有価証券報告書-第84期(2022/04/01-2023/03/31)

【提出】
2023/06/23 11:13
【資料】
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【項目】
157項目

対処すべき課題

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、中核となる金融商品ビジネスを展開するうえにおいて、お客様の最善の利益を最優先とする「顧客第一主義」の基本方針のもと、個々の取引志向やリスク許容度に応じた最適な商品、サービスの提供を通じ、お客様との強固な信頼関係の構築に努めて参ります。また、経営陣・管理職・一般社員が三位一体となった「全員参加型経営」を実践し、持続的な企業価値の向上を目指して、グループ一丸となって取り組んで参ります。
(2)経営戦略等
2023年3月期を起点とする第5次中期経営計画(2023年3月期~2025年3月期)では、当社グループの持続可能な企業価値の向上を実現するために、顧客本位の業務運営を基盤として、デジタルを活用した営業推進による顧客基盤の強化や市場動向に左右されない安定収益の拡大など、競争力の強化に向けて各重点施策及び数値目標を策定しております。
当該計画の骨子及びその取り組み状況と進捗状況は、以下のとおりであります。
1.営業施策・基盤強化
①お客様ニーズと最善の利益の追求
・長崎県への新規出店(2023年3月 長崎プラザ開設)
・株式投資信託の残高積み上げ(2025年3月末目標:6,000億円台)
→2023年3月末:3,229億円
②デジタル活用による営業推進
・Webセミナーの開催に加え、SNSやYouTubeを活用した情報配信
・データ収集や分析に基づく営業の効率化
③ネット取引サービスの拡大
・「信用・デイトレ」における金利・貸株料無料化(2022年4月)
・米国株式のリアルタイム取引が可能な「米国株式リアルタイムトレードシステム」提供開始(2022年
10月)
・お客様に代わって資産運用を行うゴールベース型資産運用サービス「岩井コスモ・ゴールナビ」提供
開始(2023年1月)
2.財務目標・株主還元
①安定収益による固定費カバー率50%以上(最終年度目標)
→2023年3月期:33.5%
②資本効率を意識した経営
業界平均(※)を上回るROEと上位ランクの維持
→2023年3月期の当社ROE:6.2%(当社を含む17社中で1番目)、業界平均値:0.8%
※業界平均とは、ネット専業証券を除く上場証券及び主要証券16社の平均値
③安定配当の継続と業績連動の利益還元
1株当たりの年間配当金40円を下限に設定するとともに、総還元性向を50%以上とする
→年間配当金:80円(前期と同額)、総還元性向:52.7%
3.ESG/SDGsへの取り組み強化
・SDGs関連商品の販売(債券、投資信託)を通じた貢献
・営業資料等を電子書面化しペーパーレスを推進
・環境に配慮した頒布品などを積極的に利用
・当期純利益の1%程度を「社会貢献積立金」として毎期積み立て
・古い紙幣(紙幣裁断屑)を再利用した封筒の導入
・営業車両に電気自動車を導入
・発行手数料の一部がSDGs関連団体へ寄付される「SDGs推進私募債」を発行
・営業店の照明をLEDへ順次切り替え
・各種資格の勉強会や受講補助など、従業員に成長機会を与え自律型人材の育成に注力
・性別や中途採用などに関係なく、管理職へ積極登用
(3)経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
欧米各国の金融引き締めによる金利上昇やロシアのウクライナ侵攻に伴う地政学リスクの高まりなど、世界の金融市場が先行き不透明な投資環境にある中、プロの投資アドバイザーである証券会社の営業員が果たすべき役割は、一層重要性を増しております。このような状況のもと、お客様満足度の向上を目的とする「顧客本位の業務運営」(フィデューシャリー・デューティー)に基づき、お客様それぞれのニーズに応じた金融サービスを提供することが、当社グループの企業価値の向上に資するものと確信しておりますが、更なる当社グループの発展に向けて、以下の項目を対処すべき課題と認識しております。
①投資環境やお客様ニーズの変化に即した金融サービスの提供
日々刻々と変化する投資環境において、プロの投資アドバイザーである証券会社の営業員は、お客様それぞれのニーズを理解し、お客様一人ひとりに最適な金融サービスを提供することが重要であると認識しております。そのため、営業部門・投資調査部門・商品部門が三位一体となり、有益な投資情報の提供と先見性のある魅力的な金融商品の発掘に鋭意取り組み、お客様にご満足頂ける金融サービスの提供に努めて参ります。
②強固な収益基盤の構築
当社グループの持続可能な企業価値の向上には、マーケット環境に左右されない強固な収益基盤を構築することが重要であると認識しております。その実現に向け、安定収益の源泉となる投資信託や信用取引の残高増加に努めて参ります。特に、投資信託は、お客様の中長期的な資産形成において大きな役割を担うものと認識し、一層注力して参ります。
③顧客基盤の拡大
若年層などの投資未経験層や投資経験の少ない投資初心者の方など新たな顧客層の獲得には、デジタルを活用した新しいアプローチ手法に加え、NISA(少額投資非課税制度)をはじめとした、投資をより身近に始められる商品やサービスの提供を推進していく必要があると認識しております。特に、インターネット取引におけるサービスの拡充に積極的に取り組み、顧客基盤の拡大に注力して参ります。
④コンプライアンスの強化
お客様との信頼関係を構築するうえで、コンプライアンスの強化が重要であると認識しております。お客様と営業員との通話内容について、AI(人工知能)を活用し、より精緻にモニタリングを行うなど、コンプライアンス体制の強化に努めております。また、役職員に対しては、コンプライアンスに関する研修を継続的に実施し、コンプライアンスの意識の醸成に尚一層努力を傾注し、顧客本位の倫理観を持った従業員の育成に努めて参ります。
⑤SDGsへの取り組み及び人的資本投資の拡大
持続可能な社会に向けた取り組みであるESG(環境・社会・企業統治)、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献することは、企業の社会的責任であると認識しております。社内においては、EV車の導入や環境に配慮した素材を使った名刺・封筒を採用するなど、環境問題の解決に貢献すべく役職員一丸となり取り組みを推進して参ります。このほか、ESG・SDGsの視点を組み入れた投資信託などの販売を通じ、お客様と一体となってこの問題に取り組んで参ります。
また、当社グループの持続的な成長には、優秀な人材の確保及び育成が重要であると認識しております。そのためには、リスキリング機会の提供など次世代を担う人材への投資を推進し、従業員の能力向上や自律型人材の育成に注力するなど、従業員一人ひとりが成長できる環境を整備して参ります。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、企業価値の向上を目指すうえにおいて、自己資本に対する利益率を高めることが重要であるとの認識のもと、ROEを経営上の重要指標と捉えています。もっとも、当社グループの業績は、経済情勢や市場環境の変動により大きく影響を受ける状況にあるため、目標の設定に関しては、ROEの絶対値ではなく、主要な証券会社16社(ネット専業証券会社を除く)の平均値を上回るROEと、比較対象(当社含む17社)の中での上位ランクの維持を目指して参ります。