内部統制報告書-第120期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

【提出】
2019/06/27 9:51
【資料】
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財務報告に係る内部統制の基本的枠組みに関する事項

代表執行役社長兼最高経営責任者西川廣人及び執行役最高財務責任者軽部博は、当社の財務報告に係る内部統制の整備及び運用に責任を有しており、企業会計審議会の公表した「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の設定について(意見書)」に示されている内部統制の基本的枠組みに準拠して財務報告に係る内部統制を整備及び運用している。
なお、内部統制は、内部統制の各基本的要素が有機的に結びつき、一体となって機能することで、その目的を合理的な範囲で達成しようとするものである。このため、財務報告に係る内部統制により財務報告の虚偽の記載を完全には防止又は発見することができない可能性がある。

評価の範囲、基準日及び評価手続に関する事項

財務報告に係る内部統制の評価は、当事業年度の末日である平成31年3月31日を基準日として行われており、評価に当たっては、一般に公正妥当と認められる財務報告に係る内部統制の評価の基準に準拠した。
本評価においては、連結ベースでの財務報告全体に重要な影響を及ぼす内部統制(全社的な内部統制)の評価を行った上で、その結果を踏まえて、評価対象とする業務プロセスを選定している。当該業務プロセスの評価においては、選定された業務プロセスを分析した上で、財務報告の信頼性に重要な影響を及ぼす統制上の要点を識別し、当該統制上の要点について整備及び運用状況を評価することによって、内部統制の有効性に関する評価を行った。
財務報告に係る内部統制の評価の範囲は、会社並びに連結子会社及び持分法適用会社について、財務報告の信頼性に及ぼす影響の重要性の観点から必要な範囲を決定した。財務報告の信頼性に及ぼす影響の重要性は、金額的及び質的影響の重要性を考慮して決定しており、全社的な内部統制の評価結果を踏まえ、業務プロセスに係る内部統制の評価範囲を合理的に決定した。
業務プロセスに係る内部統制の評価範囲については、各事業拠点の前連結会計年度の売上高(連結会社間取引消去後)の金額が高い拠点から合算していき、前連結会計年度の連結売上高の概ね2/3に達している事業拠点を「重要な事業拠点」とした。選定した重要な事業拠点においては、企業の事業目的に大きく関わる勘定科目として売上高、売掛金及びたな卸資産に至る業務プロセスを評価の対象とした。
さらに、選定した重要な事業拠点にかかわらず、それ以外の事業拠点をも含めた範囲について、重要な虚偽記載の発生可能性が高く、見積りや予測を伴う重要な勘定科目に係る業務プロセスやリスクが大きい取引を行っている事業又は業務に係る業務プロセスを財務報告への影響を勘案して重要性の大きい業務プロセスとして評価対象に追加している。
特に、当事業年度の全社的な内部統制の評価、及び業務プロセスに係る内部統制の評価に際しては、特定の経営者に人事・報酬等に関する権限が集中していないか、取締役会の監督機能が有効に機能しているか、さらに特定の管理部署への牽制機能が有効かについて追加的な評価手続きを行った。これは、平成18年3月期乃至平成30年3月期の各年の有価証券報告書において、当社元代表取締役兼会長であるカルロス・ゴーン氏(以下「ゴーン氏」という。)をはじめとする役員報酬等が過少に計上された他、ゴーン氏による会社資産又は経費の私的利用、予算外の支出を管理するための制度である「CEO リザーブ」を利用した不透明な支出等の事実が判明したことを受けたものである。当該事案の背景は、平成31年3月27日付けガバナンス改善特別委員会報告書において今回の不正行為の根本原因として指摘されたとおり、ゴーン氏への人事・報酬を含む権限の集中にあった。具体的には、取締役会の監督機能が一部有効に機能していなかった上、ゴーン氏が一部管理部署の権限を特定少数の者に集中させることで特定の管理部署がブラックボックス化し牽制機能が一部有効に機能しなかった状況下、ゴーン氏が適切な経営理念や倫理規程から逸脱する行動を行える環境にあったことに鑑み、当事業年度において追加的な評価手続きを行うこととした。

評価結果に関する事項

上記の評価の結果、当事業年度末日時点において、当社の財務報告に係る内部統制は有効であると判断した。

特記事項

(1)前事業年度末における開示すべき重要な不備の是正状況
当社は、当事業年度に発覚した、(a)当社元代表取締役兼会長であるゴーン氏、元代表取締役グレッグ・ケリー氏及び両名に協力していた可能性がある者による重大な不正行為、並びに、(b)その他当社の役員報酬等の開示を含む財務報告の正確性に影響し得る事実を受け、平成22年3月期から平成30年3月期までの財務報告に係る内部統制の一部に、重要な欠陥又は開示すべき重要な不備があったものとし、当該期間の内部統制報告書の訂正報告書を令和元年5月14日に提出した。
当社は全社的な内部統制に重要な不備があったことにより不適切な開示に至ったことを重く受け止め、当該事象の発覚以降、下記の是正への取り組みを実施した。
1. 不正を行った代表取締役2名の解任
2. 代表取締役への他の取締役の報酬配分を決定する権限の付与の停止
3. 当社の取締役会の事前承認を受けない子会社・関連会社からの報酬受取りの禁止
4. CEOリザーブの廃止
5. 取締役会での活発な議論のためのプレミーティングの実施
6. 取締役及び執行役員への行動規範教育の徹底
これらの取り組みにより、特定の経営者に対する権限集中が解消されるとともに、取締役会が実質的に監督機能を発揮する環境が整備され、さらに特定の管理部署業務の可視化により牽制機能を強化するための方針及び手続が整備されたと判断した。また、これらについて、関連する文書の作成状況や会議の実施状況等に基づき、その運用状況を評価することにより、当事業年度末時点において、特定の経営者が適切な経営理念や倫理規程から逸脱する行動が行える環境が排除されていることを確認した。
上記の是正に加え、当事業年度の有価証券報告書の作成にあたり、会計処理と役員報酬の明細情報の突合等、役員報酬に関する適正な会計処理のための管理体制の強化、並びに株価連動型インセンティブ受領権の行使による利益を、役員報酬として追加開示することを含む適正な役員報酬開示のための管理体制の強化に取り組み、当事業年度の決算の過程において運用がなされていることを確認している。
上記の結果、当事業年度末時点において、開示すべき重要な不備は是正され、当社の財務報告に係る内部統制は有効であると判断した。
(2)継続的なガバナンス改善
当社では、ガバナンス改善の柱として、令和元年6月25日の第120回株主総会決議を受け、指名委員会等設置会社への移行を決定している。また、取締役会・エグゼクティブコミッティから経理部へ新規会社設立の提案に関する情報提供プロセスを構築するなど、さらなる管理体制の強化を行い、業務面の改善を継続して行っている。
これらに見られるように、当社では引き続きガバナンス改善特別委員会の提言を真摯に受け止め、ガバナンスの改善、企業風土の改革、企業倫理の再構築、企業情報の適切な開示、コンプライアンスの遵守を図るため、以下の改善策についても実施し、定期的に改善状況を確認していく。
1. 取締役会の構成・機能の強化
2. 内部監査による監督機能の強化
3. 企業倫理の再構築
4. 社内の部署の機能・権限見直し
5. 内部通報制度の改革