本的最適化により、事業運営体制の効率性向上を図って参ります。これらの取組により、成長投資の原資確保及び収益性向上につながるビジネスモデルの構築を推進して参ります。 |
| バリューチェーンに 与える影響 | 当社グループのOperational Excellence推進による影響は、AI活用及び調達・外注構造の最適化を通じて、バリューチェーン全体に及ぶものと見込んでおります。研究開発においては創薬AIの活用による効率化、製造・サプライチェーンにおいてはERPプラットフォームを通じた調達プロセスの標準化と安定供給体制の強化を図って参ります。商業化においては、業務効率化と戦略的人材配置の一体的推進を通じて、付加価値の高い業務へ集中できる環境を整備して参ります。 |
| 財務的影響 | 当連結会計年度においては、CEO直轄のBusiness Transformation組織の立ち上げ及びERPプラットフォームの導入準備に係る費用が販売費及び一般管理費等として計上されております。将来的には、5年累計2,000億円以上のコスト最適化の実現により、収益性の向上及び営業キャッシュ・フローの拡大を通じた成長領域への再投資原資の確保につながるものと見込んでおります。 |
| 戦略及び意思決定への 影響 | Operational Excellenceによる利益創出力の強化として、「戦略に沿った優先順位に基づくリソース配分及び事業投資判断の最適化」、「持続的な成長基盤の構築に向けたプロセス及びシステムの標準化」、「研究開発及びテクノロジーをはじめとする各ユニット・機能との連携の深化」、「地域を超えて活躍できる人材の育成と次世代グローバルリーダーの継続的な輩出」を実現する事で、スピード感と一貫性のある、グローバルな活動の展開を目指して参ります。 <主なトレードオフ>短中期的な資本・費用の集中は、同時期の成長投資への資源配分を制約する可能性がありますが、優先順位付けと段階的なシステム展開により、この影響を抑制して参ります。 |
(d) 「Be a trusted partner for sustainable society」
| 関連する主なサステナビリティ課題:ステークホルダーとの価値共創、人的資本の強化、人権、環境保全、コンプライアンス | |
| 機会 | Patient Centricityの醸成 |
| 機会 | 高い倫理観に基づく医療コミュニティへの貢献 |
| 機会 | ワールドクラス人材の獲得・育成戦略 |
| 機会 | 企業文化・労働環境の更なる向上 |
| リスク | 高いコンプライアンス基準の維持 |
| リスク | バリューチェーン全体での環境負荷の軽減 |
| ビジネスモデルに 与える影響 | 当社グループは、患者さんの健康で豊かな生活への貢献を事業の根幹に置き、患者さんとご家族、医療従事者、地域社会、ビジネスパートナー、規制当局、環境、株主・投資家等の多様なステークホルダーとの信頼関係を事業基盤とするビジネスモデルを構築しております。コンプライアンス違反や環境への対応不足は、規制強化・コスト増大・事業レジリエンスの低下を招くリスクを有しているとともに、すべてのステークホルダーからの信頼の毀損を通じて当社グループの事業活動の前提そのものに影響を及ぼし、ビジネスモデルの持続性を低下させる可能性を有しております。 |
| 関連する主なサステナビリティ課題:ステークホルダーとの価値共創、人的資本の強化、人権、環境保全、コンプライアンス | |
| バリューチェーンに 与える影響 | 本リスク及び機会は、いずれもバリューチェーン全体に及ぶものと認識しております。Patient Centricityの醸成及び高い倫理観に基づく医療コミュニティへの貢献は、製品の研究・開発から市販後活動に至る各段階での意思決定の質を高め、革新的医薬品の継続的な創出につながる機会と捉えております。ワールドクラス人材の獲得・育成及び企業文化・労働環境の向上は、バリューチェーン全体のイノベーション創出力と組織の持続的な競争力の源泉となるものであります。さらに、高いコンプライアンス基準の維持及びバリューチェーン全体での環境負荷の軽減は、信頼性の確保と事業継続の観点から、バリューチェーン全体の基盤をなすものと認識しております。 |
| 財務的影響 | 本機会は、革新的医薬品の継続的な創出と患者さんへの価値提供を通じた売上収益の拡大、及び優秀な人材の確保・定着による研究開発・製造の生産性向上に寄与するものと見込んでおります。これらの機会を着実に捉えることが、当社グループの中長期的な収益基盤の強化につながるものと認識しております。 一方、高いコンプライアンス基準が維持されない場合には、当局による業務停止・制裁金の賦課、訴訟費用の発生、及び社会的信頼の毀損による事業機会の喪失等を通じて、当社グループの財務的価値に影響を及ぼす可能性があります。また、バリューチェーン全体での環境負荷の軽減への取組が不十分な場合には、将来的な炭素税導入等の規制強化に伴うコスト増大、調達コストの上昇、及び機関投資家・取引先からの要請への対応に係る追加費用が発生するリスクがあります。 |
| 戦略及び意思決定への 影響 | 機会として識別したPatient Centricityの醸成、医療コミュニティへの貢献、ワールドクラス人材の獲得・育成、及び企業文化・労働環境の向上については、事業戦略と連動したタレントマネジメントの実施や次世代経営幹部育成プログラムの推進等を通じて、これらの観点を踏まえた経営層の判断が行われる仕組みを構築し、製品の研究・開発から市販後活動に至る各段階の意思決定に反映しております。リスクとして識別した高いコンプライアンス基準の維持については、グローバル エシックス&コンプライアンス コミッティにおける審議・モニタリングを通じて事業運営上の意思決定に反映しております。また、バリューチェーン全体での環境負荷の軽減については、ネットゼロ移行計画の策定・推進をサステナビリティコミッティにおいて審議しております。 <主なトレードオフ>人材育成・環境対応に係る投資は短期的にはコスト増加要因となり得ますが、中長期的なイノベーション創出力の強化及び規制強化への先行対応を通じた将来コストリスクの低減により、持続的な企業価値向上につながるものと認識しております。 |
(e) 「気候」関連
| 物理的リスク | サプライチェーン寸断 |
| ビジネスモデルに 与える影響 | 気候変動に伴う異常気象の激甚化により、一部の調達・生産・物流の各拠点において被災や操業遅延が生じ、代替調達先の確保や事業継続経計画(BCP)運用を余儀なくされる等、グローバルな供給体制の安定的な運用に影響が生じ得る状況にあります。 激甚化する気象災害による生産・物流拠点の長期停止や浸水・渇水等の頻度・規模がさらに拡大することで、供給制約の慢性化や物流コストの持続的な上昇が合理的に見込まれ、気候変動に対して強靭なサプライチェーン・ネットワーク確立の進捗に影響する可能性があります。 |
| バリューチェーンに 与える影響 | 特定の地域や仕入先への依存度が高い一部の原材料・部品については、異常気象の激甚化を契機とした供給の突発的な途絶が生じる恐れがあります。また、主要な物流ルートや輸送拠点が被災した場合には、安定的な製品供給に支障が生じ得る状況にあります。 気象災害の頻発・長期化により、仕入先の生産停止と物流網の寸断が同時多発的に生じる可能性が高まり、自社製造拠点における生産が長期にわたって制約され、上流では原材料・部品の慢性的な調達難、下流では製品供給能力の持続的な低下が生じる等、バリューチェーン全体に重大かつ広範な影響を及ぼすと見込んでおります。 |
| 物理的リスク | サプライチェーン寸断 |
| 財務的影響 | 当連結会計年度においては、一部地域で発生した記録的な豪雨の影響により物流網が混雑し、売上原価に一定の影響が生じております。なお、増加したコストを区分して識別することが困難であるため、定量的情報は記載しておりません。 将来的には、主要拠点における浸水対策や重要原材料の安全在庫積み増しにより、固定資産の増加及び投資・営業キャッシュ・フローへの影響が生じる可能性があります。さらに、極端な気象現象による一時的な操業停止や、複数購買化・生産拠点分散等の対応に伴い、売上収益・売上原価・投資キャッシュ・フローへの影響が見込まれます。気象災害の頻発・長期化により特定の地域又は仕入先に依存する原材料・部品の調達が長期にわたり途絶した場合、代替調達や緊急輸送への切り替えに伴う売上原価及び物流費の増加に加え、生産活動の制約による売上収益への影響が生じる可能性があります。 |
| 物理的リスク | 自社拠点の水不足に伴う一時操業停止 |
| ビジネスモデルに 与える影響 | 気候変動に伴う水ストレスの深刻化を背景として、主要生産拠点において水不足が顕在化した場合、取水制限や操業停止のリスクが、グローバルでの生産能力増強の計画・運用に影響を及ぼし得る可能性があります。 将来的には、水ストレスの長期的な増大により、取水制限等を起点とした生産制約がサプライチェーンの寸断へと波及する可能性があり、水資源循環型の生産体制の確立に対しても影響を及ぼし得ると見込んでおります。 |
| バリューチェーンに 与える影響 | 主要生産拠点はWRI Aqueduct(世界資源研究所が提供する水リスク評価ツール)の評価において水ストレスの高い地域に位置するものが含まれており、取水制限が発生した場合、生産能力が一時的に制約される可能性があります。また、水集約型原材料を供給する一部サプライヤーも同様の水リスクに晒されており、製品の安定供給に支障が生じる可能性があります。 将来的には、水ストレスの長期的な深刻化により、自社拠点における慢性的な操業制約に加え、上流では調達コスト上昇、下流では製品供給能力の低下が生じるリスクがあり、バリューチェーン全体にわたる事業継続性への影響が一層拡大すると見込んでおります。 |
| 財務的影響 | 当連結会計年度においては、生産拠点の水リスクの見直し及び一部拠点での節水設備の試験導入に伴い、売上原価及び一般管理費として費用処理しております。 将来的には、優先対策拠点における節水施策の推進に伴い、水管理システムの高度化・高効率設備の導入等により固定資産の増加及び投資キャッシュ・フローへの影響が生じる可能性がある一方、水使用量削減を通じた水道料金・排水処理費用の低減が見込まれます。また、主要製造拠点での水不足による一時的な操業停止や排水再利用設備への投資に伴い、売上収益・売上原価・投資キャッシュ・フローへの影響が生じる可能性があります。特定拠点での取水困難が生じた場合、拠点の再配置や製法の見直し等により、固定資産・売上原価・研究開発費・投資キャッシュ・フローへの影響も想定されます。 |
ア.「気候」関連のリスクが戦略や意思決定に与える影響
・シナリオ分析の手法及び実施期間
当社グループは2024年度に、グループ全体(バリューチェーンを含む)を対象として気候シナリオ分析を実施いたしました。分析にあたっては、脱炭素社会への移行を想定するIEA WEO2021 SDS・IEA NZE2050(1.5℃シナリオ)及び物理的リスクの深刻化を想定するIPCC RCP8.5(4℃シナリオ)を採用し、2030年及び2050年の時間軸でリスク・機会を評価しております。1.5℃シナリオにおいては、脱炭素政策・規制の強化により調達・物流を含むコスト増や供給制約が生じ得ることを想定しております。4℃シナリオにおいては、豪雨・洪水・台風の頻発・規模拡大、気温上昇、干ばつ等による水不足(特に米国・中国・ブラジルでの操業影響)を想定しております。なお、今後も外部環境の変化に応じて定量化の拡充及び開示対象の見直しを継続的に行って参ります。
・「気候」関連の移行計画
当社グループは、脱炭素社会への移行は中長期的に避けられない潮流であると認識しており、早期から積極的に投資・体制整備を進めることが、将来リスクへの備えとなるとともに、長期的な企業価値の向上につながると判断しております。2050年ネットゼロ達成を前提に、2015年度を基準年として段階的な削減目標(2025年度:Scope1及びScope2で2015年比42%削減、2030年度:同63%削減、2040年度:Scope1及びScope2ネットゼロ、2050年度:Scope3を含むサプライチェーン全体でネットゼロ)を設定しており、これらを投資・調達・運用・物流・サプライヤー協働に係る中長期戦略及び主要な意思決定に反映しております。
具体的な施策として、省エネルギー活動の強化(省エネ・脱炭素機器の導入及び運用改善)、再生可能エネルギー由来電力の100%導入、営業車両のEV化、持続可能な燃料(SAF等)の活用やモーダルシフト・共同配送等の物流施策、及びサプライヤーとの連携による脱炭素化等を、移行計画ロードマップに沿って推進しております。あわせて、CCUS(注)等の革新的技術についても導入の可能性を検討して参ります。
これらの施策の実行にあたっては、移行計画に関連する投資・費用を第6期中期経営計画及び年度予算に組み込み、CO₂削減効果や将来の炭素税等のコスト負担等を考慮のうえ、脱炭素推進に向けた重要施策を特定し、当該施策に関連する予算を優先的に配分することを検討しております。また、Scope3削減に向けては、サプライヤーとの定期的な対話・情報収集の仕組みを整備し、サプライチェーン全体での脱炭素化を推進しております。なお、削減目標の詳細は「⑤ 指標及び目標 (ⅰ)「気候」関連」をご参照ください。
上記の移行計画に基づき、第6期中期EHS経営方針において「バリューチェーン全体での脱炭素施策を推進し、気候変動緩和に貢献する」ことを掲げ、各種施策・取組を推進しております。
(注)Carbon Capture, Utilization and Storage/二酸化炭素を回収し有効利用又は地中等への貯留を行う技術の総称
<主なトレードオフ>再生可能エネルギーの導入やサプライチェーンの強靭化は短期的には調達コストや製造原価の上昇要因となります。しかしながら、将来的な炭素税負担の回避や社会的信用の維持が中長期的な企業価値向上に不可欠であると判断し、短期的なコスト増加を許容しております。
また、環境投資が他の投資案件に劣後することを防ぐため、温室効果ガス削減効果を経済価値として定量評価する手法として内部炭素価格(ICP)の導入を検討しており、将来的に設備投資判断へ活用することで、環境対応設備への投資促進を図って参ります。
・気候関連のリスクに関する対応
<サプライチェーン寸断(物理的リスク)への対応>気象災害の激甚化に起因するサプライチェーン寸断リスクへの対応として、当社グループは、重要製品の安全在庫水準の見直し及び代替調達先の確保に取り組んでおり、主要製品を対象に代替調達体制の整備を実施いたしました。なお、在庫の積み増しによる供給リスク低減と運転資本の増加に伴う資本効率への影響はトレードオフの関係にあることを認識しており、需要予測の高度化や在庫配置の最適化を通じて過剰在庫の抑制に努め、両者のバランスを図っております。
<自社拠点の水不足に伴う一時操業停止(物理的リスク)への対応>水ストレスの長期的な深刻化を起因とする自社拠点の水不足リスクへの対応として、当社グループは、2024年度においてWRI Aqueductを活用した製造拠点の水リスク評価を実施し、優先的に対応すべき拠点の把握を行っております。現在、特定された優先拠点を対象に、水処理設備・再利用設備の導入に向けた検討をしております。なお、設備投資による水使用量削減・安定操業の維持と、投資負担に伴う資本効率への影響はトレードオフの関係にあることを認識しており、再生可能エネルギーの活用や工程全体の効率改善との統合的な取組を通じて、水資源の保護・環境負荷の抑制と投資効率の両立を図って参ります。
イ.気候レジリエンス
・物理的リスクに対する戦略及びビジネスモデルの調整能力
当社グループは、第6期中期経営計画期間において、防災設備への投資や戦略在庫の確保に必要な経営資源を配分する方針としております。設備投資予算及び運転資本の範囲内で機動的に対応するとともに、サプライチェーンの可視化を進め、リスクの早期把握や代替調達先への切替えを円滑に行う体制の整備を進めております。
<サプライチェーン寸断(物的リスク)に関するレジリエンス>当社グループは、BCPの観点から拠点ごとの水災リスクを評価し、防災対策の強化を進めております。あわせて、洪水対応を含む緊急時訓練やマニュアル整備を実施し、初動対応力の向上に努めております。また、製品の安定供給に向けて、一定の在庫を確保するとともに、複数調達の推進により調達先の分散を図っております。さらに、防災情報サービス等を活用し、調達先の被災状況を速やかに把握できる体制の整備を進めております。これらの取組により、供給途絶の影響を一定程度抑制できる可能性があると考えております。
<自社拠点の水不足に伴う一時操業停止(物理的リスク)に関するレジリエンス>当社グループは、拠点ごとの水リスク評価を進めるとともに、一部の高リスク拠点においては雨水利用設備や節水設備の導入・再利用水の活用を進めております。他拠点での代替生産や製造委託の活用についても検討し、緊急時の供給継続能力の向上に努めております。これらの対応により、操業停止リスクの低減につながる可能性があります。
・不確実性の領域
気候関連のリスク及び機会の評価にあたっては、各国の気候政策の導入時期や内容、温室効果ガス規制の強化の程度、技術進展の速度、気象災害の頻度及び強度、水資源の地域別の利用可能性等に不確実性があると認識しております。規制負担の水準や関連技術の普及動向については、当社グループの財務影響や対応方針の判断に影響を及ぼす可能性があることから、継続的にモニタリングを行って参ります。
・気候レジリエンスの評価
当社グループは、短期・中期・長期の時間軸で気候レジリエンスを評価しております。短期的には定期的な指標確認を通じて省エネルギー・再生可能エネルギー利用・BCP対応の改善を、中期的にはサプライチェーン対応や関連投資の進捗を踏まえた目標・計画の見直しを、長期的には技術の見直しや事業基盤の強化を通じた事業運営・ビジネスモデルの適応力強化を進める方針としております。