有価証券報告書-第21期(2025/01/01-2025/12/31)
有報資料
(1)会社の経営の基本方針
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループは、元米国アムジェン社(注1)本社副社長で、同社の日本法人であるアムジェン株式会社の創業期から約12年間社長を務めた吉田文紀が、2005年3月に設立した医薬品企業です。
経営理念は「共創・共生」(共に創り、共に生きる)で表され、患者さんを中心として医師、科学者、行政、資本提供者を「共創・共生」の経営理念で結び、アンメット・メディカル・ニーズ(Unmet Medical Needs)(注2)に応えていくことにより、社会的責任及び経営責任を果たすことを事業目的としています。
当社グループは、極めて医療上のニーズは高いものの、新薬の開発が遅れている空白の治療領域をビジネスチャンスと捉え、特に、高い専門性が求められ難度が高いために参入障壁の高いがん・血液及びウイルス感染症領域を中心とした日本初のスペシャリティ・ファーマです。当社グループは、大型新薬(いわゆる売上高が1,000億円を超える「ブロックバスター」)の追求ではなく、マーケットは相対的に小規模でも医療ニーズの高い希少疾病分野を中心とした新薬開発に取り組み、これらの医薬品及び新薬候補品を数多く保有することにより、強固なパイプライン・ポートフォリオを構築し、高付加価値で高収益を達成し、持続性のある事業展開を行います。
(注1) バイオ医薬品業界最大手。1980年、米国カリフォルニア州サウザンド・オークスにおいて、AMGen(Applied Molecular Genetics)として設立。日本においては、1993年5月にアムジェン株式会社として業務を開始しました。
(注2) アンメット・メディカル・ニーズ(Unmet Medical Needs)とは、未だ満たされない医療上の必要性を意味し、患者さんや医師から強く望まれているにもかかわらず有効な既存薬や治療がない状態を指します。
(2)目標とする経営指標
当社グループは製薬企業として、自社販売体制の下で新薬を継続的に上市していくことが企業価値の更なる向上を図る上での重要な要素と考えており、営業組織及び流通・物流を含めた営業の一貫体制を構築しました。同時に、継続的に開発候補品を導入し積極的に研究開発活動等に経営資源を投下する方針です。
当社グループは、トレアキシン点滴静注用が2010年に国内で製造販売承認されて以来継続して製品販売による売上を主としています。現在は、ブリンシドホビル(BCV)の国内及び海外における開発開始と商業化、新たなパイプラインの導入・開発推進・承認取得等を通じて、安定的に高収益を確保できる体制の早期実現に取り組んでおります。引き続き積極的な研究開発投資を行っていくことから、ROEやROAなどの経営指標の目標は設定しておりません。
(3)中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、中長期的な経営計画を実現すべく、主に以下の5つの事業戦略を展開しています。
① ポストPOC戦略による開発リスクの軽減
当社グループの導入候補品は、主として既にヒトでPOCが確認されていることを原則としています。従って、臨床開発ステージが比較的後期段階にある候補品か、既に海外で上市されている製品が対象となります。これらの導入候補品は既に海外で先行して開発が行われており、新薬としてヒトでの有効性・安全性が確認されていることから、開発リスクを軽減でき、また、先行している海外の治験データを活用することにより開発期間を短縮するとともに開発コストを低減し、成功確率を高めることが可能となります。
② 高度な探索及び評価能力による、優れたパイプラインの構築
当社グループの新薬サーチエンジンは、国内外の製薬企業及びバイオベンチャー企業等との多様なネットワークによって構築され、膨大な化合物の中から、社内の専門家による厳正な評価を経て、有望な導入候補品が抽出されます。これらの導入候補品はさらに、第一線で研究に携わる経験豊かな専門家により構成されるSABに諮られ、そのアドバイスと評価を受けた上で導入候補品を決定しています。この開発品導入決定までの高度なスクリーニングプロセスは、既に海外において有効性・安全性が確認された開発品を導入するポストPOC戦略と相まって開発リスクの軽減と開発期間の短縮につながることになり、また、候補品が医療の現場において求められるものかどうかの医療ニーズの充足度に対する理解、及び上市後の収益予測の精度向上に貢献しています。
③ ラボレス・ファブレス戦略による固定費抑制
当社グループは、一切の研究設備や生産設備を保有していません。研究設備・生産設備はともに固定費発生源の代表格ですが、当社グループはこれらを一切保有せずに、開発候補品の探索及び導入後は、開発品の開発戦略策定と実行等の付加価値の高い業務に専念し、そのほかに必要とされる定型的な開発業務は外注しています。研究開発費のうち主なものは業務委託料であり、その金額的・質的重要性は高く、当社グループにおいてはその進捗状況等について厳密な管理を行っております。
④ ブルーオーシャン戦略(注3)による高い事業効率の実現
海外で標準治療薬として使用されている製品が日本では使用できない、あるいは海外で新薬として承認された製品が5年近くも遅れて日本で承認される、いわゆるドラッグ・ロス、ドラッグ・ラグの問題が深刻化しており、がん患者の難民という言葉も生まれています。これらの問題は、当社グループの戦略的開発領域である難治性のがん・血液及びウイルス感染症領域で特に目立っています。特に抗がん剤の市場自体は大きく、また高齢化に伴い現在も拡大傾向にあるものの、抗がん剤の対象疾患は多岐にわたり、がん腫により細分化されているため、各々のがん腫でみると対象患者数がそう多くはない治療領域が数多く存在します。これらの領域での新薬の開発には、極めて高い専門性が求められ、開発の難度が高い半面、大手の製薬企業では採算性などの問題から開発に着手しにくいことがその理由のひとつといわれています。しかし、ひとたび、そうした領域において新薬の承認を取得し上市できれば、競合が少ないため、これらの領域で適応拡大・新製品上市を着実に積み上げていくことで、高成長・高収益を実現できるものと考えています。
(注3) ブルーオーシャン戦略とは、競合との熾烈な競争により限られたパイを奪い合う市場(レッドオーシャン)を避け、市場を再定義し、競合のいない未開拓な市場(ブルーオーシャン)を創造することで、顧客に高付加価値を与えつつ利潤の最大化を目指す戦略です。
⑤ アジアからグローバル展開へ
当社グループはこれまで日本を中心としたアジア各国を対象に事業を展開してまいりました。しかしながら、日本の医療を取り巻く環境が大きく変わっていく中、アジアに留まっていては大きな発展は望めません。今後はグローバルな展開を視野に入れた開発候補品の探索及び評価を実施してまいります。2019年9月にはキメリックス社(本社:米国ノースカロライナ州)との間でBCVに関しての独占的グローバルライセンス契約を締結し、当社グループは天然痘・サル痘を含むオルソポックスウイルスの疾患を除くすべての疾患を対象とした世界全域における開発・販売に加えて製造を含む独占的権利を取得しております。
BCVの事業展開については、dsDNAウイルスに対するその広範な活性を有することから、国内及び海外の専門領域の有力な研究施設と共同研究を進めており、研究成果である科学的知見を基にグローバルの臨床試験を検討、実施してまいります。
(4)主要な経営課題
当社グループは、以下の点を主要な経営課題と捉え、取り組んでまいります。
① パイプラインの更なる充実について
製薬ベンチャー企業として企業価値を高めるためには、開発候補品を継続的に導入し、パイプラインを充実させていく必要があります。
当社グループでは、SyB V-1901において開発を実施または計画しています。なお、現在、新薬候補品の導入に関して複数の案件を相手先企業と協議しており、パイプラインの更なる拡充に向けて今後も新規の開発候補品の導入を積極的に進めてまいります。また、2025年10月に日鉄ケミカル&マテリアル株式会社と取得した「高感度かつ簡便なイムノアッセイ法、およびその装置」に関する共同出願特許を基にしたIVD事業(超高感度測定システム)の早期事業化、収益化を目指します。
② 既存パイプラインのライフサイクル・マネジメントの追求
企業価値を高めるためには、開発候補品の導入だけではなく、導入した新薬候補品の適応症を追加することにより、開発品目あたりの収益の最大化を図るライフサイクル・マネジメントを追求することが重要となります。
当社グループでは2019年9月にBCVのグローバルライセンスを取得して以来、そのポテンシャルを最大限に引き出すことを目的に、世界最高水準の研究機関とともに3つの治療領域で共同研究を進めてきました。①造血幹細胞移植後のウイルス感染症、②血液がん・固形がん、③脳神経変性疾患の3領域を事業の柱として、経営資源を重点配分し開発を加速しています。
現在、アンメット・メディカル・ニーズの高い造血幹細胞移植後のアデノウイルス感染症を対象にグローバル開発を先行して進めており、欧州主要5カ国と米国で同疾患に対するグローバル第Ⅲ相臨床試験の本格的な試験準備を開始し、2026年3月に米国で最初の患者登録を達成しました。
また、BCVは高い抗ウイルス作用に加え、抗腫瘍効果も確認されており、がん領域における臨床開発を進めております。IV BCVによる悪性リンパ腫を対象とした国際共同第Ⅰb相臨床試験を2024年8月に開始しましたが、造血幹細胞移植後のアデノウイルス感染症に対するグローバル第Ⅲ相臨床試験を優先し、注力するため、一時停止しました。この試験では4例中1例において、部分奏功(腫瘍の縮小を表す一指標)が得られたことを踏まえ、今後の開発戦略を再検討しています。
脳神経変性疾患領域においては、進行性多巣性白質脳症(PML)に関して米国国立衛生研究所(NIH)に所属する米国国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)と共同研究開発契約(CRADA)を2026年2月に締結し、本疾患を対象とした医師主導の第Ⅱ相臨床試験をNIH臨床センターで開始しました。前臨床試験については、アルツハイマー型認知症を含む脳神経変性疾患の治療薬開発に関して米国タフツ大学との共同研究成果を基に特許出願をしておりましたが、2025年12月に本件のグローバルにおける独占的な事業化を目的として、タフツ大学とのライセンス契約を締結しました。また、ペンシルベニア州立大学医学部との共同研究の対象であるポリオーマウイルス感染症治療薬開発について、その成果を基に特許出願しておりましたが、2025年12月に、グローバルの独占的事業化を目的としてペンシルベニア州立大学とライセンス契約を締結しました。
共同研究成果の蓄積により、各種dsDNAウイルス感染症に対する人における効果を検討し、抗マルチウイルス感染症に対象領域を拡大することで、市場の拡大とBCVの事業価値の最大化を目指してまいります。
IVD事業(超高感度測定システム)に関しては、2025年10月に日鉄ケミカル&マテリアル株式会社と取得した「高感度かつ簡便なイムノアッセイ法、およびその装置」に関する共同出願特許を基にした超高感度測定システムの早期事業化、収益化を目指します。両社が開発した新しい検査システムは、これまで技術的に困難とされてきた「迅速・簡便・超高感度」という測定への求めに応えるものです。このシステムによって、病院や自宅など場所を問わず、どのような測定場所からでも検査結果を即座に医療機関と共有することが可能となり、疾患のごく早期の検査・診断から、治療方針の決定、その後の経過観察まで、幅広い医療の過程での活用が期待されます。現在、検査機器等で先行する企業との親和性を踏まえて事業提携の交渉を行っています。
トレアキシン®は、日本においては、低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫およびマントル細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病、再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(r/r DLBCL)の承認を取得しております。また、イーグル社との間でトレアキシン®液剤(RTD製剤およびRI投与)の日本における独占的ライセンス契約を締結しております。
③ 後発品への対応
2022年2月に当社製品トレアキシン®RTD製剤を先発医薬品とする後発医薬品の製造販売承認を4社が受け、現在内3社が後発医薬品の販売を行っております。後発医薬品の製造販売の影響を受けて市場シェアは徐々に減少しており、新たな医薬品の導入検討を続けております。
④ 更なる成長を求めてグローバル展開へ
当社グループはこれまでアジア地域への展開を進めてまいりましたが、日本においては高齢化に伴う医療費の増大や、後発医薬品の普及が進み新薬メーカーにとって厳しい事業環境が続くことが想定されます。アジア各国においても同様の政策が始まることも考えられます。
こうした環境を踏まえ、当社は造血幹細胞移植後アデノウイルス感染症を対象としたグローバル第Ⅲ相臨床試験を推進し、IV BCV事業を中心としたグローバル展開を一層強化してまいります。これに伴い、2025年12月1日付で組織を大幅に再編し、エドウィン・ロックが本社副社長執行役員兼グローバルR&D本部長に就任したうえで、発見から臨床試験までのシームレスな研究開発体制を構築し、グローバルでの研究開発体制を充実させます。また、ブリンシドホビルに続く新規開発候補品については、グローバルでの権利取得を目指し、候補品の探索・評価および交渉を進めてまいります。
⑤ 人材の確保について
当社グループの経営資源の第一は人であると考えています。優秀な人材なくして、新薬の探索、開発および情報提供活動、そして今後のグローバル展開において優れた成果をあげることはできません。当社は継続的に優秀な人材の採用を行っており、上場後、特に経営組織をより強固にすべく優れた人材を採用してまいりました。また、OJTや研修等による人材育成を通じて、人材の更なる強化を図ってまいります。
⑥ 財務上の課題について
当社グループは、パイプラインの開発進展、グローバル事業展開、開発候補品の増加等に伴い、研究開発費を中心とする事業活動に合わせて資金を調達する必要があります。
従って、引き続き資金調達手法の多様化を進めるとともに、予算管理の徹底を通じてコスト抑制を図ることで、財務基盤の更なる強化に努めてまいります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループは、元米国アムジェン社(注1)本社副社長で、同社の日本法人であるアムジェン株式会社の創業期から約12年間社長を務めた吉田文紀が、2005年3月に設立した医薬品企業です。
経営理念は「共創・共生」(共に創り、共に生きる)で表され、患者さんを中心として医師、科学者、行政、資本提供者を「共創・共生」の経営理念で結び、アンメット・メディカル・ニーズ(Unmet Medical Needs)(注2)に応えていくことにより、社会的責任及び経営責任を果たすことを事業目的としています。
当社グループは、極めて医療上のニーズは高いものの、新薬の開発が遅れている空白の治療領域をビジネスチャンスと捉え、特に、高い専門性が求められ難度が高いために参入障壁の高いがん・血液及びウイルス感染症領域を中心とした日本初のスペシャリティ・ファーマです。当社グループは、大型新薬(いわゆる売上高が1,000億円を超える「ブロックバスター」)の追求ではなく、マーケットは相対的に小規模でも医療ニーズの高い希少疾病分野を中心とした新薬開発に取り組み、これらの医薬品及び新薬候補品を数多く保有することにより、強固なパイプライン・ポートフォリオを構築し、高付加価値で高収益を達成し、持続性のある事業展開を行います。
(注1) バイオ医薬品業界最大手。1980年、米国カリフォルニア州サウザンド・オークスにおいて、AMGen(Applied Molecular Genetics)として設立。日本においては、1993年5月にアムジェン株式会社として業務を開始しました。
(注2) アンメット・メディカル・ニーズ(Unmet Medical Needs)とは、未だ満たされない医療上の必要性を意味し、患者さんや医師から強く望まれているにもかかわらず有効な既存薬や治療がない状態を指します。
(2)目標とする経営指標
当社グループは製薬企業として、自社販売体制の下で新薬を継続的に上市していくことが企業価値の更なる向上を図る上での重要な要素と考えており、営業組織及び流通・物流を含めた営業の一貫体制を構築しました。同時に、継続的に開発候補品を導入し積極的に研究開発活動等に経営資源を投下する方針です。
当社グループは、トレアキシン点滴静注用が2010年に国内で製造販売承認されて以来継続して製品販売による売上を主としています。現在は、ブリンシドホビル(BCV)の国内及び海外における開発開始と商業化、新たなパイプラインの導入・開発推進・承認取得等を通じて、安定的に高収益を確保できる体制の早期実現に取り組んでおります。引き続き積極的な研究開発投資を行っていくことから、ROEやROAなどの経営指標の目標は設定しておりません。
(3)中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、中長期的な経営計画を実現すべく、主に以下の5つの事業戦略を展開しています。
① ポストPOC戦略による開発リスクの軽減
当社グループの導入候補品は、主として既にヒトでPOCが確認されていることを原則としています。従って、臨床開発ステージが比較的後期段階にある候補品か、既に海外で上市されている製品が対象となります。これらの導入候補品は既に海外で先行して開発が行われており、新薬としてヒトでの有効性・安全性が確認されていることから、開発リスクを軽減でき、また、先行している海外の治験データを活用することにより開発期間を短縮するとともに開発コストを低減し、成功確率を高めることが可能となります。
② 高度な探索及び評価能力による、優れたパイプラインの構築
当社グループの新薬サーチエンジンは、国内外の製薬企業及びバイオベンチャー企業等との多様なネットワークによって構築され、膨大な化合物の中から、社内の専門家による厳正な評価を経て、有望な導入候補品が抽出されます。これらの導入候補品はさらに、第一線で研究に携わる経験豊かな専門家により構成されるSABに諮られ、そのアドバイスと評価を受けた上で導入候補品を決定しています。この開発品導入決定までの高度なスクリーニングプロセスは、既に海外において有効性・安全性が確認された開発品を導入するポストPOC戦略と相まって開発リスクの軽減と開発期間の短縮につながることになり、また、候補品が医療の現場において求められるものかどうかの医療ニーズの充足度に対する理解、及び上市後の収益予測の精度向上に貢献しています。
③ ラボレス・ファブレス戦略による固定費抑制
当社グループは、一切の研究設備や生産設備を保有していません。研究設備・生産設備はともに固定費発生源の代表格ですが、当社グループはこれらを一切保有せずに、開発候補品の探索及び導入後は、開発品の開発戦略策定と実行等の付加価値の高い業務に専念し、そのほかに必要とされる定型的な開発業務は外注しています。研究開発費のうち主なものは業務委託料であり、その金額的・質的重要性は高く、当社グループにおいてはその進捗状況等について厳密な管理を行っております。
④ ブルーオーシャン戦略(注3)による高い事業効率の実現
海外で標準治療薬として使用されている製品が日本では使用できない、あるいは海外で新薬として承認された製品が5年近くも遅れて日本で承認される、いわゆるドラッグ・ロス、ドラッグ・ラグの問題が深刻化しており、がん患者の難民という言葉も生まれています。これらの問題は、当社グループの戦略的開発領域である難治性のがん・血液及びウイルス感染症領域で特に目立っています。特に抗がん剤の市場自体は大きく、また高齢化に伴い現在も拡大傾向にあるものの、抗がん剤の対象疾患は多岐にわたり、がん腫により細分化されているため、各々のがん腫でみると対象患者数がそう多くはない治療領域が数多く存在します。これらの領域での新薬の開発には、極めて高い専門性が求められ、開発の難度が高い半面、大手の製薬企業では採算性などの問題から開発に着手しにくいことがその理由のひとつといわれています。しかし、ひとたび、そうした領域において新薬の承認を取得し上市できれば、競合が少ないため、これらの領域で適応拡大・新製品上市を着実に積み上げていくことで、高成長・高収益を実現できるものと考えています。
(注3) ブルーオーシャン戦略とは、競合との熾烈な競争により限られたパイを奪い合う市場(レッドオーシャン)を避け、市場を再定義し、競合のいない未開拓な市場(ブルーオーシャン)を創造することで、顧客に高付加価値を与えつつ利潤の最大化を目指す戦略です。
⑤ アジアからグローバル展開へ
当社グループはこれまで日本を中心としたアジア各国を対象に事業を展開してまいりました。しかしながら、日本の医療を取り巻く環境が大きく変わっていく中、アジアに留まっていては大きな発展は望めません。今後はグローバルな展開を視野に入れた開発候補品の探索及び評価を実施してまいります。2019年9月にはキメリックス社(本社:米国ノースカロライナ州)との間でBCVに関しての独占的グローバルライセンス契約を締結し、当社グループは天然痘・サル痘を含むオルソポックスウイルスの疾患を除くすべての疾患を対象とした世界全域における開発・販売に加えて製造を含む独占的権利を取得しております。
BCVの事業展開については、dsDNAウイルスに対するその広範な活性を有することから、国内及び海外の専門領域の有力な研究施設と共同研究を進めており、研究成果である科学的知見を基にグローバルの臨床試験を検討、実施してまいります。
(4)主要な経営課題
当社グループは、以下の点を主要な経営課題と捉え、取り組んでまいります。
① パイプラインの更なる充実について
製薬ベンチャー企業として企業価値を高めるためには、開発候補品を継続的に導入し、パイプラインを充実させていく必要があります。
当社グループでは、SyB V-1901において開発を実施または計画しています。なお、現在、新薬候補品の導入に関して複数の案件を相手先企業と協議しており、パイプラインの更なる拡充に向けて今後も新規の開発候補品の導入を積極的に進めてまいります。また、2025年10月に日鉄ケミカル&マテリアル株式会社と取得した「高感度かつ簡便なイムノアッセイ法、およびその装置」に関する共同出願特許を基にしたIVD事業(超高感度測定システム)の早期事業化、収益化を目指します。
② 既存パイプラインのライフサイクル・マネジメントの追求
企業価値を高めるためには、開発候補品の導入だけではなく、導入した新薬候補品の適応症を追加することにより、開発品目あたりの収益の最大化を図るライフサイクル・マネジメントを追求することが重要となります。
当社グループでは2019年9月にBCVのグローバルライセンスを取得して以来、そのポテンシャルを最大限に引き出すことを目的に、世界最高水準の研究機関とともに3つの治療領域で共同研究を進めてきました。①造血幹細胞移植後のウイルス感染症、②血液がん・固形がん、③脳神経変性疾患の3領域を事業の柱として、経営資源を重点配分し開発を加速しています。
現在、アンメット・メディカル・ニーズの高い造血幹細胞移植後のアデノウイルス感染症を対象にグローバル開発を先行して進めており、欧州主要5カ国と米国で同疾患に対するグローバル第Ⅲ相臨床試験の本格的な試験準備を開始し、2026年3月に米国で最初の患者登録を達成しました。
また、BCVは高い抗ウイルス作用に加え、抗腫瘍効果も確認されており、がん領域における臨床開発を進めております。IV BCVによる悪性リンパ腫を対象とした国際共同第Ⅰb相臨床試験を2024年8月に開始しましたが、造血幹細胞移植後のアデノウイルス感染症に対するグローバル第Ⅲ相臨床試験を優先し、注力するため、一時停止しました。この試験では4例中1例において、部分奏功(腫瘍の縮小を表す一指標)が得られたことを踏まえ、今後の開発戦略を再検討しています。
脳神経変性疾患領域においては、進行性多巣性白質脳症(PML)に関して米国国立衛生研究所(NIH)に所属する米国国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)と共同研究開発契約(CRADA)を2026年2月に締結し、本疾患を対象とした医師主導の第Ⅱ相臨床試験をNIH臨床センターで開始しました。前臨床試験については、アルツハイマー型認知症を含む脳神経変性疾患の治療薬開発に関して米国タフツ大学との共同研究成果を基に特許出願をしておりましたが、2025年12月に本件のグローバルにおける独占的な事業化を目的として、タフツ大学とのライセンス契約を締結しました。また、ペンシルベニア州立大学医学部との共同研究の対象であるポリオーマウイルス感染症治療薬開発について、その成果を基に特許出願しておりましたが、2025年12月に、グローバルの独占的事業化を目的としてペンシルベニア州立大学とライセンス契約を締結しました。
共同研究成果の蓄積により、各種dsDNAウイルス感染症に対する人における効果を検討し、抗マルチウイルス感染症に対象領域を拡大することで、市場の拡大とBCVの事業価値の最大化を目指してまいります。
IVD事業(超高感度測定システム)に関しては、2025年10月に日鉄ケミカル&マテリアル株式会社と取得した「高感度かつ簡便なイムノアッセイ法、およびその装置」に関する共同出願特許を基にした超高感度測定システムの早期事業化、収益化を目指します。両社が開発した新しい検査システムは、これまで技術的に困難とされてきた「迅速・簡便・超高感度」という測定への求めに応えるものです。このシステムによって、病院や自宅など場所を問わず、どのような測定場所からでも検査結果を即座に医療機関と共有することが可能となり、疾患のごく早期の検査・診断から、治療方針の決定、その後の経過観察まで、幅広い医療の過程での活用が期待されます。現在、検査機器等で先行する企業との親和性を踏まえて事業提携の交渉を行っています。
トレアキシン®は、日本においては、低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫およびマントル細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病、再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(r/r DLBCL)の承認を取得しております。また、イーグル社との間でトレアキシン®液剤(RTD製剤およびRI投与)の日本における独占的ライセンス契約を締結しております。
③ 後発品への対応
2022年2月に当社製品トレアキシン®RTD製剤を先発医薬品とする後発医薬品の製造販売承認を4社が受け、現在内3社が後発医薬品の販売を行っております。後発医薬品の製造販売の影響を受けて市場シェアは徐々に減少しており、新たな医薬品の導入検討を続けております。
④ 更なる成長を求めてグローバル展開へ
当社グループはこれまでアジア地域への展開を進めてまいりましたが、日本においては高齢化に伴う医療費の増大や、後発医薬品の普及が進み新薬メーカーにとって厳しい事業環境が続くことが想定されます。アジア各国においても同様の政策が始まることも考えられます。
こうした環境を踏まえ、当社は造血幹細胞移植後アデノウイルス感染症を対象としたグローバル第Ⅲ相臨床試験を推進し、IV BCV事業を中心としたグローバル展開を一層強化してまいります。これに伴い、2025年12月1日付で組織を大幅に再編し、エドウィン・ロックが本社副社長執行役員兼グローバルR&D本部長に就任したうえで、発見から臨床試験までのシームレスな研究開発体制を構築し、グローバルでの研究開発体制を充実させます。また、ブリンシドホビルに続く新規開発候補品については、グローバルでの権利取得を目指し、候補品の探索・評価および交渉を進めてまいります。
⑤ 人材の確保について
当社グループの経営資源の第一は人であると考えています。優秀な人材なくして、新薬の探索、開発および情報提供活動、そして今後のグローバル展開において優れた成果をあげることはできません。当社は継続的に優秀な人材の採用を行っており、上場後、特に経営組織をより強固にすべく優れた人材を採用してまいりました。また、OJTや研修等による人材育成を通じて、人材の更なる強化を図ってまいります。
⑥ 財務上の課題について
当社グループは、パイプラインの開発進展、グローバル事業展開、開発候補品の増加等に伴い、研究開発費を中心とする事業活動に合わせて資金を調達する必要があります。
従って、引き続き資金調達手法の多様化を進めるとともに、予算管理の徹底を通じてコスト抑制を図ることで、財務基盤の更なる強化に努めてまいります。