有価証券報告書-第102期(2025/04/01-2026/03/31)
② 戦略
(イ) 概要
当社グループは、気候変動問題への対応を経営の重要課題の一つと位置付けています。2023年5月には、2030年度におけるGHG排出量削減目標(エネルギー事業分野を除く製品製造に関わるScope1及びScope2)を、2013年度比45%から54%削減に引き上げました。また、2050年度カーボンニュートラルを宣言し、省エネルギー、燃料転換、非化石エネルギーの利用拡大、森林によるCO₂吸収・固定、並びに木質資源を活用し、かつ低炭素な製品を提供する事業の拡大に取り組んでいます。
当社グループのGHG排出量削減は、「燃料転換」「生産・物流工程での省エネルギー」「生産効率の向上」「自社林の適切な管理によるCO₂吸収・固定」を柱としています。具体的には、黒液(紙の原料となるパルプ製造時に副生)、建築廃材、未利用材などのバイオマス燃料及びRPF等の廃棄物由来燃料の活用、省エネルギー設備の導入、モーダルシフトを含む物流効率化、国内森林の管理による森林吸収J-クレジットの創出等を進めています。これらの主要な背景には、炭素価格の上昇、非化石燃料及び再生可能エネルギーの調達可能性、持続可能な木質バイオマスの確保、生産設備更新の実行可能性、将来技術の利用可能性、並びに政策・制度の継続性があり、これらへの対応として前述の取組を進めています。
一方で、リスクとなり得るこれらの背景を投資の増大や費用の増加としてのみ捉えるのではなく、社会が脱化石燃料に移行する、バイオマス素材やリサイクル素材の利用が推進される環境配慮型製品市場が拡大するなどの動きを機会と捉え、森林資源を起点とした循環型事業の拡大を進めています。
気候変動対応に関する移行計画の概要
移行計画における主要施策と時間軸

(ロ) 企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得る気候関連のリスク及び機会の識別
当社グループは、ESG課題に関する意識の高まりを背景とした社会像を描き、1.5℃シナリオ及び4℃シナリオを用いて、2030年及び2050年時点での気候変動リスク・機会が財務計画に与える影響について、定性・定量評価を実施しています。
<リスク>1.5℃シナリオでは、炭素賦課金、排出量取引制度、石炭火力発電の使用禁止などの政策導入が想定され、炭素価格、エネルギー調達コスト、燃料転換・省エネ設備投資費用、原材料調達コストの増加が財務に影響を与えます。これに対し当社グループは、省エネルギーの継続・強化、バイオマス・廃棄物燃料等への転換、生産体制再編成による生産効率の向上、国産材の活用等により財務影響の低減を図ります。なお、2026年3月末時点での評価では、炭素価格、エネルギー調達コストの増加が与える影響については「中」となる見込みです。
4℃シナリオでは、政策導入が限定的である一方、気温上昇、降水パターンの変化、台風・豪雨等の激甚災害の増加、森林火災、原材料供給不安、物流寸断等の物理的要因が主要なリスクとなります。当社グループは、国内に生産拠点が分散していること、複数の木質資源調達国及び調達先を有していること、国産材や古紙を活用できる事業基盤を有していること等を踏まえ、供給継続性の維持・強化に取り組んでいます。
<機会>両シナリオを通じて、バイオマス燃料の需要増、環境配慮型製品市場の拡大、新たなバイオマス素材の上市、森林吸収クレジットの創出、国産材・古紙、木質由来CO₂の利活用、気候変動対応製品・災害対応製品の需要増等を主要な機会として認識しています。
2030年度時点の主要な気候関連リスク(2025年3月末時点の評価)
影響額 大:500億円以上、中:100億円以上500億円未満、小:100億円未満
2030年度時点の主要な気候関連の機会(2025年3月末時点の評価)
(ハ) 気候関連のリスク及び機会が集中している部分
当社グループでは、気候関連のリスク及び機会をバリューチェーン上の段階ごとに次のとおり整理しています。
バリューチェーンにおける気候関連リスク及び機会
(ニ) 気候関連のリスク及び機会が現在与えている影響
当報告期間においては、原燃料価格の上昇、物流費の上昇等が、当社グループの操業及び収益に影響を及ぼしています。
これに対し、当社グループは、省エネルギー対策の継続・強化、黒液を含むバイオマス燃料及び廃棄物燃料等への転換の加速、生産体制再編成による生産効率の向上に取り組んでいます。当社グループのGHG削減目標は、2030年まで、2013年度比で54%削減であり、2024年度は41%、2025年度は暫定値で43%まで削減が進んでいます。物流面では、鉄道や船舶を活用したモーダルシフト、共同輸送等により、物流工程におけるGHG排出量削減と供給体制の効率化に取り組んでいます。さらに、国内外の森林管理を通じて、自社林の適切な管理によるCO₂吸収・固定の取組を進めています。
一方、GHG排出削減の取組を通じて、製造時のGHG排出量が少ない低炭素なバイオマス素材・製品の販売拡大を進め、気候関連の機会を確実に獲得しています。
(ホ) 気候関連のリスク及び機会が将来与えると予想される影響
将来において、1.5℃シナリオでは、炭素価格及びエネルギー調達コストの増加、燃料転換・省エネ設備投資費用の増加、原材料調達コストの増加、認証材チップの調達コスト増加等が財務に影響を与える可能性があります。一方、バイオマス燃料を含む再生可能エネルギー、RPF・廃タイヤ等の廃棄物燃料、CNF・CMC等の新素材、森林吸収クレジット、国産材・古紙、木質由来CO₂の利活用、持続可能な航空燃料、環境配慮型製品等の需要拡大は、事業拡大の機会になると見込んでいます。
4℃シナリオでは、激甚災害の増加、気温上昇・降水パターンの変化、森林火災、原材料供給不安、取水する河川等の濁度上昇、品質維持の困難化及び物流寸断等が、調達、生産、物流及び供給継続性に影響を及ぼす可能性があります。一方、防災・災害対応製品、長期保存可能なアセプティック紙パック等の需要拡大は、事業機会になると見込んでいます。
(ヘ) 気候レジリエンス
当社グループは、2024年に実施した気候関連シナリオ分析を基礎として、2030年及び2050年の時間軸で気候レジリエンスを1.5℃シナリオ及び4℃シナリオを用いて評価しています。当該評価において考慮した重大な不確実性の領域は、炭素価格の水準、非化石燃料及び再生可能エネルギーの調達可能性、木質バイオマスの安定確保、将来技術の実装可能性、激甚災害の発生頻度・規模、水資源への影響、物流網への影響、並びに環境配慮型製品及び新素材の市場成長速度です。
1.5℃シナリオでは、炭素価格及びエネルギー調達コストの増加、燃料転換・省エネ設備投資費用の増加、原材料調達コストの増加等の移行要因が主要なリスクとなりますが、これらの影響を踏まえ、省エネルギーの継続・強化、非化石燃料への転換、国産材の活用、サプライヤーとの協働、生産効率の向上、BCP強化、持続可能な森林経営及び育種・増殖技術の活用により、移行リスク及び物理的リスクへの対応力を高めます。
当社グループは、移行リスクへの対応とGHG排出量削減の実効性を高めるため、省エネルギー設備の導入・更新やバイオマス燃料及び廃棄物燃料への転換を進めています。具体的には、日本製紙株式会社石巻工場において、高効率黒液回収ボイラー及び蒸気タービン・発電機を導入する設備投資を決定しており、既存の石炭ボイラーの停機を含め、約50万t-CO₂(製造に関わるGHG排出量)の削減を図る計画です。新設するボイラーは2028年度第4四半期より稼働を予定しています。
当社グループは移行リスクを認識していますが、バイオマス燃料や廃棄物燃料の需要増加、CNF・CMC等の新しいバイオマス素材や森林吸収クレジットの拡大、国産材・古紙、木質由来CO₂の利活用、環境配慮型製品等の機会が拡大すると捉えており、前述のリスク低減対策とともに実行することで、財務影響を抑制する能力を有していると評価しています。
4℃シナリオでは、激甚災害、原材料供給不安、物流寸断、森林火災、気温上昇・降水パターンの変化、取水水質の悪化等の物理的要因が主要なリスクとなる一方、防災・災害対応製品、長期保存可能なアセプティック紙パック、柔軟なBCP体制が確立したサプライヤーからの購入ニーズ等の需要拡大が機会になると評価しています。当社グループは、調達先の多様化、BCP強化等により事業継続への影響を低減し、一定のレジリエンスを有していると評価しています。
(イ) 概要
当社グループは、気候変動問題への対応を経営の重要課題の一つと位置付けています。2023年5月には、2030年度におけるGHG排出量削減目標(エネルギー事業分野を除く製品製造に関わるScope1及びScope2)を、2013年度比45%から54%削減に引き上げました。また、2050年度カーボンニュートラルを宣言し、省エネルギー、燃料転換、非化石エネルギーの利用拡大、森林によるCO₂吸収・固定、並びに木質資源を活用し、かつ低炭素な製品を提供する事業の拡大に取り組んでいます。
当社グループのGHG排出量削減は、「燃料転換」「生産・物流工程での省エネルギー」「生産効率の向上」「自社林の適切な管理によるCO₂吸収・固定」を柱としています。具体的には、黒液(紙の原料となるパルプ製造時に副生)、建築廃材、未利用材などのバイオマス燃料及びRPF等の廃棄物由来燃料の活用、省エネルギー設備の導入、モーダルシフトを含む物流効率化、国内森林の管理による森林吸収J-クレジットの創出等を進めています。これらの主要な背景には、炭素価格の上昇、非化石燃料及び再生可能エネルギーの調達可能性、持続可能な木質バイオマスの確保、生産設備更新の実行可能性、将来技術の利用可能性、並びに政策・制度の継続性があり、これらへの対応として前述の取組を進めています。
一方で、リスクとなり得るこれらの背景を投資の増大や費用の増加としてのみ捉えるのではなく、社会が脱化石燃料に移行する、バイオマス素材やリサイクル素材の利用が推進される環境配慮型製品市場が拡大するなどの動きを機会と捉え、森林資源を起点とした循環型事業の拡大を進めています。
気候変動対応に関する移行計画の概要
| 時間軸 | 主な目標 | 主な重点施策 | 関連する主な前提 |
| 短期~中期 | 2030年度 GHG排出量54%削減(2013年度比、エネルギー事業分野を除く製造に関わるScope1及びScope2) | 省エネルギー対策の継続・強化、前年同比1%以上の原単位改善、2030年度までの非化石エネルギー使用比率60%以上、生産体制の再編成、持続可能な森林管理によるCO₂吸収量の増大最大化、持続可能な森林経営と育種・増殖技術の活用 | 炭素価格の上昇、非化石燃料・再生可能エネルギーの調達可能性、持続可能な木質バイオマスの確保、生産設備更新の実行可能性、森林吸収量の算定・認証制度の継続性 |
| 長期 | 2050年度カーボンニュートラル | カーボンフリー燃料の導入、持続可能な森林経営と育種・増殖技術の活用によるCO₂吸収量の最大化による残余排出量の相殺 | 将来技術の実装可能性、エネルギー転換の進展、政策・制度の継続性、木質資源の安定確保 |
移行計画における主要施策と時間軸

(ロ) 企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得る気候関連のリスク及び機会の識別
当社グループは、ESG課題に関する意識の高まりを背景とした社会像を描き、1.5℃シナリオ及び4℃シナリオを用いて、2030年及び2050年時点での気候変動リスク・機会が財務計画に与える影響について、定性・定量評価を実施しています。
<リスク>1.5℃シナリオでは、炭素賦課金、排出量取引制度、石炭火力発電の使用禁止などの政策導入が想定され、炭素価格、エネルギー調達コスト、燃料転換・省エネ設備投資費用、原材料調達コストの増加が財務に影響を与えます。これに対し当社グループは、省エネルギーの継続・強化、バイオマス・廃棄物燃料等への転換、生産体制再編成による生産効率の向上、国産材の活用等により財務影響の低減を図ります。なお、2026年3月末時点での評価では、炭素価格、エネルギー調達コストの増加が与える影響については「中」となる見込みです。
4℃シナリオでは、政策導入が限定的である一方、気温上昇、降水パターンの変化、台風・豪雨等の激甚災害の増加、森林火災、原材料供給不安、物流寸断等の物理的要因が主要なリスクとなります。当社グループは、国内に生産拠点が分散していること、複数の木質資源調達国及び調達先を有していること、国産材や古紙を活用できる事業基盤を有していること等を踏まえ、供給継続性の維持・強化に取り組んでいます。
<機会>両シナリオを通じて、バイオマス燃料の需要増、環境配慮型製品市場の拡大、新たなバイオマス素材の上市、森林吸収クレジットの創出、国産材・古紙、木質由来CO₂の利活用、気候変動対応製品・災害対応製品の需要増等を主要な機会として認識しています。
2030年度時点の主要な気候関連リスク(2025年3月末時点の評価)
影響額 大:500億円以上、中:100億円以上500億円未満、小:100億円未満
| 要因 | 当社グループへの影響 | 財務影響1.5℃シナリオ | 財務影響 4℃シナリオ | 当社グループの主な対応 |
| 炭素価格、エネルギー調達コストが増加する | エネルギーコストの増加、収益性への影響 | 大 | 小 | 省エネルギーの継続・強化、非化石燃料への転換、石炭使用量削減 |
| 燃料転換・省エネの設備投資費用が増加する | 設備更新負担の増加、投資キャッシュ・フローへの影響 | 大 | 小 | 高効率設備の導入、黒液・廃棄物燃料等の活用、生産体制の見直し |
| 原材料調達コストが増加する | 木材チップ、古紙、燃料等の調達コスト増加 | 大 | 小 | 国産材・古紙の活用、調達先の多様化、サプライヤーとの協働 |
| 植林事業地の買収コストが増加する | 植林事業に係る投資負担の増加 | 大 | 小 | 国内外の社有林・植林事業の活用、育種・増殖技術の活用 |
| 認証材チップの調達コストが増加する | 認証材・環境配慮原料の調達コスト増加 | 中 | 中 | 認証材調達の強化、サプライヤーとの関係維持・強化 |
| 環境負荷低減のための開発コスト、設備投資費用等が増加する | 環境配慮型製品の開発・設備投資負担の増加 | 中 | 小~中 | 環境配慮型製品の拡大、事業ポートフォリオの見直し |
| 再生可能エネルギー以外の発電事業の売上が減少する | 発電事業の収益性への影響 | 大 | 小 | 再生可能エネルギー関連事業の強化、非化石エネルギーの活用 |
| 原材料調達・生産・製品輸送などの停止により生産量が減少し、納品の遅延・停止が発生する | 生産停止、供給遅延、売上機会の喪失 | 中~大 | 大 | 調達先の多様化、BCP強化、供給体制の維持・強化 |
| 調達・製造・物流コストが増加する | 原材料費、製造費、物流費の増加 | 中~大 | 大 | 調達先の分散、物流網の強靭化、モーダルシフト、共同輸送 |
| 取水する河川等の濁度上昇により生産停止が発生し、製品の納品遅延・停止が発生する | 製品品質の維持困難、操業停止、納品遅延 | 中 | 大 | 取水・浄化設備の管理強化、操業継続計画の見直し |
| 自社の植林資産に損失が生じる | 植林資産の価値低下、原材料調達への影響 | 中 | 大 | 自社林での防火・消火体制の強化、植林地の分散 |
| 原材料が調達困難となり、調達コストが増加する | 原材料の調達不安定化、調達コスト増加 | 中 | 大 | 持続可能な森林経営、代替調達、国産材・古紙の活用 |
| 代替資材の探索、技術開発コストが増加する | 研究開発費・代替原料調達費の増加 | 中 | 大 | 代替資材の探索、技術開発、品質対応の強化 |
| 品質の維持が困難になり販売量が減少、あるいは販売価格が低下する | 売上高及び利益率への影響 | 中 | 大 | 品質管理の強化、原材料調達の多角化、製品開発の高度化 |
2030年度時点の主要な気候関連の機会(2025年3月末時点の評価)
| 要因 | 当社グループの機会 | 当社グループの強み | 市場成長 1.5℃シナリオ | 市場成長 4℃シナリオ |
| 再生可能エネルギーの導入が進む | 発電施設設置場所の需要が増加する | 国内社有林・敷地等、国産材調達網 | 拡大 | 維持 |
| バイオマス燃料の需要が増加する | バイオマス燃料製造技術、非化石燃料調達網、既設ボイラーの活用 | 拡大 | 維持 | |
| RPF、廃タイヤなどの廃棄物系燃料の活用が進む | 廃棄物系燃料の調達・活用ノウハウ、既設ボイラーの活用 | 拡大 | 維持 | |
| 次世代自動車の普及が進む | 蓄電池が普及し、蓄電池用原材料の需要が増加する | CMC技術・生産設備 | 大きく拡大 | 拡大 |
| 自動車などの軽量化ニーズにより、CNFの需要が増加する | CNF技術・生産設備 | 大きく拡大 | 拡大 | |
| 炭素クレジット市場が活性化する | 森林吸収クレジットの需要が増加する | 国内社有林、エリートツリー苗事業、海外植林事業、森林管理技術、育種・増殖技術 | 大きく拡大 | 維持 |
| 資源供給国の政策強化で資源が入手困難となる | 国産材の需要が増加する | 国内社有林、国産材調達網、エリートツリー苗事業、ステークホルダーとの協働 | 拡大 | 維持 |
| 古紙の需要が増加する | 古紙調達網、未利用古紙、ステークホルダーとの協働 | 拡大 | 維持 | |
| カーボンリサイクルが進む | 森林による炭素固定と活用の需要が高まる | 樹木の育種・増殖技術、国内社有林、エリートツリー苗事業、海外植林事業 | 拡大 | 維持 |
| 木質由来CO₂を利用した化学原料の需要が高まる | バイオマス由来CO₂供給インフラ、化学的CO₂固定・利用技術 | 大きく拡大 | 維持 | |
| エネルギーの地産地消が進む | 小口の燃料需要が増加する | 国産材調達網、国内社有林 | 拡大 | 維持 |
| 製品の消費地が分散する | 各生産拠点から出荷対応すると同時に、物流時のCO₂排出を抑制した製品を販売する機会が増加する | 既存の物流網及び他社との連携実績 | 拡大 | 維持 |
| 環境配慮型製品の需要が増加する | 既存製品の紙化ニーズが高まるなど、バイオマス素材の需要が増加する | 木質バイオマス素材開発技術(CNF、紙製包装材料、液体容器、機能性段ボール、バイオコンポジットなど) | 大きく拡大 | 拡大 |
| リグニン製品の需要が増加する | リグニン抽出・活用技術、未利用古紙リサイクル技術 | 大きく拡大 | 拡大 | |
| 持続可能な森林由来の原料を使用した紙の需要が増加する | 森林認証材の調達網実績、優良サプライヤーとの信頼関係、持続可能な自社林経営 | 拡大 | 拡大 | |
| 畜産業由来GHG排出量を抑制する製品の需要が増加する | セルロース材料利用技術 | 拡大 | 維持 | |
| 環境負荷の低いハロゲンフリーの樹脂の需要が増加する | 機能性コーティング樹脂「アウローレン」 | 拡大 | 拡大 | |
| 持続可能な航空燃料の需要が増加する | 木質由来バイオエタノール製造技術、複数のクラフトパルプ製造設備 | 拡大 | 拡大 | |
| 激甚災害の増加 | 柔軟なBCP体制が確立したサプライヤーからの購入ニーズが高まる | 各種災害等に対応可能なBCP体制 | 拡大 | 大きく拡大 |
| 国産材の需要が増加する | 国内社有林、エリートツリー苗事業、古紙調達網 | 大きく拡大 | 大きく拡大 | |
| 国内の再造林面積増により、エリートツリー苗の需要が増加する | 国産材調達網、森林管理技術、育種・増殖技術 | 大きく拡大 | 大きく拡大 | |
| 国内廃棄物系燃料及びバイオマス燃料の需要が増加する | 非化石燃料調達網、ステークホルダーとの協働、未利用古紙リサイクル技術 | 拡大 | 拡大 | |
| コンクリート混和材などの需要が増加する | コンクリート用混和材(フライアッシュ)技術 | 拡大 | 拡大 | |
| 長期保存可能なアセプティック紙パックの需要が増加する | トータルシステムサプライヤー | 拡大 | 拡大 | |
| 気温の上昇・降水パターンの変化 | 環境ストレス耐性樹木の需要が増加する | 育種・増殖技術 | 拡大 | 拡大 |
(ハ) 気候関連のリスク及び機会が集中している部分
当社グループでは、気候関連のリスク及び機会をバリューチェーン上の段階ごとに次のとおり整理しています。
バリューチェーンにおける気候関連リスク及び機会
| 工程 | リスク | 機会 |
| 調達(上流) | ・資源供給国の政策強化、炭素価格上昇による調達コスト(原材料・認証材チップ等)の増加 ・森林災害、気温上昇・降水パターンの変化による木材チップ・バイオマス燃料等の調達不安定化 | ・国産材・古紙の活用、持続可能な森林経営の推進による調達リスクの低減 ・認証材調達の強化、サプライヤーとの連携を通じた環境価値の向上 |
| 生産(直接操業) | ・炭素価格およびエネルギー調達コストの増加による操業コスト上昇 ・燃料転換・省エネ設備投資費用の増加による収益性への影響 | ・省エネルギーの継続・強化による移行リスク低減 ・高効率設備の導入による収益性改善 ・バイオマス・廃棄物燃料等の活用 ・生産体制再編成による生産効率向上 |
| 物流・販売(下流) | ・激甚災害の増加、異常気象に伴う物流寸断による供給遅延 ・輸送コストの上昇、物流網の弱体化 | ・物流網の強靭化による供給継続性の向上 ・モーダルシフト、共同輸送の推進による物流時のCO₂排出抑制 |
| 製品・市場 | ・顧客や社会の脱炭素要請に対応できない場合の競争力低下 ・環境配慮型製品への需要変化に対応するための開発・投資負担の増加 | ・環境配慮型製品や気候・災害対応製品の需要増加 ・次世代自動車普及、炭素クレジット市場活性化、カーボンリサイクルの進展 ・木質資源活用製品(CNF、紙製包装材料、リグニン製品、バイオエタノール等)による市場機会の獲得・拡大 |
| 森林・吸収源 | ・気候変動による森林災害や生長環境の変化による植林資産・木質資源調達への影響 | ・国内社有林、エリートツリー苗事業、海外植林事業の推進 ・森林管理技術、育種・増殖技術によるCO₂吸収・固定量の増大 ・カーボンクレジット創出と販売 |
(ニ) 気候関連のリスク及び機会が現在与えている影響
当報告期間においては、原燃料価格の上昇、物流費の上昇等が、当社グループの操業及び収益に影響を及ぼしています。
これに対し、当社グループは、省エネルギー対策の継続・強化、黒液を含むバイオマス燃料及び廃棄物燃料等への転換の加速、生産体制再編成による生産効率の向上に取り組んでいます。当社グループのGHG削減目標は、2030年まで、2013年度比で54%削減であり、2024年度は41%、2025年度は暫定値で43%まで削減が進んでいます。物流面では、鉄道や船舶を活用したモーダルシフト、共同輸送等により、物流工程におけるGHG排出量削減と供給体制の効率化に取り組んでいます。さらに、国内外の森林管理を通じて、自社林の適切な管理によるCO₂吸収・固定の取組を進めています。
一方、GHG排出削減の取組を通じて、製造時のGHG排出量が少ない低炭素なバイオマス素材・製品の販売拡大を進め、気候関連の機会を確実に獲得しています。
(ホ) 気候関連のリスク及び機会が将来与えると予想される影響
将来において、1.5℃シナリオでは、炭素価格及びエネルギー調達コストの増加、燃料転換・省エネ設備投資費用の増加、原材料調達コストの増加、認証材チップの調達コスト増加等が財務に影響を与える可能性があります。一方、バイオマス燃料を含む再生可能エネルギー、RPF・廃タイヤ等の廃棄物燃料、CNF・CMC等の新素材、森林吸収クレジット、国産材・古紙、木質由来CO₂の利活用、持続可能な航空燃料、環境配慮型製品等の需要拡大は、事業拡大の機会になると見込んでいます。
4℃シナリオでは、激甚災害の増加、気温上昇・降水パターンの変化、森林火災、原材料供給不安、取水する河川等の濁度上昇、品質維持の困難化及び物流寸断等が、調達、生産、物流及び供給継続性に影響を及ぼす可能性があります。一方、防災・災害対応製品、長期保存可能なアセプティック紙パック等の需要拡大は、事業機会になると見込んでいます。
(ヘ) 気候レジリエンス
当社グループは、2024年に実施した気候関連シナリオ分析を基礎として、2030年及び2050年の時間軸で気候レジリエンスを1.5℃シナリオ及び4℃シナリオを用いて評価しています。当該評価において考慮した重大な不確実性の領域は、炭素価格の水準、非化石燃料及び再生可能エネルギーの調達可能性、木質バイオマスの安定確保、将来技術の実装可能性、激甚災害の発生頻度・規模、水資源への影響、物流網への影響、並びに環境配慮型製品及び新素材の市場成長速度です。
1.5℃シナリオでは、炭素価格及びエネルギー調達コストの増加、燃料転換・省エネ設備投資費用の増加、原材料調達コストの増加等の移行要因が主要なリスクとなりますが、これらの影響を踏まえ、省エネルギーの継続・強化、非化石燃料への転換、国産材の活用、サプライヤーとの協働、生産効率の向上、BCP強化、持続可能な森林経営及び育種・増殖技術の活用により、移行リスク及び物理的リスクへの対応力を高めます。
当社グループは、移行リスクへの対応とGHG排出量削減の実効性を高めるため、省エネルギー設備の導入・更新やバイオマス燃料及び廃棄物燃料への転換を進めています。具体的には、日本製紙株式会社石巻工場において、高効率黒液回収ボイラー及び蒸気タービン・発電機を導入する設備投資を決定しており、既存の石炭ボイラーの停機を含め、約50万t-CO₂(製造に関わるGHG排出量)の削減を図る計画です。新設するボイラーは2028年度第4四半期より稼働を予定しています。
当社グループは移行リスクを認識していますが、バイオマス燃料や廃棄物燃料の需要増加、CNF・CMC等の新しいバイオマス素材や森林吸収クレジットの拡大、国産材・古紙、木質由来CO₂の利活用、環境配慮型製品等の機会が拡大すると捉えており、前述のリスク低減対策とともに実行することで、財務影響を抑制する能力を有していると評価しています。
4℃シナリオでは、激甚災害、原材料供給不安、物流寸断、森林火災、気温上昇・降水パターンの変化、取水水質の悪化等の物理的要因が主要なリスクとなる一方、防災・災害対応製品、長期保存可能なアセプティック紙パック、柔軟なBCP体制が確立したサプライヤーからの購入ニーズ等の需要拡大が機会になると評価しています。当社グループは、調達先の多様化、BCP強化等により事業継続への影響を低減し、一定のレジリエンスを有していると評価しています。