有価証券報告書-第67期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/29 11:27
【資料】
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【項目】
113項目

研究開発活動

当社は、「No.1 & Only 1 技術・サービスの創出で世界をリード」を研究開発の理念として、表面改質技術を軸足とするOnly 1 コア技術の継続的な自主創造と、コア技術やその周辺技術を含め、独創的なNo.1 商品・サービスの開発を進めております。これにより表面改質技術をコアとする顧客満足度の高い総合ソリューションの徹底追及とその実現に努めております。
当社の研究開発は、将来を見通した先行研究と顧客ニーズに即応する商品開発の2本柱で推進しております。また、以下の3点を重点研究開発領域としております。
① 溶射技術開発(一般産業機械・装置全般の部材開発、溶射プロセス開発)
② 半導体部品化技術(溶射技術等による半導体・FPD製造装置部品等の開発)
③ 成膜プロセス開発(レーザ応用、PVD、CVD、DLC、TD、ZAC)、有機コーティング
当社グループの研究開発活動は溶射技術開発研究所が中心となって推進し、産学連携推進によるオープンイノベーションと人的交流によるグローバル化を推進することで、研究開発の加速と共に早期の事業化をめざしております。一方、即応性が求められる商品開発や生産技術的な課題につきましては、各工場の生産技術部門と溶射技術開発研究所とが相互に連携することで、顧客ニーズへの迅速な対応を行っています。なお、PVD(物理蒸着)やDLC(ダイヤモンドライクカーボン)などの薄膜プロセスに関しましては、連結子会社の日本コーティングセンター株式会社とも協調して研究開発を進めております。
当連結会計年度における当社グループの研究開発費の総額は9億05百万円であり、セグメントごとの主な内容は次のとおりであります。なお、当社グループの研究開発費につきましては、事業セグメントへの配分が困難なものも多いため、セグメントごとの研究開発費の金額は記載しておりません。
(1) 溶射加工(単体)
当社は先端技術のインフラ的要素をもつ素材やエネルギー分野において、従来から高機能部材に対する表面改質技術の適用開発を推し進めております。このうち、素材分野におきましては、鉄鋼・非鉄・石油化学製品のメーカに対し、新しい溶射技術を適用することによって、より高品質な製品、より高い生産効率に寄与できるような皮膜開発を推進しています。高炉メーカでは、自動車用鋼板を中心に高張力鋼板の生産増に伴う新規皮膜開発の要請に応えるべく熱処理炉内ロールを中心に新たな皮膜材料開発に取組んでおります。また、ZnやAlめっき鋼板の製造設備では、高品質な溶融金属めっきラインにおける浴中部材への新たなコーティング開発を進めております。エネルギー分野におきましては、ガスタービン発電機部材の効率向上に伴う運転温度の高温化に対応すべく、部材を超高温から保護する遮熱セラミックス皮膜開発の要請に応えるため、皮膜構造を制御した皮膜開発を行っています。その他、ベアリングや航空機など、交通をキーワードにしたアイテムにつきましても、顧客の要求に応じた皮膜開発を行っています。
近年、受注金額が伸びております半導体分野におきましては、製造装置メーカ部品向け耐プラズマ・コーティング技術の開発や静電チャックの開発を継続しております。特に半導体製造装置であるプラズマエッチング装置部品の内面には耐プラズマ性に優れたアルミナ(Al2O3)やイットリア(Y2O3)などの酸化物セラミックコーティングが採用されていますが、ナノレベルの配線幅に即したより高性能なコーティング技術が求められており、客先と連携しながら、新たな材料、成膜プロセス、評価技術等の開発を行っています。
また、溶射皮膜の革新を図るため、溶射皮膜とレーザ技術を融合した皮膜開発にも取組んでおり、溶射皮膜を再溶融することで、溶射技術の課題であった密着力の飛躍的向上や無気孔皮膜の創生にも積極的に取り組んでいます。なお、研究開発、商品開発に伴う新規皮膜につきましては、顧客との秘密保持義務や特許に絡む情報も含んでいるために一般開示ができませんが、顧客へのサンプル提供を通じて積極的な商品開発を進めてまいります。
(2) 国内子会社
国内子会社の日本コーティングセンター株式会社では、主にPVDやDLC被膜の開発を行っております。当年度新たに「デラックスヴィーナス」を開発しました。対象製品は過酷な耐久性が必要となる自動車向け高張力鋼板のプレス金型であり、通常のPVD被膜は厚さが約3μmと薄膜なのに対し、新規開発した「デラックスヴィーナス」は10μm以上の膜厚とすることで、より高耐久性を実現しました。また、ホブなどの歯切り工具に対し、刃先減肉量が少ない前処理法を新たに確立し、工具の切れ味をそのままに寿命を延ばすコーティング開発も行いました。すでに顧客への提供を開始しており、今後性能確認や水平展開を図っていきます。
(3) その他
当社では溶射加工以外に、TD処理加工やZACコーティング加工、PTA処理加工等、機能皮膜の継続的な商品開発を行っております。このうち、有機系・無機系薄膜技術開発では、医療系分野をターゲットとした機能性薄膜の適用開発を継続的に進めております。新規成膜プロセスとして展開を図っておりますレーザクラッディング技術ですが、コーティング性能を凌駕する良好な特性が得られており、コーティングの適用拡大を進めました。今後、製造部門とも連携して、レーザ技術を応用したコーティング開発を積極的に進めてまいります。
(4) 特許出願状況等
当社グループは積極的な特許出願によって、開発技術および皮膜商品の権利化に努めております。当連結会計年度の実績は、特許出願52件、特許登録20件であります。