有価証券報告書-第38期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度(2020年4月1日から2021年3月31日まで)における当社グループを取り巻く事業環境において、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行により経済活動が著しく制限されたことから、世界経済は当連結会計年度初頭に深刻な景気後退に陥りました。その後、各国での経済活動の再開と中国での経済成長による緩やかな回復は見られましたが、2020年末にかけて先進国を中心に同感染症が再び拡大したことにより回復が失速し、以降も各国でのワクチン接種の進捗や政策支援の有効性の違いなどにより先行き不透明な状況が続きました。このような情勢下、IT市場では、IoT(モノのインターネット)による情報ネットワークの拡大やデータソースの多様化に加え、世界各地で人の移動制限によりモバイル、クラウド、ビッグデータ、ソーシャルネットワークの重要性が高まり、それらに関連した技術革新や利便性向上などが見られました。なお、同期間の主要通貨に対する円相場は、各国の景気や金融・貿易政策等に対する見方を反映し、前年同期の平均レートと比較すると対ドル及び対中国元では僅かに円高、対ユーロでは僅かに円安となりました(為替変動による連結業績への影響は、売上高を約16億円押し下げ、営業利益を約1億円押し上げたと試算)。
このような事業環境の下、当社グループは、2019年3月期に策定した2022年3月期を最終年度とする中期経営計画「Wacom Chapter2」の達成に向け、「テクノロジー・リーダーシップ・カンパニー」としてペンやインクのデジタル技術で常に市場の主導権を握りつつ、持続的な成長を目指してまいりました。当連結会計年度では、2019年3月期よりスタートした経営チームの下で、IoT、VR(仮想現実)/MR(複合現実)、AI(人工知能)、セキュリティ(安全性)、教育といった成長分野において、事業モデルを一段と進化させるための将来戦略を協業先とともに推し進め、経営判断の質の向上を通して生産性やコスト構造の改善など経営課題にも全社的に取り組みました。
ブランド製品事業については、創造性発揮のための最高体験をお客様にお届けするため、技術革新に取り組むとともに、顧客サービスの向上に努めました。当連結会計年度では、主力のクリエイティブソリューションにおいてディスプレイ製品及びペンタブレット製品を中心に販売を伸ばしたことなどから、ブランド製品事業全体としての売上高は、前年同期を上回りました。
テクノロジーソリューション事業については、デジタルペン技術(アクティブES:Active Electrostatic、EMR:Electro Magnetic Resonance)の事実上の標準化に取り組むとともに、タブレット・ノートPC市場での利用拡大や教育市場での事業機会の拡大に努めました。当連結会計年度では、AESテクノロジーソリューション及びEMRテクノロジーソリューション他ともに売上高が前年同期を上回ったことから、テクノロジーソリューション事業全体としての売上高は、前年同期を上回りました。
中期経営計画の経営課題に対する全社的な取り組みとしては、利益重視の経営を目指し、組織やオペレーション(資材調達、生産管理等)の改革とコスト構造の改善などに努め、開発エンジニアリングやオペレーションにおいて事業間の垣根を越えた連携を図りました。さらに、当社が「テクノロジー・リーダーシップ・カンパニー」として技術開発及び革新に一層集中するため開発エンジニアリングと品質保証に関わる組織改編も実施しました。一方で、販管費については必要性の見極めを行うなど最適化に引き続き取り組みました。
また、2020年11月には、アート、テクノロジー、文房具、教育などの異業種・異文化パートナーが参加するコミュニティイベント「Connected Ink(コネクテッド・インク)2020」を開催し、最新のデジタルトランスフォーメーション及びインク・テクノロジーと多様なエコシステム・パートナーとの組み合わせにより生み出されるコミュニティを通じて未来の社会のために活動する新たな試みを始めました。
(注)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行による当社グループの事業活動への影響及び取り組みについては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容 <新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響及び取り組み>」に記載のとおりであります。
これらの結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は次のとおりとなりました。
a. 財政状態
当連結会計年度末における資産の残高は、71,181,334千円となり、前連結会計年度末に比べ20,025,631千円増加しました。これは主に、現金及び預金が10,501,136千円、商品及び製品が5,461,392千円及び流動資産のその他が1,352,135千円増加したことによります。
負債の残高は、33,492,517千円となり、前連結会計年度末に比べ10,071,588千円増加しました。これは主に、買掛金が4,256,470千円、未払法人税等が3,584,159千円及び賞与引当金が3,068,540千円増加したことによります。
純資産の残高は、37,688,817千円となり、前連結会計年度末に比べ9,954,043千円増加しました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益で10,225,669千円増加し、剰余金の配当で1,136,976千円減少したことによります。これらの結果、自己資本比率は前連結会計年度末に比べ1.3ポイント減少し、52.9%となりました。
b. 経営成績
当連結会計年度における売上高は108,531,067千円(前年同期比22.5%増)となり、営業利益は13,407,240千円(同140.8%増)、経常利益は14,090,803千円(同171.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は10,225,669千円(同161.0%増)となりました。
そして、中期経営計画で掲げた経営課題解決への着実な取り組みと戦略の遂行により、主要な経営指標の目標(連結営業利益率10%、連結売上高1,000億円、連結株主資本利益率15~20%)を当連結会計年度において早期に達成することができました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ、10,501,136千円増加(前年同期は4,778,741千円増加)し、当連結会計年度末には32,042,603千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの内訳は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、14,578,204千円(前年同期は13,057,842千円の収入)となりました。これは、当連結会計年度において税金等調整前当期純利益14,032,795千円及び仕入債務の増加額3,933,683千円などの収入要因が、たな卸資産の増加額5,177,812千円などの支出要因を上回ったことによります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、1,381,960千円(前年同期は1,959,907千円の使用)となりました。主な内訳は、有形固定資産の取得による支出1,052,891千円及び無形固定資産の取得による支出179,418千円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、4,053,092千円(前年同期は5,824,509千円の使用)となりました。主な内訳は、長期借入金の返済による支出2,000,000千円、配当金の支払額1,136,716千円及び短期借入金の返済による支出500,000千円であります。
③生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.上記の金額には、製品仕入実績を含んでおります。
b. 受注実績
当社グループは見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
c. 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.サムスングループには、主に、Samsung Electronics Japan Co., Ltd.、Samsung Electronics Co., Ltd.が含まれております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 経営成績等
当社グループのセグメントごとの業績に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。
なお、事業環境の変化に適合したより適切な業績説明を行うため、当連結会計年度より、各セグメントの業績説明におけるカテゴリーの範囲、名称及び記載順を一部変更しております。
◎ ブランド製品事業
<クリエイティブソリューション>クリエイティブソリューションは、ディスプレイ製品及びペンタブレット製品の売上高が前年同期を大幅に上回ったことなどから、大幅な増収となりました。また、当連結会計年度では、一部製品において、アンドロイドOSやクロームOSへの対応を進めました。
○ ディスプレイ製品
「Wacom Cintiq Pro(ワコム シンティック プロ)」は、営業活動の制約、経年等により、前年同期の売上高を大幅に下回りました。一方で、前連結会計年度に発表したエントリーモデル「Wacom Cintiq(ワコム シンティック)22」、「Wacom One(ワコム ワン)液晶ペンタブレット13」を中心に拡販に努めました。これらの結果、ディスプレイ製品全体の売上高は、前年同期を大幅に上回りました。
○ ペンタブレット製品
「Wacom Intuos Pro(ワコム インテュオス プロ)」は、営業活動の制約、経年等の影響がある中、前年同期の売上高を上回りました。また、オンライン教育及びテレワークの普及に伴う需要増加により、「Wacom Intuos(ワコム インテュオス)」、「One by Wacom(ワン バイ ワコム)」は、いずれも前年同期の売上高を大幅に上回りました。これらの結果、ペンタブレット製品全体の売上高は、前年同期を大幅に上回りました。
○ モバイル製品他
デジタルペン搭載タブレット市場が拡大し競争環境が大きく変化するなか、前連結会計年度に発表したWindows 10搭載クリエイティブタブレット「Wacom MobileStudio Pro(ワコム モバイルスタジオ プロ)」の寄与により、モバイル製品の売上高は、前年同期を僅かに上回りました。一方で、モバイル製品以外のスタイラスペン製品を中心とした売上高は、前年同期を大幅に下回りました。これらの結果、モバイル製品他全体の売上高は、前年同期を下回りました。
<ビジネスソリューション>液晶サインタブレット「STU(エスティーユー)」シリーズの売上高は、営業活動の制約が生じ、前年同期を大幅に下回りました。この結果、ビジネスソリューション全体の売上高は、前年同期を小幅に下回りました。
これらの結果、ブランド製品事業の売上高は56,678,100千円(前年同期比33.1%増)、セグメント利益は9,095,758千円(同433.0%増)となりました。また、売上高の増加に伴う在庫水準の上昇などにより、セグメント資産は前連結会計年度末に比べ3,191,721千円増加の15,648,086千円となりました。
◎ テクノロジーソリューション事業
生産、サプライチェーンオペレーションの制限があった中、AESテクノロジーソリューション全体の売上高は、前年同期を小幅に上回りました。アクティブES方式デジタルペン製品については、OEM(相手先ブランド名製造)提供先のメーカー各社から引き続き高い評価を得ております。
OEM提供先のメーカー向けの売上高は、全体として増加しました。この結果、EMRテクノロジーソリューション他全体の売上高は、前年同期を上回りました。
これらの結果、テクノロジーソリューション事業の売上高は51,852,967千円(前年同期比12.7%増)、セグメント利益は9,260,421千円(同21.0%増)となりました。また、売上高の増加に伴う売掛金の増加や在庫水準の上昇などにより、セグメント資産は前連結会計年度末に比べ4,867,925千円増加の14,619,288千円となりました。
<新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響及び取り組み>新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行による当連結会計年度での当社グループの事業活動への影響及び取り組みについては、下記のとおりであります。
ブランド製品事業では、当連結会計年度において、新製品に対する導入・販促活動が十分に展開できず、また、営業活動が制約されました。特に後者については、主にビジネスソリューションやクリエイティブソリューションのプロ向けのディスプレイ製品の販売に影響を及ぼしました。一方で、家庭でのオンライン教育の志向の高まりなどにより、主にクリエイティブソリューションのペンタブレット製品の中低価格帯モデル(「Wacom Intuos」、「One by Wacom」)に加えて、ディスプレイ製品のエントリーモデル(「Wacom Cintiq」、「Wacom One 液晶ペンタブレット13」)の販売が好調に推移しました。
テクノロジーソリューション事業では、当連結会計年度において、生産、サプライチェーンオペレーションが制限されたことや法人向けPC需要の一部伸び悩みなどから、主にAESテクノロジーソリューションの業績に影響を及ぼしました。
全社的な取り組みとしては、全世界的に、テレワークの実施等柔軟な勤務体制を継続することで、従業員の安全確保、感染拡大防止に向けた社会的責任の遂行を図りました。
b. 経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。当社グループは、これらのリスクに対して、継続的にモニタリングを行って現状把握に努めるとともに、低減・回避等の対応に努めております。なお、当連結会計年度末現在において、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載されたリスクに関する重要な事象等は存在しておりません。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a. キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容
当連結会計年度における当社グループのキャッシュ・フローの状況については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの事業活動における資金需要の主なものは、AI(人工知能)やVR(仮想現実)/MR(複合現実)分野といった成長市場に対応した新製品や次世代デジタルペン技術にかかる研究開発費、量産出荷のための金型設備投資、コーポレート部門における業務効率向上のためのITシステム投資であります。なお、設備もしくはシステムとして資産計上される資本的支出の規模は、毎期20億円~25億円程度を目安としております。当連結会計年度においては、製品量産用金型や自動組立機への投資などがあるものの、投資計画そのもののキャンセルや投資時期の見直しがあり、総額約12億円となりました。
b. 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの資金調達、資金運用等に関する取り組み方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(金融商品関係)」に記載のとおりであります。なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高は、約67億円(借入金60億円、リース負債約7億円)であります。
また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、約320億円であります。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成には、経営者による会計方針の採用や、資産・負債及び収益・費用の計上及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて、過去の実績等を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り項目特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。
また、会計上の見積りを行うに際して使用した重要な仮定は、合理的であると判断しております。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
なお、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大が会計上の見積りに与える影響については、将来の業績の不確実性の程度が会計上の見積りに与える感応度は低い状況であると判断し、評価時点において入手可能な情報に基づく最善の見積りを行っております。
④経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、2019年3月期からスタートした『Wacom Chapter2』において、お客様が生涯を通じてデジタルインクの創造する価値を体験できる「Life-long Ink」のビジョンを掲げ、最高のデジタルインク体験をお届けすべく、各種施策に取り組んでまいりました。その取り組みをさらに発展、進化させるべく新たに『Wacom Chapter3』(対象期間:2022年3月期~2025年3月期)を策定し、以下の経営指標を達成することを目標としております。
a. 事業活動の効率性
新たな指標としてROIC(投下資本利益率)25~30%程度を目安として事業を運営してまいります。
b. 資本の効率性
ROE(自己資本利益率)20%程度を想定しております。
c. 株主還元
配当方針については、適正な財務の健全性を確保することを念頭に、連結ベースの配当性向の目安を30%程度としたうえで、1株当たり配当の中長期的な増加を通じた利益還元に努めてまいります。自己株式取得については、投資機会や財務状況などを考慮のうえ、経営環境の変化に対応した機動的な資本政策として遂行してまいります。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度(2020年4月1日から2021年3月31日まで)における当社グループを取り巻く事業環境において、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行により経済活動が著しく制限されたことから、世界経済は当連結会計年度初頭に深刻な景気後退に陥りました。その後、各国での経済活動の再開と中国での経済成長による緩やかな回復は見られましたが、2020年末にかけて先進国を中心に同感染症が再び拡大したことにより回復が失速し、以降も各国でのワクチン接種の進捗や政策支援の有効性の違いなどにより先行き不透明な状況が続きました。このような情勢下、IT市場では、IoT(モノのインターネット)による情報ネットワークの拡大やデータソースの多様化に加え、世界各地で人の移動制限によりモバイル、クラウド、ビッグデータ、ソーシャルネットワークの重要性が高まり、それらに関連した技術革新や利便性向上などが見られました。なお、同期間の主要通貨に対する円相場は、各国の景気や金融・貿易政策等に対する見方を反映し、前年同期の平均レートと比較すると対ドル及び対中国元では僅かに円高、対ユーロでは僅かに円安となりました(為替変動による連結業績への影響は、売上高を約16億円押し下げ、営業利益を約1億円押し上げたと試算)。
このような事業環境の下、当社グループは、2019年3月期に策定した2022年3月期を最終年度とする中期経営計画「Wacom Chapter2」の達成に向け、「テクノロジー・リーダーシップ・カンパニー」としてペンやインクのデジタル技術で常に市場の主導権を握りつつ、持続的な成長を目指してまいりました。当連結会計年度では、2019年3月期よりスタートした経営チームの下で、IoT、VR(仮想現実)/MR(複合現実)、AI(人工知能)、セキュリティ(安全性)、教育といった成長分野において、事業モデルを一段と進化させるための将来戦略を協業先とともに推し進め、経営判断の質の向上を通して生産性やコスト構造の改善など経営課題にも全社的に取り組みました。
ブランド製品事業については、創造性発揮のための最高体験をお客様にお届けするため、技術革新に取り組むとともに、顧客サービスの向上に努めました。当連結会計年度では、主力のクリエイティブソリューションにおいてディスプレイ製品及びペンタブレット製品を中心に販売を伸ばしたことなどから、ブランド製品事業全体としての売上高は、前年同期を上回りました。
テクノロジーソリューション事業については、デジタルペン技術(アクティブES:Active Electrostatic、EMR:Electro Magnetic Resonance)の事実上の標準化に取り組むとともに、タブレット・ノートPC市場での利用拡大や教育市場での事業機会の拡大に努めました。当連結会計年度では、AESテクノロジーソリューション及びEMRテクノロジーソリューション他ともに売上高が前年同期を上回ったことから、テクノロジーソリューション事業全体としての売上高は、前年同期を上回りました。
中期経営計画の経営課題に対する全社的な取り組みとしては、利益重視の経営を目指し、組織やオペレーション(資材調達、生産管理等)の改革とコスト構造の改善などに努め、開発エンジニアリングやオペレーションにおいて事業間の垣根を越えた連携を図りました。さらに、当社が「テクノロジー・リーダーシップ・カンパニー」として技術開発及び革新に一層集中するため開発エンジニアリングと品質保証に関わる組織改編も実施しました。一方で、販管費については必要性の見極めを行うなど最適化に引き続き取り組みました。
また、2020年11月には、アート、テクノロジー、文房具、教育などの異業種・異文化パートナーが参加するコミュニティイベント「Connected Ink(コネクテッド・インク)2020」を開催し、最新のデジタルトランスフォーメーション及びインク・テクノロジーと多様なエコシステム・パートナーとの組み合わせにより生み出されるコミュニティを通じて未来の社会のために活動する新たな試みを始めました。
(注)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行による当社グループの事業活動への影響及び取り組みについては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容 <新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響及び取り組み>」に記載のとおりであります。
これらの結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は次のとおりとなりました。
a. 財政状態
当連結会計年度末における資産の残高は、71,181,334千円となり、前連結会計年度末に比べ20,025,631千円増加しました。これは主に、現金及び預金が10,501,136千円、商品及び製品が5,461,392千円及び流動資産のその他が1,352,135千円増加したことによります。
負債の残高は、33,492,517千円となり、前連結会計年度末に比べ10,071,588千円増加しました。これは主に、買掛金が4,256,470千円、未払法人税等が3,584,159千円及び賞与引当金が3,068,540千円増加したことによります。
純資産の残高は、37,688,817千円となり、前連結会計年度末に比べ9,954,043千円増加しました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益で10,225,669千円増加し、剰余金の配当で1,136,976千円減少したことによります。これらの結果、自己資本比率は前連結会計年度末に比べ1.3ポイント減少し、52.9%となりました。
b. 経営成績
当連結会計年度における売上高は108,531,067千円(前年同期比22.5%増)となり、営業利益は13,407,240千円(同140.8%増)、経常利益は14,090,803千円(同171.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は10,225,669千円(同161.0%増)となりました。
そして、中期経営計画で掲げた経営課題解決への着実な取り組みと戦略の遂行により、主要な経営指標の目標(連結営業利益率10%、連結売上高1,000億円、連結株主資本利益率15~20%)を当連結会計年度において早期に達成することができました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ、10,501,136千円増加(前年同期は4,778,741千円増加)し、当連結会計年度末には32,042,603千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの内訳は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、14,578,204千円(前年同期は13,057,842千円の収入)となりました。これは、当連結会計年度において税金等調整前当期純利益14,032,795千円及び仕入債務の増加額3,933,683千円などの収入要因が、たな卸資産の増加額5,177,812千円などの支出要因を上回ったことによります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、1,381,960千円(前年同期は1,959,907千円の使用)となりました。主な内訳は、有形固定資産の取得による支出1,052,891千円及び無形固定資産の取得による支出179,418千円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、4,053,092千円(前年同期は5,824,509千円の使用)となりました。主な内訳は、長期借入金の返済による支出2,000,000千円、配当金の支払額1,136,716千円及び短期借入金の返済による支出500,000千円であります。
③生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
| セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | 前年同期比(%) |
| ブランド製品事業(千円) | 32,197,498 | 157.3 |
| テクノロジーソリューション事業(千円) | 34,407,658 | 114.6 |
| 合計(千円) | 66,605,156 | 131.9 |
(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.上記の金額には、製品仕入実績を含んでおります。
b. 受注実績
当社グループは見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
c. 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
| セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | 前年同期比(%) |
| ブランド製品事業(千円) | 56,678,100 | 133.1 |
| テクノロジーソリューション事業(千円) | 51,852,967 | 112.7 |
| 合計(千円) | 108,531,067 | 122.5 |
(注)1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
| 相手先 | 前連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) | ||
| 金額(千円) | 割合(%) | 金額(千円) | 割合(%) | |
| サムスングループ | 21,899,720 | 24.7 | 23,326,545 | 21.5 |
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.サムスングループには、主に、Samsung Electronics Japan Co., Ltd.、Samsung Electronics Co., Ltd.が含まれております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 経営成績等
当社グループのセグメントごとの業績に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。
なお、事業環境の変化に適合したより適切な業績説明を行うため、当連結会計年度より、各セグメントの業績説明におけるカテゴリーの範囲、名称及び記載順を一部変更しております。
◎ ブランド製品事業
<クリエイティブソリューション>クリエイティブソリューションは、ディスプレイ製品及びペンタブレット製品の売上高が前年同期を大幅に上回ったことなどから、大幅な増収となりました。また、当連結会計年度では、一部製品において、アンドロイドOSやクロームOSへの対応を進めました。
○ ディスプレイ製品
「Wacom Cintiq Pro(ワコム シンティック プロ)」は、営業活動の制約、経年等により、前年同期の売上高を大幅に下回りました。一方で、前連結会計年度に発表したエントリーモデル「Wacom Cintiq(ワコム シンティック)22」、「Wacom One(ワコム ワン)液晶ペンタブレット13」を中心に拡販に努めました。これらの結果、ディスプレイ製品全体の売上高は、前年同期を大幅に上回りました。
○ ペンタブレット製品
「Wacom Intuos Pro(ワコム インテュオス プロ)」は、営業活動の制約、経年等の影響がある中、前年同期の売上高を上回りました。また、オンライン教育及びテレワークの普及に伴う需要増加により、「Wacom Intuos(ワコム インテュオス)」、「One by Wacom(ワン バイ ワコム)」は、いずれも前年同期の売上高を大幅に上回りました。これらの結果、ペンタブレット製品全体の売上高は、前年同期を大幅に上回りました。
○ モバイル製品他
デジタルペン搭載タブレット市場が拡大し競争環境が大きく変化するなか、前連結会計年度に発表したWindows 10搭載クリエイティブタブレット「Wacom MobileStudio Pro(ワコム モバイルスタジオ プロ)」の寄与により、モバイル製品の売上高は、前年同期を僅かに上回りました。一方で、モバイル製品以外のスタイラスペン製品を中心とした売上高は、前年同期を大幅に下回りました。これらの結果、モバイル製品他全体の売上高は、前年同期を下回りました。
<ビジネスソリューション>液晶サインタブレット「STU(エスティーユー)」シリーズの売上高は、営業活動の制約が生じ、前年同期を大幅に下回りました。この結果、ビジネスソリューション全体の売上高は、前年同期を小幅に下回りました。
これらの結果、ブランド製品事業の売上高は56,678,100千円(前年同期比33.1%増)、セグメント利益は9,095,758千円(同433.0%増)となりました。また、売上高の増加に伴う在庫水準の上昇などにより、セグメント資産は前連結会計年度末に比べ3,191,721千円増加の15,648,086千円となりました。
◎ テクノロジーソリューション事業
これらの結果、テクノロジーソリューション事業の売上高は51,852,967千円(前年同期比12.7%増)、セグメント利益は9,260,421千円(同21.0%増)となりました。また、売上高の増加に伴う売掛金の増加や在庫水準の上昇などにより、セグメント資産は前連結会計年度末に比べ4,867,925千円増加の14,619,288千円となりました。
<新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響及び取り組み>新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行による当連結会計年度での当社グループの事業活動への影響及び取り組みについては、下記のとおりであります。
ブランド製品事業では、当連結会計年度において、新製品に対する導入・販促活動が十分に展開できず、また、営業活動が制約されました。特に後者については、主にビジネスソリューションやクリエイティブソリューションのプロ向けのディスプレイ製品の販売に影響を及ぼしました。一方で、家庭でのオンライン教育の志向の高まりなどにより、主にクリエイティブソリューションのペンタブレット製品の中低価格帯モデル(「Wacom Intuos」、「One by Wacom」)に加えて、ディスプレイ製品のエントリーモデル(「Wacom Cintiq」、「Wacom One 液晶ペンタブレット13」)の販売が好調に推移しました。
テクノロジーソリューション事業では、当連結会計年度において、生産、サプライチェーンオペレーションが制限されたことや法人向けPC需要の一部伸び悩みなどから、主にAESテクノロジーソリューションの業績に影響を及ぼしました。
全社的な取り組みとしては、全世界的に、テレワークの実施等柔軟な勤務体制を継続することで、従業員の安全確保、感染拡大防止に向けた社会的責任の遂行を図りました。
b. 経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。当社グループは、これらのリスクに対して、継続的にモニタリングを行って現状把握に努めるとともに、低減・回避等の対応に努めております。なお、当連結会計年度末現在において、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載されたリスクに関する重要な事象等は存在しておりません。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a. キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容
当連結会計年度における当社グループのキャッシュ・フローの状況については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの事業活動における資金需要の主なものは、AI(人工知能)やVR(仮想現実)/MR(複合現実)分野といった成長市場に対応した新製品や次世代デジタルペン技術にかかる研究開発費、量産出荷のための金型設備投資、コーポレート部門における業務効率向上のためのITシステム投資であります。なお、設備もしくはシステムとして資産計上される資本的支出の規模は、毎期20億円~25億円程度を目安としております。当連結会計年度においては、製品量産用金型や自動組立機への投資などがあるものの、投資計画そのもののキャンセルや投資時期の見直しがあり、総額約12億円となりました。
b. 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの資金調達、資金運用等に関する取り組み方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(金融商品関係)」に記載のとおりであります。なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高は、約67億円(借入金60億円、リース負債約7億円)であります。
また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、約320億円であります。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成には、経営者による会計方針の採用や、資産・負債及び収益・費用の計上及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて、過去の実績等を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り項目特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。
また、会計上の見積りを行うに際して使用した重要な仮定は、合理的であると判断しております。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
なお、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大が会計上の見積りに与える影響については、将来の業績の不確実性の程度が会計上の見積りに与える感応度は低い状況であると判断し、評価時点において入手可能な情報に基づく最善の見積りを行っております。
④経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、2019年3月期からスタートした『Wacom Chapter2』において、お客様が生涯を通じてデジタルインクの創造する価値を体験できる「Life-long Ink」のビジョンを掲げ、最高のデジタルインク体験をお届けすべく、各種施策に取り組んでまいりました。その取り組みをさらに発展、進化させるべく新たに『Wacom Chapter3』(対象期間:2022年3月期~2025年3月期)を策定し、以下の経営指標を達成することを目標としております。
a. 事業活動の効率性
新たな指標としてROIC(投下資本利益率)25~30%程度を目安として事業を運営してまいります。
b. 資本の効率性
ROE(自己資本利益率)20%程度を想定しております。
c. 株主還元
配当方針については、適正な財務の健全性を確保することを念頭に、連結ベースの配当性向の目安を30%程度としたうえで、1株当たり配当の中長期的な増加を通じた利益還元に努めてまいります。自己株式取得については、投資機会や財務状況などを考慮のうえ、経営環境の変化に対応した機動的な資本政策として遂行してまいります。