有価証券報告書-第91期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/30 9:40
【資料】
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【項目】
142項目
文中の将来に関する事項は、有価証券報告書の提出日現在において、当社及び連結子会社(以下「当社グループ」という。)が判断したものであります。
(1)経営の基本方針
ステンレス鋼線並びに金属繊維(ナスロン®)を主力製品とする当社グループは、長年にわたり培ってきた技術力と新しい分野への挑戦により、お客様にとって価値のある商品とサービスの提供を通じて社会の発展に貢献することを経営の基本理念としております。
産業構造が環境・エネルギーのクリーン化、デジタル化へと進むなか、ステンレス分野への期待はさらに高まり、「より細く、より強く、より精密な」方向が求められています。ステンレス鋼線のトップメーカーとして、これらの期待に適応すべく『Micro & Fine Technology』をスローガンに掲げ、次世代素材、技術開発をこれからもリードし続けてまいります。
また、株主並びにお客様など、内外の関係先からの信頼と期待に応えるため、常に市場の変化に迅速に対応できる柔軟な経営体制の構築を通じて、安定した収益基盤の維持・拡大を図るべく事業活動を展開してまいります。
(2)中長期的な経営戦略及び目標とする指標
当社グループは今年度より『中期経営計画(NSR23)』(最終年度2024年3月期)をスタートさせ、「日本精線リニューアル(NSR)継続推進と高機能・独自製品でサステナビリティに貢献」を中期スローガンとして掲げ、高機能・独自製品の比率を一層高め、企業価値向上に努めてまいります。NSR23の経営目標として連結経常利益42億円、連結売上高経常利益率(ROS)10%以上、連結総資産経常利益率(ROA)10%以上などに加え、2030年CO2排出量削減目標▲30%(2013年度比)を掲げESG経営を推進してまいります。なお、NSR23の基本方針については、後述(4)新中期経営計画(NSR23)の基本方針に記載しております。
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NSR23目標
連結売上高(百万円)42,000
連結経常利益(百万円)4,200
連結ROS(経常利益/売上高)10.0%以上
連結ROA(経常利益/総資産)10.0%以上
連結ROE(純利益/株主資本)8.0%以上
連結配当性向(配当/税引後利益)40%程度
高機能・独自製品連結売上高比率70%以上
CO2排出量削減率(2030年目標) ※▲30%

※2013年度比
高機能・独自製品とは、当社グループで独自開発した技術を用いることなどにより実現可能となったシェアナンバーワンやオンリーワンの製品群となります。高機能・独自製品は、お客様の製品に高い付加価値をもたらす役割を担っています。
【高機能・独自製品の一例】
製品名説明
ばね用材高強度や高耐熱、超非磁性などのお客様のニーズに応じ、線ぐせや光沢などを調整したオーダーメイド製品を提供しています。医療関連や精密電子機器、次世代の水素社会を支える素材となります。
極細線100μm未満の製品を総称し、フィルター用途やスクリーン印刷用途に用いられております。細径化ニーズに対応してきた結果、現在11μmという単線としてはステンレス鋼線の極限の細さを実現しています。高精度、高細密が要求されるソーラーセルや積層コンデンサなどの生産に欠かせない素材となります。
超精密ガスフィルター(NASclean®)当社が独自に開発したステンレス鋼繊維(ナスロン®)をもとに、薄層のメタルメンブレンフィルターを量産しています。半導体・フラットパネルディスプレイなどの製造で必要となるガスの濾過機能を担っています。

(3)前中期経営計画(NSR20)の総括
①定量目標の達成状況
世界経済は、米中貿易摩擦を契機に減速し、さらにコロナ禍によって甚大な影響を受けました。当社製品を巡る経営環境については、2020年度下半期より需給環境が好転するも、ステンレス鋼線部門は需要低迷によるボリュームダウンを余儀なくされ、金属繊維部門においても半導体ガスフィルター販売が在庫調整も含め受注変動に晒されました。結果として、数値目標は大幅未達となりました。
NSR20目標2020年度実績
連結売上高(百万円)46,00034,108
連結経常利益(百万円)5,5002,602
連結ROS(経常利益/売上高)10%以上7.6%
連結ROA(経常利益/総資産)10%以上5.8%
連結配当性向(配当/税引後利益)30%程度37.0%
高機能・独自製品連結売上高比率70%以上65.5%

②前中期経営計画の成果
a.高機能・独自製品の上方弾力確保
ステンレス鋼線部門においては、東大阪工場の自動酸洗設備をはじめとして、太径ボルト用材、細径ばね用材などの増産投資を実施し、高機能・独自製品の上方弾力確保を実現しております。2020年度は11μm極細線の増産対応のほか、細径ばねより更に細い極細ばね用材の伸線設備を導入しました。また、タイ精線においても、ばね用材、極細線の生産能力拡大を図りました。
金属繊維部門においては、真空炉やクリーンルームの増設によって超精密ガスフィルター(NASclean®)の上方弾力を高めました。2020年度は超精密ガスフィルター(NASclean®)の自動酸洗装置を導入しました。また、耐素龍精密濾機(常熟)有限公司において、化合繊維・樹脂等向けの高機能メタルフィルターの増産対応も実現しました。
b.新製品開発と新市場開拓
ステンレス鋼線部門においては、線径11μmの超極細線の量産化を実現するとともに、シングルμmへの挑戦を続けております。2020年度は超極細線用ダイス製造技術確立のための開発に注力しました。金属繊維部門では、高機能ガスフィルターの開発を進め、実装トライアルの引き合いを多方面からいただいております。
研究開発部門では、ピアノ線と同等の引っ張り強さとともに高い耐食性を持つ「ハ―キュリー®EH」や高圧水素の環境でも高い強度と靭性を両立できるばね素材「ハイブレム®-S」のほか、高品位が要求される医療用途への対応を目指し「INS 304V」の開発を進めており、お客様の製品・サービスに付加価値を与える素材として期待されています。ベリリウムフリーのニーズに対応した高強度・高導電性のばね素材「エレメタル® e-Fine」の量産化体制も整いました。また、今年4月より新設された水素事業開発室へ、水素分離膜モジュ-ルの開発を移管し、既に進めている水素発生装置の開発との連携を強化することで、将来の水素関連における事業化の検討を進めてまいります。
c.生産性向上と働き方改革
システム開発では、品質・識別管理のデータ自動収集を計画どおり実施し、検査の信頼性向上と不正防止体制の充実を図りました。2020年度は、金属繊維部門とタイ精線の生産管理システムの刷新を展開しました。また、枚方工場の製品倉庫集約(2021年4月完成)を通じて物流合理化とシステム化による在庫管理・識別照合の強化を実現しました。
働き方改革としては、フレックスタイム制の導入、健康経営優良法人認定取得、人事・労務政策の見直しなど、計画どおり進捗しております。2020年度においては、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染防止とともに、在宅勤務対応や決裁承認ワークフローの電子化などリモートワーク移行に向けたIT投資を推進するとともに、男性従業員による育児休職利用を導入しワークライフバランスの制度充実を図りました。
d.ガバナンス・コンプライアンスの充実
CGコードのフルコンプライ、個人株主様向けの工場見学会などコーポレートガバナンスの充実を図ってまいりました。また、2019年度より非連結子会社であった大同不銹鋼(大連)有限公司、韓国ナスロン株式会社及び日精テクノ株式会社を連結の範囲に加えたことで、子会社のフル連結を実現し、グループのガバナンス強化を進めております。2020年度に正規雇用労働者と非正規雇用労働者との格差是正の観点から就業規則の見直しを行い、同一労働同一賃金に対応しました。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延を機に事業継続マネジメント(BCM)を抜本的に見直し、「BCM基本方針書」及び「事業継続計画書」を改訂しました。
e.安全・環境対策の継続的推進
計画的に、耐震補強や土壌浄化、環境負荷物質・危険物の使用量削減を展開しております。また、「安全をすべてに優先する」との大方針のもと、安全対策のハード改善投資を行ってまいりました。2020年度よりホームページを通じて環境負荷低減に向けた取組みなどサステナビリティ経営に関する情報を開示し透明性の確保に努めています。
2020年度に本格稼働した東大阪工場の自動酸洗設備は、作業者の安全や環境負荷軽減にも配慮した設備を実現できました。
(4)新中期経営計画(NSR23)の基本方針
NSR23においては、以下の4つの基本方針を掲げております。
a.日本精線リニューアル計画の継続・推進
b.新製品開発と新市場開拓 : サステナブル社会に貢献
c.水素を巡る新事業の探索
d.コーポレートガバナンスとコンプライアンスの充実
a.日本精線リニューアル計画の継続・推進
前中期経営計画から取り組んできました日本精線リニューアル計画(NSR)を継続推進し、高機能・独自製品の機能・能力増強と持続的成長のための生産基盤の強化を図ります。具体的には、東大阪工場の酸洗設備に関する第2期合理化計画を通じて生産能力増強や作業安全性・環境負荷軽減を推し進めるほか、さらなる細径化ニーズに応えるべく極細線及びばね用材の機能・能力増強を図ります。金属繊維部門においても老朽化した製造設備のリフレッシュ投資により生産基盤強化や品質改善を計画しており、半導体関連市場の需要増に対し超精密ガスフィルター(NASclean®)の安定したサプライチェーンの構築にも注力いたします。
また、THAI SEISEN CO., LTD.の機能を強化し、ステンレス鋼線部門の国内外の最適生産体制の構築を進めるとともに海外マーケット(中国・東南アジアなど)の取引深耕を図ります。具体的には、ばね用材、極細線、電磁SUSといった高機能・独自製品の機能強化に向けた投資を推進し、重要製品の枚方工場代替生産拠点としての位置づけも確立してまいります。金属繊維部門についても、耐素龍精密濾機(常熟)有限公司と韓国ナスロン株式会社との連携によって海外市場への拡販を推し進めてまいります。
b.新製品開発と新市場開拓 : サステナブル社会に貢献
環境、エネルギー、5Gなどサステナビリティ成長分野に、極細線、高機能ばね用材や超精密ガスフィルター(NASclean®)など当社の高機能・独自製品を提供し、製品を通じてサステナブル社会に貢献してまいります。例えば、極細線の細径化は太陽光パネルの発電効率向上に大きく貢献しています。また、超精密ガスフィルター(NASclean®)の性能をいっそう向上させた新製品を市場投入することで半導体製造装置の高性能化ニーズに応えてまいります。半導体製造プロセスにおいてEUV(極端紫外線)露光技術が採用されたことによって半導体チップの微細化がさらに進展するなか、1.5ナノまでのパーティクル(粒子)の除去ができる当社製品の濾過精度に対するニーズは高まっています。また、ステンレス鋼短繊維を材料とする当社ガスフィルターは低圧損(注)という特長があり、これまで培ってきた技術の優位性をさらに向上させてまいります。結果として、高機能・独自製品の比率を高めるとともに、新製品の競争優位性をもって収益性の高い製品ポートフォリオの維持・向上を目指します。
(注)
低圧損とは、ガスが濾過フィルターを通過する際の圧力損失が少ないこと。結果として、同じ濾過精度かつ同じ流量のガスの精製のために消費するエネルギーを削減できます。
製品を通じたサステナブル社会への貢献(一例) 左:用途、右:当社製品
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c.水素を巡る新事業の探索
水素エネルギーを活用する水素社会においては、安全な水素の運搬・貯蔵方法の確立が必要不可欠となっています。水素を多く含むことができる液体『有機ハイドライド(MCH:Methylcyclohexane)』は取扱いが比較的容易であるため既存のガソリンスタンドをインフラとしての活用が展望できる方法として注目されています。当社では、独自に開発したクラッド線を脱水素の触媒として用いて、水素キャリアであるMCHから水素を回収することに取り組んでいます。さらに、水素のみを透過できるPd合金膜による水素分離膜モジュールを介することによって、水素濃度を超高純度(9N)に高めることができます。この中期経営計画においては、再生可能エネルギーを用いた小型プラント実証実験によって高濃度のグリーン水素を回収することに取り組み、将来の新事業開拓への展望を見極めてまいります。
d.コーポレートガバナンスとコンプライアンスの充実
コーポレートガバナンスの充実によって持続的な利益成長と企業価値の向上につながるとの認識のもと、コーポレートガバナンスとその根幹であるコンプライアンス経営を重要課題の一つと位置付け、引き続き改善・充実を図ってまいります。また、CGコード改訂(2021年6月)や東証市場再編(2022年4月)を踏まえたガバナンスやリスク管理などの体制強化に鋭意取り組んでまいります。
また、前述したようにコロナ禍を機に事業継続マネジメント(BCM)を抜本的に見直し、大規模災害などの不測の事態に見舞われた場合でも迅速に事業再開できる体制を整備し、当社がステンレス鋼線のトップメーカーとして供給責任を果たしていく取組みを推し進めてまいります。また、with/afterコロナ禍におけるテレワーク定着と働き方改革推進を図っていきます。
さらに、事業活動に伴うCO2排出削減の目標を設定し持続可能な社会の実現を目指してまいります。2050年のカーボンニュートラルを最終目標とし、2030年のマイルストーン目標としてCO2排出量を2013年度比30%削減に設定しました。具体的には、省エネ・生産性向上に引き続き努めるとともに、化石燃料エネルギーを直接消費する設備の電化(電気炉への更新)や新技術エネルギー炉の採用(水素、アンモニア、メタネーション)を計画的に進めてまいります。また、環境負荷低減に向けた取組みなどサステナビリティ経営に関する情報開示にも注力してまいります。
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(5)経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①経営環境
世界経済は、新型コロナウイルス感染症(COVID‐19)の影響を受け大幅に落ち込みましたが、各国政府の経済対策の効果が奏功し足元は回復基調にあります。早期にコロナ禍から回復した中国においては設備投資が引き続き堅調であることに加え、バイデン政権による大規模な経済対策の成立やコロナワクチン接種開始によって米国の社会経済活動も回復してきました。但し、国内においてはワクチン接種が進まないなか、新型コロナ変異株の影響深刻化や足元の車載用の半導体不足が自動車生産に影響するリスクなど、引き続き先行きへの不透明感が残っています。
当社グループの主力製品であるステンレス鋼線を巡る経営環境は、車載用半導体不足による自動車減産リスクのほか、中国や韓国のステンレス鋼線メーカーとの競争激化による収益低下などの懸念を抱えています。併せて、ニッケル価格に起因する原材料価格の変動リスクが財務に与える影響を覚悟しなければなりません。また、金属繊維(ナスロン®)も化合繊維向けなどの一般汎用製品については競争が激しくなってきております。一方、超精密ガスフィルター(NASclean®)については、第5世代移動通信システム(5G)の本格的な立ち上がりや、コロナ禍を端とするリモートワークの普及が見込まれるため、半導体をはじめとするIT関連の需要は調整局面を脱したと考えています。ただ、半導体を巡る需給環境の変動リスクは大きいことに加え、米中関係が半導体関連業界に影響するリスクも認識せざるをえない状況にあり、迅速かつ柔軟性を伴った変化への対応力が求められています。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)につきましては、世界各国でワクチンの接種が進んでいますが、先はまだ見通せず、サプライチェーンや生産・販売の基盤、従業員やお客様、協力会社、近隣住民をはじめとするステークホルダーの皆様の健康を脅かす虞があります。感染防止策の徹底のほか、自然災害やテロなどを含めた不測の事態への準備が必要となっています。
②優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
今後の見通しは、日本国内は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンの普及に時間を要しておりコロナ禍の収束時期の見通しが困難な状況となっております。またコロナ対応で傷んだ各国の財政問題、米中や中東などの地政学的リスク、多発する自然災害など、多くの懸念材料を認識しています。
当社グループの主力製品であるステンレス鋼線は、中国や韓国のステンレス鋼線メーカーとの競争激化による収益低下などの懸念があり、加えてニッケル価格に起因する原材料価格の変動リスクなど厳しい環境下に置かれています。同様に、金属繊維(ナスロン®)も化合繊維向けなどの一般汎用製品については競争が激しくなっております。
このような経営環境を踏まえ、当社グループは今年度より『中期経営計画(NSR23)』(最終年度2024年3月期)をスタートさせ、「日本精線リニューアル(NSR)継続推進と高機能・独自製品でサステナビリティに貢献」を中期スローガンとして掲げ、高機能・独自製品の比率を一層高め、企業価値向上に努めてまいります。NSR23の経営目標として連結経常利益42億円、連結売上高経常利益率(ROS)10%以上、連結総資産経常利益率(ROA)10%以上などに加え、2030年CO2排出量削減目標▲30%(2013年度比)を掲げESG経営を推進してまいります。
具体的には、ステンレス鋼線部門において、販売面では環境、エネルギー、5Gなどサステナビリティ成長分野に極細線、高強度ばね用材など当社の高機能・独自製品の拡販に努めるとともに、成長性のある海外マーケットを開拓してまいります。生産面においては、前中期経営計画から取り組んできました日本精線リニューアル計画(NSR)を継続推進し、高機能・独自製品の機能・能力増強と持続的成長のための生産基盤の強化を図ります。また、タイ精線の機能を強化し、国内外の最適生産体制の構築を進めてまいります。
金属繊維部門においては、中国、韓国の現地法人の活用による海外市場への拡販、高精度化する需要に応える商品開発を進めるとともに、半導体関連市場の需要増に対し、超精密ガスフィルター(NASclean®)の安定したサプライチェーンの構築を進めてまいります。
さらには、将来の水素社会を展望した研究開発に努めるとともに、事業継続マネジメント(BCM)の再構築や働き方改革など、リスク管理やガバナンスなどの体制強化にも鋭意取り組んでまいります。
以上の諸施策を確実に実行することにより、収益の一段の向上を図るとともに、事業のグローバル化推進や高度化・多様化する顧客ニーズへの対応、サステナブル社会への貢献を通じ、『さらなる企業価値の向上』にグループ一丸となって取り組んでまいります。

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