有価証券報告書-第162期(2025/04/01-2026/03/31)
②戦略
当行は、自然関連リスク・機会の把握に向けた第一歩として、TNFDが推奨するLEAPアプローチ(Locate・Evaluate・Assess・Prepare)を参考に、自社拠点における自然との接点の特定と、融資ポートフォリオにおける自然資本への依存・影響の分析を行いました。以下に、その分析結果を記載します。なお、今後はこれらの分析結果を踏まえ、自然関連リスク・機会への対応をさらに深化させてまいります。
a.当行拠点の自然との接点
当行グループにおける自然との関わりを把握するため、営業拠点と自然環境との接点について分析を行いました。具体的には、国立公園・国定公園・県立自然公園・ラムサール条約登録湿地等の保護地域を重要エリアとして設定したうえで、鳥取県内における当行営業店の分布との位置関係を確認しました。分析の結果、一部の支店においてこれらの保護地域に非常に近接していることが確認されました。
TNFDが参照するENCORE(Exploring Natural Capital Opportunities, Risks and Exposure)の分析によれば、金融サービス業が自然資本に与える影響及び依存度は、製造業や一次産業と比較して相対的に限定的であることが示されています。このことは当行においても同様であり、通常の銀行業務が自然資本に直接与える影響は限定的であると認識しています。
また、当行の鳥取県内を中心とする営業店舗を対象に、国土交通省や都道府県などが作成した洪水ハザードマップ等を用いて浸水リスクを評価した結果、一部の店舗において0.5m以上の浸水深が想定されました。当該リスクの対応として、浸水リスクの高い店舗につきましては、止水板の設置など物理的な浸水対策を講じるとともに、業務継続計画(BCP)の整備・拡充を通じて、早期復旧体制の確保に努めてまいります。
これらの分析結果を踏まえ、拠点運営に伴う土地利用やGHG排出については、保護地域に近接する立地環境を踏まえた適切な対応が求められると考えています。当行は引き続き、自然資本への影響を最小化すべく、環境負荷の低減に向けた取り組みを推進してまいります。
<鳥取県内各エリアの主な支店と、保護地域の分布図>

b.投融資先における自然とのかかわり分析
◆融資ポートフォリオ分析(Locate)
銀行による自然への依存とインパクトは、投融資を通じた間接的なものが大きいと認識しており、当行の融資ポートフォリオを対象に、ENCOREを用いた分析を行いました。
分析セクターは、TNFDにおいて自然との関わりが潜在的に重要な12セクター(エネルギー、素材、運輸、自動車・自動車部品、耐久消費財・アパレル、レストラン・食品小売等、食品・飲料、家庭用品・パーソナル用品、医薬品・バイオテクノロジー、半導体・半導体製造装置、ユーティリティ等、不動産管理・開発等)について分析し、ヒートマップを作成しました。
生態系サービスへの依存について、供給サービス・調整及び維持サービス・文化的サービスの3区分、全25項目を対象に評価を行いました。その結果、多くのセクターにおいて、水の供給や調整・維持機能(水量調整、水の浄化、洪水の軽減等)への依存が共通して確認されており、水資源の持続可能な利用が幅広い業種における重要課題であることが示されました。
また、「食品・飲料」セクターは、水の供給、水量の調整、水の浄化をはじめ、特に多くの生態系サービスに対して高い依存度を有しています。また、「素材」セクター及び「医薬品・バイオテクノロジー」セクターも、水や土壌に関連する生態系サービスへの依存が相対的に高い水準にあります。
自然資本への影響については、陸・淡水・海水利用による変化、資源の利用、汚染・汚染除去、気候変動、外来種など、全13項目を対象に評価を実施しました。
分析の結果、多くのセクターに共通して、水・土壌への汚染、GHG排出、騒音等の攪乱が主要な影響ドライバーとして識別されており、これらへの対応が自然資本保全の観点から重要であることが示されました。
また、「エネルギー」セクター、「素材」セクター及び「食品・飲料」セクターは、GHG排出・大気汚染物質の排出・水及び土壌への有毒汚染物質排出、攪乱など、多岐にわたる影響ドライバーにおいて高い評価となっています。
<各セクターの自然資本への依存と影響>
<各セクターの依存・影響・融資残高の関係>
※鳥取県内に主な事業拠点のある融資先に絞り、バブルチャートを作成。バブルの大きさは融資割合を示す。
生態系サービスへの「依存」の大きさ、自然資本への「影響」の大きさ、及び各セクターの融資残高の割合を組み合わせて評価し、優先的に対応すべきセクターの特定を行いました。
鳥取県内の融資先を対象とした分析では、「食品・飲料」セクターが依存・影響ともに高水準にあり、かつ融資残高も相対的に大きいことから、優先的に対応すべきセクターとして特定しました。
◆「食品・飲料」セクターにおけるバリューチェーン分析(Evaluate)
「食品・飲料」セクターのバリューチェーンを整理し、それぞれの依存と影響を分析しました。また、当行の融資割合を組み合わせてバブルチャートを作成しました。その結果、「水の供給」「水量の調整」「水の浄化」など水に依存し、また、「水の使用量」「固形廃棄物の排出」「攪乱」などの影響を与えていることがわかりました。「漁業」セクターや「農業」セクターは依存・影響が大きいものの融資残高は小さく、次に「食料品製造業」セクターが依存・影響が大きく、融資残高も大きいことが分かりました。
<「食品・飲料」セクターのバリューチェーン>
<「食品・飲料」セクターの自然資本への依存と影響>
<各セクターの依存・影響・融資残高の関係>
以上の分析により、水資源に依存し、また影響を与えていることがわかったため、食料品製造業から融資残高の大きい5社14拠点を抽出し、水リスクについてAqueduct(※1)及び洪水時のハザードマップ(※2)、浸水ナビ(国土地理院)を用いて分析しました。
Aqueductのリスク評価からは、全ての拠点で共通して、沿岸への窒素やリンの流出による富栄養化の可能性が非常に高いことが分かりました。また、拠点J・Kについては、一級河川の想定破堤点に近接しており、想定浸水深3~5mという比較的高いリスクがあることが分かりました。
(※1)Aqueduct Water Risk Atlas:世界資源研究所(WRI)が開発した、世界中の水リスク(水不足や洪水など)を評価・分析するツール
(※2)国土交通省、市町村が提供するハザードマップ
<食料品製造業代表企業の水リスク分析>
◆優先セクターにおける自然関連リスクの分析
以上の分析結果を踏まえ、「食品・飲料」セクターにおけるリスクと機会を特定しました。
<リスク>「移行リスク」として、水源保全・取水規制の強化に伴う製造プロセスの中断等により生産能力が低下するリスクが想定されます。また、食品ロス・廃棄物削減への取組みが不十分な場合や土壌・水質汚染が生じた場合には、消費者や地域社会からの信頼低下につながる評判リスクも重要度が高いと認識しています。
「物理的リスク」として、降雨増加や沿岸洪水といった急性リスクによる災害復旧コストの増加、及び少雨による水不足に起因する生産能力の低下が挙げられます。また、気候変動に伴う農産物の供給不安定化による調達コストの増加も、事業継続上の重大な課題と位置付けています。

<機会>一方、水資源の効率的な利用による運営コストの削減、食品廃棄物・食品ロスの再利用や代替製品への転用による収益の増加は、長期的なコスト削減及び競争優位性の確立につながる機会と捉えています。また、地域社会との連携強化を通じたブランド価値の向上も、持続的な企業成長を支える重要な要素と認識しています。

◆今後について
当行は、今後この優先セクターに生じる自然関連のリスク・機会を中心に、当行の事業運営へのリスク・機会を分析し、融資先企業との対話を通じた自然資本リスクの把握・管理を進めるとともに、生態系保全及び持続可能な資源利用に向けた取組みを支援してまいります。
当行は、自然関連リスク・機会の把握に向けた第一歩として、TNFDが推奨するLEAPアプローチ(Locate・Evaluate・Assess・Prepare)を参考に、自社拠点における自然との接点の特定と、融資ポートフォリオにおける自然資本への依存・影響の分析を行いました。以下に、その分析結果を記載します。なお、今後はこれらの分析結果を踏まえ、自然関連リスク・機会への対応をさらに深化させてまいります。
a.当行拠点の自然との接点
当行グループにおける自然との関わりを把握するため、営業拠点と自然環境との接点について分析を行いました。具体的には、国立公園・国定公園・県立自然公園・ラムサール条約登録湿地等の保護地域を重要エリアとして設定したうえで、鳥取県内における当行営業店の分布との位置関係を確認しました。分析の結果、一部の支店においてこれらの保護地域に非常に近接していることが確認されました。
TNFDが参照するENCORE(Exploring Natural Capital Opportunities, Risks and Exposure)の分析によれば、金融サービス業が自然資本に与える影響及び依存度は、製造業や一次産業と比較して相対的に限定的であることが示されています。このことは当行においても同様であり、通常の銀行業務が自然資本に直接与える影響は限定的であると認識しています。
また、当行の鳥取県内を中心とする営業店舗を対象に、国土交通省や都道府県などが作成した洪水ハザードマップ等を用いて浸水リスクを評価した結果、一部の店舗において0.5m以上の浸水深が想定されました。当該リスクの対応として、浸水リスクの高い店舗につきましては、止水板の設置など物理的な浸水対策を講じるとともに、業務継続計画(BCP)の整備・拡充を通じて、早期復旧体制の確保に努めてまいります。
これらの分析結果を踏まえ、拠点運営に伴う土地利用やGHG排出については、保護地域に近接する立地環境を踏まえた適切な対応が求められると考えています。当行は引き続き、自然資本への影響を最小化すべく、環境負荷の低減に向けた取り組みを推進してまいります。
<鳥取県内各エリアの主な支店と、保護地域の分布図>


b.投融資先における自然とのかかわり分析
◆融資ポートフォリオ分析(Locate)
銀行による自然への依存とインパクトは、投融資を通じた間接的なものが大きいと認識しており、当行の融資ポートフォリオを対象に、ENCOREを用いた分析を行いました。
分析セクターは、TNFDにおいて自然との関わりが潜在的に重要な12セクター(エネルギー、素材、運輸、自動車・自動車部品、耐久消費財・アパレル、レストラン・食品小売等、食品・飲料、家庭用品・パーソナル用品、医薬品・バイオテクノロジー、半導体・半導体製造装置、ユーティリティ等、不動産管理・開発等)について分析し、ヒートマップを作成しました。
生態系サービスへの依存について、供給サービス・調整及び維持サービス・文化的サービスの3区分、全25項目を対象に評価を行いました。その結果、多くのセクターにおいて、水の供給や調整・維持機能(水量調整、水の浄化、洪水の軽減等)への依存が共通して確認されており、水資源の持続可能な利用が幅広い業種における重要課題であることが示されました。
また、「食品・飲料」セクターは、水の供給、水量の調整、水の浄化をはじめ、特に多くの生態系サービスに対して高い依存度を有しています。また、「素材」セクター及び「医薬品・バイオテクノロジー」セクターも、水や土壌に関連する生態系サービスへの依存が相対的に高い水準にあります。
自然資本への影響については、陸・淡水・海水利用による変化、資源の利用、汚染・汚染除去、気候変動、外来種など、全13項目を対象に評価を実施しました。
分析の結果、多くのセクターに共通して、水・土壌への汚染、GHG排出、騒音等の攪乱が主要な影響ドライバーとして識別されており、これらへの対応が自然資本保全の観点から重要であることが示されました。
また、「エネルギー」セクター、「素材」セクター及び「食品・飲料」セクターは、GHG排出・大気汚染物質の排出・水及び土壌への有毒汚染物質排出、攪乱など、多岐にわたる影響ドライバーにおいて高い評価となっています。
<各セクターの自然資本への依存と影響>

<各セクターの依存・影響・融資残高の関係>

※鳥取県内に主な事業拠点のある融資先に絞り、バブルチャートを作成。バブルの大きさは融資割合を示す。
生態系サービスへの「依存」の大きさ、自然資本への「影響」の大きさ、及び各セクターの融資残高の割合を組み合わせて評価し、優先的に対応すべきセクターの特定を行いました。
鳥取県内の融資先を対象とした分析では、「食品・飲料」セクターが依存・影響ともに高水準にあり、かつ融資残高も相対的に大きいことから、優先的に対応すべきセクターとして特定しました。
◆「食品・飲料」セクターにおけるバリューチェーン分析(Evaluate)
「食品・飲料」セクターのバリューチェーンを整理し、それぞれの依存と影響を分析しました。また、当行の融資割合を組み合わせてバブルチャートを作成しました。その結果、「水の供給」「水量の調整」「水の浄化」など水に依存し、また、「水の使用量」「固形廃棄物の排出」「攪乱」などの影響を与えていることがわかりました。「漁業」セクターや「農業」セクターは依存・影響が大きいものの融資残高は小さく、次に「食料品製造業」セクターが依存・影響が大きく、融資残高も大きいことが分かりました。
<「食品・飲料」セクターのバリューチェーン>

<「食品・飲料」セクターの自然資本への依存と影響>

<各セクターの依存・影響・融資残高の関係>

以上の分析により、水資源に依存し、また影響を与えていることがわかったため、食料品製造業から融資残高の大きい5社14拠点を抽出し、水リスクについてAqueduct(※1)及び洪水時のハザードマップ(※2)、浸水ナビ(国土地理院)を用いて分析しました。
Aqueductのリスク評価からは、全ての拠点で共通して、沿岸への窒素やリンの流出による富栄養化の可能性が非常に高いことが分かりました。また、拠点J・Kについては、一級河川の想定破堤点に近接しており、想定浸水深3~5mという比較的高いリスクがあることが分かりました。
(※1)Aqueduct Water Risk Atlas:世界資源研究所(WRI)が開発した、世界中の水リスク(水不足や洪水など)を評価・分析するツール
(※2)国土交通省、市町村が提供するハザードマップ
<食料品製造業代表企業の水リスク分析>

◆優先セクターにおける自然関連リスクの分析
以上の分析結果を踏まえ、「食品・飲料」セクターにおけるリスクと機会を特定しました。
<リスク>「移行リスク」として、水源保全・取水規制の強化に伴う製造プロセスの中断等により生産能力が低下するリスクが想定されます。また、食品ロス・廃棄物削減への取組みが不十分な場合や土壌・水質汚染が生じた場合には、消費者や地域社会からの信頼低下につながる評判リスクも重要度が高いと認識しています。
「物理的リスク」として、降雨増加や沿岸洪水といった急性リスクによる災害復旧コストの増加、及び少雨による水不足に起因する生産能力の低下が挙げられます。また、気候変動に伴う農産物の供給不安定化による調達コストの増加も、事業継続上の重大な課題と位置付けています。

<機会>一方、水資源の効率的な利用による運営コストの削減、食品廃棄物・食品ロスの再利用や代替製品への転用による収益の増加は、長期的なコスト削減及び競争優位性の確立につながる機会と捉えています。また、地域社会との連携強化を通じたブランド価値の向上も、持続的な企業成長を支える重要な要素と認識しています。

◆今後について
当行は、今後この優先セクターに生じる自然関連のリスク・機会を中心に、当行の事業運営へのリスク・機会を分析し、融資先企業との対話を通じた自然資本リスクの把握・管理を進めるとともに、生態系保全及び持続可能な資源利用に向けた取組みを支援してまいります。