四半期報告書-第12期第3四半期(平成27年11月1日-平成28年1月31日)

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2016/03/15 15:43
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財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は、以下のとおりであります。文中における将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 業績の状況
当社グループは主要技術である自己組織化ペプチド技術による医療製品の開発に引き続き注力しており、外科領域では吸収性局所止血材:TDM-621(以下「本止血材」という。)および粘膜隆起材:TDM-641(以下「粘膜隆起材」という。)、再生医療領域では歯槽骨再建材:TDM-711(以下「歯槽骨再建材」という。)および創傷治癒材:TDM-511(以下「創傷治癒材」という。)の事業展開を進めてまいりました。
本止血材
日本: 平成27年3月13日の製造販売承認申請の取下げ後、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(「PMDA」)との間で、有効性評価の科学的妥当性を検証するための再度の臨床試験開始に向けた協議を継続し、臨床試験の規模や評価方法等の詳細検討を進め、平成28年4月期中での治験計画届の提出に向け取り組んでおります。平成29年4月期第1四半期を目途とした臨床試験開始、その後の製造販売承認申請に繋げていくよう取組んでおり、今後の全体計画に関しては、進展状況を踏まえて精査後に今後の中期計画に反映していく予定です。
欧州:平成26年1月14日にCEマーキング指令適合を受けた後、事業収益化に向けてドイツ・フランス・英国等の有力医療機関をターゲットに卸売業者/代理店(各国別での販売に特化した販売代理店)を通じた製品販売を開始しておりました。欧州地域では各国毎に販売代理店(ドイツで1社、フランスで1社、スイスで1社、イタリアで2社、スペインで1社、北欧で1社)と契約し販売活動を開始しており、各販売代理店と情報共有を行い複数の医療機関において共同で臨床立ち合いも実施しておりましたが、当第2四半期から当第3四半期にかけて販売活動に遅延が生じております。既存製品との比較感による新製品導入への医療機関による慎重な姿勢があった点、上記の販売代理店との協働体制の確立に時間を要し代理店営業の製品習熟が遅れプロモーション出来なかった点、医師が製品評価をしても医療機関によっては購買部の新製品登録事務手続きに数ヶ月要する等の販売開始が遅れた点などが、その主な理由であり、また、このような製品導入時のタイムラグを期初予想の販売計画に織り込んでおらず、各国事象の見積りや検討が十分に計画に反映できておりませんでした。当第2四半期から当第3四半期にかけてプロモーション部隊を拡充して販売活動に注力したものの、医療機関における製品導入の準備期間も一定程度必要なこともあり、受注にまで至る案件が少なく、当期の販売計画を達成する状況には至らず、平成28年2月10日に当期の事業収益予想の修正を実施いたしました。当第4四半期以降では再編したプロモーション部隊により製品販売の拡充に向けた展開を継続しており、新規代理店の獲得に向け取り組んでまいります。
欧州の広いエリアで製品販売を開始するため販売提携につき販売パートナー候補先(対象全域に販売網・プロモーション機能を有する企業)3社と交渉を継続しておりましたが、当第3四半期末での契約締結に至らず、当該進捗状況を把握し精査する過程で当期末までの契約締結についても難しいと判断し、平成28年2月10日に当期の事業収益予想の修正を実施いたしました。弊社製品に対する主要医師へのヒアリング等で製品評価は進展しておりますが、更なる欧州での使用実績データ、他エリアでの販売・使用実績等が契約に向けた課題解消に繋がるため、当第4四半期から来期にかけての使用実績の積み重ね・製品販売に注力し、引き続き来期中での契約合意に向けて協議を継続してまいります。また、今後の契約に向けて、上記の内1社と欧州における独占販売権の許諾契約の締結を行い、当該契約締結後には欧州各国での販売代理店による製品販売を当該販売提携先に集約していく予定でありますが、当期末までの動向を精査した上で今後の中期計画に反映していく予定です。
アジア・オセアニア:CEマーキング採用地域であり、各国で医療機器としての製品登録申請や製品販売に向けた活動に取り組んでおります。当第3四半期にオーストラリア・タイで製品登録承認を取得し、韓国は製品登録申請中であります。当第3四半期には、シンガポールのTransmedic Pte Ltd(「Transmedic社」)との間で、シンガポール、マレーシア、ブルネイへの展開に向けた吸収性局所止血材「PuraStat®」の独占販売権許諾契約を締結し、当第4四半期から来期にかけて製品販売を開始いたします。またオセアニアでの取り組みとして、当第2四半期にMaquet Australia Pty Ltd(「Maquet社」)との間で、オーストラリアでの販売提携を締結し、当第3四半期にオーストラリアの製品登録承認を取得したことから、同国では当第4四半期よりMaquet社を通じて来製品販売を開始していく予定です。
南米(ブラジル・コロンビア・メキシコ等):CEマーキング採用地域であり、各国で医療機器としての製品登録申請や製品販売に向けた活動を進めております。製品登録に関しては当第1四半期にコロンビアで製品登録承認を取得し、当第3四半期にブラジルで製品登録を取得いたしました。しかしながら、製品販売に関して当第2四半期にチリでの販売開始、当第3四半期にコロンビアでの販売開始を予定しておりましたが、販売代理店の選定や当社の要求する販売単価の交渉に時間を要したことから、当第3四半期末までの契約締結・販売開始に至らず、平成28年2月10日に当期の事業収益予想の修正を実施いたしました。今後に関しては、メキシコでは平成28年2月18日に同国での製品登録承認を取得し、メキシコのGenelife S.A(「Genelife社」)との間で、吸収性局所止血材「PuraStat®」 のメキシコ国内における販売権許諾契約を締結したことから、当第4四半期に製品販売を開始してまいります。チリでは現地販売代理店との契約交渉中ですが、当第4四半期での契約締結及び製品販売を開始する予定です。またブラジル・コロンビアでは販売提携に向け交渉中であり、平成29年4月期上期中に契約締結及び販売開始を予定しております。
米国:米国国内での臨床試験開始に向け、米国食品医薬品局(以下「FDA」という。)と引き続きプロトコルに関する協議を進めており、平成28年4月期中の開始を予定しております。
粘膜隆起材
日本:平成26年12月11日に国内での臨床試験を開始いたしましたが、有効性をより明確にできる試験方法や製材の検討を実施するために、平成27年2月16日に自主的に臨床試験を一時中断しております。当第3四半期末の時点においても検討が続いており、臨床試験の再開に至っていない状況であります。引き続き製品優位性の確保に向けた検討を実施してまいりますが、現状の開発計画・製品上市までのスケジュールに変更が必要なことから、当期末までの進展状況を精査し今後の中期計画に反映していく予定です。
歯槽骨再建材
米国:米国国内での臨床試験で15症例の施術・経過観察が完了し骨形成に良好な結果やデータを得たことから、FDA承認の後、当第1四半期より次のフェーズでの臨床試験を開始しております。骨形成を確認するため経過観察に時間を要することから、当第3四半期においても臨床試験を継続しており、今後も製品化に向けた開発を進めております。
創傷治癒材
米国:平成26年10月23日に医療機器の審査プロセスの1つである市販前届510(k)を米国FDAに申請し、平成27年2月16日に米国FDAより承認を受け販売の許認可を取得しております。他薬剤とのコンビネーション(抗生物質・抗がん剤・ヒアルロン酸等との混合投与)により治療効果の増大が期待できることから、当第3四半期においても熱傷治療、皮膚がん治療を中心に美容整形分野等で研究を進め、付加価値の高い製品化に向けて取組んでおります。
その他領域
主に国立がん研究センターとの「RPN2標的核酸医薬によるトリプルネガティブ乳がん治療」共同プロジェクトを実施しており、当社は自己組織化ペプチドA6KをsiRNA核酸医薬のDDS(ドラッグ・デリバリー・システム)として提供しておりました。当第1四半期において国立がん研究センター、同研究所と共同開発した新規siRNA核酸製剤「TDM-812(RPN2siRNA/A6K複合体)」を用いた国立がんセンターによる医師主導治験が開始され、当第3四半期においても治験が継続されております。本治験の内容は治療抵抗性の乳がんで体表から触知できる局所腫瘤(かたまり)を有する患者さんを対象とした、世界で初めて人へ投与するファースト・イン・ヒューマンの治験です。
このような結果、当第3四半期連結累計期間の業績につきましては、事業収益面に関しては欧州・アジアでの本止血材の製品販売とアジアでの販売提携に関する契約一時金を受領したことから、事業収益72,804千円(前年同四半期比72,804千円増加)となりました。事業収益に関しては欧州・南米での製品販売につき収益化が遅延しており、製品販売の計画未達に伴う売上原価の減少のほか、研究開発費で約300百万円の減額(主に本止血材の国内での臨床試験費用。試験開始を平成28年4月期から平成29年4月期に変更したため)、販売費及び一般管理費等の費用見直しで約200百万円の削減に取り組んだものの、業績予想の修正を実施しております。そのような状況下、経常損失1,403,541千円(前年同四半期は経常損失1,422,977千円)、親会社株主に帰属する四半期純損失1,924,715千円(前年同四半期は親会社株主に帰属する四半期純損失1,587,562千円)となりました。
なお、当社グループの事業は単一セグメント(医療製品事業)であるため、セグメントごとの記載はしておりません。
(2) 財政状態の分析
当第3四半期連結会計期間における総資産は4,899,712千円(前連結会計年度末比1,909,533千円の減少)となりました。
流動資産につきましては、4,860,196千円(同1,343,723千円の減少)となりました。これは主に、現金及び預金の減少1,270,361千円によるものです。
固定資産につきましては、39,515千円(同565,809千円の減少)となりました。これは主に、固定資産の減損に伴う有形固定資産の減少80,788千円、無形固定資産に含まれるのれんの一括償却134,167千円及びその他の減少211,506千円、並びに投資その他の資産に含まれる長期前払費用の減少140,538千円によるものです。
負債につきましては、461,247千円(同33,525千円の増加)となりました。これは主に、流動負債その他に含まれる未払費用の増加40,686千円によるものです。
純資産につきましては、4,438,464千円(同1,943,059千円の減少)となりました。これは主に親会社株主に帰属する四半期純損失による利益剰余金の減少1,924,715千円によるものです。
(3) 経営成績の分析
当第3四半期連結累計期間の事業収益は72,804千円となりました。これは主に製品販売によるものです。
事業費用につきましては、研究開発費の減少等により1,441,658千円となりました。このような結果、営業損失は1,368,853千円となりました。
また、営業外収益につきましては、受取利息5,605千円を計上したこと等により6,136千円、営業外費用につきましては、為替差損33,710千円を計上したこと等により40,824千円となりました。このような結果、経常損失は1,403,541千円となりました。
さらに、特別利益につきましては、新株予約権の戻入れにより48,090千円、特別損失につきましては、固定資産の減損処理による減損損失432,833千円及びのれん償却額134,167千円となりました。このような結果、親会社株主に帰属する四半期純損失は1,924,715千円となりました。
(4) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当第3四半期連結累計期間において新たに発生した事業上及び財務上の対処すべき課題はありません。
(5) 研究開発活動
当第3四半期連結累計期間における当社グループの研究開発費の総額は483,281千円であり、主な研究開発活動として下記のとおり実施いたしました。
①外科領域
A吸収性局所止血材(TDM-621)
当社グループは、自己組織化ペプチド技術を基礎技術とした外科医療における吸収性局所止血材の世界展開に向けた開発を進めております。平成26年1月に欧州子会社がCEマーキングの指令適合について第三者認証機関からの認証を取得し、これにより、EU加盟国での製品販売が可能となりました。
このCEマーキング認証は欧州だけでなくアジア・オセアニア・南米等グローバルに広く採用されており、同認証を用いて製品登録承認を取得することにより製品販売が可能となります。アジア・オセアニアではシンガポールとインドネシアに続き、オーストラリアとタイで登録承認を取得し、南米ではコロンビアとブラジルに続きメキシコで登録承認を取得いたしました。
日本・米国・中国は製品販売に向けて臨床試験と製造販売承認取得が必要であり、各国での当局対応や試験開始に向け準備を進めております。日本においてはPMDAに対して製造販売承認申請を行っておりましたが、平成27年3月に申請の取下げを行い、有効性評価をより客観的に検証するための再臨床試験に向けた準備および協議を実施しております。米国においては、臨床試験の開始に向けた米国FDAとプロトコルの協議を継続しております。
B粘膜隆起材(TDM-641)
当社グループは、TDM-621に続く外科領域のパイプラインとして、主にTDM-641の製品化に向けた研究開発を進めております。平成26年12月に日本での臨床試験を開始いたしましたが、平成27年2月に製材検討を実施するために一時中断することとし、製品優位性の確保に向けた研究試験を継続しております。
C血管塞栓材(TDM-631)
TDM-631については、前臨床試験を進め、必要なデータを収集しております。
②再生医療領域
A歯槽骨再建材(TDM-711)
当社グループでは、自己組織化ペプチド技術を基礎技術とした再生医療領域における骨再建材の開発を進めております。TDM-711は米国子会社で開発・製品化を目指しており、平成23年7月に米国FDAからIDEの承認を取得したことに続き、平成24年2月に米国ハーバード大学の医学部・歯学部の付属研究所であるフォーサイス・インスティテュート(Forsyth Institute)において臨床試験を開始いたしました。プロトコルに規定した15症例の施術が完了し、米国FDAと臨床試験の拡大に向けた協議を進めておりましたが、骨再生に有効なデータを得られたことから、当第1四半期より次のフェーズでの試験を開始しており、当第3四半期も継続して実施中です。
B創傷治癒材(TDM-511)
当社グループは、自己組織化ペプチド技術を基礎技術とした再生医療領域における皮膚再建材の開発を進めております。TDM-511は米国子会社で開発・製品化を目指しており、平成26年10月に医療機器として市販前届510(k)を米国FDAに申請し、平成27年2月に販売承認を得ました。TDM-511は、皮膚(表皮、表皮・真皮)からの出血を迅速に止血する局所止血材、皮膚の創傷部の再生環境を整え創傷治癒を促す創傷治癒材としての活用に加え、他薬剤とのコンビネーションによる治療効果の増大が期待できることから、熱傷治療、皮膚がん治療、美容整形分野での研究開発を進めております。
③DDS領域
当社は界面活性ペプチド(A6K)を用い国立がん研究センターと新規癌治療技術の開発に向けて共同研究を行っております。癌細胞への徐放技術の確立に向け前臨床試験実施し、乳がん治療に向けたsiRNA核酸医薬のDDS(ドラッグ・デリバリー・システム)を共同開発しておりましたが、当第1四半期に国立がん研究センター、同研究所と共同開発した新規siRNA核酸製剤「TDM-812(RPN2siRNA/A6K複合体)」を用いた国立がんセンターによる医師主導治験が開始され、当第3四半期においても治験が継続されております。
<用語解説>(50音順、アルファベット)
*自己組織化ペプチド
生理的条件下(中性pH、塩の存在)に置くと、ペプチド分子同士が規則的に集合し、ナノファイバーを形成するペプチド群。
*510(k)
既存の医療機器と同等の機能を有する医療機器の登録制度。
*DDS
必要な薬物を必要な部位で必要な長さの時間、作用させるための薬物送達システム(工夫や技術)。Drug
Delivery Systemの略称。
(6) 事業等のリスクに記載した重要事象等についての分析・検討内容及び当該重要事象等を解消し、又は改善するた
めの対応策
「1 事業等のリスク」に記載のとおり、当社グループは研究開発費用が先行して計上されることから、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在していると認識しております。
当該重要事象等を解消又は改善するために、当社グループは医療製品事業においてグローバルに展開している吸収性局所止血材の製品販売による売上収入を計上し、主に欧米・アジア・南米地域における販売権許諾等の契約一時金やマイルストーンペイメント収入を獲得してまいります。また親子会社間での研究開発において基礎研究の共有・効率化も進んでいることから、業務効率化による諸経費の節減等にも注力し販売費及び一般管理費の圧縮にも取り組むことで収益構造を改善し、重要事象等の解消に向け取り組んでまいります。
また当社グループの研究開発及び事業活動を進めるに際しての事業資金は十分に確保しております。各金融機関より機動的な借入金の調達を行える借入枠の設定及びコミットメントライン契約についても継続して更新しております。