有価証券報告書-第43期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/24 10:39
【資料】
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【項目】
159項目

対処すべき課題

(1)会社の経営の基本方針
当社グループは「誠実な企業活動を通じて、社会より支持を得る」との経営理念のもと、金融ビジネスの本質である経営のリスク管理に重点を置き、お客様の期待を超えるサービス・商品を提供し、国内外で信頼され、必要とされるグローバル金融グループを目指しております。
また、今後の市場環境の変化に柔軟に対応できるよう、金融の多角化を進め「収益性」「安定性」「成長性」「人財力」のバランスをとりつつ、強固なグループ一体経営を確立し、お客様をはじめ、全てのステークホルダーの皆様の信頼と期待に応え、社会とともに継続的に発展していくことを目指しております。
(2)目標とする経営指標
当社グループが目標とする経営指標としましては、経営における収益性と安定性の観点から、総資産経常利益率(ROA)の向上と自己資本の拡充を重要な指標として、株主価値の向上を目指しております。
(3)経営環境
当社グループを取り巻く経営環境は、消費者・事業者向けのローンやクレジットカードなどの国内での金融事業、ASEANを中心とした海外事業、国内外いずれにおいても成長局面であり、今後安定した成長が見込めます。一方で、消費者金融業界の事業リスクである利息返還請求については、ピーク時からは大きく減少しているものの、未だ注視が必要な状況が続いております。このような環境のもと、当社グループにおきましては、経営の最重要課題である利息返還請求へ対応しつつ、グループ全体で営業アセットの拡大と金融事業の多角化に努め、「安全性」「収益性」「成長性」のバランスを重視した経営に取り組んでまいりました。
なお、新型コロナウイルス感染症拡大によって、経済活動の著しい停滞がみられておりますが、非常事態宣言の解除に伴い、当社グループの経営戦略を推進できる環境が整ってくるものと考えており、下記市場別の見通しはこのような前提に基づくものであります。ただし、当面の経済見通しには厳しい見方も多いことから、今後の新規成約件数や回収状況等の推移を注視し、経営成績等に影響を及ぼすおそれが生じた場合には、速やかに開示を行います。
(無担保ローン市場)
無担保ローン市場全体の規模は2019年12月時点で前年比2%減の10.2兆円となっております。このうち、金融機関は銀行カードローンの自主規制の影響などにより、前年比5%減の6.0兆円、クレジットカード会社は前年比横ばいの1.7兆円となった一方で、消費者金融専業は、2013年3月の底打ち以降、前年比5%増の2.6兆円まで回復しております。
当社グループにおける無担保ローン残高は前期末比9.0%増の4,861億円、アイフル単体では前期末比11.4%増の4,223億円となり、消費者金融専業の成長率を上回っており、今後におきましても引き続き拡大が続く見込みです。
(事業者ローン市場)
中小事業者向けの事業者ローンの市場におきましても、2015年3月の底打ち以降、2019年3月時点で前年比17%増の3,495億円と順調に増加しております。
当社グループにおきましては、中小事業者向けのローン事業を主に営むビジネクストやアイフル単体での販売が好調に推移しております。この結果、事業者ローン残高は前期末比15.7%増の644億円となり、このうち、ビジネクストが前期末比17.4%増の551億円、アイフル単体では前期末比5.3%増の83億円となり、こちらも引き続き拡大が続く見込みです。
(クレジットカード市場)
クレジットカード市場は、Eコマースやキャッシュレス決済の増加により、2018年における取扱高は前年比10%増の73兆円まで拡大しております。また、行政主導によるキャッシュレス化の推進などにより、今後も市場の拡大が見込まれます。
当社グループでクレジットカード事業を中心に営むライフカードにおきましては、新たな提携カードやビジネスカードの販売開始などにより、取扱高は前期比8.1%増の8,179億円となりました。
(海外市場(タイ王国))
タイ王国における無担保ローン市場は2020年2月時点で前年比8%増の1.5兆円となり、このうち商業銀行による貸付残高は前年比1%増の7,185億円、ノンバンクによる貸付残高は前年比14%増の8,491億円となっております。
当社グループのAIRA & AIFUL Public Company Limitedにおきましては、債権ポートフォリオの良質化を図るため、優良顧客の獲得に取り組んでおり、貸付残高は前期末比0.3%減の224億円となりました。
(4)中長期的な会社の経営戦略
当社グループは経営の本質である「安全性」「収益性」「成長性」「変化」「能動性」に重点をおいた経営戦略により、更なる成長と発展を目指し、次の重点施策を掲げております。
(多角化の推進)
経営の安全性を求め、主力事業であるローン事業の残高の増加を図りつつ、保証事業や海外事業など、ほかの事業でのアセット比率を高め、金融事業の多角化の推進とポートフォリオの分散を進めております。
(利益基盤の強化)
安全性・収益性・高い成長率を求めて利益基盤の強化を図っております。安全性の指標となる自己資本比率は20%を目指しつつ、収益性では営業アセットの増加によるトップラインの拡大を図るとともに、調達コストの低下やBPR・RPAの導入による合理化、効率化でコスト削減に努めております。中期的なROAは2%超、ROEは10%超を目指しております。
このほかに、M&Aや投資の拡大、組織・人材のレベルアップ、働き方や生活様式の変容に伴うお客様の需要の変化に対応するための積極的なIT投資を図っております。
(5)会社の対処すべき課題
(利息返還請求)
2006年の最高裁判決を契機とした利息返還請求件数は、すでに最高裁判所の判決から14年が経過し、返還請求の権利を持つ多くの者が消滅時効を迎えていることなどから、2011年2月のピーク時から10分の1以下まで減少しております。今後も利息返還請求は減少が続く見込みですが、一部の弁護士事務所や司法書士事務所が宣伝活動を継続していることなどから、未だ一定量の請求が続いており、先行きは注視が必要な状況が続いております。
(事業ポートフォリオの組み替え)
当社グループは、経営の安全性を重視し、ローン事業、クレジットカード事業、信用保証事業、海外事業による主に4つの事業により、金融事業の多角化と事業ポートフォリオの分散を進めております。現状のローン事業の成長を維持しつつ、クレジットカード事業、保証事業、海外事業をさらに拡大させ、事業ポートフォリオの組み替えを図り、安全性を高めてまいります。
(財務基盤の安定化)
当社グループは、金融事業を主たる事業としており、事業拡大に必要な資金は外部から調達しております。安全性の観点及び強固な調達基盤構築のため、金融機関からの間接調達と社債等の直接調達の双方を行うことで資金調達の多様化を図っております。また、経営の安全性を重視し、自己資本比率においては中期的に20%を目指しております。
(コスト構造の改革)
当社グループは、収益性を高めるべく、BPRやRPAの導入により、業務の合理化や効率化に努め、人件費などのコスト削減に努めております。
(新型コロナウイルス感染症拡大に対する当面の投資方針)
当社グループの経営理念に基づき、可能な限り、お客様等の資金需要にお応えしてまいります。一方、新規事業をはじめとする先行投資等については、状況を見極めつつ、慎重に判断してまいります。