有価証券報告書-第45期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

【提出】
2017/06/19 9:05
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業績等の概要

(1) 業績
当連結会計年度における世界経済は、一部に不安要素を抱えながらも、総じて緩やかな拡大が続きました。米国経済は、新政権による減税策やインフラ投資促進策への期待感から企業マインドが改善しており、雇用や所得の拡大が続いています。欧州経済は、英国がEU離脱を決定した後も、金融緩和による経済の下支えや雇用改善に伴う消費の拡大等、内需主導による回復感が顕著となりました。中国経済は、年度後半に小型自動車に対する減税縮小前の駆け込み需要による消費が拡大し、経済成長率の鈍化に下げ止まりの傾向が見られます。
我が国経済も、企業収益の回復を背景に雇用が拡大しており、拡大基調が続くこととなりました。一方で、米国新政権の政策の成否や英国のEU離脱交渉、欧州の主要国で予定されている選挙の行方や中東地域の紛争等、海外経済の減速につながる要素もあり、先行きの不透明感が払拭できない状況が続いています。
当社グループが関わる情報通信関連やエレクトロニクス関連市場においては、これまで市場の主役であったスマートフォンの普及が一巡することとなりました。スマートフォン1台当たりに搭載される電子部品の数は増加傾向にあるものの、先進国では買い替えサイクルが長期化しているほか、中国新興メーカーの躍進に伴って販売単価の下落が進み、市場の拡大にはブレーキがかかっています。一方、カーエレクトロニクスの分野では、安全な自動運転をサポートする先進運転支援システムや、高度な通信機能を備えることで、より快適な運転環境を実現するコネクテッドカーの開発が進み、各種のセンサーや通信デバイス等、自動車の電装化に拍車がかかることとなりました。また、自動車分野以外でも幅広い産業分野において、様々な物がインターネットにつながるIoT(Internet of Things)を活用した技術が拡大しています。インターネットを介して収集されたビッグデータを分析し、効果的に活用する人工知能(AI)は実用フェーズへの移行期にあり、社会的な諸問題や企業が抱える課題の解決、個人の生活を豊かにする新しいビジネスやサービスの創出が期待されています。
こうした中、当連結会計年度の当社グループは、創立50周年となる2021年度に向けて、ありたい企業像の実現と経営目標の達成を目指す6ヶ年の中期経営計画『マスタープラン2016』を新たにスタートさせ、「既存事業の収益力強化」、「事業ポートフォリオの最適化」、「経営基盤の強化」の各施策の遂行に取り組みました。
「既存事業の収益力強化」に向けては、自動車や電子機器等に搭載する精密部品や各種の金型等を主力製品とする精機関連事業と、光通信インフラに使用される部品及びその関連機器、テレビ中継用の光伝送装置等を主力製品とする光製品関連事業の各セグメントにおいて、販売力と価格競争力の強化に取り組むと共に、新製品・新技術の開発を加速させるための施策を展開しました。
「事業ポートフォリオの最適化」に向けては、市場のニーズや当社グループの技術的なシーズ、開発案件の進捗状況や技術課題等を部門横断で共有し、次代を担う新事業の創出を促す『開発推進会議』を実施しております。
「経営基盤の強化」に向けては、昨年6月に開催した定時株主総会において監査等委員会設置会社へと移行し、株主価値の更なる向上に向けて、取締役会の監督機能を強化する経営体制の構築を図りました。併せて、主要子会社とのコミュニケーションを強化し、当社グループ全体のコーポレートガバナンス体制の強化に取り組みました。
こうした諸施策を実施した結果、当連結会計年度の売上高は12,644,339千円(前連結会計年度比3.8%増)となりました。売上高の増加に加え、採算性の良い製品の販売が好調に推移したこと等に伴い、営業利益は1,065,368千円(前連結会計年度比14.5%増)、経常利益は1,164,808千円(前連結会計年度比20.4増)、親会社株主に帰属する当期純利益は800,674千円(前連結会計年度比45.5%増)となり、増収増益を達成することができました。

セグメントの業績は次のとおりであります。当連結会計年度より、会社組織の変更に伴い、従来「精機関連事業」に区分していたレンズ事業を「光製品関連事業」へと変更しております。下記セグメントの業績の中で、前連結会計年度比は、変更後の区分により作成した数値を使用しております。
① 精機関連
精機関連事業では、創業以来培ってきた精度の高い金型技術や、難易度の高い顧客ニーズに対応できる成形技術をベースに、様々な業界のお客様に対して精密成形品をご提供する事業を展開しています。当連結会計年度においては、自動車需要の拡大を背景に、ブレーキ圧や燃料の噴射圧等を感知するセンサー用基幹部品の販売が伸長しました。屋外環境下で使用される自動車に搭載する部品には、高い耐熱性と耐摩耗性が求められます。当社グループは、特殊樹脂と金属をインサート成形で組み合わせ、大手の自動車部品メーカーに対して信頼度の高い車載用部品を供給してまいりました。当連結会計年度においては、北海道千歳市に車載用部品の工場を新設し、昨年10月から1ラインが稼働を開始しました。今後、平成32年に20ライン体制まで拡張する計画です。
車載用の他にも、家電製品やスマートフォン、ノートパソコン等に使用される金属製のプレス部品をはじめ、様々な用途に対応する精密成形品を製造しています。当連結会計年度においては、精密金型の開発・製造を通して獲得した薄肉成形技術や、ミクロン単位の凹凸を正確に成形品に写し取る微細転写技術を応用して開発した加飾成形技術を展示会やホームページで広くアピールし、引き合いをいただいた顧客と密なコンタクトを図りながら、量産化に向けた技術課題の解消に取り組みました。
これらの結果、当連結会計年度の精機関連の売上高は7,481,529千円(前連結会計年度比2.5%増)となりました。
② 光製品関連
光製品関連事業では、快適なインターネット環境を支える光通信網に使用される光コネクタ等の光通信デバイスや、その光通信デバイスの量産に必要な製造関連機器、光通信インフラを敷設するフィールドで使用されるクリーナー等を製造、販売しています。光通信市場においては、スマートフォンの世界的な普及やソーシャルネットワーキングサービスの拡大、動画配信の増加等により、光通信網を通して流通する情報データのトラフィック量が急増しています。これに対応するために、大陸間を結ぶ海底ケーブルをはじめとする光通信網の増強が世界で進んでおり、大量の情報データを保管、処理する機能を持つデータセンターの建設も米国やアジアを中心に増加しています。こうした市場環境を背景に、当連結会計年度は、研磨機やクリーナー等、光通信用部品の製造や敷設現場で使用される製品群の販売が好調に推移しました。一方、光ファイバー同士を繋ぐ光コネクタ等の汎用的な部品は、当連結会計年度も市場価格の下落が続くこととなりました。
光製品関連事業では、光通信関連以外の製品群もラインアップに連ねています。当連結会計年度は、電気信号と光信号を相互に切り替える技術を応用し、高画質で映像の乱れの無いテレビ中継を実現するロードレース中継用光伝送装置の販売が、放送業界の顧客向けに伸長しました。一方、前連結会計年度に中国メーカーのスマートフォンに搭載されたレンズは、需要一巡から売上が減少することとなりました。
これらの結果、当連結会計年度の光製品関連の売上高は5,162,809千円(前連結会計年度比5.7%増)となりました。

(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は4,066,616千円となり、前連結会計年度末から1,238,609千円増加いたしました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
① 営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動の結果増加した資金は、1,817,498千円(前連結会計年度は1,233,587千円の増加)となりました。営業活動による資金増加の主な要因は、税金等調整前当期純利益1,169,379千円、減価償却費911,168千円、売上債権の減少額273,619千円、のれん償却額252,065千円等であります。資金減少の主な要因は、法人税等の支払額684,846千円、棚卸資産の増加額189,726千円、仕入債務の減少額117,327千円等であります。
② 投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動の結果減少した資金は、393,806千円(前連結会計年度は801,374千円の減少)となりました。投資活動による資金増加の主な要因は、定期預金の払戻による収入7,289,841千円等であり、資金減少の主な要因は定期預金の預入による支出6,839,981千円等であります。
③ 財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動の結果減少した資金は、123,235千円(前連結会計年度は72,567千円の減少)となりました。財務活動による資金減少の主な要因は、配当金の支払額146,439千円等であります。