有価証券報告書-第39期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/29 15:30
【資料】
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【項目】
147項目
文中において将来について記載した事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断、予測したものであります。
1 経営方針
当社グループは、「日本とアジアをつなぐ投資会社として少子高齢化が進む社会に安心・安全で質と生産性の高い未来を創ります」を経営理念として掲げ、全てのステークホルダーへの利益還元を果たして参ります。
2 経営環境と対処すべき課題
(1)外部環境の認識
近年、当社を取り巻く日本とアジアのマクロ経済環境は、大きく変化しました。特に2000年以降は、アジア諸国で持続的な経済発展が続き、今や日本を超えるGDPを抱える巨大市場が形成されました。その結果、アジアから日本への直接投資は拡大傾向にあり、訪日観光客数に代表されるようにアジアからの人的資本の流入も急速に増加しています。
同時に、技術革新や高齢化・地球温暖化などの社会問題に伴い、世界的なパラダイムシフトも生じています。エネルギー分野では、2015年のパリ協定締結以降、地球規模で低炭素社会を目指す動きが活発です。また、AIやIoT等の技術革新は、第四次産業革命と呼ばれ産業構造に大きな変化をもたらしています。加えて、日本だけでなくアジアにおいても少子高齢化の影響が顕著に表れ始めました。
この様な中、当社の使命を、アジアへの取り組みを通じて日本企業のリソースをアジア諸国と共有してその発展を支援するとともに、アジア諸国の持つリソースを日本に呼び込み、新しい日本経済の成長の枠組みを創造することだと考えています。当社は、経営理念を通じて、全役職員が当社の将来の姿をより具体的に理解し、一丸となってさらなる成長を目指し社会に貢献して参ります。
(2)当社の競争優位性
当社は、当社の競争優位性を次のように考えています。
①アジアでの歴史
1981年経済同友会を母体として設立以来35年以上に亘り日本とアジアの経済交流に貢献し、アジアでの高い知名度を有しています。
②最先端の業界情報収集力
投資候補となる企業やプロジェクトの発掘を通じて、専門性の高い、業界の最先端の動向を把握しています。
③ベンチャー企業とのネットワーク
国内外で300社超の上場実績を有し、これまでの投資活動を通じて、多数のベンチャー企業と親密な関係を構築しています。そのネットワークを、投資先企業の支援や、当社が新規事業テーマを開拓する際のアライアンスに活用します。
④ファイナンススキーム構築力
国内外で3,000億円を超える累計投資実績を有しています。また、プロジェクト投資では、当社からの投資資金だけでなく、プロジェクトファイナンスなどの負債性資金も交えた調達スキームを構築しています。
(3)当社の投資事業の特徴
「第一部 企業情報 第1 企業の概況 3 事業の内容」に記載のとおり、当社グループが行う投資には2つの種類があります。1つは、日本を含むアジア地域におけるベンチャー企業や中堅・中小企業等を中心とした有望企業へ投資し、育成・支援を通じて投資先企業の企業価値を高め、当該投資資産の売却によるキャピタルゲインを得ることを目的としたプライベートエクイティ投資です。もう1つは、再生可能エネルギー、ヘルスケア(高齢者向け施設、障がい者向け施設)、スマートアグリ(植物工場)、ディストリビューションセンター(物流施設)等のプロジェクトで、主にベンチャー企業が推進しているプロジェクトへ投資し、プロジェクトからの安定収益やプロジェクトの売却益を得ることを目的とした投資です。
当社のプライベートエクイティ投資の特徴は、長年の投資活動を通じて蓄積されたノウハウに基づく上場支援に加え、広いネットワークを活用した海外展開支援や営業支援を行う点です。そのために、中国の政府系機関やアジア諸国のパートナー企業と業務提携などを行い、アジアのネットワークを構築しています。加えて、プライベートエクイティ投資とプロジェクト投資を組み合わせた「戦略的投資」を行うことも特徴です。「戦略的投資」を行った企業には、株主としての支援だけではなく、パートナーとして共にプロジェクト(事業)を運営し、その成長を支援します。
プロジェクト投資の特徴は、プロジェクト総額の多くを金融機関からの負債性資金で調達することでレバレッジを効かせ、少額の投資資金で高い採算性を追及している点です。加えて、多様な分野のプロジェクトに機動的に投資を行うことができるように、プロジェクトの企画や開発に精通したベンチャー企業とパートナーシップを組んでいる点も特徴です。
プロジェクトの開発や運営には、業界知識、ノウハウ、技術力、交渉力など高度なスキルが求められます。当社単独ではカバーできないこれらの経営資源をパートナーのベンチャー企業が提供し、当社は、主に投資資金の提供や金融機関からの資金調達交渉を担います。
当社は、社内の経営資源のみならず外部の優れた経営資源も積極的に活用して、成長性が高く将来有望な投資分野を創出し投資を行うことで、社会に貢献して参ります。そのために、今後も継続的に外部とのネットワークを強化し、パートナー企業の発掘を行います。これにより、新たな投資分野の創出に常時取り組み、次の注力投資テーマとしていく方針です。
(4)中期経営計画(2019年3月期から2020年3月期)
①計画の背景となる課題
当社は、次の3つの課題を改善するために、2019年3月期から2021年3月期までの3年間の中期経営計画を策定しました。1つ目の課題は、収益の大半をベンチャー投資のキャピタルゲインに依存しているため収益構造が不安定なこと、2つ目は、回収の不確実性が高いプライベートエクイティ投資資産の残高の一部を借入金で調達した資金で賄っているため財務健全性が低いこと、3つ目は、返済優先の財務対応により収益償還力を超えた返済を継続してきているため充分な投資資金が確保できないことです。
②計画の概要
当中期経営計画では、これらの課題の解決策として資産の入れ替えを進める方針です。具体的には、既存のプライベートエクイティ投資資産の大半を3年間で売却し、売却によって得た資金で、再生可能エネルギー等のプロジェクト投資や、「企業への投資」と「プロジェクト(事業)への投資」を組み合わせる「戦略的投資」を行い、その投資残高を積上げる計画です。その結果、流動性の高い資産へと入れ替えが進むとともに、プロジェクト資産の含み益、つまりは将来の安定収益を積上げることができます。
また、当社の強みや外部環境を考慮した結果、再生可能エネルギー、スマートアグリ(植物工場等)、ヘルスケア(介護・医療)の3つを事業テーマに選定しました。この他にも、金融機関からの負債性資金が調達可能な新規事業を創出する計画です。
③2020年3月期末(計画期間2年目)までの進捗状況
プライベートエクイティ投資では、既存資産の売却は投資先企業の新規上場(IPO)や売却交渉が計画どおりに進まず、大幅な未達となりました。一方、想定よりも早期に、他社の運営するファンドの回収が利益貢献を伴って進みました。また、営業外の資産の流動化も前倒しで促進しその売却益を積上げました。戦略的投資については、投資対象の発掘が順調に進み5社に投資実行しました。ファンドの設立については、株式会社あおぞら銀行との合弁会社が運営する事業承継ファンドが計画どおり30億円にファンド総額を増額したほか、地域金融機関との協業により地域企業のアジア進出を支援するファンドの募集活動を行いました。
プロジェクト投資では、再生可能エネルギープロジェクトの新規投資の実行は順調に進みましたが、プライベートエクイティ投資の売却下振れを補うためにメガソーラープロジェクトを売却したため、投資残高の増加は遅れています。また、スマートアグリプロジェクトでは、植物工場の第1号案件が2019年3月に操業を開始しました。2020年3月末までの黒字化を目指していましたが、想定していた水準まで売上を伸ばすことが出来ず、現在は2021年の3月末までの単月黒字化を目指しています。ヘルスケアプロジェクトについては、高齢者向け施設1件へ投資を行ったほか、新たに、障がい者向け施設への投資を開始し3件のプロジェクトを手掛けました。加えて、新規事業として、ディストリビューションセンター(物流施設)プロジェクトを立ち上げ、2件に投資を実行しました。
その結果、2020年3月期の主要な業績評価指標(KPI)については、2021年3月末までの目標値に対する進捗が遅れています。「プロジェクト投資資産の残高」は、90億円まで増加させる目標に対し、実績は54億円となりました。「プロジェクト投資資産の含み益」は、200億円まで増加させる目標に対し、実績は58億円に留まります。また、財務健全性の指標としている「現預金とプロジェクト投資資産の合計額と借入金のバランス」は、超過額を56億円まで拡大する目標でしたが、実績は11億円となりました。いずれも、プライベートエクイティ投資の売却下振れを補うためにメガソーラープロジェクトを売却したため、新規のプロジェクト投資を進めているものの残高や含み益が増加していません。加えて、プライベートエクイティ投資においては、戦略投資等以外の資産を早期に流動化・収益化し引当後残高を10億円まで圧縮する計画でしたが、実績は42億円となりました。既存資産の売却が下振れしているため、残高は減少傾向にあるものの目標との乖離が大きい状況です。一方、戦略投資の残高については、投資実行が順調に進捗したため、目標であった10億円を既に2020年3月末時点で達成済みです。
(5)2021年3月期(計画期間最終年度)の事業方針
①プライベートエクイティ投資
計画2年目までは株式の売却が大きく下振れしましたが、既存の投資資産の売却による資金や収益の獲得は引き続き重要な施策であり、2021年3月期も株式の売却益の獲得に鋭意注力します。しかしながら、株式の売却はその事業特性上株式市場や経済環境の動向に大きく左右されるため、その変動をコントロールすることは困難です。そのため、株式売却益が下振れした場合には、計画2年目までと同様に、プロジェクトの売却により一部を補完します。
ファンドについては、地域金融機関との協業により地域企業のアジア進出を支援するファンドを、これまで募集活動を行ってきた成果として設立します。また、クロスボーダーのM&Aの仲介業務では、早期の成約を目指します。新規の投資については、引き続き、金融機関からの負債性資金が調達可能な新規事業を創出し、その事業のプロジェクトへの投資だけでなく、パートナー企業への投資も行います。また、既存の戦略的投資先の成長支援やIPOによる投資回収に向けて取り組みます。
②プロジェクト投資
これまでプロジェクト投資は、投資後に長期保有しプロジェクトからの安定収益を将来に亘り確保する目的で行っていました。しかしながら、売却したメガソーラープロジェクトに替わる資産を積み上げそこからの収益をより早期に獲得するために、今後は投資後に短期間(2~3年)で売却益を得る目的の投資を増加させます。具体的には、再生可能エネルギープロジェクトのうち一部のメガソーラープロジェクトや、ヘルスケアプロジェクトのうち高齢者向け施設への投資、及びディストリビューションセンタープロジェクトは、発電所や施設が完成した後に売却することを前提とした投資を行います。資金を短期間で回転させることで、利益やキャッシュ・フローを獲得する方針です。一方で、スマートアグリプロジェクトやヘルスケアプロジェクトのうち障がい者向け施設への投資、また、再生可能エネルギープロジェクトのうちバイオマスやバイオガスプロジェクトについては、引き続き長期保有目的での投資を行います。収益機会を長期安定収益、短期的収益に区別し、最適な組み合わせを行うことでサステナビリティのある収益構造を構築する計画です。
また、スマートアグリプロジェクトについては、第1号工場の黒字化に目途を付けた後に、第2号工場への投資を行う方針です。
③新型コロナウイルス感染症の影響と対応策
現段階において想定される新型コロナウイルス感染症のリスクは以下のとおりです。なお、これらのリスクのうち、現在顕在化しているものは限定的であります。
イ.上場株式の売却における想定されるリスク
株式市場の低迷による売却株価の低下や投資先のIPOの延期が生じるリスクがあります。
ロ.未上場株式の売却における想定されるリスク
経済環境の悪化により買手の資金調達が困難となることや売却対象の投資先企業の業績が悪化することで、見込んでいる売却交渉が成立しなかったり遅延したりするリスクや、売却価格が下落するリスクがあります。
ハ.プロジェクトの売却における想定されるリスク
経済環境の悪化により買手の資金調達が困難となり、見込んでいる売却交渉が成立しなかったり遅延したりするリスクや、売却価格が下落するリスクがあります。
ニ.既存投資先の評価における想定されるリスク
投資先企業の経営状態の悪化による、評価損や引当金の発生リスクがあります。
ホ.プロジェクト投資における想定されるリスク
建設中のプロジェクトにおいては、政府や自治体の休業要請に伴い建設工事が中断されるリスクがあります。売電中の再生可能エネルギープロジェクトにおいては、消費電力量の減少に伴う出力抑制の増加リスクがあります。また、スマートアグリプロジェクトでは、顧客の休業により外食産業向けの販売量が減少するリスクがあります。
ヘ.当社の営業活動における想定されるリスク
当社の営業活動については、テレワークの導入により出社人数を約80%減少させており、社内感染リスクの低減に努めています。外部との面談も、現状、原則としてオンラインのみに制限しています。その結果、新規投資の開拓には支障が出ると予想されます。また、投資回収においても活動の効率が低下するリスクがあります。
これらのリスクのうち、株式市場の低迷、経済環境の悪化、消費電力量の減少といったマクロ環境に関するものは、当社ではコントロールできません。株式市場の低迷により上場株式の売却が下振れする場合も踏まえて、期初には売却を計画していなかった未上場株式を追加で売却することや、メガソーラープロジェクトを売却すること等も想定しています。また、投資先企業の経営状態の悪化リスクについては、投資先の支援を強化することで対応します。投資先企業の借入資金調達の支援といった緊急避難的なものだけでなく、感染症が収束した後の社会における成長戦略について投資先各社と話し合い、必要な支援を行っていく方針です。また、建設中のプロジェクト投資のプロジェクトにおいては、3密を避けた安全な建設作業を行います。スマートアグリプロジェクトにおいては、総菜などの中食向け販売を強化します。当社の営業活動においては、直接面談できない中でも情報ツールを活用することなどにより、社員の健康を守りかつ効果的な営業活動ができるよう工夫を重ねて参ります。
④2021年3月期の業績見込値
2021年3月期の従来連結基準(注)による業績見込値は、上記の新型コロナウイルス感染症のリスクが実際に業績に与える影響が限定的であるという前提で、投資資産の売却で収益を計上することにより、親会社株主に帰属する当期純利益1.8億円、ROE2.5%を確保することを掲げております。誠に遺憾ながら、中期経営計画で目標としていた親会社株主に帰属する当期純利益7億円、ROE9%を下回る見込みですが、上記に記載した事業方針を実施することで、業績見込の達成に向けて鋭意努力して参ります。
2021年3月末の主要な業績評価指標(KPI)については、「プロジェクト投資資産の残高」は、90億円まで増加することを目標としていましたが61億円となる見込です。また、財務健全性の指標としている「現預金とプロジェクト投資資産の合計額と借入金のバランス」は、超過額を56億円まで拡大する目標でしたが超過額は26億円となる見込みです。加えて、戦略投資等以外の資産を早期に流動化・収益化し、その引当後残高を10億円まで圧縮する計画でしたが、引当後残高は25億円となる見込みです。一方、戦略投資の残高については、目標であった10億円を既に2020年3月末時点で達成済みです。従来連結基準(注)による業績見込値が未達となる見込みとなったことに伴い、KPIも下振れが避けられない見込みですが、少しでも計画に近づくよう鋭意努力して参ります。なお、KPIの1つとしていた「プロジェクト投資資産の含み益」は、短期売却目的のプロジェクトへの投資に軸足を移すこととしたため、2021年3月期より、KPIから除いています。
(注)従来連結基準
当社グループでは、2007年3月期より、「投資事業組合に対する支配力基準及び影響力基準の適用に関する実務上の取扱い」(企業会計基準委員会 2006年9月8日 実務対応報告第20号)を適用し、当社グループで運営している投資事業組合等の一部を連結の範囲に加えて連結財務諸表等を作成しております。しかしながら、投資家及び株主の皆さまに、当社グループの経営成績及び財務状況を正しくご認識いただくためには、従来からの会計基準による財務諸表等の開示も必要と考えております。
以上のことから、従来の会計基準に従って、投資事業組合については、資産、負債及び収益、費用を外部出資者の持分を含まない当社及び関係会社の出資持分に応じて計上し、また、会社型ファンドについては連結の範囲から除いた連結財務諸表等を「従来連結基準」として、決算短信等において継続的に開示しております。

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