有価証券報告書-第17期(2025/01/01-2025/12/31)
(ⅱ)戦略
地球温暖化による水資源への影響は、飲料製品の安定供給にも影響を及ぼすと考えられます。また、資源の枯渇により、生産コストの増加も大きなリスクとなる可能性があることから、当社グループでは、気候変動を事業継続の上で重要な課題の一つと認識しています。このことから、地球温暖化の緩和を目指す政府や地方自治体の環境取り組みと連携するとともに、バリューチェーン全体での環境負荷低減を目指し、グループ一体となって気候変動対策に取り組んでいます。
また、グローバルなサステナビリティの潮流として、生物多様性の損失を食い止め、自然資本を回復軌道に乗せることを目指す「ネイチャー・ポジティブ」への取り組みが重要視されています。当社グループも原料調達や工場の操業等において自然資本に依存していることから、事業継続性の観点からもネイチャー・ポジティブへの取り組みが必要と考えています。
■気候変動と自然資本に関するシナリオ
当社グループでは、気候変動及び自然資本に関する将来的なリスクと機会を検討するにあたり、以下のシナリオを前提にしています。
気候変動に関しては、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によるRCP2.6、RCP8.5及び国際エネルギー機関(IEA)によるシナリオ等をベースに、1.5℃移行シナリオと3.0℃/4.0℃物理シナリオを設定しました。
自然資本に関しては、TNFDが提示する4つのシナリオを基に解釈を加え、将来的なリスクと機会の評価及び戦略のレジリエンスを検証することを目的として、物理リスク及び移行リスクが最も深刻に顕在化すると考えられるシナリオを設定しました。
■自然関連の依存・インパクトの特定プロセス
自然関連の依存・インパクトの特定に関し、シナリオ分析の上で、当社グループが自然に影響を与える負荷(圧力)及び当社グループの事業が依存する生態系サービスを明らかにしています。
自然関連の依存については、オンラインツールENCORE(Exploring Natural Capital Opportunities, Risks and Exposure)を活用し、俯瞰的に把握しています。
自然関連のインパクトについては、直接操業に関して、当社グループの主要事業について事業活動による自然へのインパクトを俯瞰的に把握しています。特に生産拠点が依存する自然状態を評価するため、流域の利用可能な水資源量と水質を解析し、優先拠点を特定しています。バリューチェーン上流では、当社グループの主要原料とそれぞれの主要な調達国について、自然へのインパクトが大きい原材料を特定し、主要な調達国における環境及び人権インパクト、自然の状態を評価しました。その上で、原料のインパクトに関するヒートマップを作成し、評価結果を可視化しました。これらの評価結果により、一般的にリスクの高い原材料・調達先(国)の組み合わせについて把握しました。
■リスクと機会の一覧
設定したシナリオのもと、気候変動及び自然資本に関する主なリスクと機会の洗い出しと対応策の整理を行いました。
<リスクと機会が発現する期間の定義>リスクと機会が発現する期間を以下のように区分しています。
中期については「環境目標2030」、長期については「環境ビジョン2050」に基づく期間設定としています。
短期:評価時点から1年以内
中期:2030年までの期間
長期:2050年までの期間
<財務インパクト評価の基準>全社的リスク管理と評価基準を統一し、財務インパクトが中~大と想定しているものを一覧化しています。
シナリオ分析を通じて特定したリスクと機会の中でも「周辺地域の過剰取水や干ばつの増加に伴う水不足を起因とした操業停止」、「農作物の収量減・栽培適地移動等による調達の不安定化・調達コスト増加」、「炭素税の導入によるコストの増加」の3点については、特に財務インパクトが大きくなる可能性があることを認識しています。
■テーマ別取り組み
[水の取り組み]
水は当社グループにとって最も重要な原料の一つであり、かつ、貴重な共有資源であるため、水に関するリスク評価に基づきグループの事業活動や地域社会、生態系へのインパクトを把握することは持続的な事業成長のために不可欠です。
当社グループでは、地球の環境と開発の問題に関するグローバルな非営利研究団体である世界資源研究所(World Resources Institute)が開発したAqueduct Baseline Water Stress及び2040 Water Stress、世界最大規模の自然環境保護団体である世界自然保護基金(WWF)が開発したWater Risk Filterを使用して、当社グループの製品を製造する自社工場を対象に、水の供給のサステナビリティに関するリスク評価を実施しています。
リスク評価の結果に基づいて1次選定した拠点に対して、水マネジメント(取水と節水)及び地域との共生の観点から各拠点に対して質問票による個別評価を行い、リスク低減対策の状況把握と進捗管理を行っています。
また、「環境目標2030」の達成に向け、バリューチェーン上の各拠点の属する流域における自然環境の保全・再生活動等、水に関わる様々な取り組みをグローバルに推進しています。日本においては、2003年から水を育む森を育てる「天然水の森」の活動を進めており、2025年12月末時点では「天然水の森」を全国16都府県26か所、約1万2千ヘクタールを超える規模まで拡大し、国内工場で汲み上げる地下水量の2倍以上の水を涵養する森林面積の整備活動を進めています。「サントリー 天然水の森」うち8か所(合計3,338ヘクタール)は、2030年までに自国の陸域・海域の少なくとも30%を保全・保護する「30by30」目標達成に向けて環境省が推進する「自然共生サイト」に認定されています。海外でも、事業を展開する世界各地で水源涵養・保全活動を展開しており、現在7か国で取り組みを進めています。
また、子どもたちが自然の素晴らしさを感じ、水や、水を育む森の大切さに気づき、未来に水を引き継ぐために何ができるのかを考える、次世代環境プログラム「水育」を実施しています。2025年はオーストラリアで新たに開始し、世界9か国で展開しています。2024年には、水の啓発と安全な水の提供に関して、2030年までの展開目標人数を当初の100万人から500万人に引き上げました。
さらに、当社グループでは、水の保全やスチュワードシップ(管理する責任)をグローバルに推進する国際標準の権威ある機関「Alliance for Water Stewardship(AWS)」によるAWS認証を、「サントリー天然水 奥大山ブナの森工場」(鳥取県)、「サントリー九州熊本工場」(熊本県)、「サントリー天然水 南アルプス白州工場」(山梨県)及び「サントリー天然水 北アルプス信濃の森工場」(長野県)の4工場で取得しています。AWS認証のレベルの中で最高位にあたる「Platinum」を、2023年には「サントリー九州熊本工場」、2025年には「サントリー天然水 奥大山ブナの森工場」、「サントリー天然水 南アルプス白州工場」及び「サントリー天然水 北アルプス信濃の森工場」で取得しました。2021年にはAWSと連携協定を締結し、日本で初めて同機関のメンバーシップ企業となりました。2025年には国内のAWSメンバー企業4社と共にワーキンググループ「ジャパン・ウォータースチュワードシップ(JWS)」を始動させ、日本における水のサステナビリティ推進のリーダーシップを執るべく様々な取り組みを進めています。
また、自然課題に対して関連するステークホルダーを巻き込んで効果的に取り組むランドスケープアプローチの一環として、2025年には当社を含む6組織による産学金協働で熊本の水循環の保全を目的とした「熊本ウォーターポジティブ・アクション」を始動させました。雨庭や冬水たんぼ等のグリーンインフラを用いて、地下水の涵養とともに内水・外水氾濫の軽減、ヒートアイランド対策、景観や生物多様性の向上を推進しています。
[容器・包装の取り組み]
使用済みプラスチックの不適切な取扱いによって引き起こされる環境汚染や廃棄時のGHG排出量の増加等は大きな社会問題になっており、プラスチック関連課税によるコスト増加等のリスクがある一方で、新規技術の開発・導入により石油使用量の削減が可能となる機会があります。
当社グループでは、循環型社会の実現に向けて、「プラスチック基本方針」のもと、“2030年までに、グローバルで使用する全てのペットボトルの素材を、リサイクル素材あるいは植物由来素材等100%に切り替え、化石由来原料の新規使用ゼロの実現を目指す”という「ペットボトルの100%サステナブル化」を目標として掲げて活動を行っています。
ペットボトルのメカニカルリサイクルの推進に加え、更にGHG排出量を低減する世界初の「FtoPダイレクトリサイクル技術」を開発する等、長年にわたって技術革新にも取り組み、使用済みペットボトルを新たなペットボトルに生まれ変わらせる、「ボトルtoボトル」水平リサイクルを積極的に推進しています。
[GHG排出量削減の取り組み]
当社グループでは、地球温暖化が当社グループの飲料事業の根幹である水資源や原料に影響を及ぼすことから、GHG排出量削減を事業継続の上で重要な課題の一つと認識しています。
当社グループは、2050年までにバリューチェーン全体でGHG排出を実質ゼロにすることを「環境ビジョン2050」で、2030年までにGHG排出を2019年比で30%削減することを「環境目標2030」で掲げています。
Scope1、2の取り組みとして、2021年には、当社グループ国内初のCO2排出量実質ゼロ工場として「サントリー天然水 北アルプス信濃の森工場」が稼働を開始しました。また、現在、日本・米州・欧州の飲料・食品及び酒類事業に関わる全ての自社生産研究拠点で購入する電力に100%再生可能エネルギーを利用しています。更に2025年には、「サントリー天然水 南アルプス白州工場」及び「サントリー白州蒸溜所」へのグリーン水素導入に向けた日本最大のP2G(Power to Gas)システムによるエネルギー需要転換実証を開始しました。
Scope3においては、前記「容器・包装の取り組み」や後記「原料の取り組み」に記載のとおり、原料の生産工程から製品の製造、そしてお客様の手に製品を届けるまでのバリューチェーン全体での脱炭素化を目指し、原材料・製造・物流に関するビジネスパートナーやお客様等様々なステークホルダーと連携し、グループ一体となってGHG排出量の削減の取り組みを推進しています。
[原料の取り組み]
当社グループの製品に不可欠な農作物やその他原料は、気候変動による平均気温の上昇や、干ばつ、洪水といった異常気象の発生により、収量の変動、栽培適域の移動等、当社グループの生産活動に大きな影響を及ぼすものがあります。
原料の安定調達のための取り組みとして、原料産地別に気候変動による将来収量予測等の影響評価を行い、戦略を策定し、原料由来のGHG排出量削減や気候変動の緩和・適応効果が期待される再生農業を農家等と連携して試験的に実施しています。現在、当社グループサプライチェーンにおいて、持続可能な農業に向けた取り組みを9つの産地で実施しています。
なお、主要原料に関する人権の尊重への取り組みについては、後記「人権の尊重への取り組み」に記載のとおりです。
[人権の尊重への取り組み]
当社グループは、人権に配慮した活動を推進するため、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)」等の枠組みに沿った「サントリーグループ人権方針」のもと、人権デュー・ディリジェンスの活動をグローバルに推進してきました。2024年には、更なる人権尊重に関する取り組みを進めるべく「サントリーグループ人権方針」を改定し、事業展開国を踏まえた9か国語で公表し、役員及び従業員に研修、e-ラーニング、イントラネット等を通じて周知しています。
また、サプライチェーンにおける人権尊重に関しては、「サントリーグループサステナブル調達基本方針」及び「サントリーグループ・パートナーガイドライン」等に則り、Sedexのプラットフォームを通じて取引先と連携して、人権・労働基準・環境等の社会的責任にも配慮した調達活動を推進しています。原料における人権リスクについては、グローバルリスクコンサルティング会社のVerisk Maplecroft社と連携し、一般的な国・業界データを用いて自社が購買する主要原料における潜在リスク評価を実施しました。評価の結果、潜在リスクが特定されたコーヒー豆については、商社や現地パートナー企業等と連携して調達先の農家を支援するプログラムを推進しています。
地球温暖化による水資源への影響は、飲料製品の安定供給にも影響を及ぼすと考えられます。また、資源の枯渇により、生産コストの増加も大きなリスクとなる可能性があることから、当社グループでは、気候変動を事業継続の上で重要な課題の一つと認識しています。このことから、地球温暖化の緩和を目指す政府や地方自治体の環境取り組みと連携するとともに、バリューチェーン全体での環境負荷低減を目指し、グループ一体となって気候変動対策に取り組んでいます。
また、グローバルなサステナビリティの潮流として、生物多様性の損失を食い止め、自然資本を回復軌道に乗せることを目指す「ネイチャー・ポジティブ」への取り組みが重要視されています。当社グループも原料調達や工場の操業等において自然資本に依存していることから、事業継続性の観点からもネイチャー・ポジティブへの取り組みが必要と考えています。
■気候変動と自然資本に関するシナリオ
当社グループでは、気候変動及び自然資本に関する将来的なリスクと機会を検討するにあたり、以下のシナリオを前提にしています。
気候変動に関しては、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によるRCP2.6、RCP8.5及び国際エネルギー機関(IEA)によるシナリオ等をベースに、1.5℃移行シナリオと3.0℃/4.0℃物理シナリオを設定しました。
自然資本に関しては、TNFDが提示する4つのシナリオを基に解釈を加え、将来的なリスクと機会の評価及び戦略のレジリエンスを検証することを目的として、物理リスク及び移行リスクが最も深刻に顕在化すると考えられるシナリオを設定しました。
■自然関連の依存・インパクトの特定プロセス
自然関連の依存・インパクトの特定に関し、シナリオ分析の上で、当社グループが自然に影響を与える負荷(圧力)及び当社グループの事業が依存する生態系サービスを明らかにしています。
自然関連の依存については、オンラインツールENCORE(Exploring Natural Capital Opportunities, Risks and Exposure)を活用し、俯瞰的に把握しています。
自然関連のインパクトについては、直接操業に関して、当社グループの主要事業について事業活動による自然へのインパクトを俯瞰的に把握しています。特に生産拠点が依存する自然状態を評価するため、流域の利用可能な水資源量と水質を解析し、優先拠点を特定しています。バリューチェーン上流では、当社グループの主要原料とそれぞれの主要な調達国について、自然へのインパクトが大きい原材料を特定し、主要な調達国における環境及び人権インパクト、自然の状態を評価しました。その上で、原料のインパクトに関するヒートマップを作成し、評価結果を可視化しました。これらの評価結果により、一般的にリスクの高い原材料・調達先(国)の組み合わせについて把握しました。
■リスクと機会の一覧
設定したシナリオのもと、気候変動及び自然資本に関する主なリスクと機会の洗い出しと対応策の整理を行いました。
<リスクと機会が発現する期間の定義>リスクと機会が発現する期間を以下のように区分しています。
中期については「環境目標2030」、長期については「環境ビジョン2050」に基づく期間設定としています。
短期:評価時点から1年以内
中期:2030年までの期間
長期:2050年までの期間
<財務インパクト評価の基準>全社的リスク管理と評価基準を統一し、財務インパクトが中~大と想定しているものを一覧化しています。
| カテゴリ | サブ カテゴリ | 主なリスクと 機会 | 自然資本・気候変動との関係性 | バリュー チェーン | 財務 インパクト 評価 | リスク 顕在化時期 | 対応策 |
| 物理 | 急性/ 慢性 | 異常気象(洪水・高潮・暴風等)による操業停止 | 気候変動 | 直接操業 | 中~大 | 短~中 | ・全ての自社生産拠点のリスク評価実施 ・事業継続計画(BCP)対応 |
| 物理 | 慢性 | 周辺地域の過剰取水や干ばつの増加に伴う水不足を起因とした操業停止 | 自然資本 気候変動 | 直接操業 | 中~大 | 中~長 | ・水リスク評価に基づいた管理の徹底 ・水源涵養活動により使用する水の100%以上を還元する目標を掲げて取り組み実施 |
| 物理 | 慢性 | 周辺地域の水質悪化による品質管理や排水規制の対応コスト増加 | 自然資本 | 直接操業 | 中~大 | 中~長 | ・排水の水質モニタリング管理 |
| 物理 | 急性/ 慢性 | 農作物の収量減・栽培適地移動等による調達の不安定化・調達コスト増加 | 自然資本 気候変動 | 上流 | 中~大 | 中~長 | ・再生農業等の持続可能な農業の推進 ・気候変動に強い育種の研究開発 |
| 移行 | 政策 | 炭素税の導入によるコストの増加 | 気候変動 | 上流/直接操業 | 中~大 | 中~長 | ・「環境ビジョン2050」及び「環境目標2030」の達成に向けた施策の遂行 |
| 移行 | 政策 | 原料や容器包装等に関する規制対応コスト増加 | 自然資本 気候変動 | バリューチェーン全体 | 中~大 | 中~長 | ・サステナブル調達や容器包装の資源循環の取り組み |
| 移行 | 市場 | 持続可能な商品の消費者嗜好変化への対応遅れによる売上減少 | 自然資本 気候変動 | 直接操業 | 中~大 | 中~長 | ・科学的データに基づく自然移行計画及び気候移行計画の推進 ・消費者調査の継続的実施 |
| 移行 | 評判 | 環境・社会課題に関するNGO・メディアの批判による売上減少 | 自然資本 気候変動 | 直接操業 | 大 | 中~長 | ・科学的データに基づく自然移行計画及び気候移行計画の推進 ・地域コミュニティをはじめとするステークホルダーのエンゲージメント ・情報開示の継続 |
| 機会 | 水資源を大切にする企業姿勢が社会に認知されることによるブランド価値の向上 | 自然資本 気候変動 | 下流 | 大 | 短~長 | ・科学的データに基づく水源涵養活動、工場での節水・水質管理の取り組み ・水に関する啓発プログラム「水育」等の継続・強化及び社外への情報発信 | |
| 機会 | 新たな市場・収益機会の獲得による売上増加 | 自然資本 気候変動 | 下流 | 大 | 中~長 | ・基礎研究開発の推進社内ベンチャー制度の運営 | |
シナリオ分析を通じて特定したリスクと機会の中でも「周辺地域の過剰取水や干ばつの増加に伴う水不足を起因とした操業停止」、「農作物の収量減・栽培適地移動等による調達の不安定化・調達コスト増加」、「炭素税の導入によるコストの増加」の3点については、特に財務インパクトが大きくなる可能性があることを認識しています。
■テーマ別取り組み
[水の取り組み]
水は当社グループにとって最も重要な原料の一つであり、かつ、貴重な共有資源であるため、水に関するリスク評価に基づきグループの事業活動や地域社会、生態系へのインパクトを把握することは持続的な事業成長のために不可欠です。
当社グループでは、地球の環境と開発の問題に関するグローバルな非営利研究団体である世界資源研究所(World Resources Institute)が開発したAqueduct Baseline Water Stress及び2040 Water Stress、世界最大規模の自然環境保護団体である世界自然保護基金(WWF)が開発したWater Risk Filterを使用して、当社グループの製品を製造する自社工場を対象に、水の供給のサステナビリティに関するリスク評価を実施しています。
リスク評価の結果に基づいて1次選定した拠点に対して、水マネジメント(取水と節水)及び地域との共生の観点から各拠点に対して質問票による個別評価を行い、リスク低減対策の状況把握と進捗管理を行っています。
また、「環境目標2030」の達成に向け、バリューチェーン上の各拠点の属する流域における自然環境の保全・再生活動等、水に関わる様々な取り組みをグローバルに推進しています。日本においては、2003年から水を育む森を育てる「天然水の森」の活動を進めており、2025年12月末時点では「天然水の森」を全国16都府県26か所、約1万2千ヘクタールを超える規模まで拡大し、国内工場で汲み上げる地下水量の2倍以上の水を涵養する森林面積の整備活動を進めています。「サントリー 天然水の森」うち8か所(合計3,338ヘクタール)は、2030年までに自国の陸域・海域の少なくとも30%を保全・保護する「30by30」目標達成に向けて環境省が推進する「自然共生サイト」に認定されています。海外でも、事業を展開する世界各地で水源涵養・保全活動を展開しており、現在7か国で取り組みを進めています。
また、子どもたちが自然の素晴らしさを感じ、水や、水を育む森の大切さに気づき、未来に水を引き継ぐために何ができるのかを考える、次世代環境プログラム「水育」を実施しています。2025年はオーストラリアで新たに開始し、世界9か国で展開しています。2024年には、水の啓発と安全な水の提供に関して、2030年までの展開目標人数を当初の100万人から500万人に引き上げました。
さらに、当社グループでは、水の保全やスチュワードシップ(管理する責任)をグローバルに推進する国際標準の権威ある機関「Alliance for Water Stewardship(AWS)」によるAWS認証を、「サントリー天然水 奥大山ブナの森工場」(鳥取県)、「サントリー九州熊本工場」(熊本県)、「サントリー天然水 南アルプス白州工場」(山梨県)及び「サントリー天然水 北アルプス信濃の森工場」(長野県)の4工場で取得しています。AWS認証のレベルの中で最高位にあたる「Platinum」を、2023年には「サントリー九州熊本工場」、2025年には「サントリー天然水 奥大山ブナの森工場」、「サントリー天然水 南アルプス白州工場」及び「サントリー天然水 北アルプス信濃の森工場」で取得しました。2021年にはAWSと連携協定を締結し、日本で初めて同機関のメンバーシップ企業となりました。2025年には国内のAWSメンバー企業4社と共にワーキンググループ「ジャパン・ウォータースチュワードシップ(JWS)」を始動させ、日本における水のサステナビリティ推進のリーダーシップを執るべく様々な取り組みを進めています。
また、自然課題に対して関連するステークホルダーを巻き込んで効果的に取り組むランドスケープアプローチの一環として、2025年には当社を含む6組織による産学金協働で熊本の水循環の保全を目的とした「熊本ウォーターポジティブ・アクション」を始動させました。雨庭や冬水たんぼ等のグリーンインフラを用いて、地下水の涵養とともに内水・外水氾濫の軽減、ヒートアイランド対策、景観や生物多様性の向上を推進しています。
[容器・包装の取り組み]
使用済みプラスチックの不適切な取扱いによって引き起こされる環境汚染や廃棄時のGHG排出量の増加等は大きな社会問題になっており、プラスチック関連課税によるコスト増加等のリスクがある一方で、新規技術の開発・導入により石油使用量の削減が可能となる機会があります。
当社グループでは、循環型社会の実現に向けて、「プラスチック基本方針」のもと、“2030年までに、グローバルで使用する全てのペットボトルの素材を、リサイクル素材あるいは植物由来素材等100%に切り替え、化石由来原料の新規使用ゼロの実現を目指す”という「ペットボトルの100%サステナブル化」を目標として掲げて活動を行っています。
ペットボトルのメカニカルリサイクルの推進に加え、更にGHG排出量を低減する世界初の「FtoPダイレクトリサイクル技術」を開発する等、長年にわたって技術革新にも取り組み、使用済みペットボトルを新たなペットボトルに生まれ変わらせる、「ボトルtoボトル」水平リサイクルを積極的に推進しています。
[GHG排出量削減の取り組み]
当社グループでは、地球温暖化が当社グループの飲料事業の根幹である水資源や原料に影響を及ぼすことから、GHG排出量削減を事業継続の上で重要な課題の一つと認識しています。
当社グループは、2050年までにバリューチェーン全体でGHG排出を実質ゼロにすることを「環境ビジョン2050」で、2030年までにGHG排出を2019年比で30%削減することを「環境目標2030」で掲げています。
Scope1、2の取り組みとして、2021年には、当社グループ国内初のCO2排出量実質ゼロ工場として「サントリー天然水 北アルプス信濃の森工場」が稼働を開始しました。また、現在、日本・米州・欧州の飲料・食品及び酒類事業に関わる全ての自社生産研究拠点で購入する電力に100%再生可能エネルギーを利用しています。更に2025年には、「サントリー天然水 南アルプス白州工場」及び「サントリー白州蒸溜所」へのグリーン水素導入に向けた日本最大のP2G(Power to Gas)システムによるエネルギー需要転換実証を開始しました。
Scope3においては、前記「容器・包装の取り組み」や後記「原料の取り組み」に記載のとおり、原料の生産工程から製品の製造、そしてお客様の手に製品を届けるまでのバリューチェーン全体での脱炭素化を目指し、原材料・製造・物流に関するビジネスパートナーやお客様等様々なステークホルダーと連携し、グループ一体となってGHG排出量の削減の取り組みを推進しています。
[原料の取り組み]
当社グループの製品に不可欠な農作物やその他原料は、気候変動による平均気温の上昇や、干ばつ、洪水といった異常気象の発生により、収量の変動、栽培適域の移動等、当社グループの生産活動に大きな影響を及ぼすものがあります。
原料の安定調達のための取り組みとして、原料産地別に気候変動による将来収量予測等の影響評価を行い、戦略を策定し、原料由来のGHG排出量削減や気候変動の緩和・適応効果が期待される再生農業を農家等と連携して試験的に実施しています。現在、当社グループサプライチェーンにおいて、持続可能な農業に向けた取り組みを9つの産地で実施しています。
なお、主要原料に関する人権の尊重への取り組みについては、後記「人権の尊重への取り組み」に記載のとおりです。
[人権の尊重への取り組み]
当社グループは、人権に配慮した活動を推進するため、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)」等の枠組みに沿った「サントリーグループ人権方針」のもと、人権デュー・ディリジェンスの活動をグローバルに推進してきました。2024年には、更なる人権尊重に関する取り組みを進めるべく「サントリーグループ人権方針」を改定し、事業展開国を踏まえた9か国語で公表し、役員及び従業員に研修、e-ラーニング、イントラネット等を通じて周知しています。
また、サプライチェーンにおける人権尊重に関しては、「サントリーグループサステナブル調達基本方針」及び「サントリーグループ・パートナーガイドライン」等に則り、Sedexのプラットフォームを通じて取引先と連携して、人権・労働基準・環境等の社会的責任にも配慮した調達活動を推進しています。原料における人権リスクについては、グローバルリスクコンサルティング会社のVerisk Maplecroft社と連携し、一般的な国・業界データを用いて自社が購買する主要原料における潜在リスク評価を実施しました。評価の結果、潜在リスクが特定されたコーヒー豆については、商社や現地パートナー企業等と連携して調達先の農家を支援するプログラムを推進しています。