有価証券報告書-第10期(平成26年4月1日-平成27年3月31日)

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2015/06/24 13:58
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事業等のリスク

当社は、事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項として、以下を認識しております。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に記載しております。なお、当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避および発生した場合の対応に努める所存ですが、必ずしも確実にリスクの回避や十分な対応が実現される保証がないことに留意する必要があります。
なお、本稿における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(平成27年6月24日)現在において、当社が判断したものであります。
(1)財政状態、経営成績等の変動
当社グループの主な事業である証券・金融商品取引業は、国内外の経済情勢・市場動向の影響を受けて、受入手数料やトレーディング損益が変動し易い特性を持っております。
当社グループは、法人・ホールセール事業では顧客フローを軸としたビジネスの推進やエクイティ業務の強化と同時に、投資銀行業務、海外業務等の強化により、収益源の多様化に取り組んでおります。一方、リテール事業においては、預り資産の増強やウェルスマネジメント・ビジネスの強化を図っており、その取組みにおいては株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下「MUFG」といいます。)が構築を進める総合金融サービス提供体制の一翼を担っていくことで事業基盤を強化することを重要な課題と位置付け、グループにおける他のグループメンバーとの一層の連携を進めております。またリスク管理に関しましても、後記「(2)大幅な市場変動に伴うリスク」に記載のとおり、市場リスクをはじめとする各種リスクの管理により損失の回避に努めております。加えて徹底した経費抑制施策の実行により利益水準の向上にも努力しております。これらによりできる限り経済情勢・市場動向に左右されにくい収益体質の確立を当社グループは目指しております。しかしながら、かかる方策によっても当社グループの財政状態、経営成績等は、他の業種に比べ、その業務の性格上、経済情勢・市場動向により影響を受けることは避けられません。したがって、必ずしも受入手数料やトレーディング損益の変動の回避が保証されるものではなく、また収益源の多様化の順調な進展が保証されるものでもありません。
その他、法令諸規則等の変更や予測・管理困難なインフラストラクチャーの障害、災害ならびに戦争・テロ等も、当社グループの業績に直接的あるいは間接的に影響を及ぼす可能性があります。
(2)大幅な市場変動に伴うリスク
当社は、当社グループの事業運営におけるリスク管理については、グループ全体の統合的な管理態勢の整備に努めています。当社は子会社の業務に内在する諸リスクの区分に応じて、一体としてリスク管理を行う体制を構築すると共に、子会社からリスク管理に係る協議または報告を受け、必要に応じ指導・助言しています。
当社グループは、業務戦略・収益計画と各種リスクの運営方針を有機的に関連付け一体管理する枠組みとしてリスク・アペタイト・フレームワーク(RAF)を導入しています。当社グループの収益・リスクのバランスを確保し、リスクガバナンス強化や資本運営の最適化を図るため、当社は、経営ビジョンならびに許容すべきリスクの基本戦略、原則および方針を国内主要子会社、海外主要子会社それぞれに対して、「リスク・アペタイト・ステートメント(RAS)」として定め、また、主要子会社は、これらと整合する各社毎のRASを定め、それぞれRAFの基本方針を明文化しています。当社は、当社グループ主要各社が、経営計画をRASに基づいて策定し、その業務運営がRASに沿ってなされているかモニタリングすると共に、必要に応じ指導・助言しています。
当社は、当社グループのリスク管理に係る重要事項について、取締役会からリスク管理にかかる重要事項の決議を委任された「リスク管理会議」(当社グループのリスク管理に係る事項をより専門的かつ幅広く決議および審議することを目的とする機関)が決議しています。当社グループのリスク管理は、当社の「リスク管理会議」において、市場リスク管理、信用リスク管理、資金流動性リスク管理、オペレーショナルリスク管理に係る規程等を制定し、当該規程に則り行っています。当社グループの各種リスクの状況は、業務を執行する部署から独立した当社のリスク管理部署がモニタリングするとともに、その結果を日次で経営陣に、月次でリスク管理会議および取締役会に報告しています。当社グループが保有する金融商品の時価評価については、当社グループ主要各社のプロダクトコントロール部署が日次でモニタリングするとともに、独立した検証を行い、その結果を月次で関連会議体に報告しています。リスク管理および財務等に係る重要なデータの信頼性を支える体制整備のため、当社は、チーフ・データ・オフィサーを設置し、経営情報管理部署を立ち上げました。
また当社は、MUFGグループ全体のリスク管理の側面から、リスク管理に係る重要事項の決定にあたっては、MUFGと経営管理契約に基づく協議を実施しています。
このような方策により、以下の主要なリスクの管理を行っていますが、それによって当社グループとしてかかるリスクの影響を十分に回避できることを保証するものではありません。
① トレーディング業務のリスク
当社グループは、お客さまのニーズに応じた金融商品や金融サービスを提供するため、種々の金融商品を保有しています。また、社債や株式など有価証券の引受業務も行っており、これらを一時的に保有することもあります。更にポジションのリスクコントロールやマーケットメイキングなどを目的としてトレーディングを行っており、この結果、種々のリスクポジションが発生します。リスクポジション保有に伴って発生し、当社グループの財務状況について大きな影響を与えるリスクとして、保有する金融商品の市場価値(株式、金利、外国為替、コモディティ等の市場価格の水準または、これらのボラティリティ等)が変動することにより損失を被る市場リスク、ならびに当社グループが信用を供与した取引先および当社グループが保有する有価証券の発行者、もしくはクレジットデリバティブ取引等における参照体の財務状況の悪化、または契約不履行等により損失を被る信用リスクがあります。
市場リスクについて、当社ならびに当社グループ主要各社は(i)市場リスク量による管理方法、(ii)ストレステストによる管理方法、(iii)感応度等による管理方法、等を通じて、それぞれに限度枠を設定し、リスク管理部署がその遵守状況をモニタリングすることにより管理しています。これら市場リスク管理の状況は、月次のリスク管理会議および取締役会にリスク管理部署が取り纏めて報告しています。
(i)市場リスク量による管理方法
市場リスク量は、保有期間や信頼区間等の一定の前提条件の下、市場変化によって被る可能性のある損失額として定義されます。
当社では、当社グループ主要各社が保有している商品有価証券やデリバティブ取引等の全てのリスクポジションを対象として、金利、為替、株価等の代表的な市場変化に伴うリスクを表すVaR(バリュー・アット・リスク※)と債券や株式等の個別銘柄事情に起因した価格変動リスクを表すVaI(バリュー・アット・イディオシンクラティック・リスク)を日次で計測しています。これらVaRおよびVaI(これらを合わせて「市場リスク量」と言う)の算定に当たっては、保有期間10日間、信頼区間99%、観測期間701日間のヒストリカルシミュレーション法を採用した計測モデルを用いています。こうして算出される市場リスク量について、当社グループ主要各社の業務分野毎に限度枠(市場リスク量枠)を設定し、その費消状況等を日次でモニタリングしています。これらの限度枠は、原則、半期毎に見直しを行っています。
なお、上記市場リスク量は、月次でバック・テスティング※を行い、計測モデルの妥当性を確認しています。
(ii)ストレステスト※による管理方法
当社では、市場リスク量だけでは捕捉し切れない大幅な市場変化等のストレス事象が発生した際に生じる想定損失額を一定限度に収めるため、ストレステストを月次で実施すると共に、そこで算出されたストレス損失額に対して、一定の限度枠を設定し、管理しています。当社グループ主要各社においても独自のストレステストを実施しています。
当社のストレステストは、当社グループ主要各社が保有しているリスクポジションについて、債券や株式等のように市場流動性の高いポジションとエキゾチックデリバティブ等のように市場流動性の低いポジションに分別した上で、それぞれに市場流動性を反映したストレスシナリオを設定し、計測を行っています。
なお、ストレステストの計測手法については、保有するリスクポジション状況や市場変化等を考慮した上で、原則、半期毎に見直しを行っています。
(iii)感応度等による管理方法
上記市場リスク量やストレステストを通じた管理を補完するものとして、当社グループ主要各社は、各社の商品・業務特性に応じた市場リスクファクターの各種感応度や取引残高に対して、様々な限度枠(「各種パラメータ枠」と言う)を設定し、日次でモニタリングすることにより、きめ細かな管理を行っています。
また、当社は、グループ主要各社に対し、パラメータ枠を設定し、運営状況を週次でモニタリングしています。これら各種パラメータ枠は、当社ならびに当社グループ主要各社が、市場リスク量枠等と整合性を確認しつつ、原則、半期毎に見直しを行っています。
当社は、当社グループの信用リスクについて、「与信リスク」、「発行体リスク」および「カントリーリスク」毎に、管理方法を定めています。与信リスクは取引先グループないしは取引先毎に管理し、与信の供与は、リスク管理会議において決定するほか、リスク管理会議からの権限委譲に基づき決定しています。発行体リスクは、集中度回避等を目的とするポートフォリオ管理を原則とし、当社グループがトレーディング目的で保有する有価証券等およびクレジットデリバティブ取引における参照体に対し、格付け別の上限額等を設定することにより管理しています。さらに、特定の発行体等へのリスクの集中を回避することを目的とし、発行体別限度枠等を設定することにより管理しています。カントリーリスクは、対象国毎に当該国のリスクに晒されているカントリーリスク額の上限を設定することにより、当該国毎に管理しています。これら信用リスク管理の状況は、月次のリスク管理会議および取締役会にリスク管理部署が取り纏めて報告しています。
※バリューアットリスク方式 ポートフォリオ等の資産を一定期間保有すると仮定した場合に、ある一定の確率の範囲内で、マーケットの変動によりどの程度損失を被り得るかを、過去のマーケットのデータから計測する方法。
※バック・テスティング 実際に発生した損益またはポートフォリオを固定した場合に発生したと想定される損益とリスク計測モデルにより算出される損益との比較の結果に基づき、リスク計測モデルの正確性の検定を行うこと。
※ストレステスト 市場リスク量だけでは捕捉しきれない大幅な市場変化や複合的な市場変化が生じた場合に発生する損益に関する分析を行うこと。当社では、保有商品の市場流動性に応じたマーケットショックシナリオを設定することにより計測している。特に複雑なデリバティブ商品等に派生したリスクポジションに対しては、過去の市場変化等を参考にショックシナリオを設定した上で、最大損失額(ストレスロス額)を見積もっている。
② ブローカレッジ業務(有価証券等の売買の媒介、取次または代理業務)のリスク
当社グループの主な事業である証券・金融商品取引業は、ブローカレッジ業務において、市況の低迷などにより投資家の証券に対する投資需要が低調となる等の環境となった場合、収益が大きく低下する可能性があります。ブローカレッジ業務は、その業務の性質上、営業のためのインフラストラクチャー整備・維持のために多額の固定的経費(人件費、不動産費、減価償却費等)を必要とします。ブローカレッジ業務については、効率化策を実行してきており、今後も引き続き経費削減のための努力を推進してまいります。今後、市場環境の変化等の要因により、市況が低迷した場合には、ブローカレッジ業務の収益が大きく低下し、かかる経費削減のための努力にもかかわらず利益面において大幅な悪化を生じる可能性があります。
③ 投資銀行業務のリスク
投資銀行業務では、既公開企業の有価証券の引受けおよび募集・売出しの取扱い、未公開企業の新規公開業務、IRに関するアドバイス、各種資産の証券化に関するアドバイスならびに証券化商品の引受けおよび募集・売出しの取扱い、M&Aに対するアドバイスを主要な業務としています。これらの業務についても、経済情勢・市場動向の影響を受けて、手数料収入が変動し易い特性を持っています。また、引受業務には、引き受けた証券が市況の下落等で円滑に販売できない場合、損失を被るリスクがあります。
④ 流動性リスク
当社グループの主要事業である金融商品取引業は、その業務の性質上、大量の商品在庫を保有すると共に、それを支えるため大量の資金を必要とするため、これらの商品在庫および資金を機動的かつ安定的に運用・調達できることが必要となります。流動性リスクとは、市場の状況、当社グループの信用状態等の要因により、これらの運用・調達が妥当な水準でできなくなることにより損失を被るリスクをいい、資金流動性リスクと商品流動性リスクに大別されます。当社グループの財務内容悪化等により取引や業務の遂行に必要な資金を確保できなくなること、または資金の確保に通常より著しく不利な条件での資金調達を余儀なくされることにより、当社グループが損失を被るリスクを資金流動性リスク(資金繰りリスク)といいます。市場の混乱や取引の厚み不足等により、保有ポジションを解消しようとする場合、必要とされる数量を妥当な水準で取引できないことにより、当社グループが損失を被るリスクを商品流動性リスクといいます。
資金流動性リスクは、市場参加者にとって回避が困難なリスクであり、取引に際しては、キャッシュ・フローの確実性、時期その他の特性を分析した上、資金繰りを管理する必要があります。当社は、当社における資金流動性に係る危険度段階(流動性ステージ)を決定すること、ならびに決定されたステージに応じた資金流動性に係る行動計画および緊急時対応(コンティンジェンシー・プラン)を定め、有担保による調達、換金性の高い資産の売却などの代替資金調達手段を整備しています。当社グループ主要各社は、各社が設定した資金流動性に関する限度枠・各種パラメータ枠等を日次でモニタリングしています。加えて、当社グループ主要各社は、資金流動性の危機事象が発生した場合の資金繰りおよびバランスシートの状況を把握するため、月次でストレステストを実施するとともに、資金流出額に対する良質な流動資産の割合(バーゼル規制の流動性カバレッジ比率(LCR))にガイドラインを設定しています。当社は、当社グループ主要各社連結ベースのLCRにガイドラインを設定しています。これら資金流動性リスク管理の状況は、月次のリスク管理会議および取締役会にリスク管理部署が取り纏めて報告しています。また、必要により指導・助言しています。
当社では、商品流動性リスクは、リスク管理会議において、取引等の市場規模(厚み)を勘案し、必要な場合、当社グループが保有する商品在庫に対して商品流動性枠を設定して管理し、通常想定しうるリスクの極小化を図っています。
しかしながら、資金流動性リスクが顕在化し、資金調達条件が著しく悪化した場合や、保有する金融商品の流動性が著しく悪化した場合には、事業の円滑な遂行に制約を受けることとなる可能性もあります。
また、当社は信用格付けの維持向上に取り組んでいますが、当社の信用格付けが低下すると、当社の負債性資金の調達や借換えが円滑に行いにくくなり、事業に制約が生じるリスクがあります。これに対しましては、信用補完の方策として、当社がMUFGおよび株式会社三菱東京UFJ銀行(以下、「三菱東京UFJ銀行」といいます。)とのキープウェル契約を締結していることに加えて、三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社(以下、「三菱UFJモルガン・スタンレー証券」といいます。)が当社、MUFG、および三菱東京UFJ銀行とのキープウェル契約を締結していることによって、高い水準の格付けを維持し、当社グループとして機動的かつ安定的な資金調達基盤を構築しています。
(3)オペレーショナルリスク
当社では、オペレーショナルリスクを、内部プロセス・人・システムが不適切であることもしくは機能しないこと、または外性的事象に起因する損失に係るリスクと定義し、具体的には「事務リスク」、「情報資産リスク」、「法務、コンプライアンスに係るリスク(規制・制度の変更に係るリスクを含む)」、「人材の流出や士気低下等に係るリスク」、「有形資産の瑕疵・損傷等に係るリスク」、「評判に係るリスク」に分類のうえ、グループ主要各社においてその規模・特性に応じた管理を行っています。
オペレーショナルリスクは全ての業務に所在することから、当社グループ主要各社において、コントロール・セルフ・アセスメント(CSA)等を実施し、重要な内部統制プロセスにおけるオペレーショナルリスクの認識・評価を行っています。
オペレーショナルリスクの管理状況は、リスク管理部署が取り纏め、関連する会議体に四半期毎に報告しています。
これらの管理により、当社グループがオペレーショナルリスクを特定し、コントロールしてリスクの回避に備えていますが、これらによって当社グループがオペレーショナルリスクの影響を十分に回避できることを保証するものではありません。
※ 事務リスク 正確な事務を怠る、あるいは事務(取引処理)上の事故、不正により、当社グループが損失を被るリスク
※ 情報資産リスク 情報の喪失、改竄、不正使用および外部への漏洩、ならびに情報システムの破壊、停止、誤作動および不正使用等により、当社グループが損失を被るリスク
※ 法務・コンプライアンスリスク
取引および契約における法令等の検討・対応が不十分なことにより当社グループが損失を被るリスク(法令等の変更への対応が不十分であることにより、当社グループが損失を被るリスクを含む)
※ 人的リスク 人材の流出・喪失等や士気の低下等、役職員あるいはその他組織構成員による法令等遵守の観点から問題となる行為等により、当社グループが損失を被るリスク
※ 有形資産リスク 災害や資産管理の瑕疵等の結果、有形資産(所有および賃借中の土地・建物、および建物に付随する設備、什器・備品等の動産・不動産)の毀損や執行環境などの質の低下等により、当社グループが損失を被るリスク
※ 評判リスク 諸リスクの顕在化、お客さまとのトラブル、もしくは不祥事件の発生等に起因した、当社グループの社会的な評判の低下により、当社グループが損失(もしくは得べかりし利益の逸失)を被るリスク(事実と異なるにもかかわらず、第三者による風評・情報の流布により、当社グループの評判が悪化し、当社グループが損失を被るリスクを含む)
(4)コンプライアンス(法令遵守)に関するリスク
当社グループは、コンプライアンス態勢の整備を経営の重要課題の一つとして位置づけ、「経営ビジョン」およびその下での具体的判断・行動基準を定めた「行動規範」をコンプライアンスの基本原則とし、コンプライアンス態勢の不断の改善・充実に取り組んでおります。
このため、当社グループ各社は、「コンプライアンス・プログラム」を制定し、コンプライアンス・ガバナンス強化、法規制対応、協働ビジネスに係る管理、市場仲介機能の適切な発揮、顧客保護、内部不正・不祥事防止等の観点からコンプライアンス態勢が実効性のあるものとするため、組織的に取り組んでおります。また、役職員に対する教育・研修等を通じ、ファイアーウォール規制・インサイダー取引規制・個人情報保護・反社会的勢力との取引排除を含め法令等遵守の徹底に注力しております。
しかしながら、上記取組みにより、当社グループがコンプライアンス上のリスクの影響を十分に回避できることを保証するものではありません。役職員の故意または過失による不正行為や法人としての当社またはグループ各社に法令等違反その他の問題が認められた場合、その内容によっては、監督官庁等より業務の制限または停止や課徴金納付命令等の処分・命令を受ける可能性があり、当社グループの社会的な評判が低下する可能性もあります。また、お客さまとのトラブル、もしくは不祥事等の発生に起因して、当社グループ各社に対して訴訟が提起され、多額の損害賠償支払いが生じる可能性もあります。かかる事態の発生により、当社グループが損失(もしくは得べかりし利益の逸失)を被り、当社グループの財政状態、経営成績等が影響を受ける可能性があります。
なお、平成27年4月に当社子会社となったカブドットコム証券株式会社は、平成27年5月に金融庁より「システム管理が十分でない状況」であるとして、金融商品取引法第51条に基づく行政処分(業務改善命令)を受けております。
(5)当社の資本提携等に関するリスク
① 三菱UFJフィナンシャル・グループ
当社の親会社はMUFGであり、当社議決権の100%を所有しております。当社グループは、MUFGグループの一員として、有価証券の売買および売買等の委託の媒介・取次ぎ・代理、有価証券の引受けおよび売出し、有価証券の募集・売出しの取扱いおよび私募の取扱い、各種デリバティブ取引、M&Aや資産の証券化等に係るアドバイス、投資信託委託業、投資顧問業、富裕層のお客さま向けの総合的な資産運用・管理業務(ウェルスマネジメント業務)を行っていますが、加えて金融機関等に対して金融商品仲介業および市場誘導業務の委託も行っています。なお、当社は平成22年4月1日付で、証券持株会社となり、傘下企業の事業全般に係る経営管理を行っております。
海外では、子会社であるロンドンに本拠を有する三菱UFJセキュリティーズインターナショナルや、三菱UFJセキュリティーズ(USA)、三菱UFJセキュリティーズ(香港)ホールディングス、三菱UFJセキュリティーズ(シンガポール)等を通じて証券業務等を行っております。
当社は、MUFGの連結事業本部制度のもと各連結事業本部と緊密な連携をとり、銀行・信託・証券すべての商品・サービスの中から、お客さまのニーズに対し適切なものを効率的かつ迅速に提供するという考え方でビジネスをグループ展開しております。グループとしてのシナジー効果を最大限に発揮すべく、MUFGと経営管理契約を締結するとともに、当社の証券子会社である三菱UFJモルガン・スタンレー証券は、三菱東京UFJ銀行および三菱UFJ信託銀行株式会社(以下、「三菱UFJ信託銀行」といいます。)と各種業務に関する提携契約を締結しております。経営管理契約は、MUFGが当社に対して、必要に応じてリスク管理を含む助言・協議を行い、グループの健全かつ適切な業務運営を確保するとともに、当社グループの業務伸展を図ることを目的とする契約です。また各種業務に関する提携契約は、当該契約を通じて、当社グループのお客さまに対して、グループ銀行・信託銀行との協働による金融商品・サービスの提供およびそれぞれの分野にとらわれない総合的なアドバイスを行うことにより、当社グループおよびMUFGグループの連結ベースの収益力増強を目指す契約です。当社グループは、上記の各種契約に基づき、連結経営の観点から経営体制およびグループ内連携の強化を進めております。
当社グループは今後とも、MUFGグループとの連携の一層の強化につとめてまいりますが、万一、MUFGグループの政策が変更され、上記の経営管理契約、および、各種業務に関する提携契約の内容が大幅に改定、もしくは契約が終了された場合には、当社グループの業務および業績に影響を与える可能性があります。
② 共同出資により設立された証券会社
当社の親会社であるMUFGと、Morgan Stanley(以下「モルガン・スタンレー」といいます。)は、当社と当時のモルガン・スタンレー証券株式会社(以下、「旧モルガン・スタンレー証券」といいます。)の統合に関する統合契約書を締結しており、平成22年5月1日付けで共同出資による証券会社2社(三菱UFJモルガン・スタンレー証券およびモルガン・スタンレーMUFG証券株式会社(以下、「モルガン・スタンレーMUFG証券」といいます。))を発足させました。グローバルかつ競争力の高いソリューション機能を最大限に活用し、投資銀行業務強化を推進いたしますが、想定したシナジーその他の効果を十分に発揮できない場合や、万が一統合に変更が生じた場合を含めて、当社グループの業務および業績に影響を与える可能性があります。
(6)競合に関するリスク
本邦金融・証券市場におきましては、金融規制緩和の進展、オンライン証券取引の普及、外資系投資銀行による日本国内における業務拡大、異業種からの金融商品取引業参入等が進んでおります。規制緩和やオンライン取引の普及は、当社グループにとりましても新たな事業機会の拡大となり得ますが、反面、参入企業の増加により、競争が一層激化しております。具体的には、オンライン証券会社による委託取引サービスの急速な普及の結果として、手数料等の低下等が生じました。また、引受およびコーポレートアドバイザリーサービスの分野においては日本市場に業務を拡大している外資系証券との競争が激しくなっています。加えて、日本の金融業界は大きな整理統合が進み、結果として各種金融サービスを総合的に提供しようとする金融機関が競合相手となっています。その中で、当社の証券子会社である三菱UFJモルガン・スタンレー証券は旧モルガン・スタンレー証券との統合により、従来のサービスに加え、モルガン・スタンレーの技術力や海外ネットワークを活用したグローバルな商品・サービスを、個人・法人両方のお客さまにご提案できるように努めていく体制が一層強化されることになりますが、かかるより競争的で規制緩和が進んだ事業環境において十分に競争することができない場合、当社グループの財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(7)法的規制の変更への対応
日本国内の金融商品取引業者には、金融商品取引法に基づき、自己資本規制比率が120%を下回ることがないようにしなければならないとの自己資本規制が設けられております。自己資本規制比率とは、「固定化されていない自己資本の額」の、保有する有価証券の価格の変動その他の理由により発生しうる危険に対応する額である「リスク相当額」に対する比率です。金融商品取引業者はその業務の性格上、保有有価証券等の価格変動などの各種リスクに備えるため、自己資本規制比率を一定水準以上に維持することが義務付けられています。この比率を維持できなかった場合、業務方法の変更等、種々の命令を受けることとなります。なお、当社の証券子会社である三菱UFJモルガン・スタンレー証券の自己資本規制比率は平成27年3月期末現在、連結302%、単体299%となっています。
金融商品取引業者には、この他にも種々の規制の適用がありますが、規制を受ける法令諸規則の変更があった場合、また、新たな法的規制が導入された場合、業務が影響を受ける可能性があります。当社が米国に上場するMUFGの子会社であること、および子会社の三菱UFJモルガン・スタンレー証券がモルガン・スタンレーの関連会社であることから、国内の規制のみならず米国金融機関を対象とする米国の規制の影響を受ける可能性があります。例えば、平成15年12月10日にFRB等の米5当局から公表されたドッドフランク法619条に基づく最終規制(いわゆる「ボルカー・ルール」)では、バンキング・エンティティによる自己勘定取引およびファンドへの投資等が規制対象となっており、一定の条件を満たさないものは禁止されます。当社グループでも、規制対応の観点で一部の業務見直しや態勢整備を進めていますが、業績への影響等については既に計画に織り込み済です。
また当社グループは、当社の海外子会社を通じて海外でも証券業を行っており(後記「(8)カントリーリスク」をご参照下さい。)、当該国における種々の法的規制に服しております。かかる法的規制が当該国の政府の方針等により変更された場合、当社グループの海外における業務は影響を受ける可能性があります。
(8)カントリーリスク
当社グループの主な海外拠点は現地法人6社および駐在員事務所1ヶ所(北京)があります。現地法人は英国に三菱UFJセキュリティーズインターナショナル、米国に三菱UFJセキュリティーズ(USA)、香港に三菱UFJセキュリティーズ(香港)ホールディングスおよびその子会社(三菱UFJセキュリティーズ(香港))、シンガポールに三菱UFJセキュリティーズ(シンガポール)、スイスに三菱UFJウェルスマネジメント銀行(スイス)があります。国内外での連携により、お客さまに対してより充実したサービス・商品を提供するためには、これら海外拠点において展開される業務等は重要な役割を果たしますが、内外における経済、市場等事業環境の変動が当該海外拠点における事業に影響を及ぼす可能性があります。また、現地法令諸規則の変更等により当該海外拠点の事業に影響が及ぶ場合があります。なお、海外拠点に関しましても、当社の証券子会社である三菱UFJモルガン・スタンレー証券を取り巻くリスクと同様に、事業上、法令上のリスクの回避ならびにリスク管理等のための体制構築・向上に努めております。
(9)会計上の見積りの不確実性に関するリスク
当社グループにおける重要な会計方針および見積りに関して、選択可能な見積り方法・手続きのうち最善かつ合理的な方法を選択し、合理的な前提条件および入手可能な情報の中で最も客観性のある情報に基づいて金額を算出し、計上しております。ただし、見積りは不確実なものであるため、見積りが確定するまでの間の環境等の変動により、見積り段階において設定した前提条件や利用した情報等に見積り誤差が生じ、結果として翌期以降の財政状態および経営成績に影響を与えることがあります。なお、決算期後に生じた事象(後発事象)について、その実質的な原因が決算日現在において既に存在しており、決算日現在の状況に関する会計上の判断ないし見積りをする上で、追加的ないしより客観的な証拠を提供するものである場合には、原則として当該決算期の財務諸表の修正を行っております。
なお、特に重要と考えられる項目は、次の項目であります。
① トレーディング商品
② トレーディング商品関連以外の有価証券等
③ 有形固定資産・無形固定資産
④ 貸倒引当金
⑤ 繰延税金資産・負債
⑥ 退職給付会計