有価証券報告書-第39期(令和3年7月1日-令和4年6月30日)

【提出】
2022/09/28 11:45
【資料】
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【項目】
111項目

対処すべき課題

(注) 文中の将来に関する事項は、2022年6月期末現在において当社が判断したものです。
(1)経営方針
当社は「次代の情報化社会の安全性と利便性を創出する」ことを経営理念に掲げており、それに則って、「高速、安全、高品質で利便性の高いIT基盤を提供する」事業を推進することによって企業価値を高め、社会に貢献することを経営方針に掲げています。
当社は、クレジットカード決済や証券取引等のオンライン、リアルタイムのネットワーク接続技術を強みとしてシステム開発を行い、顧客企業に提供しています。こうしたシステムは、社会にとって必要不可欠なIT基盤(インフラストラクチャー)であり、システムの安定性を必須の条件として、高速かつ安全に取引を完遂するために、高い水準の品質が求められています。また、情報セキュリティ対策製品の開発販売とサイバーセキュリティ対策製品の販売を行い、顧客企業の安全な事業運営に貢献しています。
当社は、多くの開発実績と安定的な運用実績を有しており、この実績によって顧客から得られる信頼が、当社の事業を支え、発展させる基盤になるものと考えています。
当社は、今後ともより多くの顧客に信頼されるIT基盤の提供を通じて、当社の事業基盤を拡大、発展させていくことで、当社のステークホルダーの期待に応えることを経営方針にしています。
(2)経営環境
新型コロナウイルス感染症の拡大は、国内外の経済情勢のみならず、企業業績や個人の消費行動と働き方に大きな影響を及ぼしています。当社の主要な事業領域である金融業界、クレジットカード業界も影響を受けていますが、大手クレジットカード会社を中心とした主な顧客のシステム投資の趨勢に大きな変化はなく、当社の事業は順調に推移しています。
厳しい経済状況のなかにあっても、国内のキャッシュレス決済の普及は着実に進行しており、カード決済事業に新規参入する事業者も増加しています。
決済だけでなく、データエコノミーと称される近未来の社会においては、社会全体で生成され、流通するデータ量は、爆発的に増えることが予想されており、こうしたデータの利活用が、企業や社会の競争力の新たな源泉になるものとされています。こうした社会においては、データ流通と利用を支えるIT基盤の重要性が増すことは確実で、異なるネットワーク間の接続、データ交換の需要は増加するものと予想されます。
企業社会においては、単に、ネットワーク間を接続するだけでなく、データの利活用に資する付加価値が求められることが予想されます。当社の製品に例えれば、ネットワーク接続にオーソリゼーション(認証)や、不正検知からデータの監視、セキュリティ対策等の機能がより重要性を増すことを意味するものと考えています。また、金融取引のデータばかりでなく、画像や映像データをリアルタイムに分析して、新たな活用方法を提案し、多様な業種業態の生産性を高めるシステムへの需要が高まることも予想されます。
こうした社会情勢の変化を背景に、当社の事業機会は今後とも拡大するものと予想され、当社は、これを最大限に活かしていく方針です。
(3)経営課題
1 事業規模拡大
2022年8月3日、当社は中期事業計画のローリング計画を開示しました。2021年に開示した2024年6月期に売上高150億円、営業利益22.5億円(営業利益率15.0%)の目標を継続し、2025年6月期に売上高165億円、営業利益25億円の達成を計画しています。
当社の主要な収益源であるシステム開発業務は、主に顧客の都合で契約の規模や売上が変動することから、「フ ロー型」の収益形態に分類されます。一方で、クラウドサービスのように、当社が開発したシステムの利用期間に応じて、一定の規模の売上を継続的に計上できる業務は、「ストック型」と分類されます。
当社は、従来の「フロー型」に「ストック型」の事業を加えて、より安定的な収益の確保と、事業規模の拡大を 進めています。「ストック型」事業を成長させることで、新たな収益源を確保し、事業規模を拡大する方針です。
また、当社は、これまで金融業界の開発業務で培った知識と経験を利用して、金融業界以外の企業向けに新製品 を開発、新市場の開拓にも挑戦しています。
大量データのリアルタイム、高速処理を基盤にする当社の技術で、異業種の業務における潜在的な課題を発見し、解決することで新市場を開拓し、新しい収益の柱として育成します。
2 人財育成
当社の従業員が、プロフェッショナルとしての使命感を常にもち、業務執行において高いレベルを実現すべく、継続的に社内教育のプログラムを整備、充実させていきます。特に、技術分野だけでなく各業務における専門分野の業務遂行能力を高め、人間力を育む施策を重点的に導入します。
3 企業風土改革
当社は、人財の多様性を活用し、組織の能力が最大限発揮できる環境整備を進めることで、企業価値を向上する組織づくりを志向しています。
当社は、従業員が働きやすい、働きがいのある環境を整え、生産性の向上と従業員の成長を促進します。物理的な労務環境の整備、公正な評価制度の導入等を通じて、従業員が事業の推進と当社の成長に参画関与する意識を高めていけるよう努めます。従業員間のコミュニケーションを活性化し、新しい技術や事業に挑戦する企業文化の醸成に努めます。
4 ESG課題への取組み
2021年4月に代表取締役社長を委員長、常勤取締役を主な委員としてサステナビリティ委員会を設置しました。「社会への貢献」「良い企業風土の構築」「多様性の尊重」「地球環境への配慮」その他の実践に係る方針を定め、全社的な活動推進の継続性を確保するための基幹的な組織として活動しています。
重要な社会インフラを担うシステム開発会社である当社にとって、人的資本である従業員等は最も重要な経営資源であり、健康経営宣言のもと健康増進を進め、2022年3月9日、経済産業省指定の「健康経営優良法人2022(大規模法人部門)」に認定されました。
当社は、ESG経営の考えを社内に浸透させると同時にリスク分析、管理を進め、当社の強みを生かした新たなソリューションの創出につなげ、社会に貢献してまいります。
(4)経営指標
当社は、継続的な収益力の向上の指標として営業利益率を主要な経営指標とし、2024年6月期には15.0%の達成を計画しています。営業利益率の向上は、当社のROE(自己資本利益率)の向上に繋がるものと考えられます。営業利益率の向上を、収益力の向上と事業の効率性の向上を示す指標と位置付け、ROEは当社の資本効率を示す指標とします。
また、当社の資本コストは、7.0%と見積もっています。資本コストを上回るROEを追求することで、当社の株主価値の向上を目指します。
2018年2019年2020年2021年2022年計画
営業利益率5.2%8.8%9.5%10.1%13.2%15.0%
ROE6.6%11.3%11.4%11.6%13.5%

また、事業の効率性を示すもうひとつの指標として、従業員一人当たり売上高を指標にしています。
2018年2019年2020年2021年2022年目標
一人当たり
売上高
26.7百万円25.3百万円25.1百万円25.4百万円25.0百万円30.0百万円

(5)今後の見通し
当社は2022年6月期からの3ヵ年中期事業計画を策定し、各種施策に取り組んでまいりましたが、目標値に対する進捗状況等を鑑み、2022年6月期業績の公表に合わせて、ローリング方式にて2023年6月期から3ヵ年の数値目標を見直しました。本中期事業計画では、事業構造の変革や事業領域の拡大による事業基盤の強化、拡大を進めるとともに、持続的成長に向けて、人財基盤と共創基盤の確立に取り組んでまいります。
a. 事業基盤の強化・拡大
事業構造の変革や事業領域の拡大に取り組むとともに、重要な社会インフラを支える高い品質と性能を維持、向上するために必要な投資を実施し、持続的成長を目指します。
① クラウドサービスを中心としたストックビジネスの拡大
② クラウドサービスのさらなる利用ユーザー増加を見据えたインフラ環境と運用体制の整備
③ 決済・金融事業におけるFEPシステム※のクラウド対応と顧客のIT戦略支援
④ 決済・金融事業で培った技術と経験を活用した新製品開発と事業領域拡大
⑤ セキュリティ事業におけるプロダクト販売からセキュリティサービス提供へのモデル転換
⑥ システム運用体制の整備と運用品質のさらなる向上
※FEPシステム:クレジットカード決済処理に必要なネットワーク接続やカードの使用認証等の機能をもつハードウェア、及びソフトウェア
b. 人財基盤の確立
多様な人財を採用、活用し、人財育成施策を推進することで、高い技術と専門性、及び柔軟な発想を持った人財を育成します。また、働きやすさと働きがいの両立を目指した人事制度の変革により、持続的成長を支える人財基盤の確立を進めます。
c. 共創基盤の確立
共創を軸にした企業の変革を進めます。社内においては組織の縦割りを廃し、対話の活性化による有機的な組織連携を推進し、社員間の共創に取り組みます。また、様々な社会問題に対して、ESGへの取り組みを本格化させます。
2023年6月期の業績予想は、売上高135億円(前期比17.5%増)、営業利益18億円(前期比18.4%増)、営業利益率13.3%としています。特にクラウドサービス事業は、2022年6月期に受注が拡大し、売上を伸ばす見込みです。利用ユーザー増加を見据えたインフラ環境と運用体制の整備を進めながら、規模拡大を図ります。また2022年6月期は、収益力の高い事業構造・コスト構造への改革が進みました。この傾向は2023年6月期も継続しますが、品質強化、ESG課題等に向けて経営資源を積極的に投入しながら、2割近い増益を目指します。
(参考)中期事業計画
(新計画) (単位:百万円)
2022年6月期
(実績)
2023年6月期
(予想)
2024年6月期
(計画)
2025年6月期
(計画)
売上高11,49313,50015,00016,500
営業利益(率)1,519
(13.2%)
1,800
(13.3%)
2,250
(15.0%)
2,500
(15.2%)

(旧計画)
2021年6月期
(実績)
2022年6月期
(計画)
2023年6月期
(計画)
2024年6月期
(計画)
売上高11,18712,00013,50015,000
営業利益(率)1,130
(10.1%)
1,320
(11.0%)
1,750
(13.0%)
2,250
(15.0%)