有価証券報告書-第26期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/23 15:21
【資料】
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【項目】
130項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2021年6月23日)現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループでは、持続可能な社会に向け“新しいコンテクスト”をデザインし、テクノロジーで社会実装することをパーパス(存在意義)としております。企業と人、そして情報を有機的に結びつける「コンテクストカンパニー」であることが、業務を行う上での基本コンセプトであります。インターネット業界の黎明期からの実績に基づくソリューションノウハウと、最新のネットワーク技術を有効に活用することにより、種々複雑な情報を有機的に結びつけ、企業と人と情報、これら三者の存在価値を相互により高め得る機能を開発することを業務の目的として参りました。常に時代の数歩先に視点を合わせ、コンテクストの対象を冷静かつ的確に選別し、人と環境とデジタル情報化社会が共存できる快適な社会に貢献し得るサービスを構築することが、当社の経営における基本方針であります。
(2)経営環境
当社を取り巻く市場環境は、当社グループが事業展開する電子決済市場、インターネット広告市場ともに今後も継続的な成長が見込まれております。電子決済市場においては、2019年の消費者向け電子商取引(BtoC-EC)の市場規模が前年比7.7%増の19兆3,609億円と拡大を続けており(注1)、2018年4月に内閣府主導の下、国内のキャッシュレス決済比率を2017年の21.3%(注2)から2025年に40%とする目標が設定され(注3)、キャッシュレス化が推進されている背景から、今後も市場の成長が見込まれます。また、2020年のインターネット広告市場においては、広告費の約7割を占める運用型広告が引き続き市場の伸びを牽引し、前年比5.9%増となる2兆2,290億円と社会のデジタル化加速が追い風となり前年に引き続きプラス成長となり(注4)、電子決済市場と同様に市場拡大が見込まれております。
出所 (注1)経済産業省「令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)報告書(2020年7月)」
(注2)一般社団法人キャッシュレス推進協議会「キャッシュレス・ロードマップ2020(2020年3月)」
(注3)経済産業省「キャッシュレス・ビジョン(2018年4月)」
(注4)㈱電通「2020年日本の広告費」
(3)経営戦略等並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上課題
当社グループは、2021年3月期を初年度とし「Designing our New Normal Context」をスローガンに掲げた中期経営計画(2021年3月期から2025年3月期までの5ヵ年)を策定しております。中期経営計画の推進及び経営目標の達成を通じて更なる成長を実現し、企業価値の向上を図って参ります。また、当社グループが有する様々な技術等を活用した次世代のサービス開発に向けて、2022年3月期より決済とデータを融合したグループ戦略「DGフィンテックシフト」を始動しました。当社グループは、「DGフィンテックシフト」の元、これまでの緩やかな連邦経営から、フィナンシャルテクノロジー事業を中心にリカーリング事業をコアとした経営にシフト致します。フィナンシャルテクノロジー事業が有する強固な決済基盤に加え、当社グループの豊富な事業やサービスから様々な決済サービスの開発や、データを活用した次世代事業への進化を通じ、より欠かすことができない社会インフラとして、持続可能な社会の発展に貢献して参ります。
各事業セグメントにおける事業戦略は次のとおりであります。
[フィナンシャルテクノロジー事業]
フィナンシャルテクノロジー事業では、Eコマース(EC)をはじめとするBtoCの商取引に必要不可欠なクレジットカード決済やコンビニ決済等の電子決済ソリューションの提供を行っております。当社グループの強みを活かし、今後加速されると想定されるキャッシュレス、非接触化等の外部環境変化に応じて、対面決済、非対面決済領域ともに、最先端決済技術や決済データの活用等を通じ、顧客のデジタルビジネスを包括的にサポートして参ります。いかなる状況下においても24時間365日の稼働が責務であり、国の「重要インフラ」指定事業者として社会的責任を担いつつ、時流や生活者のニーズを注視し、更なる社会貢献を目指して参ります。
[マーケティングテクノロジー事業]
マーケティングテクノロジー事業では、インターネットとリアルを融合した総合的なデジタルマーケティングや様々なデータを活用したデータマーケティングビジネスを行っております。現在の主力領域であるデジタル広告事業を更に伸長させつつ、今後デジタルトランスフォーメーションが急伸する産業や企業に向けたブランドアド型デジタルマーケティングを当事業セグメントの第2の柱へと育成して参ります。2018年から大手メディア40社以上が参画し、当社が事務局である「コンテンツメディア価値研究会」では、アドフラウド(不正/詐欺)への対応、厳格なブランドセーフティの担保、コンテンツ品質価値の高いメディアの媒体価値向上を目的とし、クオリティメディア企業と共に、広告主や利用者の視点に立ち、巨大プラットフォーマーとの適切な均衡、距離を保ちつつ、また、クッキーレスも見据えた持続可能なビジネスモデルの創出に取り組んでおります。更に、フィナンシャルテクノロジー事業と連携しながら、様々なマーケティングデータと決済購買データを活用し、グループ総合力を創出して参ります。
[インキュベーションテクノロジー事業]
インキュベーションテクノロジー事業では、国内外のスタートアップ企業等への投資・育成及び当社グループ内の事業との連携による投資先の育成等を行っております。創業より25年以上に亘って築いたネットワークを活かしグローバルなパートナー企業と連携しながら、バーベル戦略によるリスク分散投資を継続しつつ、今後新たに成長が予想される領域や、デジタルシフトが進む革新領域についてフォーカスし、今までの常識にとらわれない柔軟な投資・育成事業を展開して参ります。2021年3月期に10周年を迎えたOpen Network Lab (日本初のシードアクセラレーター)を活用し、更なるシード・アーリーステージの投資先候補のコミュニティ強化に努めて参ります。また、米国シリコンバレーをはじめとした「Global Incubation Stream」を通じて、新たな投資環境に即した戦略的投資ポートフォリオの実現を目指して参ります。
[ロングタームインキュベーション事業]
ロングタームインキュベーション事業では、当社グループがこれまで培ってきた投資育成や事業開発のノウハウを活かし、中長期的かつ継続的な事業利益の創出に取り組んでおります。持分法適用会社である㈱カカクコムに加え、国内外で戦略的新規事業を創出して参ります。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
2021年3月期を初年度とした中期経営計画において、リカーリング事業(フィナンシャルテクノロジー事業及びマーケティングテクノロジー事業)及びロングタームインキュベーション事業は、既存事業の成長加速及び新規事業創出による収益力の強化を目的とし、成長性指標にて目標を設定しております。インキュベーションテクノロジー事業は、投資ハードルレート(ROI)2.5倍を目標とし、投資・回収を継続して参ります。
また、企業価値の向上を意識した経営を推進すべく、資本収益性指標として「親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)」を採用しております。加えて、当社グループ事業のキャッシュ創出力を測定し、キャッシュ・フローを意識した経営による株主還元を実施すべく「税引前事業キャッシュフローに対する配当性向」を株主還元指標として導入しております。当社は、株主の皆様への利益還元については最も重要な経営方針の一つと考え、キャッシュ・フロー創出が企業価値の向上並びに株主価値の増大に資すると判断しております。具体的な数値目標は以下のとおりであります。中期経営計画の推進及び経営目標の達成を通じて更なる成長を実現し、企業価値の向上を図って参ります。
中期経営計画の定量目標(2021年3月期~2025年3月期)
成長性指標(税引前利益 成長率)目標値
フィナンシャルテクノロジー事業20%以上
マーケティングテクノロジー事業20%以上
ロングタームインキュベーション事業15%以上
投資ハードルレート(ROI)目標値
インキュベーションテクノロジー事業2.5倍
資本収益性指標目標値
ROE20%以上
株主還元指標目標値
税引前事業キャッシュフローに対する配当性向20%以上

なお、当社グループ事業から創出されるキャッシュ・フローを「税引前事業キャッシュフロー」と定義しております。これは、国際財務報告基準(IFRS)第9号に基づき純損益を通じて公正価値で測定した営業投資有価証券の事後的な変動による損益等がキャッシュ・フローを伴わないことにより、親会社の所有者に帰属する当期利益とキャッシュ・フローとの間で生じた乖離を調整した指標であります。