有価証券報告書-第104期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
文中の将来に関する事項は、当事業年度末(2020年3月31日)現在において、当社が判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社は、「個人投資家にとって価値のある金融商品・サービスを提供することを通じて、お客様の豊かな人生をサポートすること」を企業理念として掲げ、「顧客中心主義」を組織共通の価値観としております。お客様の論理で考え、お客様の投資や資産形成をサポートするべく、個人投資家の様々なニーズを満たすための金融商品・サービスを提供することに努めます。
(2) 目標とする経営指標
当社は、限られた経営資源を有効活用することで、利益の最大化・株主価値の極大化を図ることを経営目標として掲げており、目標とする経営指標としては、資本の効率性(経営資源の有効活用度)を示すROE(自己資本当期純利益率)が最適と考えております。また、当社は、ROEを持続的な株主価値の創造に関わる重要な指標と位置付けており、中長期的に株主資本コスト(現状8%)を上回るROEを達成することを経営目標としております。
当事業年度のROEは7.0%となり、株式等委託売買代金の減少等を背景に、前事業年度の9.8%から低下しました。上記の目標値を達成しておりませんが、今後も中長期的な資本効率の向上に努めます。
(3) 経営環境
当社は、経営資源をオンラインベースのブローキング事業に集中し、「選択と集中」を進めることにより、低コストで効率的なオペレーション体制を維持しております。その結果、当社の経常利益率は同業他社と比較して高い水準を維持しております。また、①オンライン証券会社のパイオニアとしてのブランド・知名度及びそれに基づく信頼性、②お得感のある分かりやすい手数料体系、③シンプルで使い勝手を追求した取引ツール、④店舗を有しないオペレーションの特殊性を踏まえて構築された充実のサポート体制を背景として、顧客からの安定した支持を受けていると考えております。
株式のオンライン取引サービスは、1998年に当社が国内で初めて開始しました。それ以降、個人の株式等委託売買代金に占めるオンライン証券会社顧客の比率は年々上昇を続け、現在では9割程度を占めております。一方、個人の株式保有額に占めるオンライン証券会社顧客の割合は、未だ2割程度に留まっておりますが、その比率は年々拡大しております。対面型の証券会社からオンライン証券会社への株式資産の流入は継続しており、今後も、オンライン証券会社を通じた個人株式等委託売買代金の拡大余地があるものと考えます。
オンライン証券業界においては、個人の株式等委託売買代金は当社を含む主要7社(当社、SBI証券、楽天証券、auカブコム証券、マネックス証券、GMOクリック証券、岡三オンライン証券)による寡占状態が続いており、個人の株式等委託売買代金における各社のシェアは、取引手数料の水準に応じて固定化されつつあります。業界における取引手数料は、最低水準にまで低下しているため、この数年、顧客の争奪に係る取引手数料の引き下げ競争は落ちついておりました。しかし、2019年9月下旬以降、米国のオンライン証券業界において、大手各社が株式委託手数料の全面無料化に踏み切ったことを受けて、日本のオンライン証券業界においても、株式委託手数料の一部を無料とする動きや、既に無料としている取引の対象を拡大する動き等が広がりました。ただし、米国のオンライン証券会社とは事業環境や収益構造が大きく異なることから、日本では、信用取引金利の引き上げを組み合わせた信用取引手数料の無料化や収益への影響が小さい部分的な手数料の引き下げに留まっております。このような動きを受けて、競合各社においては、収益構造の見直しを掲げており、FX(外国為替証拠金取引)・投資信託、ホールセール事業、運用業等への事業拡大に注力するとともに、預かり資産からの収益拡大に向けたサービスの強化を図るなど、株式委託手数料の収益に対する依存度を低下させるべく、これまで以上の収益源の多様化が進められるものと考えます。
業界における新たな潮流としては、近年、異業種やフィンテックベンチャーによる新規参入が相次いでおります。現在のオンライン証券会社のビジネスモデルは、口座数ベースでは幅広い顧客基盤を有しているように見えるものの、取引頻度が高い一部の顧客に収益の大半を依存している状況にあります。新規参入の動きは、顧客ひとりひとりの資産規模は小さいながらも、数多くの顧客にアプローチすることで収益をあげるという、ロングテールのビジネスモデルを目指すものです。こうした新たなビジネスモデルへの挑戦は、新規参入業者に限らず、当社のような既存証券会社も含めた業界全体として取り組まれている共通の課題となっています。
なお、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う影響につきましては、顧客と対面せずにオンラインで取引を受注し、顧客の問合せは全て電話やネットを通じて対応するというオンライン証券事業の特性から、経営環境等に与える影響は限定的です。一方で、株式市場、外国為替市場の相場が大きく変動した結果、投資を活発化する個人投資家や新たに投資を始める個人投資家も多く、オンライン証券における取引金額、新規口座開設数は大きく増加しました。また、個人投資家向けの情報提供についても、動画、オンラインセミナーなどを通じたものが増えており、新型コロナウイルス感染症が収束しても、オンライン中心のコミュニケーションに慣れた消費者が増え、この傾向がさらに加速化していくものと考えます。
(4) 中長期的な会社の経営戦略
(a)株式ブローキング業務の強化
当社は、オンラインベースの株式ブローキング事業をコア事業として注力しております。オンライン証券業界における個人の株式等委託売買代金シェアを維持・拡大するため、今後も顧客満足度の向上に資する付加価値の高い商品・サービスの開発・提供に取り組み、顧客基盤の強化を図ります。
当事業年度においては、株式取引にかかる手数料及び金利等の改定を行い、少額投資における無料枠の拡大、デイトレード専用の信用取引サービス「一日信用取引」における金利・貸株料の引き下げ等を実施したほか、お客様向けウェブサイトの全面リニューアルや、トレーディング・ツール「ネットストック・ハイスピード」の機能改善など、取引の利便性向上に努めました。また、貸株サービスの拡充を行い、顧客が信用取引の担保としている株式(代用有価証券)を活用して貸株金利を受け取ることができるサービスを開始しました。
(b)商品・サービスの拡充
当社の主たる収益源である株式ブローキング事業は、取引頻度が高い一部の顧客に依存しており、その結果、株式市況と業績との連動性が高い状況にあります。長期的な事業環境の変化に対応するためには、業容の広がりが不可欠となっており、低コストで効率的なオペレーション体制を維持しつつ、オンラインベースでの商品・サービスの拡充を積極的に進める方針です。また、当社にはない技術やノウハウを必要とする事業については、フィンテックベンチャー等の外部企業との提携を積極的に進める方針です。
具体的には、2016年11月より開始した投資信託事業について、継続的にサービスの拡充及び預かり資産残高の拡大に取り組んでおります。当事業年度においては、取り扱う全ての投資信託の販売手数料を完全無料としたほか、信託報酬の一部をお客様に現金で還元する日本初のサービス「投信毎月現金還元サービス」の開始を発表し、投資信託の購入・保有に伴うお客様のコスト負担削減に取り組みました。また、投資信託を他社から当社へ移管する際に発生する移管手数料を当社が全額負担するサービスを開始し、他社からの顧客獲得に注力しました。投資信託事業への取り組みは、将来的なアセットサービス拡大に向けた布石と考えております。
またFX事業について、2017年5月に事業モデルを全面的に見直し、顧客の注文を全てカバーするブローキング・モデルから、当社が自己ポジションを持ちながら、直接インターバンク市場へアクセスしてカバー取引を行うトレーディング・モデルへ転換しました。それ以降、カバーコストを削減し、収益性を大幅に改善しました。当事業年度においては、サービスの全面的なリニューアルを行い、パソコン及びスマートフォンの取引チャネルを刷新すると共に、取引通貨ペアの拡大、取引通貨単位の引き下げ等を実施しました。今後も、取引規模の拡大に向けて、継続的に事業の強化を図ります。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
(1)及び(4)に記載の、経営方針及び中長期経営戦略を実行していくうえで、当社が優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下のとおりであります。
(a)顧客基盤の拡大
当社を含むオンライン証券会社は、口座数ベースでは幅広い顧客基盤を有しているように見えますが、口座数全体に対する稼働口座数の比率は低く、取引頻度が高い一部の顧客に収益の大半を依存しております。そのため、顧客の裾野拡大に継続して取り組むことが今後の課題となっております。当事業年度においては、ウェブサイトで提供している投資情報コンテンツをリニューアルし、株主優待や投資信託に関する情報提供を強化するなど、投資初心者の方も手軽に利用できるウェブサイト作りや、投資初心者向けのセミナーの開催や各種イベントへの出展など、引き続き顧客の裾野拡大に取り組みました。
他方、対面型の証券会社に預けられている個人投資家の金融資産は継続的にオンライン証券業界に流入し、個人株式保有額に占めるオンライン証券会社顧客の割合は年々拡大しております。そこで当社としては、取引頻度が高い顧客向けのトレーディングサービスとして株式、先物、FXを継続して強化するとともに、取引頻度は低いものの将来に向けて資産形成を目指す顧客に向けたアセットサービスである投資信託にも注力します。当事業年度にサービスを開始した移管手数料負担サービスや、開始を発表した投信毎月現金還元サービスを通じて、投資信託の分野においても、対面型の証券会社からオンライン証券会社への顧客及び資産の流入推進に取り組み、新たな顧客層の獲得を図ります。
(b)認知度の向上
当社のコアとなる顧客層は50歳以上の個人投資家であり、口座数全体の半数、顧客の預かり資産残高全体の8割近くを占めております。このような状況は、オンライン証券業界のみならず、個人向けの金融サービスを提供する業界全体に共通する傾向と考えております。一方、当社における新規口座開設者の内訳をみると、30代以下の顧客が全体の4割程度を占めており、若年層の流入もありますが、長期的な顧客層の維持・拡大のためには、特に現在の若年層における認知度の向上は重要な課題であり、継続的に当社のブランド・知名度の向上に取り組んでまいります。
当事業年度においては、引き続き、就職、転職、結婚、出産、育児、定年といったライフイベントを迎える顧客層をターゲットとしたプロモーションを強化し、ライフイベントに応じた資産形成に役立つコンテンツを配信する特設サイトの開設や、広告動画の配信、SNSを活用したキャンペーン等を実施しました。また、新たな顧客層へアプローチするための取り組みとして、働く女性向けメディア『マイナビウーマン』や子育て情報メディア『KIDSNA(キズナ)』、家族向けフォトブック作成アプリ『ノハナ』と連携し、投資初心者向けの資産形成に関するコンテンツの配信等を行いました。
(c)取引システムの安定性の確保及び取引ツールの拡充
取引システムの安定性の確保は、オンライン証券会社の生命線です。顧客が安心して取引することができるよう、システム障害やサイバー攻撃、自然災害といった想定されるリスクへの対策を講じるとともに、取引量の増加に備えたキャパシティを確保し、取引システムの安定的な稼働に努めます。また、取引ツールについてもIT技術の進化・普及等を踏まえて拡充し、個人投資家の取引スタイルの変化に応じた取引環境の提供に努めます。
当事業年度においては、株式取引についてお客様向けウェブサイトの全面リニューアルを実施し、より使いやすいデザインへの刷新や各種機能の拡充を行ったほか、FXについてパソコン及びスマートフォンの取引チャネルを刷新するなど、取引ツールの拡充に注力しました。また、顧客によるログイン時のセキュリティ強化を目的とした、電話番号認証による二段階認証サービスを導入しました。
(d)コンプライアンス体制の強化及び顧客サポート体制の充実
当社は、金融機関としての信頼性の維持・向上に資するコンプライアンス体制について、より一層の強化に努めます。また、商品・サービスの拡充に伴う業容拡大に対応するため、店舗を有しないオペレーションの特殊性を踏まえ、コールセンターを通じた顧客サポート体制についても更なる充実を図ります。
当事業年度においては、AIを活用したチャットボットサービス「AIチャット」を導入し、ウェブサイトの利便性向上及びコールセンターの受付時間外である夜間や週末における顧客サポート体制の強化を行いました。サービス開始時点では、「各種手続き」、「税制・確定申告」、「口座開設」の3つのカテゴリーに関する問合せにAIが対応し、今後、対応可能なカテゴリーを拡大していく予定です。なお、当社のコールセンターは、第三者評価機関であるHDI-Japan(ヘルプデスク協会)が主催する「2019年度問合せ窓口格付け(証券業界)」において、最高評価の「三つ星」を9年連続で獲得しております。
(e)低コスト体制の維持
証券業の業績は、株式市場の動向に大きく左右されるため、当社の主たる収益源である株式等委託手数料収入や金利収入の振れ幅は比較的大きいといえます。また、業界における各種取引手数料は、最低水準にまで低下し、この数年、顧客の争奪に係る手数料引き下げ競争は落ちついておりましたが、米国のオンライン証券業界における株式委託手数料の全面無料化の動きを受けて、日本においても、株式委託手数料の一部を無料とする動きや、既に無料としている取引の対象を拡大する動き等が広がりました。また、異業種やフィンテックベンチャーによる新規参入が相次いでいることなどを踏まえると、再び価格競争が生じる可能性は否定できません。そのような中で継続的に利益を生み出すためには、低コスト体制の維持が不可欠であり、引き続きコスト管理について厳格に取り組みます。
(1) 会社の経営の基本方針
当社は、「個人投資家にとって価値のある金融商品・サービスを提供することを通じて、お客様の豊かな人生をサポートすること」を企業理念として掲げ、「顧客中心主義」を組織共通の価値観としております。お客様の論理で考え、お客様の投資や資産形成をサポートするべく、個人投資家の様々なニーズを満たすための金融商品・サービスを提供することに努めます。
(2) 目標とする経営指標
当社は、限られた経営資源を有効活用することで、利益の最大化・株主価値の極大化を図ることを経営目標として掲げており、目標とする経営指標としては、資本の効率性(経営資源の有効活用度)を示すROE(自己資本当期純利益率)が最適と考えております。また、当社は、ROEを持続的な株主価値の創造に関わる重要な指標と位置付けており、中長期的に株主資本コスト(現状8%)を上回るROEを達成することを経営目標としております。
当事業年度のROEは7.0%となり、株式等委託売買代金の減少等を背景に、前事業年度の9.8%から低下しました。上記の目標値を達成しておりませんが、今後も中長期的な資本効率の向上に努めます。
(3) 経営環境
当社は、経営資源をオンラインベースのブローキング事業に集中し、「選択と集中」を進めることにより、低コストで効率的なオペレーション体制を維持しております。その結果、当社の経常利益率は同業他社と比較して高い水準を維持しております。また、①オンライン証券会社のパイオニアとしてのブランド・知名度及びそれに基づく信頼性、②お得感のある分かりやすい手数料体系、③シンプルで使い勝手を追求した取引ツール、④店舗を有しないオペレーションの特殊性を踏まえて構築された充実のサポート体制を背景として、顧客からの安定した支持を受けていると考えております。
株式のオンライン取引サービスは、1998年に当社が国内で初めて開始しました。それ以降、個人の株式等委託売買代金に占めるオンライン証券会社顧客の比率は年々上昇を続け、現在では9割程度を占めております。一方、個人の株式保有額に占めるオンライン証券会社顧客の割合は、未だ2割程度に留まっておりますが、その比率は年々拡大しております。対面型の証券会社からオンライン証券会社への株式資産の流入は継続しており、今後も、オンライン証券会社を通じた個人株式等委託売買代金の拡大余地があるものと考えます。
オンライン証券業界においては、個人の株式等委託売買代金は当社を含む主要7社(当社、SBI証券、楽天証券、auカブコム証券、マネックス証券、GMOクリック証券、岡三オンライン証券)による寡占状態が続いており、個人の株式等委託売買代金における各社のシェアは、取引手数料の水準に応じて固定化されつつあります。業界における取引手数料は、最低水準にまで低下しているため、この数年、顧客の争奪に係る取引手数料の引き下げ競争は落ちついておりました。しかし、2019年9月下旬以降、米国のオンライン証券業界において、大手各社が株式委託手数料の全面無料化に踏み切ったことを受けて、日本のオンライン証券業界においても、株式委託手数料の一部を無料とする動きや、既に無料としている取引の対象を拡大する動き等が広がりました。ただし、米国のオンライン証券会社とは事業環境や収益構造が大きく異なることから、日本では、信用取引金利の引き上げを組み合わせた信用取引手数料の無料化や収益への影響が小さい部分的な手数料の引き下げに留まっております。このような動きを受けて、競合各社においては、収益構造の見直しを掲げており、FX(外国為替証拠金取引)・投資信託、ホールセール事業、運用業等への事業拡大に注力するとともに、預かり資産からの収益拡大に向けたサービスの強化を図るなど、株式委託手数料の収益に対する依存度を低下させるべく、これまで以上の収益源の多様化が進められるものと考えます。
業界における新たな潮流としては、近年、異業種やフィンテックベンチャーによる新規参入が相次いでおります。現在のオンライン証券会社のビジネスモデルは、口座数ベースでは幅広い顧客基盤を有しているように見えるものの、取引頻度が高い一部の顧客に収益の大半を依存している状況にあります。新規参入の動きは、顧客ひとりひとりの資産規模は小さいながらも、数多くの顧客にアプローチすることで収益をあげるという、ロングテールのビジネスモデルを目指すものです。こうした新たなビジネスモデルへの挑戦は、新規参入業者に限らず、当社のような既存証券会社も含めた業界全体として取り組まれている共通の課題となっています。
なお、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う影響につきましては、顧客と対面せずにオンラインで取引を受注し、顧客の問合せは全て電話やネットを通じて対応するというオンライン証券事業の特性から、経営環境等に与える影響は限定的です。一方で、株式市場、外国為替市場の相場が大きく変動した結果、投資を活発化する個人投資家や新たに投資を始める個人投資家も多く、オンライン証券における取引金額、新規口座開設数は大きく増加しました。また、個人投資家向けの情報提供についても、動画、オンラインセミナーなどを通じたものが増えており、新型コロナウイルス感染症が収束しても、オンライン中心のコミュニケーションに慣れた消費者が増え、この傾向がさらに加速化していくものと考えます。
(4) 中長期的な会社の経営戦略
(a)株式ブローキング業務の強化
当社は、オンラインベースの株式ブローキング事業をコア事業として注力しております。オンライン証券業界における個人の株式等委託売買代金シェアを維持・拡大するため、今後も顧客満足度の向上に資する付加価値の高い商品・サービスの開発・提供に取り組み、顧客基盤の強化を図ります。
当事業年度においては、株式取引にかかる手数料及び金利等の改定を行い、少額投資における無料枠の拡大、デイトレード専用の信用取引サービス「一日信用取引」における金利・貸株料の引き下げ等を実施したほか、お客様向けウェブサイトの全面リニューアルや、トレーディング・ツール「ネットストック・ハイスピード」の機能改善など、取引の利便性向上に努めました。また、貸株サービスの拡充を行い、顧客が信用取引の担保としている株式(代用有価証券)を活用して貸株金利を受け取ることができるサービスを開始しました。
(b)商品・サービスの拡充
当社の主たる収益源である株式ブローキング事業は、取引頻度が高い一部の顧客に依存しており、その結果、株式市況と業績との連動性が高い状況にあります。長期的な事業環境の変化に対応するためには、業容の広がりが不可欠となっており、低コストで効率的なオペレーション体制を維持しつつ、オンラインベースでの商品・サービスの拡充を積極的に進める方針です。また、当社にはない技術やノウハウを必要とする事業については、フィンテックベンチャー等の外部企業との提携を積極的に進める方針です。
具体的には、2016年11月より開始した投資信託事業について、継続的にサービスの拡充及び預かり資産残高の拡大に取り組んでおります。当事業年度においては、取り扱う全ての投資信託の販売手数料を完全無料としたほか、信託報酬の一部をお客様に現金で還元する日本初のサービス「投信毎月現金還元サービス」の開始を発表し、投資信託の購入・保有に伴うお客様のコスト負担削減に取り組みました。また、投資信託を他社から当社へ移管する際に発生する移管手数料を当社が全額負担するサービスを開始し、他社からの顧客獲得に注力しました。投資信託事業への取り組みは、将来的なアセットサービス拡大に向けた布石と考えております。
またFX事業について、2017年5月に事業モデルを全面的に見直し、顧客の注文を全てカバーするブローキング・モデルから、当社が自己ポジションを持ちながら、直接インターバンク市場へアクセスしてカバー取引を行うトレーディング・モデルへ転換しました。それ以降、カバーコストを削減し、収益性を大幅に改善しました。当事業年度においては、サービスの全面的なリニューアルを行い、パソコン及びスマートフォンの取引チャネルを刷新すると共に、取引通貨ペアの拡大、取引通貨単位の引き下げ等を実施しました。今後も、取引規模の拡大に向けて、継続的に事業の強化を図ります。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
(1)及び(4)に記載の、経営方針及び中長期経営戦略を実行していくうえで、当社が優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下のとおりであります。
(a)顧客基盤の拡大
当社を含むオンライン証券会社は、口座数ベースでは幅広い顧客基盤を有しているように見えますが、口座数全体に対する稼働口座数の比率は低く、取引頻度が高い一部の顧客に収益の大半を依存しております。そのため、顧客の裾野拡大に継続して取り組むことが今後の課題となっております。当事業年度においては、ウェブサイトで提供している投資情報コンテンツをリニューアルし、株主優待や投資信託に関する情報提供を強化するなど、投資初心者の方も手軽に利用できるウェブサイト作りや、投資初心者向けのセミナーの開催や各種イベントへの出展など、引き続き顧客の裾野拡大に取り組みました。
他方、対面型の証券会社に預けられている個人投資家の金融資産は継続的にオンライン証券業界に流入し、個人株式保有額に占めるオンライン証券会社顧客の割合は年々拡大しております。そこで当社としては、取引頻度が高い顧客向けのトレーディングサービスとして株式、先物、FXを継続して強化するとともに、取引頻度は低いものの将来に向けて資産形成を目指す顧客に向けたアセットサービスである投資信託にも注力します。当事業年度にサービスを開始した移管手数料負担サービスや、開始を発表した投信毎月現金還元サービスを通じて、投資信託の分野においても、対面型の証券会社からオンライン証券会社への顧客及び資産の流入推進に取り組み、新たな顧客層の獲得を図ります。
(b)認知度の向上
当社のコアとなる顧客層は50歳以上の個人投資家であり、口座数全体の半数、顧客の預かり資産残高全体の8割近くを占めております。このような状況は、オンライン証券業界のみならず、個人向けの金融サービスを提供する業界全体に共通する傾向と考えております。一方、当社における新規口座開設者の内訳をみると、30代以下の顧客が全体の4割程度を占めており、若年層の流入もありますが、長期的な顧客層の維持・拡大のためには、特に現在の若年層における認知度の向上は重要な課題であり、継続的に当社のブランド・知名度の向上に取り組んでまいります。
当事業年度においては、引き続き、就職、転職、結婚、出産、育児、定年といったライフイベントを迎える顧客層をターゲットとしたプロモーションを強化し、ライフイベントに応じた資産形成に役立つコンテンツを配信する特設サイトの開設や、広告動画の配信、SNSを活用したキャンペーン等を実施しました。また、新たな顧客層へアプローチするための取り組みとして、働く女性向けメディア『マイナビウーマン』や子育て情報メディア『KIDSNA(キズナ)』、家族向けフォトブック作成アプリ『ノハナ』と連携し、投資初心者向けの資産形成に関するコンテンツの配信等を行いました。
(c)取引システムの安定性の確保及び取引ツールの拡充
取引システムの安定性の確保は、オンライン証券会社の生命線です。顧客が安心して取引することができるよう、システム障害やサイバー攻撃、自然災害といった想定されるリスクへの対策を講じるとともに、取引量の増加に備えたキャパシティを確保し、取引システムの安定的な稼働に努めます。また、取引ツールについてもIT技術の進化・普及等を踏まえて拡充し、個人投資家の取引スタイルの変化に応じた取引環境の提供に努めます。
当事業年度においては、株式取引についてお客様向けウェブサイトの全面リニューアルを実施し、より使いやすいデザインへの刷新や各種機能の拡充を行ったほか、FXについてパソコン及びスマートフォンの取引チャネルを刷新するなど、取引ツールの拡充に注力しました。また、顧客によるログイン時のセキュリティ強化を目的とした、電話番号認証による二段階認証サービスを導入しました。
(d)コンプライアンス体制の強化及び顧客サポート体制の充実
当社は、金融機関としての信頼性の維持・向上に資するコンプライアンス体制について、より一層の強化に努めます。また、商品・サービスの拡充に伴う業容拡大に対応するため、店舗を有しないオペレーションの特殊性を踏まえ、コールセンターを通じた顧客サポート体制についても更なる充実を図ります。
当事業年度においては、AIを活用したチャットボットサービス「AIチャット」を導入し、ウェブサイトの利便性向上及びコールセンターの受付時間外である夜間や週末における顧客サポート体制の強化を行いました。サービス開始時点では、「各種手続き」、「税制・確定申告」、「口座開設」の3つのカテゴリーに関する問合せにAIが対応し、今後、対応可能なカテゴリーを拡大していく予定です。なお、当社のコールセンターは、第三者評価機関であるHDI-Japan(ヘルプデスク協会)が主催する「2019年度問合せ窓口格付け(証券業界)」において、最高評価の「三つ星」を9年連続で獲得しております。
(e)低コスト体制の維持
証券業の業績は、株式市場の動向に大きく左右されるため、当社の主たる収益源である株式等委託手数料収入や金利収入の振れ幅は比較的大きいといえます。また、業界における各種取引手数料は、最低水準にまで低下し、この数年、顧客の争奪に係る手数料引き下げ競争は落ちついておりましたが、米国のオンライン証券業界における株式委託手数料の全面無料化の動きを受けて、日本においても、株式委託手数料の一部を無料とする動きや、既に無料としている取引の対象を拡大する動き等が広がりました。また、異業種やフィンテックベンチャーによる新規参入が相次いでいることなどを踏まえると、再び価格競争が生じる可能性は否定できません。そのような中で継続的に利益を生み出すためには、低コスト体制の維持が不可欠であり、引き続きコスト管理について厳格に取り組みます。