有価証券報告書-第17期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

【提出】
2017/06/29 10:00
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74項目

業績等の概要

(1) 業績
当事業年度における我が国経済は、政府の経済政策や日銀のマイナス金利付き量的・質的金融緩和政策を背景に景気は緩やかな回復基調で推移しました。一方、世界景気全般については、中国をはじめとする新興国経済の減速懸念に加えて、英国の欧州連合(EU)離脱問題の影響、米国新大統領が掲げる内向的な政策構想、中東の不安定な情勢、さらに北朝鮮の核の脅威に対する懸念が高まり続けており、その結果、株価・為替に大きな影響を与えるなど依然として先行き不透明な状況が続いております。
当社の事業に関わる医療・医薬品分野においては、バイオ医薬品を始めとした最先端の医薬品・医療技術が一般社会へ浸透しつつあることから我が国は世界でも有数の長寿社会を実現している一方で、総務省が実施した平成27年国勢調査の結果から平成27年10月時点で65歳以上の人口が初めて25%を超えていることが判明し、本格的な少子化・高齢化時代を迎えつつあります。このため、高齢者を中心として医療費が高まり続けており、厚生労働省は平成29年8月より高額療養費制度における70歳以上の自己負担額の上限引き上げを実施するなど、医療費抑制のための政策が継続的に検討・推進されております。また、良質な医薬品の安定供給と医療費抑制を目的に後発医薬品を普及させるための活動も活発化しており、とりわけ、高額なバイオ医薬品に対する後発品(バイオ後続品)は大きな効果があると見込まれ、様々な普及促進策が検討されております。具体的には、バイオ後続品の振興・発展を目的に平成28年4月にはバイオ後続品事業を行っている製薬会社を中心に「バイオシミラー協議会」が発足し、バイオ後続品の諸問題についての調査や、製薬企業、行政機関、医療機関といった産官学間の連携を強め、様々な提言を行っております。このように医療費抑制のための施策や後発医薬品の市場環境整備については官民一体となって取り組んでおります。
このような状況の下、当社のバイオ後続品事業は、富士製薬工業㈱と持田製薬㈱による好中球減少症治療薬「フィルグラスチムBS」の販売が順調に推移しており、当社の経営の安定感は継続しております。それに加えて平成28年9月には、㈱三和化学研究所と共同開発を行っているダルベポエチンアルファバイオ後続品について国内における第Ⅲ相臨床試験を開始、同12月に持田製薬㈱とがん治療領域におけるバイオ後続品について共同事業化契約を締結し、製造販売承認の取得に向けての共同開発を開始、さらには、平成29年3月に伊藤忠ケミカルフロンティア㈱と新たなバイオ後続品の開発について資本業務提携を結ぶなど、パイプラインの開発は着実に前進しております。また、平成28年12月に、バイオ医薬品の製造で重要なバイオプロセス材料等の開発、製造を含めたライフサイエンス事業に注力しているJSR㈱との資本業務提携を行いました。これらを通して、より品質が高く廉価なバイオ医薬品をより多くの患者様に的確かつ迅速に届けるため、併せて自らの一層の成長を目指すために、次のとおり既存開発品目の着実な開発推進及び新たな開発品目の立ち上げを積極的に図っております。
① フィルグラスチム(G-CSF)の次世代型「ペグフィルグラスチム(PEG-G-CSF)バイオ後続品」の開発
② ㈱三和化学研究所とのダルベポエチンアルファバイオ後続品の国内共同開発
③ 持田製薬㈱とのがん治療領域におけるバイオ後続品の業務提携
④ 千寿製薬㈱との眼科領域におけるバイオ後続品の資本業務提携
⑤ その他複数のバイオ後続品の開発品目の拡充
一方、バイオ新薬事業では、次世代型抗体医薬品の研究開発を進めているほか、平成28年12月に味の素グループの一員となった㈱ジーンデザインとの核酸共同事業を通し核酸医薬品の創薬の機会を探ったり、国立がん研究センターと共同特許出願したエクソソームなどの新規技術の取得にも力を入れております。
また、再生医療分野においては、平成28年10月に当社と同じノーリツ鋼機グループの一員である㈱日本再生医療と資本業務提携を行い、同社が開発中の心臓内幹細胞を用いた再生医療等製品の事業化を目指し、グループ全体で再生医療分野の事業拡大に取り組んでおります。さらには、平成29年2月に順天堂大学と共同研究契約を締結し、同大学が研究を進めている免疫寛容誘導を活用した新たな免疫抑制治療法の研究開発を開始しました。
医薬品の開発には時間を要するため、安定的な経営環境をより強固に構築する目的で、ヘルスケア関連分野である医療機器、診断薬、再生医療などについても広く事業シーズを探索し、事業化に向けて取り組んでおります。
これらの結果、売上高は1,089,360千円(前年同期比6.2%減)、営業損失は1,184,408千円(前年同期は820,289千円の営業損失)、経常損失は1,176,763千円(前年同期は785,785千円の経常損失)、当期純損失は1,224,554千円(前年同期は787,685千円の当期純損失)となりました。
(2) キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前事業年度末に比べ1,562,554千円増加し、2,379,896千円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により減少した資金は1,759,243千円(前年同期は607,374千円の減少)となりました。これは主に、 税引前当期純損失1,222,134千円、売上債権の増加388,007千円及び前受金の減少145,000千円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により減少した資金は149,902千円(前年同期は121,746千円の減少)となりました。これは主に、投資有価証券の取得による支出149,600千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により増加した資金は3,471,699千円(前年同期は946,991千円の増加)となりました。これは短期借入金の純減少額460,080千円はあったものの、第三者割当による株式の発行による収入2,787,993千円及び新株予約権の行使による株式の発行による収入1,143,786千円があったことによるものであります。
(注)用語解説については、「第1企業の概況 3事業の内容」の末尾に記載しております。