有価証券報告書-第35期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

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2018/06/25 10:23
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(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度(2017年4月1日から2018年3月31日まで)での当社グループを取り巻く事業環境において、モバイル、クラウド、ビッグデータ、ソーシャルメディアが社会に浸透し、IT分野の新たな産業プラットフォームを形成する動きがより活発化しました。同期間の主要通貨に対する円相場は、金融緩和が継続する日本と緩やかに金融引き締めに転じつつある欧米との間の金融政策の違いなどを反映し、前年同期に比べて、ドル、ユーロ、新興国通貨のいずれに対しても概ね円安傾向で推移しました。
このような事業環境の下、当社グループは、クリエイティブユーザー向けペンタブレット市場のグローバルリーダーとして、デジタルペンやデジタルインクの技術で市場を主導するとともに、IoT(モノのインターネット)、VR(仮想現実)/AR(拡張現実)、3D(三次元)プリンティング、AI(人工知能)、セキュリティ(安全性)などを新たな成長分野と捉えて、より付加価値の高い製品の開発やパートナーの拡大に取り組みました。また、中長期的な企業価値の向上をより確かなものにするため、製品開発力の強化や生産性の向上、コスト構造の改善といった経営課題にも取り組みました。
ブランド製品事業においては、主力のクリエイティブビジネスで、前期より順次市場投入したペンタブレット製品、ディスプレイ製品及びモバイル製品の新製品について、市場への発信に取り組むとともに、地域マーケティングの強化による顧客コミュニティへの積極的な販売活動を展開しました。コンシューマビジネスでは、Windows搭載タブレットに最適なスタイラス製品を市場投入するとともに、スマートパッド製品の拡販に努めるなどデジタル文具市場におけるハイエンドユーザー向け製品ラインアップの強化を図りました。ビジネスソリューションでは、各種用紙に手書きしたインク情報をリアルタイムにモバイル機器やネットワークへ安全に取り込める新製品を発表するなど、ビジネスワークフローの効率改善やセキュリティを強化した製品の拡販に取り組みました。このような中、当連結会計年度においては、新製品の売上貢献などから、ブランド製品事業全体としての売上は前年同期を上回る堅調な結果となりました。
テクノロジーソリューション事業においては、EMR(Electro Magnetic Resonance)方式やアクティブES(Active Electrostatic)方式のデジタルペン技術の業界標準化をOSの壁を越えて牽引し、タブレット分野でのデジタルペン技術の採用拡大を図りました。さらに、教育市場での事業機会の拡大や、多くのパートナー企業との協働を通じてデジタル文具市場の拡大に取り組みました。スマートフォン向けでもサムスン社の最新モデルGalaxy Note8向けに量産出荷を進めました。このような中、当連結会計年度においては、スマートフォン向けの売上が、サムスン社の最新モデル向けに拡大しましたが旧モデルへの需要が消失した影響などを受け、減収となりました。一方で、タブレット向けの売上が大幅に増加したことなどから、テクノロジーソリューション事業全体としての売上は前年同期を上回る好調な結果となりました。
コーポレート部門及び全社的な取り組みとしては、デジタルインクの標準として「WILL™(Wacom Ink Layer Language)」の普及を引き続き推進するとともに、「WILL™」を活用した事業・技術開発のスタートアップ企業向け支援プログラム「ワコム・イノベーション・ハブ」を5月に発表しました。さらに、「WILL™」の普及を促進するためのイベント「Connected Ink(コネクティドインク)」を6月に中国、8月にドイツ、11月に東京で前期に引き続き開催し、パートナー企業の拡大にも努めました。そして、経営課題への取り組みについては、コスト構造の改善に向けた計画を立案し、推進しました。また、経営判断の質の向上に向けて、4月に社外取締役を中心に構成する指名委員会を設置し、当社グループの役員等(代表取締役、取締役、重要な経営幹部)に対する選定基準の策定作業を進め、10月に2018年4月1日付で就任する次期代表取締役社長を選定し、発表しました。
なお、セグメント情報で「その他」に区分しているエンジニアリングソリューション事業は、12月1日付での会社分割により設立した新設会社に承継させ、当該新設会社の全株式を日東工業株式会社に譲渡しました。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりであります。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は次のとおりとなりました。
a. 財政状態
当連結会計年度末における資産の残高は、50,909,513千円となり、前連結会計年度末と比べ659,930千円増加しました。主な変動は、現金及び預金が4,952,199千円増加し、商品及び製品が2,029,438千円、ソフトウエアが1,226,424千円、繰延税金資産(投資その他の資産)が1,105,425千円減少したことによります。
負債の残高は、28,241,032千円となり、前連結会計年度末に比べ651,654千円減少しました。主な変動は、未払法人税等が177,381千円、賞与引当金が100,635千円増加し、買掛金が381,177千円、その他流動負債が575,950千円、退職給付に係る負債が114,862千円減少したことによります。
純資産の残高は、22,668,481千円となり、前連結会計年度末に比べ1,311,584千円増加しました。主な変動は、親会社株主に帰属する当期純利益で2,361,885千円増加し、剰余金の配当で974,227千円減少したことによります。
この結果、自己資本比率は前連結会計年度末に比べ2.3ポイント増加し、44.5%となりました。
b. 経営成績
当連結会計年度における売上高は82,262,867千円(前年同期比15.4%増)、営業利益は3,526,717千円(前年同期は営業損失1,171,194千円)、経常利益は3,584,698千円(前年同期は経常損失870,228千円)、親会社株主に帰属する当期純利益は2,361,885千円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純損失5,534,484千円)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末と比べ、4,952,199千円増加(前年同期は160,103千円減少)し、19,157,127千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、6,781,272千円(前年同期は121,928千円の収入)となりました。主な増加は、税金等調整前当期純利益4,178,745千円、減価償却費2,421,316千円、たな卸資産の減少額2,069,087千円であり、主な減少は、事業譲渡益697,926千円、仕入債務の減少額471,553千円、法人税等の支払額714,239千円です。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、767,231千円(前年同期は3,479,898千円の使用)となりました。主な内訳は、工具、器具及び備品等の有形固定資産の取得による支出1,042,818千円、ソフトウエアの取得による支出251,457千円、事業譲渡による収入571,881千円です。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、974,290千円(前年同期は3,298,702千円の収入)となりました。主な内訳は、配当金の支払額974,290千円です。
③生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2017年4月1日
至 2018年3月31日)
前年同期比(%)
ブランド製品事業(千円)22,653,55497.3
テクノロジーソリューション事業
(千円)
23,310,248140.7
報告セグメント計(千円)45,963,802115.4
その他(千円)33,85853.8
合計(千円)45,997,660115.3

(注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b. 製品仕入実績
当連結会計年度の製品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2017年4月1日
至 2018年3月31日)
前年同期比(%)
ブランド製品事業(千円)83,583143.3
テクノロジーソリューション事業
(千円)
--
報告セグメント計(千円)83,583143.3
その他(千円)151,46993.7
合計(千円)235,052106.9

(注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
c. 受注実績
当社グループは見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
d. 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2017年4月1日
至 2018年3月31日)
前年同期比(%)
ブランド製品事業(千円)48,173,062109.8
テクノロジーソリューション事業
(千円)
33,647,857125.8
報告セグメント計(千円)81,820,919115.8
その他(千円)441,94864.8
合計(千円)82,262,867115.4

(注)1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先前連結会計年度
(自 2016年4月1日
至 2017年3月31日)
当連結会計年度
(自 2017年4月1日
至 2018年3月31日)
金額(千円)割合(%)金額(千円)割合(%)
サムスン電子グループ13,380,50918.812,706,47715.4

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.サムスン電子グループには、主に、Samsung Electronics Japan Co., Ltd.、Samsung Electronics Vietnam Thai Nguyen Co., Ltd.、Samsung Electronics Co., Ltd.が含まれております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成には、経営者による会計方針の採用や、資産・負債及び収益・費用の計上及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて、過去の実績等を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り項目特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 経営成績等
当社グループのセグメントごとの業績に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。
◎ ブランド製品事業
<クリエイティブビジネス>クリエイティブビジネスの売上は前年同期を僅かに上回りました。業界にイノベーションを起こして市場でのリーダーシップをさらに強化するために、VR(仮想現実)/AR(拡張現実)分野といった成長市場に対応した新製品や次世代デジタルペン技術の開発に引き続き取り組みました。
○ ペンタブレット製品
「Intuos Pro(インテュオス プロ)」は、前期に発表した新製品の需要が弱含みに推移した一方、「Intuos」は、先進国を中心に堅調に売上を伸ばしました。また、前期に発表した「Intuos 3D」も売上に貢献しました。新興地域向けの低価格エントリーモデル「One by Wacom(ワン バイ ワコム)」は、出荷台数が前年同期比で2割増加し、新規ユーザーを獲得しました。これらの結果、ペンタブレット製品全体の売上は小幅ながら前年同期を上回りました。
○ モバイル製品
デジタルペン搭載タブレット市場が拡大し、競争環境が大きく変化しました。プロクリエイターの制作プロセスを支える当社の高機能モデルへの需要は継続する一方、前期に発表した新製品「Wacom MobileStudio Pro(ワコム モバイルスタジオ プロ)」が製品ライフサイクルの後期に入ったことで販売が減速しました。これらの結果、モバイル製品全体の売上は前年同期を下回る結果となりました。
○ ディスプレイ製品
既存モデルが新製品への移行期に入ったことで減収となりました。一方、前年同期に発表し順次販売を開始した、次世代デジタルペン技術に対応した液晶ペンタブレット「Wacom Cintiq Pro(ワコム シンティック プロ)」の13インチサイズ と16インチサイズの両モデルが売上に貢献しました。これらの結果、ディスプレイ製品全体の売上は前年同期を上回りました。
<コンシューマビジネス>前期に発表した「Bamboo Slate(バンブー スレート)」や「Bamboo Folio(バンブー フォリオ)」は販売が鈍化したことで減収となりました。一方、6月に発表した、マイクロソフト社との共同開発によるWindows対応タブレットに最適なスタイラス「Bamboo Ink(バンブー インク)」が北米を中心に売上を拡大しました。これらの結果、コンシューマビジネス全体の売上は前年同期から大幅に増加しました。
<ビジネスソリューション>液晶サインタブレット製品「STU(エスティーユー)」シリーズは、特に欧州での競争関係の変化や前期にあった大型案件の反動減により減収となりました。一方、液晶ペンタブレット製品「DT(ディーティー)」シリーズは、北米の金融機関向けなどの販売が好調に推移しました。これらの結果、ビジネスソリューション全体の売上は前年同期を順調に上回りました。
この結果、売上高は48,173,062千円(前年同期比9.8%増)、セグメント利益は6,469,681千円(同13.8%増)となりました。また、セグメント資産は前連結会計年度末に比べ2,377,941千円減少の21,176,949千円となりました。
◎ テクノロジーソリューション事業
<スマートフォン向けペン・センサーシステム>サムスン社の最新モデルGalaxy Note8向けの量産出荷が順調に推移しましたが、前モデルGalaxy Note7への需要を前期に消失した影響が当期にも及んだことから、売上は前年同期を下回りました。
<タブレット・ノートPC向けペン・センサーシステム>アクティブES方式デジタルペン製品は、タブレットメーカー各社から高い評価を得て採用が拡大しております。特に、HP社、レノボ社、デル社、富士通社向け出荷が好調に推移し、売上を拡大しました。また、EMR方式デジタルペン製品も、グーグル社のChromebookで採用されるなど、教育市場向けで売上を拡大しました。
この結果、売上高は33,647,857千円(前年同期比25.8%増)、セグメント利益は5,677,803千円(同132.4%増)となりました。また、セグメント資産は前連結会計年度末に比べ1,189,166千円増加の9,603,110千円となりました。
◎ その他
12月1日付でエンジニアリングソリューション事業を譲渡した影響などにより、売上は前年同期を下回りました。
この結果、売上高は441,948千円(前年同期比35.2%減)、セグメント損失は65,318千円(前年同期は営業損失32,420千円)となりました。なお、セグメント資産の残高はありません(前年同期は367,258千円)。
b. 経営成績に影響を与える大きな要因
当社グループの経営成績に影響を与える大きな要因は「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。当社グループは、当連結会計年度において、為替レートの変動といった経営観環境に関する要因、市場環境の変化、取引先との依存関係、他社との競争、基幹部品・部材の供給と価格、製品の欠陥又は品質問題といった事業活動に関する要因、さらには法的規制及び訴訟等の発生可能性に留意し、これらの低減・回避等の対応に努めました。なお、当連結会計年度末現在において、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載されたリスクに関する重要な事象等は存在しておりません。
c. 資本の財源及び資金の流動性
ⅰ)資金需要
当社グループの事業活動における資金需要の主なものは、VR(仮想現実)/AR(拡張現実)分野、さらにはMR(複合現実)分野といった成長市場に対応した新製品や次世代デジタルペン技術にかかる研究開発費、量産出荷のための金型設備投資、コーポレート部門における業務効率向上のためのITシステム投資です。なお、設備もしくはシステムとして資産計上される資本的支出の規模は、毎期20億円~25億円程度を目安としております。当連結会計年度においては、金型投資の一部について新製品量産開始の遅れにより今期にずれ込んだこと等が影響し、総額約15.1億円となりました。
ⅱ)資本の財源及び資金の流動性
当社グループの資金調達、資金運用等に関する取り組み方針につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(金融商品関係)」に記載のとおりであります。なお、当連結会計年度においては、運転資金の効率的な調達を行うため、取引銀行とコミットメントライン契約(総額20億円)を新たに締結しました。
d. 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、この度、2019年3月期を初年度とする新たな中期経営計画「Wacom Chapter 2」を策定し、その最終年度である2022年3月期において以下の経営指標を達成することを目標としております。
(収益性) 連結営業利益率 10%
(事業規模) 連結売上高 1,000億円
(資本効率) 連結株主資本利益率 15~20%
なお、当連結会計年度においては、連結営業利益率4.3%(前年同期は△1.6%)、連結売上高823億円(前年同期比15.4%増)、連結株主資本利益率10.8%(前年同期は△21.2%)でした。引き続きこれらの指標について改善されるよう取り組んでまいります。

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