有価証券報告書-第17期(2023/03/01-2024/02/29)
③戦略
(a)自然への依存と影響
当社グループの事業は、農産物、畜産物、水産物、木材や水などの資源に加え、土壌や森林、四季のある気候等、多くの自然の恵み(生態系サービス)を享受することで成り立っています。その一方で、私たちの事業活動は、温室効果ガスの排出や、廃棄物の排出、排水など、自然環境に様々な影響を与えています。当社は、自社の事業活動と自然環境との関係、具体的には両者の「依存」と「影響」について把握し、対応することが重要だと認識しています。
<事業活動と生態系サービスとの関わり>
(b)LEAP※アプローチを考慮した自然関連課題等の評価
LEAPアプローチとは、TNFDが推奨する、自然との接点、自然との依存関係、インパクト、リスク・機会など、自然関連課題の評価のための統合的なプロセスです。
2023年度は、当社グループの主要事業会社である大丸松坂屋百貨店が全国各地に有する百貨店15店舗を対象に、LEAPアプローチを考慮した自然関連課題等(依存・影響、リスク・機会)の特定・評価を実施しました。
※ LEAP : Locate(発見)、Evaluate(診断)、Assess(評価)、Prepare(準備)の4つのフェーズ
(i)依存と影響の外観(Locate)
百貨店事業におけるバリューチェーン全体の依存・影響及びその程度をTNFDが推奨する自然への依存・影響を特定するツール「ENCORE」をベースに把握、ヒートマップを作成し、直接操業(店舗運営や店舗開発)及びバリューチェーン上流(調達)における自然資本への依存・影響の度合いを確認しました。
(ⅱ)リスク・機会を評価する店舗の特定(Locate)
WWFの「Risk Filter Suite」(生態系と水のリスク分析ツール)、WRIの「Aqueduct」(水リスク分析ツール)等を用いて、各店舗所在地における生態系の状況を確認し、さらに、当社独自の基準(土地建物の所有状況、売上規模等)と合わせ重要性評価を行いました。その結果、大丸心斎橋店を生物多様性保全における特に重要性の高い店舗と特定しました。
(ⅲ)自然に対する依存・影響の要因整理(Evaluate)
大丸心斎橋店での事業活動のうち、バリューチェーンにおける生態系サービスへの依存と影響が大きい「店舗開発」「衣料品・食料品」「包装資材」について関連する要因を整理しました。
(ⅳ)リスク・機会の評価と対応策(Assess・Prepare)
(ⅰ)~(ⅲ)までの大丸心斎橋店における生態系サービスへの依存・影響の整理を踏まえ、事業活動に影響を及ぼす自然関連リスク・機会を特定・評価するとともに、それらに対応する活動について検討しました。また、「自社にとっての重要性」と、「ステークホルダーにとっての重要性」の2つの基準に基づき、事業活動への影響を大・中・小の3段階で定性的に評価しました。
<リスク・機会の評価と対応策>
(a)自然への依存と影響
当社グループの事業は、農産物、畜産物、水産物、木材や水などの資源に加え、土壌や森林、四季のある気候等、多くの自然の恵み(生態系サービス)を享受することで成り立っています。その一方で、私たちの事業活動は、温室効果ガスの排出や、廃棄物の排出、排水など、自然環境に様々な影響を与えています。当社は、自社の事業活動と自然環境との関係、具体的には両者の「依存」と「影響」について把握し、対応することが重要だと認識しています。
<事業活動と生態系サービスとの関わり>

(b)LEAP※アプローチを考慮した自然関連課題等の評価
LEAPアプローチとは、TNFDが推奨する、自然との接点、自然との依存関係、インパクト、リスク・機会など、自然関連課題の評価のための統合的なプロセスです。
2023年度は、当社グループの主要事業会社である大丸松坂屋百貨店が全国各地に有する百貨店15店舗を対象に、LEAPアプローチを考慮した自然関連課題等(依存・影響、リスク・機会)の特定・評価を実施しました。
※ LEAP : Locate(発見)、Evaluate(診断)、Assess(評価)、Prepare(準備)の4つのフェーズ
(i)依存と影響の外観(Locate)
百貨店事業におけるバリューチェーン全体の依存・影響及びその程度をTNFDが推奨する自然への依存・影響を特定するツール「ENCORE」をベースに把握、ヒートマップを作成し、直接操業(店舗運営や店舗開発)及びバリューチェーン上流(調達)における自然資本への依存・影響の度合いを確認しました。
(ⅱ)リスク・機会を評価する店舗の特定(Locate)
WWFの「Risk Filter Suite」(生態系と水のリスク分析ツール)、WRIの「Aqueduct」(水リスク分析ツール)等を用いて、各店舗所在地における生態系の状況を確認し、さらに、当社独自の基準(土地建物の所有状況、売上規模等)と合わせ重要性評価を行いました。その結果、大丸心斎橋店を生物多様性保全における特に重要性の高い店舗と特定しました。
(ⅲ)自然に対する依存・影響の要因整理(Evaluate)
大丸心斎橋店での事業活動のうち、バリューチェーンにおける生態系サービスへの依存と影響が大きい「店舗開発」「衣料品・食料品」「包装資材」について関連する要因を整理しました。
(ⅳ)リスク・機会の評価と対応策(Assess・Prepare)
(ⅰ)~(ⅲ)までの大丸心斎橋店における生態系サービスへの依存・影響の整理を踏まえ、事業活動に影響を及ぼす自然関連リスク・機会を特定・評価するとともに、それらに対応する活動について検討しました。また、「自社にとっての重要性」と、「ステークホルダーにとっての重要性」の2つの基準に基づき、事業活動への影響を大・中・小の3段階で定性的に評価しました。
<リスク・機会の評価と対応策>
項目 | リスク・機会の内容 | 影響度 | 活動内容 | ||
リスク | 物理 | 急性 | ・異常気象、自然災害増加による店舗休業に伴う収益の減少 | 大 | ・BCP整備による店舗・事業所のレジリエンス強化 ・店舗の防災性能の向上 |
慢性 | ・気温上昇に伴うエネルギーコストの増加 | 中 | ・高効率省エネルギー機器への適切なタイミングでの更新 | ||
・不作、品質低下、収穫量の減少に伴う農水産物の取り扱い商品数の減少による収益の不安定化 ・気温上昇や降雨パターン変化による来店客数の減少、売れ筋の変化 | 中 | ・重要な食品原材料の調達リスクについての論議と戦略策定 | |||
移行 | 政策・規制 | ・温室効果ガス排出量に関する規制強化によるコストの増加 | 中 | ・店舗における積極的な省エネ施策や再エネ切り替え拡大による温室効果ガス削減 | |
市場 | ・建材不足による店舗開発(外装・内装、増改築含む)の困難化、建築関連コストの増加 | 小 | ・国産間伐材の使用拡大 | ||
・サステナブルな商品に対する消費者の需要の高まりに応えられないことによる収益の減少 | 大 | ・認証商品等、環境配慮型商品の取り扱い拡大 ・FSC認証等、環境配慮型包装資材への切り替え ・スマートラッピング、簡易包装の選択推進 | |||
評判 | ・持続可能な生産方法で生産された商品の調達が十分ではないことによるレピュテーションの低下 | 中 | ・認証商品の取り扱い拡大 ・スマート納品(納品回数の削減) | ||
・廃棄物の増加や適切な処理がなされないことによるレピュテーションの低下 | 中 | ・食品廃棄物削減のためのAI需要予測サービスの導入 ・食品廃棄物削減に向けた従業員によるコンポストコミュニティ活動 ・プラスチック資源循環法への適切な対応 | |||
機会 | 資源効率 | ・効率的な水利用に伴うコストの低減 | 小 | ・雨水、中水の利用 ・節水機器の活用 | |
製品・ サービス | ・持続可能な資材調達による不動産開発や、エネルギー使用量削減に伴う建物の資産価値の向上 | 大 | ・調達ルールの整備と各種認証の獲得(CASBEE、ZEB等)を促進し、対外的に訴求 | ||
・認証品/持続可能な生産方法で生産された商品の取り扱い増加に伴う収益の増加 | 大 | ・認証商品の取り扱い拡大 ・お客様への認証商品の周知と啓発 | |||
市場 | ・暴風雨や台風等の緩和による店舗運営の継続・維持 | 大 | ・生態系サービスを享受するための環境整備(立地、植生、気候特性を把握したうえでのルール作り等) | ||
・生物多様性や景観に配慮した不動産開発、店舗運営(土地利用)に対する集客の増加 | 中 | ・屋上緑化、屋上都市養蜂の実施 | |||
資本フローと 資金調達 | ・建物の環境価値向上による資金調達力の向上 | 大 | ・新規開発物件の環境認証取得 ・グリーンボンド等を活用した資金調達 | ||
評判 | ・屋上庭園等、憩いの場の提供によるレピュテーションの向上 | 中 | ・屋上緑化、屋上都市養蜂の実施 | ||
・循環型のビジネス推進によるレピュテーションの向上 | 中 | ・廃プラや食品廃棄物の資源循環に向けた他企業とのパートナーシップの構築(例:POOLプロジェクト、国産SAFプロジェクト等) | |||
生態系保護・ 復元・再生 | ・商品(特にリスクコモディティ)のトレーサビリティを向上させることによるコンプライアンスコストの低減 | 小 | ・アセスメントの実施等、お取引先様とのエンゲージメント強化 | ||
自然資源の 持続可能な 利用 | ・紙製品の使用削減、代替資材利用増加に伴う店舗ブランド価値の向上 | 小 | ・FSC認証等、環境配慮型包装資材への切り替え ・ペーパーレス化の実施 |