有価証券報告書-第91期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/18 14:00
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【項目】
142項目
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社は、グローバルに事業展開を推進する荒川化学グループ全体で、共有すべきグループ経営理念である「個性を伸ばし 技術とサービスで みんなの夢を実現する」のもと、「つなぐを化学する SPECIALITY CHEMICAL PARTNER」をビジョンとして掲げております。「つなぐを化学する」とは、当社の事業領域を表しており、当社の製品は材料の表面や隙間に存在し、機能を付与しています。私たちは、このような製品を通して、取引先はもとより、グループ社員、社会とのつながりを大切にする「SPECIALITY CHEMICAL PARTNER」を目指すことを基本方針としております。
この基本方針を具体的に実現するため、安全を最優先に、国内外の生産・販売拠点および関係会社の整備と拡充を図り、全社をあげて経営基盤の充実と企業体質の強化に取り組み、同時に法令遵守、環境保護、社会貢献などの社会的責任を果たし、グループの発展に努めてまいります。
なお、当社は、グループ経営理念とビジョンの実現に向け、当社が大切にしている価値観・行動指針を明確化した「ARAKAWA WAY 5つのKIZUNA」を荒川化学グループ全社員で共有することで、根幹の部分は変わることのない経営を貫き、適切な判断と迅速な行動を積み重ねてまいります。
(2) 目標とする経営指標ならびに中長期的な会社の経営戦略
①第4次中期5ヵ年経営計画(2016~2020年度)
当社は、2020年度までに経営資源を適正に配置(「SHIFT 実現体制の構築」)し、事業の変革(「事業の新陳代謝」)を進め、永続的な成長サイクルの創出と真のグローバル化を目指し、「Dramatic SHIFT 1」をスローガンとした第4次中計を推進してまいりました。
第4次中計の最終年度の2020年度は、売上高1,000億円、営業利益58億円、経常利益60億円、親会社株主に帰属する当期純利益37億円、ROE6.5%以上の目標に対し、売上高705億円、営業利益32億円、経常利益36億円、親会社株主に帰属する当期純利益21億円、ROE4.0%となり、目標を大きく下回りました。
未達の要因としましては、掲げておりました千葉アルコン製造㈱、荒川ケミカルベトナム社の稼働などの重点施策の決定が当初計画より遅れたことに加え、2017年12月1日に発生しました富士工場での爆発・火災事故がありました。また、第4次中計期間中は、米中貿易摩擦の影響、新型コロナウイルスの感染拡大などによる需要構造の変化などがあげられます。
②第5次中期5ヵ年経営実行計画(2021~2025年度)
第5次中計では、2030年のビジョンと目指す未来像を新たに設定し、コア技術・素材の強化による新事業の創出に努めるとともに、市場環境の変化のスピードにも対応すべく事業ポートフォリオ改革を進めます。第4次中計からの重点施策の早期達成による成果の最大化と新たな付加価値の創造およびすべてのステークホルダーとともに持続可能な地球環境と社会の実現への貢献を目指します。
売上高900億円、営業利益65億円、経常利益65億円、親会社株主に帰属する当期純利益45億円、営業利益率7.0%以上、EBITDA 112億円以上、ROE7.0%以上の達成を目標とします。
第5次中計の基本方針は、KIZUNA経営の推進とKIZUNA指標の達成です。当社が掲げた「ありたい姿」の実現を目指し、グループの価値観・行動指針(ARAKAWA WAY 5つのKIZUNA)に基づいた経営(=KIZUNA経営)のもと、SHIFT の継続による人と事業の新陳代謝の深化、事業基盤の持続性を確保いたします。また、持続可能な地球環境と社会を実現するための課題に取り組み、付加価値・新規事業の創出に挑戦いたします。そして、創業150周年、さらにその先を見据え、歴史と伝統をしっかりと受け継ぎながらも、安全文化の醸成、および働きがいと生産性の向上を目指すことで成長し続け、「ありたい姿」を実現するために設定するKIZUNA指標を達成いたします。
KIZUNA指標とは、5つのKIZUNAとリンクした優先的な重要課題から設定した指標、「ありたい姿」を実現するための指標です。

2030年に向けたビジョン(=2030年の当社の「ありたい姿」)、当社の目指す未来像およびスローガンを以下のように設定いたしました。


第5次中期5ヵ年経営実行計画における連結財務目標
金額:百万円
2020年度
実績(※1)
2023年度2025年度2030年度
目標
目標伸長率(※2)目標伸長率(※2)
売上高(※3)70,57284,000+19.0%90,000+27.5%100,000以上
営業利益3,2574,500+38.2%6,500+99.6%10,000以上
経常利益3,6524,500+23.2%6,500+78.0%10,000以上
親会社株主に帰属する
当期純利益
2,1693,250+49.8%4,500+107.5%
営業利益率(%)4.65.47.2約10.0
EBITDA
(%)
6,237
8.8
9,800
11.7
11,200
12.4

(参考)減価償却費(百万円)2021年度2022年度2023年度2024年度2025年度
連結減価償却費(予想)約4,900約5,800約5,300約5,000約4,700
うち千葉アルコン製造㈱約1,700約2,300約1,800約1,500約1,200

第5次中期5ヵ年経営実行計画における連結業績(セグメント別)
金額:百万円
2020年度
実績(※1)
2023年度2025年度
目標伸長率(※2)目標伸長率(※2)
機能性
コーティング
売上高(※3)15,14719,000+25.4%20,000+32.0%
セグメント利益1,1141,800+61.5%2,100+88.4%
製紙・環境売上高(※3)17,10419,000+11.1%20,000+16.9%
セグメント利益565900+59.1%1,250+121.0%
粘接着・
バイオマス
売上高(※3)25,80430,500+18.2%31,000+20.1%
セグメント利益1,5541,200△22.8%2,100+35.1%
ファイン・
エレクトロニクス
売上高(※3)12,25215,000+22.4%18,000+46.9%
セグメント利益5281,150+117.7%1,800+240.8%
みつける売上高(※3)200600
セグメント利益80280
合計売上高70,30984,000+19.5%90,000+28.0%
セグメント利益3,7635,150+36.9%7,550+100.6%
新規開発投資△377△650△850
新規開発投資
差引後利益
3,3854,500+32.9%6,700+97.9%

(※1) 新収益認識基準を適用していない2020年度の売上高実績値を記載しております。
(※2) 新収益認識基準を適用していない2020年度の売上高実績値基準を記載しております。
(※3) 2023年度と2025年度は新収益認識基準を想定した売上高を記載しております。
(注) 2021年度より事業部の名称を一部改称し、機能性コーティング事業部、製紙・環境事業部、粘接着・バイオマス事業部、ファイン・エレクトロニクス事業部の4事業部体制としました。また、機能性コーティング事業部と粘接着・バイオマス事業部のセグメント間で一部製品の区分を変更しております。各事業の付加価値を高め、持続的な成長を実現することに加えて、持続可能性に貢献できる事業の構築を目的とした事業部体制を将来的に実現することを目標といたします。
第5次中期5ヵ年経営実行計画における連結データ
第4次中計期間実績
(2016年度~2020年度)
第5次中計期間
(2021年度~2025年度)
備考
総投資金額
(定常投資含む)
約300億円
(5年間累計)
約250億円
(5年間累計)
生産能力増強
・荒川ケミカルベトナム社
・機能性コーティング剤
・ファインケミカル事業
M&Aなど
減価償却費約30億円(最終年度)約47億円(最終年度)
ROE4.0%(最終年度)7.0%以上(最終年度)
配当性向30%を目途とする
(2020年度は42.1%)
40%を目標とする成長戦略の実現による利益の拡大を通じた配当額の増加と、配当の「安定的、継続的、かつ積極的」な実施という両面を勘案して、配当性向40%を目標とする。

なお、各セグメントの事業概況および戦略、各施策は以下の通りです。
(セグメント)
<機能性コーティング事業>電機・精密機器関連業界では、デジタルテクノロジーの進展により車載向け電子部品やスマートフォン向けの需要は中長期的には好調に推移すると見込まれますが、足元では半導体の供給不足による自動車産業の減産や米中を中心とした半導体産業のサプライチェーンの構築に向けた動きなど先行きが見通しにくい状況にあります。また、印刷インキ業界では出版・広告分野で市場の縮小が続いておりますが、新型コロナウイルス感染症の影響によりさらなる需要の減少が見込まれます。当社の主要製品には、光硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、印刷インキ用樹脂、塗料用樹脂、剥離紙用離型剤などがあります。当セグメントにおきましては、印刷インキ用樹脂の需要減少が継続すると見込まれますが、成長の著しい市場において、光硬化型樹脂、熱硬化型樹脂などの機能性コーティング剤の強固な事業基盤構築によるさらなる事業の拡大を推進します。また、印刷インキ用樹脂や塗料用樹脂においては、採算性の向上を推し進めるとともに、コア技術を活かした新規テーマの創出にも注力いたします。
・光硬化型樹脂「ビームセット」、熱硬化型樹脂「アラコート」におけるデジタルデバイス関連アイテムの拡充と新規技術の確立、新規分野への参入
・各種ポリマー合成技術を活用した地球環境と社会へ貢献できる新規テーマの創出
<製紙・環境事業>製紙業界では、eコマース市場(電子商取引)の世界的な成長に伴い、段ボール原紙など板紙の需要は中長期的には堅調に推移すると見込まれます。一方、印刷業界では出版・広告分野で市場の縮小が続き、印刷用紙などの需要が減少しておりますが、新型コロナウイルス感染症の影響によりさらなる減少が見込まれます。当社の主要製品には、板紙などに使用される紙力増強剤や印刷用紙などに使用されるサイズ剤があります。当セグメントにおきましては、第4次中計から推進中の海外事業の拡大戦略を加速するとともに、国内事業は採算性の向上を強力に推し進めます。また、水系ポリマーなどコア技術を活かした環境に配慮した新規テーマの創出にも注力いたします。
・ASEANを中心としたアジア地域での紙力増強剤の拡大
・テーマの選択と集中、生産体制の最適化による国内事業の採算性向上
・コア技術である水系ポリマーを活用した地球環境と社会へ貢献できる新規テーマの創出
<粘接着・バイオマス事業>粘着・接着剤業界では、世界的に紙おむつ向け接着剤の需要増加が継続しており、粘着性付与剤の需要は堅調に推移すると見込まれます。また、SDGsに対する各業界の動きも活発化してきており、バリューチェーンを通じた地球規模での貢献を目指すなか、持続可能な再生原料としてバイオマス素材の活用の機運も高まってきております。
当社の主要製品には、持続可能な天然資源であるロジンを活用した粘着・接着剤用樹脂、合成ゴム重合用乳化剤などがあります。また、当社では高圧水素化技術を強みとしており、半世紀前に世界に先駆けて商品化した水素化石油樹脂「アルコン」や、超淡色ロジン「パインクリスタル」を上市しております。さらに、環境に配慮した水系エマルジョン型粘着付与樹脂は、車載用途や生活に欠かせない製品として食品ラベルなどの幅広い用途で使用されております。
「ロジンの荒川」から「Global Pine Chemicals Partner」への深化を目指し、松脂資源と関連事業の持続性を確保いたします。また、水素化石油樹脂「アルコン」はアジア唯一のグローバルサプライヤーとして、ブランド力の維持・強化に努めます。
・バイオマス素材としての利点を活かしたロジン誘導体事業の拡大と持続性確保
・「アルコン」3拠点体制(水島工場、荒川ヨーロッパ社:ドイツ、千葉アルコン製造)の特長を活かした供給体制構築と拡販
<ファイン・エレクトロニクス事業>電子工業業界では、デジタルテクノロジーの進展により半導体などの電子部品やスマートフォンの需要は中長期的には堅調に推移すると見込まれますが、足元では半導体の供給不足による自動車産業の減産や米中を中心とした半導体産業のサプライチェーンの構築に向けた動きなど先行きが見通しにくい状況にあります。当社の主要製品にはファインケミカル製品、精密部品洗浄剤、低誘電ポリイミド樹脂「PIAD」、電子材料用配合製品、精密研磨剤などがあり、自動車や半導体産業を中心に各工程を下支えするファイン・エレクトロニクス関連素材を提供しております。当セグメントにおきましては、通信高速大容量化、自動車電動化をメインターゲットとして、市場ニーズに合わせて関係会社を含む関連事業間で素早く連携できる仕組みを確立し、事業のさらなる拡大をいたします。
・海外の半導体用途および非フラックス洗浄用途での洗浄剤「パインアルファ」の拡大
・5Gスマートフォン用高周波FPC市場での「PIAD」の拡大
・先端材料分野での拡販と新規テーマの獲得による「ファインケミカル製品」の拡大
・センサー市場を中心とした伸長分野での「電子材料用配合製品」の拡大
・HDD、SAWデバイス市場での「精密研磨剤」のさらなる拡大
・EV関連市場への参入
<新規開発>新規事業創出の仕組みを確立し、ターゲット分野への参入に挑戦いたします。またAI・MI活用による研究開発活動の効率化を推進いたします。
・新規分野での実績化
(ライフサイエンス、海洋プラスチック問題解決、セラミックス用関連素材、モビリティ関連素材など)
・社内テーマ提案・チャレンジャー育成の推進とマーケティング機能の強化
・外部ソースの有効活用
<サスティナビリティへの取り組み>経営理念に基づいた持続可能な成長の実現に向けて、コーポレートガバナンス機能を強化することを目的として設置したサスティナビリティ委員会が中心となり、ESG、SDGs、Society5.0、気候変動などの環境問題やダイバーシティ&インクルージョンなどを含む社会的課題に対応すべく、以下の事項に取り組んでまいります。
①サプライチェーンの持続性確保に向けた取り組み
・根幹であるロジン関連事業をはじめとする持続可能な再生原料の活用推進
・カーボンニュートラルの観点での転換原料の活用や生産プロセスの再構築
・エネルギーや資源の効率活用
・製品設計や製品形態の見直しによる輸送効率の向上やモーダルシフトへの貢献
・製品の機能向上によるリサイクルへの貢献、廃水負荷やVOCの低減
・植林活動の実施、継続
②炭素循環社会の実現に向けた関連産業への取り組み
・自動車のEV化や軽量化に関連する素材
・5G、6G関連の次世代情報通信や半導体関連素材
・スマート農業の促進に寄与する素材
・カーボンリサイクルや資源循環産業と関わる素材
③個々の能力を最大限発揮できる取り組み
・キャリア形成支援
・各種制度の充実によるワークライフバランスの最適化
・業務プロセス改革
また、2050年のCO₂排出量実質ゼロに向けて取り組みを強化してまいります。
(3) 会社の経営環境と優先的に対処すべき課題
2017年12月1日に発生しました富士工場での爆発・火災事故において、お亡くなりになった方のご冥福をお祈り申し上げ、ご遺族に対し心よりお悔やみ申し上げます。また、負傷された方、近隣住民の皆様、関係ご当局の皆様、株主の皆様、お客様をはじめとする多くの方々に多大なご迷惑、ご心配をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。被害に遭われた皆様方には改めて深くお詫び申し上げますとともに、引き続き、誠心誠意対応させていただく所存でございます。
当該事故を受け、社外の学識経験者および専門家を招聘し、事故調査委員会による調査が進められました。同委員会で事故原因および再発防止対策について議論が重ねられ、2018年11月、事故調査委員会報告書として事故の直接原因と再発防止対策が取りまとめられました。当社グループは同委員会からの提言を重く受け止め、再発防止対策の実施と安全文化の醸成に取り組んでおり、粉じん対策設備を順次導入し、安定稼働を継続できております。また、当該事故を風化させないため、各事業所において事故の伝承活動を展開したうえで、人財育成、コミュニケーションの活性化、リスクアセスメントを主な課題として認識し、全社的に安全に対する教育体系の見直しや構築を進めており、意識と知識をさらに高めるための活動にも取り組んでおります。
当社は、2021年4月より持続可能な成長の実現に向け、コーポレートガバナンス機能を強化するため、サスティナビリティ委員会を新設、また事業戦略機能を強化し、事業ポートフォリオ改革を推進するため事業戦略部を新設、さらに、個人と会社がともに成長できる企業風土の改革を目指すためKIZUNA推進室を新設いたしました。
第5次中期5ヵ年経営実行計画では、第4次中計からの事業評価機能を強化し、事業本部および研究開発本部、生産本部の組織体制を改廃し、コア技術・素材の強化に努めるとともに、環境に配慮した持続可能な開発にも注力し、市場変化のスピードにも対応すべく事業ポートフォリオ改革をおこない、グループの価値観・行動指針に基づいたKIZUNA経営を推進してまいります。

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